2024年12月28日放送
「和食店の店主が年明けに独立する弟子へ宛てた手紙」
独立おめでとう。
最後に老婆心ながら私から贈る言葉をここに書き記すので、心に留め置いてくれ。
君は15年間、私の店で料理の技術を磨いてきたが、
技術は誰でも同じことを長年続けていれば高めることができる。
いま君は、卵焼きを上手に焼き、茶碗蒸しに「す」を入れずに蒸すことができるだろう。
しかし、これから自分の店の味をつくっていく君は、
誰にも習わずに初めて卵を焼き、蒸した人にならないといけない。
では、そのためには何が必要か。
それは君が、これからどう生きていくのかにかかっている。
まず、日々を丁寧に生きなさい。
そうすることで、身近にある美しいモノや素晴らしいモノに気づくことができるだろう。
そして学び続けなさい。それは料理だけでなく、茶道や華道、美術や音楽など何でもいい。
料理には技術だけでなく感性も必要で、何よりも一皿ひと皿に人柄が出ることを忘れないで欲しい。
技術を持った君が感性豊かな魅力的な人間に成長できれば、
きっと多くの人の心を惹きつける店をつくることができるだろう。
2025年...新たな門出を迎える君が幸多きことを願う。
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