FM 福岡 FUKUOKA

2025年9月6日放送
「50代の男性が亡き妻へ宛てた手紙」

優子へ

先日、ちょっと嬉しいことがあったので報告します。

君が旅立ってからこの3年間...僕たちの大事な娘、ヒナタは、

徐々に笑顔が少なくなり、僕との会話も避けるようになっていったんだ。

「それはヒナタが思春期だからよ」と、君は一笑に付すかも知れないが、

毎朝、高校まで送っていた車の中でも会話らしい会話はほとんどなく、ヒナタは僕の言葉にただ頷くばかり。

当然、車から降りる時に「ありがとう」の言葉もなく、

僕の「いってらっしゃい」という言葉だけが、むなしく響く日々が続いていた。

そんなヒナタもこの春から大学生になり県外へ。

夏休みをこちらで過ごし、大学へ戻る彼女を駅まで車で送った際、

僕が「気をつけてね」とかけた別れの言葉に、やはり頷くだけのヒナタを見て車を走らせた。

しかし、驚いたことにバックミラーには、車から降りた場所に立ち続けるヒナタの姿が。

そして、僕に笑顔で大きく手を振っていたんだ。

それは思春期に母親との別れという辛い経験をしたヒナタが、

その悲しみを乗り越えながら少しずつ大人へと成長していることを実感した瞬間だった。

涙で霞んだヒナタの姿を思い出しながら...胸を張って君にこう報告します。

僕らの娘は大丈夫。優子のような優しくて素敵な女性に育ってるから安心してね。