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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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4/15放送分 「タンデム自転車」

春は、通勤通学、それにサイクリング用に自転車が最も売れる季節です。
いわゆる「ママチャリ」から、マウンテンバイク、電動アシスト車など、さまざまなタイプがありますが、変わり種としては、ハンドルとサドル、ペダルが前後に2組ある二人乗りのタンデム車があります。
遊園地や観光地で見かけることがありますが、東京サイクリング協会がこのタンデム車を使って取り組んでいるのは、視覚障害者の人といっしょにサイクリングを楽しむことです。
場所は東京の神宮外苑にある自転車専用道。タンデム自転車の前に乗るのは協会のインストラクターで、後ろに視覚障害者が乗ります。
目が不自由な立場からすれば、たとえ二人乗りといっても、何も見えない状況でハンドルを持ち、自分の足でペダルを踏んで前に進むのは、恐怖以外の何ものでもありません。
そこでポイントとなるのが、声をかけること。「では右足からペダルを踏みますよ」に始まって、「ゆっくり右に曲がります」「信号が変わりそうなのでちょっとスピードを上げて通り抜けます」など、声をかけながら二人三脚でペダルを踏むのです。
自転車の操作の仕方だけではありません。インストラクターは、周りの景色やすれ違う人々の様子まで、手に取るように後ろのライダーに語り続けます。
この語りかけによって、視覚障害の人は周りの状況や風景を知ることができるのです。初めは不安だった表情もインストラクターとの会話に安心し、やがて、自分のペダルで自転車を走らせる喜びに輝いていきます。

自転車に乗って風を切る爽快感を一人でも多くの人に味わってほしいと願う自転車協会のインストラクター。その語りかけを信頼して、自転車に初めて乗った視覚障害者の人たち。それを叶えたタンデム車は、障害がある人もない人もいっしょに手を取り合って暮らす社会:ノーマライゼーションの実現に向かって走っていく自転車なのかもしれません。