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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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12/24放送分 「奇跡の灯」

いまから92年前の冬の出来事です。
1914年12月。第一次世界大戦の真只中、イギリス軍とドイツ軍がにらみ合っていました。いわゆる西部戦線です。どちらも塹壕(ざんごう)を掘って、その中で寒さに耐えながらの撃ち合いが何日も続いていました。疲労困憊した兵士達が安らぐのは、故国で帰りを待つ家族の顔を思い浮かべるくらい。

そんな中、ドイツ軍では、後方からクリスマス用の食品や小さなツリーが届けられました。首脳部がもくろんだのは、これで兵士達を勇気づけ、戦いの士気を高めることでした。ところがドイツ兵達は、小さなツリーを見て別の心を動かされました。彼らにはことさらイギリス兵を嫌う理由はなかったし、それでも殺し合いをするのは、双方の将軍たちを満足させるためでしかないことを思い出したのです。そこで兵士達は、塹壕の縁にたくさんのツリーを飾り立て、真夜中になると銃撃を止め、歌を歌いました。

一方対峙するイギリス兵は、この不思議な静寂に、恐る恐る敵の陣地をのぞいてびっくり。両軍の間にできた緩衝地帯にドイツ兵達が集まって歌を歌っているのです。びくびくしながらもイギリス兵達は、場違いに流れる平和な歌声に誘われるように塹壕から這い出て、敵対するドイツ兵に合流。声を合わせた歌声が続きました。やがて前代未聞のプレゼント交換。それぞれの煙草を交換して火をつけ合い、敵同士が握手を交わし、抱き合い、家族の写真を見せ合ったのです。

さらに翌朝。驚くべきことが起きました。緩衝地帯の真ん中をハーフラインにして、イギリス対ドイツの親善サッカー試合が始まったのです。
これは4年間続いた戦争の中で、ほんの数日だけの平和・・・。たとえわずかな間でも、平和を希求する兵士が見せた「奇跡の灯」は、今もなお私達の心に、確かな温もりをともし続けてくれています。