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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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3/4放送分 「阿蘇の野焼き」

春の足音が日ごと高まってくるこの時期。熊本県の阿蘇では「野焼き」が始まります。阿蘇の雄大な草原は、実は、ありのままの自然ではありません。
何百年も昔から野焼きが行われてきたことで、山が森林にならず、現在ある美しい草原が維持されてきたのです。

山まるごとを安全に焼くためには大勢の人手が必要ですが、それを阿蘇の人々は「舫い」(もやい)の精神で守ってきました。
「舫い」とは、船と船をお互いに綱でつなぎ止めること。広い牧草地を皆で共有し、お互いの暮らしを助け合い、野焼きには村人総出で当たってきたのです。
ところが、1960年代になると農業の近代化で牛馬が減り、牧畜農家も減っていくと、人手不足のために野焼きができない所が増えていきました。
このままでは阿蘇の美しい草原が消えてしまう・・・。 
そこで立ち上がったのが、ボランティアです。
野焼き作業の研修を受け、宿泊費も自己負担しなければならないのに、高校生や主婦、お年寄りまでが、毎年何百人も九州中から駆け付けます。
その理由をボランティアの一人はこのように語ります。
「都会に住む私たちも、仕事で疲れて阿蘇に来ると癒される。草原を生き返らせることは人間を生き返らせること。皆の宝をみんなで守っていきたい」
これに対して地元の人はこう語りました。
「阿蘇の仲間たちの舫い精神はだんだん薄れてきたが、その代わり、野焼きを通じて都会の人たちと交流でき、そこから多くのことを私たちも学んだ。これは阿蘇の新しい舫いの姿なのかもしれない」
大勢のボランティアの手伝いによって野焼きされた阿蘇の山々に広がるのは、黒々と焦げた大地。それが一雨ごとに青みが増え、やがてキスミレやハルリンドウなど野の花が芽吹いてきます。

何百人という人たちの舫いの力で、今年も阿蘇に春がやってくるのです。