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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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2/18放送分 「横山大観とある蔵元の交流」

春が待ち遠しいこの季節。今あちこちで賑わっているのが「蔵開き」です。
冬の寒い時期にピークを迎える日本酒の仕込み。今年もおいしい新酒ができたことを、蔵元だけでなく地域の人たちと一緒に祝うのが、蔵開きです。

日本画家の巨匠・横山大観。彼はまた大の日本酒好きとしても知られていました。その大観が飲んでいたのは、広島県の、とある蔵元が造るお酒。
「こんな美味しい酒を造ることは、私の描く絵など足元にも及ばない芸術だ」
その言葉を聞いた蔵元は感動のあまり、大観が飲むお酒を一生分進呈することを申し出たそうです。
ところが、この約束はとんでもないものとなりました。
大観にとってお酒はほとんど主食。一日に2升3合以上も飲むほど酒豪だったのです。「まさか、こんなに飲まれるとは」と呆れながらも、約束は約束。蔵元は大観のために、瓶ではなく四斗樽のお酒を毎週、広島から東京まで送り続けました。商いをする酒造蔵としては大変な損失です。
でも大観先生もさるもの。美味しいお酒のほんのお礼として毎年、自らの絵を蔵元へ送っていました。

お酒と日本画のユニークな行き交いは、昭和33年2月、大観が91歳で亡くなるまで30数年間も続きました。
死ぬ間際まで好きなお酒を飲み、長寿をまっとうした大観。
いっぽう広島の蔵には大観から寄贈された30数点の絵が、いまも大切に保存されています。

酒豪の横山大観が提供してもらった一生分のお酒と、30数点の大観の作品――いったいどちらが価値があったのか? それを比べるのは、野暮なことです。お互いの作り出すものに感動した二人が交わし合ったのは、モノではなく「気持ち」でした。気持ちを天秤にかけることはできませんよね・・・。