FM 福岡 FUKUOKA

2021年4月24日放送
「娘が巣立った日に妻へ宛てた夫の手紙」

妻へ

あのお転婆だったカンナが嫁ぎました。

カンナが結婚式を挙げる前に、久しぶりに親子水入らずで食事に行った時、

なぜカンナが同じ方向を向いて座る、カウンターの席を選んだのか?

それは僕たちのもとから旅立つ決意と感謝の言葉を、真正面から喋るのが恥ずかしかったのか?

いや、やっぱり涙を見せたくなかったんだろう。

カンナはどんなに辛いことがあっても、決して涙を僕たちに見せることなく、

いつも笑顔でいようとする強い子どもだったよね。

それは僕が病気で入院した時も、仕事がうまくいかずに落ち込んだ時も、

そして、カンナが受験に失敗した時も、いつも笑顔で家族を元気づけてくれた君の影響かな。

きっとカンナも君がつくってきたような笑顔の絶えない家庭を、新しい家族と築いていくことだろう。

君が亡くなって3年が経つけど、カンナに言わせると、僕もようやく笑顔が増えてきたみたいだ。

僕が一人で暮らすには少し広すぎるけど、君との思い出がたくさんつまったこの家で、

これから始まる新しい生活を、笑顔で楽しんでいこうと思う。

僕が大好きな満面の笑みを湛えた、時が止まったままの君の写真に見守られながら。