FM 福岡 FUKUOKA

2022年1月22日放送
「20代後半の男性が天国の父へ宛てた手紙」

父さんが亡くなってから、早いものでもうすぐ20年だね。

僕が小学2年生の頃だったから、父さんの記憶はあまりないけど、

一つだけ鮮明に覚えているのは、我が家ではよくおでんの鍋を囲んでいたこと。

父さんは僕がおでんの具で一番大好きなきんちゃくを、

ほとんど自分で食べることなく、いつも黙って僕の皿に乗せてくれてたよね。

だから父さんは、きんちゃくが嫌いなんだろうな~と、勝手に思っていました。

でも、僕が高校生になった頃、父さんの遺影の前に必ず母さんが、お餅を供えていることに気づきました。

僕が「どうして?」と聞くと、母さんは「父さんはお餅が大好きで、

特におでんのきんちゃくに目がなかったんだよ」って教えてくれたんです。

その時は、「ふ~ん」ぐらいにしか思わなかったけど...

そんな僕にも息子が生まれ、親が子どもの喜ぶ姿を見るのが、どんなに嬉しいことなのか...

あの時の父さんの気持ちが少し分かった気がします。

いまでは冬におでんを食べる時、父さんのことを思い出すようになりました。

息子はきんちゃくのお揚げが苦手みたいだけど、お餅は父さんに似て大好きです。

一緒に過ごした時間は短かったけど、父さんに愛されていたという記憶は、いつまでも色褪せることはありません。

本当にありがとう。父さんがくれた愛情を、今度は僕が息子に、注いでいこうと思います。