2021年4月3日放送
「陶芸家の先生が弟子へ宛てた手紙」
英明くんへ
今日まで長年、君は私のもとでたくさんの技術を学んできましたね。
これからは一人の作家として研鑽を積み、君自身の個性を生み出していってください。
しかし、その個性を形づくる新しいアイディアに困窮するような時もあるでしょう。
その時は、「誰かの為に」という言葉を思い出してください。
例えば茶碗です。新しいデザインが思い浮かばないと思ったら、まずお母さんの為につくってみてください。
お母さんはこんな茶碗が好きだな~と想像すれば、様々な色や形が浮かんでくると思います。
それができたら次は、茶碗をそれぞれの季節ごとに替えてもらえるようにと、想像を広げてみましょう。
そうすると四季折々の風情をもった、いくつもの茶碗が生まれますよね。
自分の範囲内だけで生まれる人間のアイディアには限界があります。
しかし、「誰かの為に」つくれば、人間のアイディアは無限大です。
モノづくりに携わる人間にとってアイディアの源となる大事な言葉であるのと同時に、
一人では決して生きることのできない私たちが暮すこの世界を、より良い世界へと変える力をもつ「誰かの為に」。
この言葉を私から贈ります。
一人の作家として新たな大海原へとオールを漕ぎ出した、君への「はなむけ」として。
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