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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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7/8 放送分 「2回のお見送り」

熊本県の人吉駅から鹿児島県の吉松駅を結ぶ肥薩線。一日5往復しか列車が走らないローカル線ですが、険しい山をジグザグに上り下りする「スイッチバック」や、山を螺旋状に上がる「ループ」などの工夫が凝らされ、途中の車窓は山あり谷ありで、日本一の動く展望台といわれています。
その肥薩線に「真の幸せ」と書いて真幸(まさき)と読む駅があります。

山深い中の無人駅。古い古い木造の小さな駅舎がぽつんと建っています。
この駅舎を掃除したり、花を植えたりしているのは、地元の農家のお母さんたち。ボランティアです。
数年前、たまたまお母さんの一人が駅に来てみると、観光列車が止まっていて、大勢の人がホームに降り立っているのを見てびっくりしたそうです。
そのころ、無人の駅舎は雑草が伸び、荒れ放題。「これでは、せっかく来て下さった観光客に申し訳ない」というわけで、仲間を募って駅の美化に取り組んだのです。
やがて、お母さんたちはもうひとつの活動を始めました。
それは、毎週末、手作りの民芸品や季節の農作物を駅に並べて販売すること。これが大人気で、わずか10分ほどの停車時間に観光客がお母さんたちの周りに人垣を作り、会話が弾みます。
とはいえ一日2往復だけの観光列車。そんなに売れるものではありません。
「それでもいいんです。私たちは遠くからやってきたお客さんと触れあいたいの」と、お母さんの一人はにこにこ笑うだけ。
発車時間になって、お母さんたちが大きく手を振って列車を見送る光景も、ちょっとユニーク。というのも、この駅全体がスイッチバックになっているため、いったん駅から遠ざかった列車が山を登る線路に切り替わって再び駅に近付いてくるのです。
すると、お母さんたちは再び列車に向かって大きく手を振ります。
ちょっと嬉しい「2回のお見送り」。今年の夏休みも、観光客と真幸駅のお母さんたちとの間で、この微笑ましい光景が見られることでしょう。