FM 福岡 FUKUOKA

2021年1月9日のゲストは、国府弘子さんです。



毎回、素敵なゲストをお迎えしてその音世界をアーティスト自らひもといていただくプログラム
『SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)』。
今月は、音解の新作録りおろしインタビューを5週に渡ってお届けしています。

今週お迎えするのは先週に引き続き、ジャズピアニスト国府弘子さん。

先週は、ただいま発売中の『ピアノ・パーティー』のお話を中心に、コロナ禍でも決して諦めない前向きな姿勢と、改めて感じる顔を合わせて作品を作り上げる素晴らしさ。そんなお話を聞かせてくれました。

番組をお送りする私達も実はそう。
久しぶりにスタジオにゲストをお迎えして、音楽について言葉を交わす喜びと楽しさを感じながらお送りできました。

今週もお相手はこはまもとこさんです。



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FM福岡 FM山口
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さて、2週目も国府さんは私達の気持ちを上げてくれるドライビングミュージックを選んでくれました。

「これはね。元気が出る曲ナンバーワンじゃないかと思います」
そう言うと、弾けるようなファンクサウンドがスタジオに溢れてきました。

アース・ウィンド・アンド・ファイヤーの『In The Stone』です。

「アースを好きって方はたくさんいらっしゃると思うんですけど、ドライブの時にちょっとイライラしているときでもこの曲がかかるとウキウキして、よし行くぞーって気分になるんですよ。私の夫もミュージシャンでアレンジャーなんですけど、夫が家でゴロンって転がってサッカーかなんか見ている時に『家の中を掃除してよ』なんて喧嘩になりそうなときでも、この曲をかけるとムクって起き上がっておもむろに掃除機をかけだしたりして(笑)。掃除の音楽でもあるんですね」

やる気スイッチが入る音楽ってことなんですね。家でやってみようかしらと、こはまさん。

「お試しになってください。みなさんもぜひね」

そうやって笑う国府さん。いつもながらチャーミングです。

そんな国府弘子さん、
去年2月に、およそ5年振り24枚目のトリオ編成を軸としたオリジナルアルバム『ピアノ・パーティー』をリリースしました。

「この3人の自分たちでも不思議に思える息の合い方っていうものを自慢したくて作ったようなアルバムなんですが、色々思いが高じてジャンルに拘らずにクラシックの曲を作詞したりね。いい曲、大事な曲っていうのはジャンルを超えて宝箱に入っているようなものですから、それを取り出してみて、必要だなと思うゲストをお招きしました。
歳を重ねてくると何が嬉しいって、長い付き合いのお仲間がたくさんいることを、自分で感謝しながらね」

素敵なアルバム、じっくり聴いてほしいです。

そしてこのアルバムを携えてのライブが決定しています。
新型コロナウィルスの影響でライブができない状況が続いてきた中、国府さんはどんな思いでいらっしゃったんでしょう。

「本当に一度延期になったライブがまたダブル延期になってしまって。ミュージシャン自身もそうですけど、それを影で支えてくださっているスタッフの方たちもスケジュールをパズルのようにその都度組み直してとても大変なことでした。それに今も医療関係者の方々ももちろんですけど、この世界のみんながね(気持ちが)下がっていってしまう。そんな状況に音楽がどれくらい役に立てるんだろうっていう。忸怩たる思いでしたね」

そんな葛藤の中でも、国府さんは今できることを模索し続けてきました。

「リモートとか、自分の部屋から動画で撮って公開したりってことも一所懸命やりました。ただねWi-Fiが混んじゃって固まったりして難しい(笑)。なんか色んなことをね、すったもんだの勉強もしましたし、この時期にこうやって、みんなが色んな思いでひとつになったことをあとから良いことに活かしたいよね

国府さんのいつも明るいトーンの言葉には、決して悪いままではいないという強い決意が感じられて、いつも背中をそっと押されるような力強さが感じられます。

「災い転じて福となす。今年はそういう年になるといいですね」


『国府弘子スペシャルトリオ with Shiho』
2月19日(金)会場:黒崎ひびしんホール(北九州市八幡西区)。

『国府弘子スペシャルトリオ “Piano Party”リリース記念ライブ』
2月20日(土)会場:border(福岡市中央区警固)


「自分で言っちゃっていいんですかねえ『鉄壁のトリオ』
ホントに気の合ったところをですね。皆さんの琴線に触れるようにと今から楽しみです」

お互いに顔を見合わせて演奏を紡ぎあげていく幸せを、改めて実感するステージになるかもしれませんね。

「そうですね。離れていてもできるけど、一緒に居て、一緒に呼吸をしている音楽をお届けしたいですね。クリックでは表せない心臓の鼓動のようにね。ま、時々不整脈になったり(笑)だけど、それが生きている証しみたいなこともあってね。それをみなさんと共有できる日が楽しみ。どうかどうか来てくださいね」

実はレコーディング直後、心臓の病で緊急入院されている国府さん。そんなこともサラリと笑い飛ばして、いつだって新たな出会いに胸を膨らませている国府さんは本当に強くて美しい方です。


さて、ここでさらに深く音世界を紐解いていただくべく『ピアノ・パーティー』から一曲選んでいただきました。

国府さん自ら選んだのは、盟友、露崎春女さんをボーカルにフィーチャーした、アルバムの中でも最も儚げで美しい「Dream Love」です。

露崎春女ちゃん。もう本当に代わるものがないワン・アンド・オンリーなヴォーカリストです。若い頃は日本のホイットニー・ヒューストンとか言われたりして、R&Bが大好きな人ですね。私も彼女のアルバムにもいろいろ参加しておりまして、公私ともに仲良しなんです」

この曲は、有名なクラシックの楽曲を下敷きにしています。

「元の曲はフランツ・リストの『愛の夢』です。名曲中の名曲。世の名手がいっぱいいるのに、わざわざ国府弘子がそのままピアノでお届けするのでは意味がない。国府弘子のバージョンで『愛の夢』をどう料理するのか考えました」

そして、このリストの「愛の夢」は国府さんの音楽人生にとって大切な一曲でもありました。

「この曲はね。国立音大で悩み多き頃にバンドやジャズの魅力に取り憑かれてしまって、やはりクラシックに行くのか、どの道に進んだら良いのかわかんない。ジャズの指導者なんて近くに居ないし、でもクラシックの練習だけを一所懸命する受け身の音楽姿勢じゃなくなっちゃっていて。18歳から22歳くらいですね。
そんな頃に、私にとって第二の母のような三富二葉教授って方がいらっしゃって『本当にいい曲いっぱいあるのよ』って。ジャズのスタンダードもバンドのスタンダードもあるかもしれないけど、このクラシックの名曲たちを弾いて栄養にしてからそっから行け!って言われてね。まずこのリストの『愛の夢』を叩き込まれまして、ああいい曲だなって素直に言わずに心のなかで『チックショウいい曲だな!』って(笑)。先生は去年、90近くで天国に行かれて。ああ、この曲を自分流になにか形にして先生に捧げたいと思った時に、私ね、歌詞を書いたんですよ、英語でね」

今までも歌詞を書かれたりはしていたんですか?

「NHKの番組で即興で、とかはありましたけどレコーディングするのは初めてで。しかも長年二人三脚でやってきたマネージャーが『姉さん。結婚記念日をしみじみお祝いする曲って世の中に意外と無いんですよね』って。『それは書けって言ってるんですかぁ?』って(笑)。でも確かに結婚記念日って曲としてはない。やってみたいと思ったんですね。長い人生を共に過ごしてきた奥様が夫の寝顔を見ながらね、こんなことがあった、あんなこともあったなぁ、だけど人生って短い。

『Life Is Short』。このアルバムのキーワードみたいな言葉でもあるんですけどね、だから大事に一緒に居られる今を生きようねっていう、それを春女ちゃんがねピアノの間から聞こえてくるような素敵な歌声で。これ本当はピアノがもっと奥にいるべきなんですけど、あえて歌とピアノが並列にいるようにプロデュースして。思い出の曲になりましたね」

ピアノも歌も丁寧に丁寧に。すごく人生が愛おしくなるような演奏ですよね。

「すごく嬉しい!春女ちゃんもとても苦労したと思うんですけどね」

色んな思い出と思いが詰まった一曲になりました。歌詞を噛み締めつつ改めて聴きたいですね。

先週、今週とお届けした国府弘子さんの音解。いかがだったでしょうか?
音楽は人生。人生って音楽。国府さんのお話を聞いているととりわけそんな思いが強くなります。

スタジオでの国府弘子さんは、息のあったこはまさんとの音楽談義を楽しんでくれたよう。
そんなこともあってリラックした空気の中で、国府さんの心の底にあるものも、音楽の深いお話も聞かせてくれました。

そんな国府弘子さんから皆さんへのメッセージです。

「また戻ってきて良ければぜひ。皆さんの見えない緊張とか、鬱々とする気持ちがあっても『リボーン』ですよ。復活してもっともっと幸せな日々をご一緒しましょう」

国府さんありがとうございました。

ジャズピアニスト国府弘子オフィシャルウェブサイト (外部リンク)