FM 福岡 FUKUOKA

2021年5月15日放送
「女子高生がある女性へ宛てた手紙」

おばさんへ

おばさんは私のことを覚えていないと思います。

あれは、私が小学5年生だった5月のある日のことです。

おばさんの家は、友達の家の近所。

家の前には花壇があって、いつもきれいな花が咲いていましたね。

その日、友達の家からの帰り道、おばさんの家の花壇にきれいなバラの花が咲いているのを見つけました。

私の大好きなピンク色の大きな花が数輪、見事に咲いていて、思わず足を止めてしまいました。

顔を近づけると、なんともいえないいい香りがしてきました。

どうしても欲しくなった私は、「1輪くらいいいだろう」と、バラに手を伸ばしました。

その時です。ちょうど買い物から帰って来たおばさんに声を掛けられたのは...。

てっきり叱られると思っていたら、おばさんは「ちょっと待っていて」と言って、

家から花切りバサミと新聞紙を持って来ましたよね。

そして、「バラはトゲがあるから、危ないよ」と言いながら、バラを2輪、私のために切ってくれて、

「お花がほしいときは、ちゃんと言ってね。」

おばさんは、叱るかわりに、私に大切なことを伝えてくれたような気がします。

その後、きちんとお礼も言えないまま、私は父の転勤で引っ越すことになりました。

今も、バラが咲く季節になると、おばさんのことを思い出します。