FM 福岡 FUKUOKA

2021年1月2日のゲストは、国府弘子さんです。



毎回、素敵なゲストをお迎えしてその音世界をアーティスト自ら紐解いていただくプログラム 『SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)』。

新年を迎えて今月は、音解の新作録りおろしインタビューを5週に渡ってお届けします。
どうぞお楽しみください。

さて、最初に登場するのは音解ではすっかりおなじみ、ジャズピアニスト国府弘子さんをスタジオにお迎えしました

サバサバしてパワフル、周囲の人をひきつけてやまない魅力的な国府弘子さん。
その音楽も人柄そのままに、世界中のジャズファンにとどまらず広い層に愛され、支持を受け続けています。

そんな国府さん、マスクでしっかり感染対策を心がけながらも、今回もぱぁっとスタジオが明るくなるような笑顔でやってきてくれました。

お相手は、国府弘子さんとの息もピッタリ。こはまもとこさんです。



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まずは、国府弘子さん自身がセレクトしたドライビングミュージックからスタート。

大好きなアルバムだという『ラバーソウル』から、ビートルズの『Drive My Car』を選んでくれました。

「私のトリオでもよく演奏してて。『ピピッピピッ』てところでハモってね。ミュージシャンもビートルズなんか演奏してると声が出ますよねえ。『Baby you can drive my car』のところは叫んでましたね」

国府さん、ビートルズへの思いはとても深いようです。

「今さらのようにビートルズ。去年の秋は金沢でオーケストラのためのビートルズ曲を書いて、シンフォニックビートルズっていうのをね。『The Long And Winding Road』とか『All You Need Is Love』とかちょっとシンフォニックで演ると生きるような壮大なものとか、『Michelle』とか『Yesterday』とかはちょっとジャズバラードっぽいものにしたりとか。いろんなシチュエーションでビートルズやってるんですよ。

周囲からは『そんなに好きか、ビートルズ!』って言われますけども、自分はビートルズから教わってジャンルレスになったような気がしますね。音楽家としてバンドも好き、弦楽四重奏も好き、民族音楽も、ちょっとアバンギャルドな実験音楽も好きっていうのはね、わたしビートルズに教えられました」

国府さんの音楽の根っこには、実はビートルズが息づいていたというわけですね。。

そんな国府弘子さん、去年2月には前作「ピアノ一丁!」からおよそ5年振り、24枚目のオリジナルアルバム『ピアノ・パーティー』をリリースしました。

新作は結成22年、あうんの呼吸を築き上げてきた、ベース:八尋洋一さん、ドラムス:岩瀬立飛さんとのトリオでの作品です。

トリオ自慢をしたくて創ったアルバムですけど、それに加えてバンドネオンの小松亮太さん、シンガーの露崎春女さん、そしてクラシックのバイオリン奏者で私の音楽には本当に素晴らしい味を持ってきてくれる早稲田桜子さんという、一番いい関係を作ってきたなと思う3人を招きました。」

この「ピアノパーティー」というタイトルですが、これはまず最初にコンセプトがあったのでしょうか。

「これはね。何年も前から私の中に生まれていて。若い頃は『アニバーサリー』とか『タペストリー』とか、なるべく長くて難しい単語を探してたようなね。ちょっとかっこいいと思ってもらいたいなんて(笑)。だけどだんだんシンプルになってきまして。音楽の中でこれだけいろんなメッセージがあるんだから、タイトルはシンプルイズベストと思って、まあ、その究極が5年前のアルバム「ピアノ一丁!」(笑)」

インパクト強すぎのタイトルに、こはまさんも思わず笑顔が弾けます。満足そうな国府さんです。

「その『ピアノ一丁!』は一人だけで語る世界だったんですね。今回は23年目に入る自慢のトリオをライブで『こんなに楽しいんだよ』っていう、鉄壁のあうんの呼吸をアルバムに残したいと思って。そして今回、そのコンセプトは『人生そのもの』を『パーティー』っていう言葉にあえて押し込みました

人生はパーティー。だけど、そこにはさらに深い意味が込められています。

「おめでたいことばかりじゃないし、去年一年なんかは驚くような惨事の中でみんな戦ったわけですけど。それでも人生の中のいろんな場面ってものを全部『パーティー』と見立ててね。別れのパーティーやちょっと悲しいパーティーも含めて、人生の万感の時を音楽でとことん彩ってみました。っていうアルバムですね」

そういえば、アルバムの中でも印象深いバンドネオンの小松亮太さんとのナンバー「アディオス・ノニーノ」も別れがテーマです。

「お父さんとの別れの曲ですね。確かに私も恩師の別れとかいろんな別れがあったんですけども、そこで彼らが残してくれた出会いが、我々残された者同士の出会いを生んで、そこで故人のまた知らなかった素敵なエピソードを知ったりとかね」

そこから、お話しは 2018年に亡くなったジャズミュージシャンで日本のテレビやアニメの黎明期に大きな足跡を残した前田憲男さんとの思い出になりました。

「前田憲男さんというテレビ、ラジオ、歌謡界を支えたビッグなアレンジャーさんが他界されたんです。私、20年くらいコンサートで彼と2台のピアノで全国を旅していたんですね。彼のお見送りをきっかけに彼の息子さんと仲良くなって。その事によっていろんなお話を聞いて、天国に行った方々が身近に感じるという体験でしたね。いろんなパーティーがあるなっていうことで、面白おかしいだけではない、深いパーティー。そんなイメージですね」

つまりは人生讃歌。と、こはまさん。
限られたものだからこそ、美しく、楽しいんだっていうそんな思いが伝わってくるアルバム。そんなこはまさんの感想に国府さんも大喜びです。

他にも、バラエティに富んだ楽曲が揃ったこのアルバム。
早稲田桜子さんとのファニーな『ジャズ婆ちゃん』もいいですよね。可愛らしい!

「よかった!わざとヨボヨボとしちゃって。ちょっと遅くなっちゃった、みたいなところを全部アレンジしてあります。みんなでよろけるんだよ!っていう(笑)楽しいけど意外と難しいんですよ。でもまあ、30年したら本当によろけるって感じになると思います」

そう言ってフフフっとおちゃめに笑う国府さん、とてもチャーミングですね。

さて、そんなアルバムから一曲、国府弘子さんに自ら選んでいただき、さらに深く音世界を紐解いていただきましょう。
国府さんが選んだのは「Reborn」です。

ここで国府さんから、こはまさんに「どんな感じで聞いていただけました?」と逆インタビュー。

「すごく力強いところから始まって。そこからとても華やかな、まさにトリオの醍醐味だなっていうところから始まるんですが、途中とても静かなパートがありますよね。それぞれが自分のことを見つめ直しながら内面と向き合うというか」

そんなこはまさんの答えに「100点!すごくうれしかった」と大拍手の国府さん。
それを受けて、まずは、22年で培ったトリオの呼吸とはなにかについて説明をしてくれました。

「曲の頭の合わせっていうのは、例えば若い人だと、「クリック」とか「ドンカマ」っていって昔のメトロノームみたいな、コッコッコっていう音を全員ヘッドフォンで聞きながら、同じリズムに合わせて演奏するんですね。それをやっておけば、誰かが一人間違えても、後で一人だけやり直して差し替えるのも簡単っていうのが、今のスタンダードなスタイルなんですね。

だけど私たちの音楽って、そういうコッコッコっていう一定のリズムが続かないんですよ。どんどんリズムも変化して8分の7から13拍子になってというように、速さが決まっていない中で息を合わせることは至難の業。つまりとてもクリックでは私たちを束ねられないんですね。

なので、レコーディングではそれぞれの音がかぶらないように、録音ブースは別れているんだけど、とにかく目が見えるセッティングをして、息を合わせて目を合わせて。それを若いミュージシャンが聞くと『このトリオすごいっスね。テンポも自由自在で3人一緒にどうやって合わせるんですか?』って聞いてくれて。そうなんだよねって」

「その上で、こはまさんが言ってくださった真ん中のパートでね。ちょっと体の具合も心の具合も下がって悲しいときもあって、調子でないときもあるよなあって時には、ベースの八尋くんにちょっとベースの音域よりは高い音で『ふぅぅぅ~』って弱音を吐いてもらう(笑)。でいつのまにか復活してというような。そういうふうに作り上げていきました」

まさにあうんの呼吸で、まるでいきもののように紡ぎあげられたその楽曲は、たしかに「リボーン」というタイトルがふさわしい。

そして奇しくも、去年3月のリリースの時点で新型コロナウイルスというのが広がり始め、やがてそこから緊急事態宣言となり、そんな状況の中でなんとか折り合いをつけるべく悪戦苦闘しながらも、やっぱり前に進んでいかなければならない、というこの状況に驚くほど符合していますね。

「本当にみんな、今リボーンしようよっていう気持ちですね」

国府さんのそんなお話を聞きつつ、改めて「リボーン」を聞くとさらにその思いがこみ上げてきます。とこはまさん。

「本人はもちろんそうですし、こうやってね、ちゃんとお互いお顔を見て、目を見てお話できるというのがね(嬉しい)。これでハグできたら最高なんだけど」

本当に。そんな心のままにハグできる日が早く来たらいいですね。



そんな国府さんのステージ。ぜひ間近で観たいところですが、
嬉しいことに、新型コロナウイルスの影響で延期を余儀なくされていた福岡でのライブが決定しています

「これも本当に嬉しいことなんです。周りのスタッフの苦労も目の当たりにしておりましたので、万感の気持ちで心を込めていい音楽会にしたいと思っています」

まずはShihoをボーカルに迎えてのスペシャルなステージ。

        2月19日(金)『国府弘子スペシャルトリオ with Shiho』が、北九州市八幡西区の『黒崎ひびしんホール』。

そして、その翌日、

        2月20日(土)『国府弘子スペシャルトリオ “Piano Party”リリース記念ライブ』が、福岡市中央区警固の『border』で開催されます。

「自慢のトリオが本当に自慢のトリオなのか、ぜひ確認していただきたいと思います」
そう胸を張る国府弘子さんのステージ。必見です。

国府弘子さんのお話はまだまだ続きます。
次回もスタジオにお迎えして、さらにその音世界を紐解いていただきましょう。




ジャズピアニスト国府弘子オフィシャルウェブサイト (外部リンク)


次週、1月9日も引き続き国府弘子さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。