2021年11月6日放送
「芝居の演出家が出演者へ宛てた手紙」
喋らない山の上の男へ
改めてこの度の舞台への出演、本当にありがとうございました。
喋らない山の上の男という役から解放され、いまは元通りの日常を過ごしているかと思います。
今回は一言もセリフがなく、己の肉体のみで感情を表現する「沈黙劇」というスタイルの作品でしたが、
私自身も演劇と向き合う、良い機会になりました。
言葉を一切発しないことによって、削ぎ落された感情の表現が、どれほど表情豊かなものになるのか?
言葉が一切ない表現を見て、観客はどれほどその余白まで感じようとしてくれるのか?
この舞台を通して、普段、何気なく使っている言葉がいかに情報過多で、
いかに私たちは、その言葉に頼り過ぎているのかを思い知らされた気がします。
舞台上で一言も言葉を発さず、それでも肉体表現だけで雄弁に語りかけてくれたあなたの姿を見て、
感動を覚えずにはいられませんでした。
今回、皆と一緒に「沈黙劇」をつくり上げた経験は、演劇人としての自分の大きな財産になりました。
すべては出演者の皆さん、支えてくださった皆さんのおかげだと深く感謝します。
また、次の舞台で再会できる日を楽しみにしています。
取り急ぎお礼まで。
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