10/28 放送分 「速記の父」
10月28日。きょうは、速記記念日です。
速記とは、会議や討論会の内容を、特殊な文字ですばやく記録する方法で、欧米では早くから普及していましたが、日本で開発されたのは明治時代。
盛岡の田鎖綱紀(たくさりこうき)がアメリカ人に教わったことがきっかけでした。
当時の記録といえば、どんなに早く書き取っても要点だけが精一杯。ところが、この速記文字は話した言葉通りに、しかもアクセントや訛りまでもが正確に再現されるので、田鎖は夢中になってこの速記法を勉強します。
しかし、英語での速記法はマスターするものの、これを日本語に応用しようとすると発音の壁にぶつかってしまい、彼の周りには「無駄な努力」と笑う人もいました。
ところがこの速記法に興味を持ったひとりの学生が、この研究を万人に知らせたいと新聞で発表したのをきっかけに、事態は一変します。
「ぜひ講習会を開いてください」という学生がひっきりなしに訪れ、田鎖は「独学で完成させるよりも、同じ志をもった仲間と試行錯誤しながら、より精度の高いものを作り上げていこう」と決心し、明治15年10月28日、日本で初めて速記法の講習会を開いたのです。
彼は、仲間や弟子とともに、より応用のきく速記法を完成させ、明治23年に開かれた第一帝国議会の議事録を、速記法によって残すことに成功し、しかも第1回から記録が残されているのは日本だけという偉業を成し遂げます。
現在、速記技術者の数は減りつつありますが、国会議事録に限らず、落語やラジオ講演、裁判記録など、速記によって残された記録は数多く、時代の移り変わりを正確無比に残してきた功労者たちには頭が下がる思いがします。
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