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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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1/27 放送分 「南風崎駅物語」

長崎県の佐世保と諫早を結ぶJR大村線。大勢の観光客で賑わうきらびやかなハウステンボス駅のひとつ隣に、「南の風の崎」と」書いて南風崎(はえのさき)という駅があります。

小さな町の小さな無人駅で、ふだんの乗降客は一日平均数十人。地元の人の通勤通学以外にはほとんど利用する人はいません。
ところが、時折、見慣れない旅行者がこの駅を訪れることがあります。
それも70代か80代くらいのお年寄りがほとんど。感慨深げに駅舎を眺めたり、暫くホームに佇んだりした後、列車に乗って、或いは待たせていたタクシーに乗り込んで去っていきます。
この不思議な人たちは、じつは思い出を求めてこの駅を訪ね来るのです……。

戦争が終わった昭和20年から25年にかけて、佐世保は、博多、舞鶴に並ぶ海外引揚者の上陸の地でした。
敗戦とともにすべてを失い、迫害や略奪、肉親との離別に耐えて奇跡的に佐世保の港から祖国の土を踏んだ人々。南風崎駅は、佐世保に着いた彼らがそれぞれのふるさとへ帰るための始発駅だったのです。
座席も通路もぎゅうぎゅう詰めの引揚者専用列車が、毎日この駅から関西へ、関東へ、東北へと向かいました。
記録によると、昭和25年までに231万人の引揚者が南風崎駅から全国各地に運ばれています。
その231万人の方が、それぞれのふるさとから再出発をして、一生懸命に新たな暮らしを築いていったことでしょう。

そして半世紀。その中のだれかが、戦後の人生の始発駅ともいえる南風崎駅をもう一度見ておきたい、と訪れているのです。