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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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3/16 放送分 「変わりゆく校歌」

卒業式の歌といえば、昔は『仰げば尊し』が定番でしたが、最近では旅立ちの日にふさわしい新旧さまざまな曲が歌われています。
ところで、卒業式に歌われるもうひとつの歌は、校歌。これは昔もいまも変わらないと思いがちですが、実はそうでもありません。

福岡県の筑豊地方。明治以降、華やかな石炭産業都市として栄え、小中学校の校歌もその石炭文化を誇る内容が盛り込まれていました。
ところが、時代は石炭から石油へ。昭和60年代には筑豊から炭坑の姿が消えてしまいます。それとともに、石炭産業に従事していた多くの人たちが筑豊を離れていきました。その当時の小中学校では、毎日のように転校していく子どものお別れ会が開かれていたといいます。
そして、石炭産業がなくなり社会情勢に合わなくなったという理由から、筑豊の多くの小中学校で、校歌が新たに作り直されていったのです。
全国に離散していった筑豊の子供たち。今は大人になった彼らが心の奥に刻んでいる故郷(ふるさと)の町の姿は大きく変わっていき、ともに学んだ仲間たちの絆ともいえる校歌までもが消えていったのです。

ただ、その代わりにできた新しい校歌の多くが、その当時、筑豊からバラバラになって出ていった子どもたちに向けて「離れていても心は一つ」だという惜別の思いが、秘かに込められています。

また、最近では筑豊の石炭産業の遺跡が、滅んでいった負の遺産としてではなく、未来に向けた地域の誇るべき産業遺跡として見直されています。
それと同時に、昔の校歌もまた次世代に伝えるべき大切な心の遺産として、第二の校歌という形で復活させようという動きもあるようです。