6/10 放送分 「御船街道ハゼ並木」
熊本県上益城郡(かみましきぐん)御船町(みふねまち)と嘉島町(かしままち)。ふたつの町にまたがって流れる御船川の堤防に「御船街道ハゼ並木」があります。この川沿いの風景は町の住民だれもが愛するふるさとのシンボル。その思い入れは景観の美しさだけではなく、土地の人たちがずっと語り継いできたひとつの歴史が刻まれているからです。
元禄時代の有名な赤穂浪士。討ち入りを果たした大石内蔵助は、沙汰を受けるまで細川藩の江戸屋敷に預けられましたが、その手厚いもてなしに感謝して、「命短い自分のせめてもの恩返しに」と、ハゼの木の栽培を伝授しました。
これを受けた細川藩では各地にハゼを植え、その実からロウを作り出し、藩の財政は大いに潤いました。
そのとき最初に植えられたといわれるのが、御船街道ハゼ並木なのです。
ところが、昭和63年の初夏。未曾有の集中豪雨で川が氾濫。死者が出るほどの被害を出しました。
二度とこのような災害を出さないために、堤防の大規模な改修が行われることになりました。
伐採されることになったハゼ並木。でも、ハゼ並木に対する地元の人たちの思いが、町を動かし、当時の建設省を動かします。
植物学、河川工学などの学識経験者を交えて発足した検討会。その結果、一時はすべて伐採され消えようとしていたハゼの木は、改修された新しい堤防沿いに移植されることになったのです。
とはいえ、古い樹木の移植は技術的に難しく、実際に移植できたのは51本の並木のうち、わずか3本だけ。でも、各方面から人が集まり、知恵を出し合い、惜しみなく時間を費やした、かけがえのない3本なのです。
現在の御船街道ハゼ並木のほとんどは、新しく植えられた若い木。その若い木たちに守られるように、3本の古木がおよそ300年の風雪に耐え、今も並んでいます。
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