番組紹介

放送時間: (土) 11:30-11:55
出演者:

こはまもとこ
香月千鶴(FM福岡)
ちん。(ラジゴン水担当)

提供:サウンドピュアディオ

毎週多彩なゲスト(ミュージシャン/映画監督/俳優/文化人 etc.)を迎えて、音楽トークを中心に展開する25分番組。「音」を「楽しむ」と書く「音楽」をゲストと一緒に紐解くことで、より深く、広く、音を楽しむことができるハズ。そんな音楽にまつわる私たちの知的好奇心を刺激する番組です。
メールのあて先は、 oto@fmfukuoka.jp まで。

SOUND PUREDIO presents 音解 これからの放送予定

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◆今後のラインナップ        

1月26日 SINSKE
2月  2日 瀬尾一三
2月  9日 日食なつこ(予定)
                                                                      
※以降も続々待機中!どうぞご期待下さい!。                                        

放送予定は諸般の事情により予告なく変更する場合もございます。予めご了承ください。
☆この後も続々注目のアーティストが登場。これからもどうぞご期待くださいね!

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。お相手はこはまもとこです。

今回のゲストは一昨年昨年と過去4回登場していただいたすっかりおなじみのマリンバ奏者のSINSKEさん。

いつも軽やかでにこやかなSINSKEさん、愛用のマレット(マリンバ用のバチ)を片手に登場です。 #SINSKE

今日もまずはドライビングミュージックから。

SINSKEさんがチョイスしたのは、クールなクラブジャズ St. Germainの『so flute』です。

ちょっと不思議なパーカッシブなフルートの音色がカッコいいナンバー。
ですが、SINSKEさんの音楽に小さくはない影響を与えたそうです。


この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


「ヨーロッパのジャズユニットなんですが、生楽器とエレクトリックを融合させているクラブミュージックといわれるジャンルなんですけど、この曲はフルートに言葉を吹き込みながら吹いているのでああいう響きになるんですね。」

尺八や世界最古の楽器といわれるのがパンフルートのようにも聞こえる不思議な音色です。

「あのフルートの音って息をたくさん吹き込むことによってああいう効果を作っているんですね。
僕が留学してる時に、よくこの曲でヨーロッパの高速道路を走っていたんですけど、その頃はまだマリンバをどういう風に皆に伝えていくことと、新しい音楽とマリンバの融合ってことを考えていたので、このフルートの斬新な演奏方法に出会って、『この音なんだろうな』って思わせてくれる上に、楽曲の中にさらに踊れるようなベースが入ってきて、こんな音楽をいつか作れるようにならないかなって思ったんですね。 そんなところで僕が最初にマリンバとポップスの融合という事に挑戦するきっかけになった作品でもあるんです」

現在のSINSKEさんの新しい音楽へのチャレンジを続けるキッカケになった曲だったんですね。

さて、5オクターブのマリンバを自在に操り、唯一無二の世界観でメロディを奏でるマリンバ奏者、
SINSKEさん、昨年8月にデビュー15周年を迎えました。

そして去年の12月にデビュー15周年記念アルバム「Prays Ave Maria」をリリースしました。

そのアルバムは全曲が「Ave Maria」。

世界中に歴史も国も超えて存在する「Ave Maria」の作品から厳選してマリンバで演奏した意欲的な作品です。

「この15年間模索してきたのはマリンバの魅力っていうのを一番表現できる曲は何かっていうところだったんですね。それがアヴェ・マリアだったということなんです」


そもそも「アヴェ・マリア」という曲がたくさんあるのはご存知でしたか?

「アヴェ・マリア」とはラテン語でお祈りの言葉に曲をつけたもの。故に古今東西の様々な手になるアヴェ・マリアが世界中に存在しているのですね。

合唱をしていたこはまさんは、たくさんのアヴェ・マリアを歌って来たそうですが、それにしてもこんなにいろんな種類があったとは驚きだったそう。

それにして、そのアヴェ・マリアをなぜマリンバで表現しようと思ったのでしょうか?

マリンバていうのは基本のポジションっていうのがあるんですけども、実はそれが賛美歌の並び、それからアヴェ・マリアの4声の開離(1オクターブを超えたハーモニーの配置)にぴったりなんですよね。マリンバって一番基本ポジションが賛美歌のポジションなんですね。4声帯の4本の和声というのはまさに合唱だったり アヴェマリアの配置と同じ配置なので、そこから奏でる4本のバランスっていうのは、マリンバそのものにぴったりなんですね。 」

偶然か必然か、もとよりマリンバには教会音楽のようなものともともと奇妙な符合があったとは。もう少し深くその配置というのを解説してくれました。

「ちょっと難しい話になってしまうんですが、『開離』という形で「ドソミド」5度、5度で両手に収まって、そこからメロディが隣の音に和声とともに移っていくという鳴ってるマリンバのソロの曲なんてかなりそういう音の配置になっている作品が多いんですね。それもなんか運命のような気がしますね」

そんなマリンバとアヴェ・マリアの運命的な符合、相性の良さと共に実はSINSKEさんのルーツにもそんな音楽があったことに気づいたそうです。

「もともと僕の祖父母がクリスチャンで毎週教会に行って働いたりしていたので、おばあちゃん子だった僕もそれについて行っていたんですね。だから自宅でご飯食べる時もいつもお祈りをして、聖書を読んで、たまには歌うこともあった。ミッション系の幼稚園に通って、後にボーイスカウトにも入って毎週教会に通ってましたんで、それこそいっぱいあるアヴェ・マリアを聞いて、もちろんその時は多分何のアヴェ・マリアかなんて意識してないと思うんですけど、聖歌と共にアヴェ・マリアに触れる機会もあったんですね。今まで自分にとっては、母に教わったピアノが一番の自分のルーツだと思っていたんですが、今回15周年を迎えて『ああ、教会音楽が自分のルーツだったんだな』っていうことに気づいたんです。それがすごく大きな気づきだったと言うか、スッと腑に落ちたと言うか。なんかちょっと引っかかってきたことでもあったんですけど、それがしっかり自分の体の中に染み込んできたという感じですね」

ありとあらゆる意味でSINSKEさんが「アヴェ・マリア」に取り組むのは運命のようなものだったんですね。

アルバムでは同じ「アヴェ・マリア」をモチーフに世界中にこれだけ多彩な表現があることに驚かされます。

俗に「3大アヴェ・マリア」と呼ばれる有名なシューベルト、グノー、カッチーニのアヴェ・マリア。可愛らしいアヴェ・マリアは実はモーツァルトによるもの。シャルル・アズナブールにタンゴの革命児ピアソラの作品も。

「たくさんの作品があって、泣く泣く落としたものもありましたね。その中でもまずは『マリンバっていい音』ということが大事だったんですよね。
次に『全部アヴェ・マリア』っていう驚き。 いろんな要素があっていいと思っていて『このアヴェ・マリア全然知らないけど綺麗』っていう驚きでもいいし、そういうどんな人にアルバムを渡しても、耳を塞ぐ前に何らかの感想がちゃんと返ってくるような作品、というのは一番気をつけてました。

だから無名な曲でも素敵なものは入れましたしあたりにはすごく苦心しながらバランスと言うか、アヴェ・マリアのファンのマニアな方にも届けたいし、何も知らないけどかけてみたらきれいな曲だったっていうところもすごく大事にしたいっていうところが一番苦心した部分ですよね」

そんな苦心の末にできあがったアルバムは、とても美しくマリンバの澄んだ音色に身を委ねるように楽しめる一枚となりました。

「やっぱりどうしてもゆったりとした少し暗いものが多いので、ちょっと悲しいアルバムになりそうだなというところを、どうやって綺麗だなって方向に持っていくかっていうところを含めてかなり考えましたね。曲の並びも順番もそういう苦心して考えましたので、まずはアルバムを手にとってCDで最初から聞いてほしいですね」

アルバムには盟友とも言える尺八の藤原道山さん、ピアノの広田圭美さん、ヴォーカルに谷本綾香さん、パーカッションにnotchさん、そしてマリンバ奏者服部恵さんが参加しています。

そして、3月に福岡で行われるコンサートでは広田圭美さん(ピアノ)、服部恵さん(マリンバ)そして藤原道山さんをスペシャルゲストに迎えての編成で行われる予定です。

SINSKEデビュー15周年記念マリンバコンサート「Prays AveMaria」

2019年 3月 14日(木)福岡シンフォニーホール
開場 18:30/開演 19:00


「まずはアルバムで聞いていただいて、そしてこのコンサートではあのアルバムで鳴ってる音があのシンフォニーホールでどんな響きになって上から降りてくるんだろうねって、それ一番気にしてるのは僕なんですけど(笑)。 客席で聞きたい!っていう思いはすごくありますよねも無理なんですけどね(笑)」

服部さんと2つのマリンバの共演も楽しみですね。

「今回はマリンバデュオって見た目も含めてサウンドも2倍あるわけですから、マリンバの魅力が2倍に広がっていくようなイメージを持っていただけると壮大なスケールが想像していただけるんじゃないでしょうか」

もうひとつ注目は、今回はA席については学生さんは無料なんですね(S席は1,500円)。ここにもSINSKEさんの若い人たちへの思いが込められていました。

「もともとマリンバを始めたきっかけというのは、最高の音を聞いて感動したからなんですね。それがなかったらきっとマリンバを始めていなかったと思うんです。だから少しでもこの機会に、この最高のコンサートホールで、最高になるであろうマリンバの音を聞いていただきたいということです。学生の方にはもうふるっていらしていただきたいと思ってますので、是非是非よろしくお願いいたします。」

本当に隅々までSINSKEさんの思いがあふれる今回のコンサートもぜひ生でみたいです。

そんなところで今回は時間切れ。

まだまだ続くSINSKEさんの音解。次回もお迎えしてさらにSINSKEさんの音世界を紐解いていただきましょう。

どうぞお楽しみに。

  

SINSKE OFFICIAL WEB SITE (外部リンク)

次回1月 26日は引き続きSINSKEさんをお迎えしてお送りします。どうぞお楽しみに。


毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。お相手はこはまもとこです。

今回のゲストは前回に引き続き三味線プレイヤー、上妻宏光さん。 #上妻宏光

昨年11月に発売されたアルバム「NuTRAD」はEDMと三味線の融合にチャレンジした意欲作。
先週はその制作意図と、三味線とEDMに取り組む難しさと楽しさを、生演奏も含めてお話しいただきました。

今週はさらにその音世界を紐解いていきたいと思います。


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まずはドライビングミュージックとしてチョイスしてくれたのは、「NuTRAD」から「BEAMS -NuTRAD-」。

この曲はデビュー作「AGATSUMA」の翌年に発表され、やはりエレクトリックやロックとの融合を図って鮮烈なイメージを与えた2nd「BEAMS~AGATSUMAII」のリードナンバーをリアレンジしたものです

「2002年ですから6年前ですね。1枚目の「AGATSUMA」がオリジナル曲5曲と半分が古典を入れたんですね。その1枚目のツアーをやってる時にディレクターから『上妻くん次は全部オリジナルでやろうよ』って言われたんですけど、1枚目でようやく絞り出した5曲だったので。しかもツアー中に『次は』っていやいや!インプットもしてないのにもう作るですか?って状況でなんとか作り出した1曲めがこの『BEAMS』なんです(笑)で、デキてみたら『結構キャッチーでいいじゃん』てことになってアルバムタイトルも『BEAMS』になったんですね。それを今回アレンジさせてもらって、今の感じのダンスチューンに仕上げました」

2つの異文化の融合という、今回の「NuTRAD」にも通じるテーマに挑んだ若き上妻宏光さんが、最新のクラブサウンドのアプローチで蘇って来たようなそんな感慨も浮かぶ楽曲でもありますね。

「自分で運転しながら聞いててもちょっと高揚感と、テンポも速いわけじゃないですけどこれからのこのリズムにこの三味線の譜割りがすごく良かったので、これは体が動くというかワクワクする感じになりますね」

このナンバーはじめ、EDM、Future BassやTropical House、ネオソウルといった先端音楽と三味線の伝統音楽が違和感なく一枚に収まった「NuTRAD」は、新しい音楽と出会う高揚感や新鮮な驚きにあふれています。

ワクワクってだんだん少なくなってくる感じがするんですよね。で、新しいものに出会うということも、大人になってくればくるほど、少なくなってくると思うんですよ。10代の頃とかって、1年長く感じるじゃないですか。でもこれが20代、30代、40歳になってくると、パッとみて『ああ、知ってる知ってる』ってなるし、朝起きるともう夕方!早い!早いじゃないですか。『あけまして』なんていってますけど、もう少ししたら『もう12月か』ってなりますからね(笑)。
僕がカザフスタンであったときのワクワクっていうか、中央アジアの音楽とかまだ世界中に知らない、出会わない音楽があったんだなと。そういうワクワクドキドキってのをアスタナ万博で感じて」

前回、お話しいただいたアルバム制作のきっかけとなったアスタナ国際博覧会での中央アジアの音楽との出会い、そして改めて感じた「踊る」ということへの思い。

そして「今」に切り込むために上妻さんは、最先端の若い才能を必要としました。

「『踊る』ということに関しては三味線っていうのは古典から伴奏としてあるんですね。ただ三味線(が主役)の音楽に踊りをつけるってことはないので、じゃあ逆の発想でEDMのトラックに三味線を乗せることで、三味線を知らないリスナーの皆さんにもこういうこともできるんだ、ということを知ってもらいたいなと。それなら同じ世代のクリエイターというよりは若い、20代とかのクリエイターを紹介してもらって、サンプルを聞いて『あ、彼の作る音楽はいいな』って思った人を何人かピックアップしてオファーをかけたんですね」

そうやって作り上げた今回のアルバム。
より具体的にその課程を探るために、一曲だけをピックアップして上妻さん自身に紐解いていただきました。

選んでくれた楽曲はアルバムのオープニングを飾る今回のEDMと三味線の融合を象徴するようなアグレッシブなナンバー「AKATSUKI」です。

アルバムがスタートしていきなり浮遊感溢れる電子音から始まり、何が始まったのかなと思いますね。そう言うと、上妻さん思わず笑顔です。

「意外性ですよね。ハッとするでしょうし そこから別になんだ次何だろうというワクワク感ですよね」

その制作の過程も今までの上妻さんのアルバム作りとはかなり異なっていたようです。

「EDM のトラックなんてもちろん作ったことないですから、僕主導というよりはまずトラックのベースを作ってもらおうかなと。

まずなんとなくイメージをスケッチで出してデモトラックを作ってもらったんですね。

その上で、自分はいつものような作り方ではメロディアスで、ちょっと合わないかも知れないと思って、三味線でリフのようなものを作って、トラックメイカーの子に渡したんです。なんとなく半分くらい作ってから実際にスタジオに入って、そこで『三味線でこういうこともできるぞ』とか向こうからも『こんなことはできないか』みたいなやりとりを重ねて、実際に録音してスタジオのスピーカーで確認して『うん、ここはもうちょっとこうしてもいいかもしんないな』ってことでもう一回スタジオに入って録音して、そうやって一曲デモを作り上げたんですめ。その上で、ようやく仕上がった音入れてからスタジオで、全体をバーっと頭から聞いて、OKこれでいいな、と思ってからちゃんと本チャンのスタジオで本番の録音をしたんですね」

つまり一回全部やり取りしつつ作ってみて、これで良さそうだって思ってから、もう1回録りなおしたわけですね。今までのやりかたとは全く違う工程。むしろ真逆の工程だったようです。

「それまでの僕の作品っていうのは、テーマがあったり 即興で演奏スタイルが多かったり、全部ミュージシャンであったり人が相手だったわけですね。
だから一度パーっとリハーサルやって『OK OK わかった』で当日スタジオに入って『じゃあ行くよ!せーの!』で、バーっと行くわけです。だから最近の僕の作品は一曲の中で最初と最後でテンポが違ったりしてるんですね。興奮してきて速くなってきたりしてるんですね(笑)。普通はドンカマっていってメトロノームみたいなものを使って、ダビングであとから直すこともできるんですね。 でも僕はスタジオに入る時、ミュージシャンに『絶対ダビングはしないから。一発で行くからね』と言います。緊張感がないとちょっと演奏が違うんですよ。だからもうできるだけ直さないと、そんな状態でやってるので、とても人間臭いところがあるんですね」

一方、デジタルとの取り組みは勝手が違ったようです。それでも上妻さんなりの工夫が随所に凝らされています。

「でも、今回はデジタルで。ちゃんとこう刻みがあるんですよね。テンポが合うということは必要なんですけど、それだけでは自分としてはつまんないな、と。そこであえてリズムからちょっとずらす、レイドバックっていう遅くからテンポやメロディを出したりして行き来をしようかなと。リズムがジャストのところ、突っ込んだところ、後ろにいくという3つのリズムのとり方でゆらぎというか、カクカクカクっていうよりは流れるような感じにしましたね」

つまりはデジタルでのグルーヴ感。最近のクラブサウンドやHip-Hopでも近年重視されるポイントを上妻さんも最初から自覚的だったことがよくわかります。さらに三味線自身の音色にもEDMと融合するための工夫が凝らされています。

「三味線の音ってちょっと強いんですよね」

確かに先週の生演奏を目の前で体験すると、三味線の音の力強さと迫力に圧倒されました。

「生で聞くとね。それで三味線の音色には、今回はエフェクトと言うか変化をつけているんですね。ディストーション、コーラス、ディレイそういったエフェクトを使うことでEDMになじむように工夫しているんですね」

そういった上妻さんの姿勢や三味線の音は、20代の若いクリエイターやDJも刺激を受けたでしょうね。

「やっぱり刺激しあわないとつまらないですよ。馴れ合いやなあなあになると、確かに阿吽というか良い呼吸はできるんでしょうけど、どこか緊張感というかそういうものが必要ですし。ステージに上って刺激し合えるからこそ、化学変化が生まれてくるんじゃないかと思ってますね」

今回、アルバムを携えて東名阪のみですが、ライブツアーを開催します。
『AKATSUKI』で組んだ、世界で活躍するサウンドクリエイターYuyoyuppe(ゆよゆっぺ)さんとのステージでのコラボレーションも楽しみです。

上妻宏光LIVE TOUR "NuTRAD"

1月16日(水) 愛知公演】名古屋ブルーノート
1月17日(木) 【大阪公演】ビルボードライブ大阪
1月24日(木) 【東京公演】ビルボードライブ東京



「リアルタイムに彼も音を作ることもできるので、今までにあまりない形態と言うか組み合わせですね。 そこで彼が僕の演奏に触発されて、あ、オモシロイと思った瞬間に彼の引き出しからまた違う音が出てくるという、そんなデジタルとアナログの融合が、今回3回やりますけど、毎回違うなにかしらアプローチになると思うので、それは僕にとってもまた新しい刺激をもらえるというふうに思いますね」

そんなあたりで、スタジオには改めて『AKATSUKI』が流れます。

ダブステップ的な緩急も鮮やかなビートと渾然一体となって上妻さんの三味線が近づいてくるようなサウンドに改めて驚きと、その一体感に不思議を感じます。そこには今までお話しいただいたリズムとの絡み方の工夫、エフェクターを積極的に活用した音色の工夫、さらに三味線ならではの奏法にも秘密はあるようです。

「すこし重さというかテンポの中でどう遊べるかという、リズムの置き場というかポイントがまたひとつ重要で。 三味線というのは例えばバイオリンなんかとは違うんですね。バイオリンは弦を弾くとスーッと音が出るんですが、三味線は打点が違う。ダンっと打ったらそこに点がいっちゃう打楽器に近いところがあるんですね。
だから、音を出した瞬間のリズムと、音を出した瞬間に左手で弦をスライドさせて、ズンと最初の音が出た瞬間に左をスライドさせてズゥゥーンと音を伸ばしながら長くタメてるんだけど、リズムに帳尻を合わせる。そこが僕の演奏の特徴という気がしますね」

ちょっと難しいですが、一音を出す瞬間に技術で変化と打楽器的というよりは弦楽器的なコントロールをしているということでしょうか。なんだかすごい。

そんなお話しをしながら、上妻さん、実に楽しそうです。
それは自身の音楽への絶対的な確信と、その一音一音に込められた思いを直接伺うことができて、私たちにとっても至福の時間となりました。

「いやあもう今年も楽しいですね。
クラシックもそうだと思うんですけども、バッハの時代だってモーツァルトだって、やっぱり当時は先端の音楽であるし、モーツァルトもその時代に何々が流行っていたらそれを取り入れているわけですね。
だから僕がやってることだって、別にものすごく新しいことではなくて、昔からあることなんですね。ただ、三味線の中ではまだまだそういった人が少ないということなんですね。
だからこれを大きくしてムーブメントとなれば、また三味線人口も大きくなるでしょうしリスナーも増えてくれるのかな。と」

そうお話する上妻さんの顔はキラキラと輝くようです。
そしてクラシックのお話しをしてくれたのは、これから取り組みたいこんな意図もあったようです。

「僕ら三味線はもともと口伝で即興でする音楽ですから、再現できるというのはクラシックってすごい音楽だなと思うんですね。だからこれからはスコア、譜面で残していくという作業もこれからどんどんやっていきたいなと思いますね」

やりたいことはどんどん拡大していくばかり。
そしてそれはすべて三味線がポピュラーな楽器として、広く世間に広まっていくこと。

愛用の三味線を少しグッと前に出しながら穏やかに笑顔を見せる上妻さんの挑戦はまだまだ続くようです。

上妻宏光 三味線プレイヤー Hiromitsu Agatsuma Official Website (外部リンク)

  

次回1月 19日はSINSKEさんをお迎えしてお送りします。どうぞお楽しみに。

1月5日のゲストは、上妻宏光さんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年最初にお迎えするゲストは昨年10月以来の登場となる、上妻宏光さん。 #上妻宏光

ジャンルや国を越え世界各国で三味線の可能性を追求し続ける上妻宏光さん。もうおなじみですよね。傍らに愛用の三味線を携えて「一発目にね、ありがたいですほんとに」とにこやかに登場です。

そして上妻さん自らピックアップしたドライビングミュージックは、ジャミロクワイの『Virtual Insanity』。

ちょっと懐かしくてクールなクラブサウンドがスタジオに溢れてにっこり。
前回も今回も上妻さんの選曲はいつも意外。ですが今日は実はピッタリ。なのかもしれませんね。


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「もうー、10代の頃だったんですかね。ビデオクリップが物凄い衝撃的で。あの体の動かし方とかライブも観に行ったりもたんですけど、帽子まで買わなかったですけども真似してね。あの独特のサウンドを作り上げるってのは、そのう自分も三味線やってて『あ、このサウンド聞いたら上妻だ』そういうものを音楽家としては作り上げたいので、そういう意味でもジャミロクワイってのは独特な音で彗星のごとくバーっと現れてすごく衝撃がありましたね」

意外にも上妻さんの原点の一部にはジャミロクワイもあったとは。

「コレ聞いているとドライブもすごくゆったりというかスムーズにいける感じがするんです。開けていくというか、道がガーッとひらけていく目的地に向かってのワクワク感というかドキドキ感というものがすごくこの曲からは感じられて ドライブに合うんじゃないかなと」

そういう上妻さんはちょっと少年時代に戻ったような表情でした。


伝統と革新をテーマに挑戦を続けている三味線プレイヤー上妻宏光さん。
そんな上妻さんではありますが、昨年11月に発売されたアルバム「NuTRAD」は衝撃を持って迎えられました。今回のテーマはなんと「三味線とEDMの融合」。

でも、ジャミロクワイのお話しのあとに聞くとなんだか少し納得。

「NuTRAD」のタイトルがいいですね。

「『NEW』じゃなくて『Nu』。
EDMとかでも『NuEDM』とかJAZZの『Nu JAZZ』とかってスタイルがあるんですけど、昔からあるメロディーにこう新しいトラックというか武器をもって音をまた生まれ変わらせるというような。
僕の場合また『NuTRAD』という新しい民謡というか、何か違うものが提示できたらな、というような意味合いでつけました。今までにもちょっとない世界だったのでこういうサウンドがまずパッと来るとは想像しないと思いますね」

ピコピコ音からはじまりますね。
電子音と三味線が融合するんだという驚き。

「僕も新しいトライだったんで。ただ音楽ですから。これはもう相手側もクリエイターは僕の方に寄って、僕もそちらに寄れば絶対公約数というか遊べるね、スペースはできるだろうって信じてるので。そんなに大きい不安もなかったですね」

そもそもどういうキッカケで今回のコンセプトができたのでしょうか。
すると思いもかけないところから話が始まりました。

「きっかけは、カザフスタンで開催されているアスタナ国際博覧会の日本館のオープニングイベントに招かれまして。日本のアーティストを連れてってプロデュース公演をしたんですね。そこで、せっかくなんで、中央アジアの音楽とミュージシャンの方と共演をしました。三味線のルーツをたどると中東からシルクロードを流れてきた影響もあると思うんですね。中央アジアなんてなかなか行く機会も触れる機会もなかったんで、ものすごく新鮮でしたね。ただやっぱりアジアということなのか、ものすごく身近に感じるような感覚もあったんですね」

シルクロードを挟んでアジアの民族楽器同士が共振するライブで刺激を受けた上妻さん。そこで上妻さんは予想以上の手応えを感じました。

「民族楽器同士でしかも新しい音楽だったんですがオーディエンスの方が、ワーって盛り上がってくれたんですね。その時、伝統楽器でみんなが騒ぐとか踊るとかいいなあって思って。コレちょっといいなと思って『踊る』って今、何だろうなって考えた時に EDM=エレクトリック・ダンス・ミュージックが世界で最も熱いシーンなんですね。もちろん三味線はその世界に入ってはいないので、これはフロンティア精神としてはちょっといくしかないなって思ったんですね(笑)。それで今回は『踊らせたい』ってテーマにこのアルバムを色々作曲したり選曲しました」

伝統楽器で踊らせるのもアリ、と思い当たった上妻さん。
とてもおもしろい発想ですよね。

「そうですね。どうしても三味線と言うと静かに聞いてると言うかね、騒がず聞いてるようなイメージもあると思うんですが、僕、真逆が結構好きなので(笑)だから立たせようと、踊らせようと、実際ダンスでなくとも心が踊ってくれてもいいなと思ってるんですね」


EDMにネオソウル、フューチャーベース...最新の音楽とのコラボレーションを成功させるために、バリバリの第一線のサウンドクリエイターが招聘されました。若い世代との邂逅は音楽同様とても刺激的だったようです。

「20代のクリエイターの人たちというのは三味線をそんなに知らないというか聞いたこともない。だから最初にデモの音源作る時に三味線こうやって弾いたら『ああっ、そういうこともできるんですか。じゃあEDMならこういうリフやったらかっこいいかもしんないですけど?』って言われて『ああ、できるできる!』『あ、すごいっすねえ!じゃあこれは』なんて具合で、自分にもないフレーズができたりして『あ、これならハマるかもしんないすね』 みたいなやり取りを一つ一つ積み重ねながら作っていったんですね」

面白いですね。確かに普段三味線に触れる機会がないと、三味線がどんなことができて、どんな可能性を秘めてるかさえわからない。そこでの若いクリエイターの発見と斬新な視点が上妻さんにも大きな刺激を与えたわけですね。

「ジャズのマイルス・デイヴィスもそうですね。『帝王』呼ばれる彼の音とかスタイルも、大きく変わらなくても時代を取り入れながらビバップから音楽の表現の幅を広げていきました。三味線も同じように大きく変えなくても、ちょっとしたこのフレーズや時代の流れをちょっと組み込むことによって、20代とか10代の人達にも届くサウンドってものが作れるんじゃないかなと思うんですよね。

そうすることによって一つの伝承とか伝統という。ひとつの音楽をずっと深く追求してやっていくことも伝統ですが、また違った意味で僕は『タテ線』じゃなくて『ヨコ線』の十字に交わるポイントでいきながら三味線ってものを広めていきたいと思っているんですよね。

そのための一つのきっかけとしてEDMを使わせてもらって、このアルバムを通して、例えばEDMしか聞かないって層にも『うぉー、日本にもカッコいい楽器があるじゃないか』って存在を知ってもらえたら良いなと思いますね。ちょっと前だとインドのシタールがヒップホップで頻繁に使われた時期もありましたしね。いずれ三味線でもJ-POPでもクラブミュージックでも『あ、でもこれ三味線あっても良いね』と気軽に言われるくらいの認知度と言うか使われ方がこれからどんどんされるように、表現者としては提示していきたいなと思いますね」

今回のサウンドの劇的な変化に驚きつつも、その根底にあるのはいつもの伝統と革新を推し進めることで『伝承』への熱い想いに少しもゆるぎはないんですね。


ここでずっと傍らにあった三味線でほんの少しその音色を聞かせてくれました。

アルバムの中からサウンドの冒険が終わったあとに再びオーセンティックな三味線の音色の真髄を聴かせてくれたラストナンバー『JONKARA (旧節)』の触りを。

ここはぜひタイムフリーでお聞きください。
実際に目の前で聞くとその研ぎ澄まされて多彩な音色と空気感に鳥肌が立つようです。こんな音がたったの三本の弦によって、しかも動きが見えないほどの手の動きで表現されることに心底驚かされます。

「糸をバチで打つ、救う、弾くの組み合わせなんですよ。確かに先人たちはよくこんな技術を作ったと思いますよね」

と笑顔の上妻さん。三味線の音色について西洋と東洋の表現の違いで説明してくれます。

東洋と西洋の違いってのは単音かハーモニーかってところもあると思うんですね。
絵に関しても日本には水墨画があって、白と黒だけの世界でその濃淡だけで豊かな表現する、そこに(西洋の)色彩とかいろんな部分で海外とは違う絵の表面の仕方ってものもありますね。音楽も(西洋は)やっぱり石で作られた家の中で、どう響いてどういう言葉を喋って、そんな世界から生まれてくるメロディーてものがあると思うんですね。アジアは割と単音で、歌と同じようにメロディーを奏でる。海外の方は歌とはまたちょっと違ってハーモニー。ハモって音の厚みを作る。
和太鼓なんかもそうなんですけど、どどどーんといきなり叩くんじゃなくて叩く前から、手を大きく動かす動作があっての、ハッ、ドーンっってやるわけですよ。この一発が濃いというか、緊張感があってね。三味線もなんか弦がいっぱいあるわけじゃないので、一音のその情報量っていうか、空気を変えると言うかギターなんかの深みとはまた違う、東洋の楽器ならではの独特の世界観とかあるのかなと思いますね」

アルバムは最前線のEDMと伝統の音楽を行き来しながらその多彩な音世界を綴っていきます。

こはまさんはアルバムの中の朝倉さやさんをフィーチャリングした「MOGAMIGAWA (最上川舟唄)」に注目しました。「こーれーはホントに良かったですね」

「山形の最上川舟歌というのがあるんですね。船頭さんが 『♪ヨーエサノマッガーショ エー』って歌いながら舟を漕いでくれるわけ。 やはり民謡っていうのは、その土地のエネルギーやパワーが入っている音楽かなと思うんですね。今回、以前共演したことのある朝倉さやちゃんという歌い手さんが山形の民謡を勉強していて、今はJ-POPで活動されてる方なんですが、彼女のハイトーンがまたパワーがあって、そのハイトーンで歌ってもらうんだったらこの曲かなというのがあったので『最上川』というものをちょっとアレンジして、収録しました」

そんなアルバムを携えて今回は東名阪のみですが、ライブツアーを開催します。


上妻宏光LIVE TOUR "NuTRAD"

1月16日(水) 愛知公演】名古屋ブルーノート
1月17日(木) 【大阪公演】ビルボードライブ大阪
1月24日(木) 【東京公演】ビルボードライブ東京


「今回は『AKATSUKI』のトラックを作ってくれたYuyoyuppe(ゆよゆっぺ) くんという、BABYMETALとかもやってるんですが、加わってもらって。CD の音源曲をまあ再現するということもあるんですけど、DJと三味線のリアルタイムにセッションというのもやりたいと思いますし、朝倉さやちゃんも参加して、古典の民謡も何曲か歌ってほしいなと思ってます。

さらに、いつもお願いしてるピアノの伊賀拓郎君とかパーカッションのはたけやま裕ちゃんが参加してくださいます。デジタルとアナログの世界でも行き来しながら、あるいは古典の民謡ってものと海外の音楽ってものがあるので、日本と世界を行き来しながら皆さんに楽しんで頂けるライブになると思います」

どんなライブになるのかまさに見てみるまではわからない。そんなワクワクのステージに期待です。


そんなあたりで時間いっぱい。
上妻さんには来週もスタジオにおいで頂いて、さらに音世界を紐解いていただきたいと思います。

次週もどうぞお楽しみに。


  

上妻宏光 三味線プレイヤー Hiromitsu Agatsuma Official Website (外部リンク)

次回1月12日も上妻宏光 さんをお迎えしてお送りします。どうぞお楽しみに。


毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はちんです。

今年最後を締めくくるゲストはTHE BAWDIESのROYさん。 #THE_BAWDIES #thebawdies

結成15周年、およびメジャーデビュー10周年目。
メンバーのほとんどは小学校からの幼馴染。最後に入ったTAXMANさんは高校生からの付き合い。しかもバンドではなくバスケットボール部仲間で、バンドとして結成してからは不動のメンバーで15年。音楽はブレること無く英語詞のロックンロールバンド。

どれもこれも個性的なバンドのワイルドな唯一無二のボーカリストは、柔らかにスタジオにやってきました。


この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


そんなROYさんがピックアップしたドライブミュージックは、いきなりテンション上がるソウルフルなCHRIS FARLOWE & THE THUNDERBERDSの「Air Travel」から

「いやなんかもう僕はドライブ行くときはこの曲聴きたくなるんですね。
1960年ぐらいにミックジャガーがプロデュースしたりして少しづつ名を上げてきたシンガーなんですが 60年台中期くらいになってくるとブラックミュージックがやっぱイギリスの方で流行ってくるんですね。それでブラックミュージックの影響を受けた俗にいう『クロっぽい』て言われるシンガーたちが、少しづつスモール・フェイセズとかスティーヴ・ウィンウッドとかアニマルズとかまあ色んなシンガーがいる中で、もっとも黒っぽい、もっとも本物っぽいんじゃないかって言われてた一人がこのCHRIS FARLOWEなんですね」

のっけからこの調子。ROYさんはこのあたりの音楽に関しては熱心なコレクターでもあります。

「まあ僕も彼らと同じように、当時のアメリカのブラックミュージックなんかを聞いてこうなりたいっていう憧れからシンガーをやってたりするので、『同士』と言うか。僕の一つのお手本ですね

そんなTHE BAWDIESは、デビュー10周年目、結成15周年目を迎えた今年は、4月にインディーズ時代の楽曲から、書き下ろしの新曲まで、バンドの軌跡を完全収録した、初のベスト盤『THIS IS THE BEST』をリリースしました。

「初めてベスト盤になったことによって改めて実感するというか、こんな曲書いてたんだなあという気持ちもありますし、自分たちが第一線ででしっかり音楽を届けられるような位置で10年間走り続けてこられたっていうのは自信につながるというか。
僕ら日本のポピュラーミュージックの中でよくあるスタイルの音楽では無いですからね。

本当に単純に全て英詞だったりということもありますし、根付いているかと言われるとそうではない音楽がロックンロールだと思うので、そういうものだけを武器に10年間やってこれたっていうのは、がんばったなと思いますね」

言葉にある通り 確かに同じくロックンロールを奏でるバンドが決して順風満帆ではない中で、THE BAWDIESのロックンロールだけがメジャーの世界で10年間途切れること無く続けてきたことは奇跡のようにも思います。

だけどそれは決して偶然ではない。そこにはたくさんの苦労や考えや秘密があるのでは。

そこで直球の質問を投げてみました。
THE BAWDIESだけがブレずに自分たちの音楽を追求し続けて、なおかついメジャーで活躍し続けてられているのはなぜだと思いますか?

「そうですね。僕らは本当に50年代60年代のルーツミュージックに憧れていますし、なりたいっていう思いが強いですね。ただ、こういう音楽は閉鎖的にになってしまう可能性があるんですね。知らない人には全く届かないってこともあるんで。僕らはあの音楽を『そのまま届ける』のでなくて、『あの熱量を継承しながら現代の音楽として伝えなければ』若い人たちが伝わっていかないと思うんですね。逆にそういった若い人たちにも、現在の音楽として伝えながらも、しっかりあの時代のロックンロールを好きな人達にも納得してもらうもの届けるってことやっぱ一番に考えてるってとこは大きいかなと思いますね」

過去への最大の愛と敬意を払いながら、あくまで今の音楽にしなければ意味はない。そしてROYさんには自分が感動して始めたソウルフルなロックンロールの熱量を、後の人々に伝えていきたいという強い意志、あるいは使命感のようなものを持っていることがよく分かります。

今回の『THIS IS THE BEST』はほぼ時系列通りに並んでいて、改めて聞くとまっすぐ一本道のようでいて、実は模索繰り返しつつ、幅広い音楽性を獲得することで常にフレッシュであることがわかると思います。

そして、来年1月17日の日本武道館公演がツアーファイナルとなる、全国47都道府県ツアーを開催中、そしてニューシングルも発売しました。本当に大忙しの一年でした。

「そうですもう今年は周年を祝おうということで、一年中お祭り騒ぎで行きましょう!ということだったので楽しかったですね」

音楽だけ聴くとストイックなイメージのTHE BAWDIESですが、ライブを初めて観るとみなさんきっと驚くはず。まさにお祭り騒ぎで楽しいMCに客席と一体となって騒ぐ極上のエンターテイメント空間です。 かなりギャップありますよね?

そういうと相合を崩して笑顔のROYさん「ちょっと真面目になっちゃうんですけどね」とライブについての考え方話し始めました。そして日本で英語詞のロックを貫くバンドに共通のよく言われる大きな疑問についても明快な答えをくれました。

「『ロックンロールを伝える時に、なんで英詞なんですか?』ってよく聞かれるんですね。
それは僕らが衝撃を受けたロックンロールってアメリカの音楽なんですよね。あの衝撃をそのまま皆に伝えたいって気持ちがやっぱり強いんですね。
もうひとつ、ロックンロールかつての歌詞を見てみても大したこと言ってないんですよ『あの子かわいいぜ』とか『たまんねえぜ』みたいな(笑)でも彼らから外されるエネルギー、メッセージってそこじゃないと思うんですよね。ブラックミュージックのやっぱり凄まじいバックボーンがあって、そこからみんなが楽しんで、みんなで前に進んで行こう!ってそういうエネルギーが宿ってる、その熱量を伝えたい。そして、みんなで転がって一体感、っていうあの熱量って日本でいうと、お祭りに近いと思うんですよね。
日本の皆さんって、やっぱり歌詞を大切にされると思うんです。すごいそれって重要なことで。でも逆にそれがいっぱいあるがゆえに感じたままに体が動いてしまうっていう文化が、少し忘れられがちだなとも思うんです。

でも思い出してください日本の皆さんと。お祭りがあるじゃないですか。ワッショイと言ってるあのグルーヴ、思わず口から出てしまう、そして体が動き出してしまう、ロックってそこじゃないかなって。

言葉が入りすぎてしまって、頭を経由して体が動き出すこの瞬発力を緩めたくないというのがあって。実は英語だろうが日本語だろうが関係ねーよ、とにかく感じたから体が勝手に動き出しちまうよっていうあの 祭りの喜びをロックンロールで思い出してくださいっていうのが僕らのメッセージなんです

どうです?
日本のバンドが英語で歌う理由を、ライブに対する考え方をここまで理路整然とお話してくれた方にはあまり出会ったことはありません。

そして、その音楽自体が持っている熱量や自分たちが受けた衝撃を日本の観客に伝えるためには馴染みもあるはずの「お祭り」の考えるよりまず体が動く感覚を思い出してほしいと。
さすが15年以上前から取り組んできたバンド。最近の「踊れるロック」より一段深く解釈して実践していることがよくわかります。そして、ステージのTHE BAWDIESはいつだって最高に楽しそうだということも重要ですね。


そんなTHE BAWDIESの音楽をさらに深く紐解くために、12月に発売されたばかりのニューシングル「HAPPY RAYS」について解説してもらいました。

「今回のタイミングとしましては、ベストアルバム出してそこでまぁ一回そのボウディーズの歴史をまとめて、そして新たなスタートを切って新章の始まりみたいなところがあるので、 チャレンジをしたいっていうところもあったんですね」

その言葉通り、またTHE BAWDIESの新しい一面を垣間見させれる、優しくてハッピーで多幸感あふれるナンバーとなっています。

「やっぱり、分かりやすく言うと今回初めてストリングスが入ってますね。そこが大きいんじゃないかなって思います。実はこの楽曲、前回の『NEW』ていうアルバムがあってその制作期間中に書いてたんですよ。でもあまりにもいいメロディーだと僕は感じたので『NEW』で出さなかったんですよ(笑)。取っといて、ここぞというタイミング出してやろうと思っていて。 で今回は新たな一歩目を切るというところでリリースしました」

今回のナンバーは確かに今までとは根本的に新しい点がいくつもあるように思います。
わかりやすいところでは、今回THE BAWDIESとしてははじめてのウェディングソングができたんじゃないかと。意外とこういうタイプはなかったような。

「僕らその楽曲の、それこそブラックミュージックの激しさとか強さみたいなものを出すことが多いんですけども、こういう優しい曲を書くときはブラックミュージック、ソウル、リズム&ブルースと言うよりもどっちというとブリティッシュ・ビートを意識することが多いですね。

こだわりとしては「UKロック」ではなくて「ブリティッシュ・ビート」(笑)。そのスタイルを継承していくものを作りたいって言う意識は強かったですね」

こうやって聞いていくとROYさんにとって「継承」が活動の非常に重要なテーマであることが感じられます。

「で種明かしになっちゃうんですが、ある晴れた朝にThe Whoの「Kids Are Alright」を聞いていたら無性に曲が書きたくなって。 イメージにあったのは、THE BAWDIESという鉄板にThe Whoの生肉を載せて、焼きながら Elvis Costello のスパイスをかけてというのが今回のテーマだったんです」

おう、大変な種明かし。そういえばそんな気も...
そしてここからが今回の目に見えないTHE BAWDIESの大きなチャレンジでした。

「特に今回さらにやっぱ、ブリティッシュ・ビートを日本のポップスとしてみんなに届けるって事がやっぱり必要かなと思っていて、僕ら自身が日本のポップスのど真ん中にある音楽をやってるかといったら全くそうではない。でも、しっかりそのど真ん中の人たちに届かせるために今回どうしようかって考えた時に、今までは同じアーティスト目線で一緒にできる人たちにプロデュースをお願いしてたりして日本のJ-POPシーンに外からから攻め込むみたいなことをやって来たんですね。それを今回は、逆にあえて日本のポップスシーンのど真ん中で活動している人と手を組むっての面白いんじゃないかなと言うことで、いきものがかりなどをプロデュースしてる本間さん(本間昭光)と手を組ませてもらったんですけど、 やっぱりねコード進行の一つの使い方とかで、あ、こんなに変わるのかっていう。違うんですよねえ」

決してマニアの音楽に留まらないために重ねてきた様々な工夫。今回はついにど真ん中に飛び込んでみたわけですね。そしてそれはバンドにとって新しい扉を開くことになりました。

「本当に本間さんに今回お世話になったなったのはストリングスですよね。曲を作った時に僕の頭の中でストリングスをつけたいって思ってたんですけど、自分たち自身がストリングスを組、やっぱそのプロフェッショナルである本間さんにお願いして、この楽曲にこういう形に乗せてみようかみたいなことを言ってくださって、どんどんどんどん形が変化していったんですね」

自分たち以外の力を借りながら、バンド自身も新しい刺激と学習を加えていく。それだけで、音楽はグッと変わっていくものなんですね。

そんな積み重ねでまた新しいTHE BAWDIESの魅力が一つ花開きました。
なるほど。ここまで一つの曲に自分たちのメッセージや愛のみならず、どうやってこの国の音楽シーンに勝負し続けることができるのかを考えに考えていることに驚きです。そして、だからいつまでも第一線でフレッシュであり続けることができるんですね。

福岡でのライブはすでに大盛況のうちに終了しましたが、このあとは3度めとなる武道館のライブが控えています。


日本武道館「Thank you for our Rock and Roll Tour 2004-2019」
2019年1月17日(木)
※THE BAWDIES OFFICIAL WEB (外部リンク)

THE BAWDIESにとって日本武道館とは、特別な思い入れがあるように思います。

「そうなんですよ。僕らにとって66年にビートルズがやってきて初めて日本でロックの歴史が始まった聖地なのですよね。僕らはその日本でロックンロールを根付かせたいと思ってるわけなんで、そんなバンドにとって、あそこに立てる喜びは格別。その喜びの音を味わっていただきたいなと思います」

それは上のポスターのビジュアルでもわかりますね。よく見ると細部の細部までビートルズ来日時の有名な写真の完コピです。初回限定盤では遊び心たっぷりの上と同じハッピ付きCDもラインナップされていましたね。


ちなみにスタジオでのROYさんはステージのワイルドな声とは打って変わってマイルドで少し跳ねるようなトーンで、何を尋ねても瞬時に明確な答えをあふれるような愛情を交えて答えてくれます。そしてその口からは、自分たちの音楽をブレること無く第一線で続けてこれたことが、強い意志と続けるための努力と工夫のたまもので成し遂げられたことを、明快に語ってくれました。

最後にROYさんからみなさんに、かなり愉快なメッセージを。

「今年一年ですね、結成15周年目そして、メジャーで10周年目ということで活動させていただいたんですけど、実はですね、来年2019年が満結成15周年、メジャーで満10周年なので実は来年が周年なんですね(笑)。なので2年連続で周年をやるというちょっと詐欺めいた活動なんですが(笑)、2019年こそお祭り騒ぎで行きたい。だから日本武道館は周年のスタートなんです」

そう、THE BAWDIESのロックンロール=お祭りは来年も続く。
こんなにうれしいことってあります?

  

今年も一年、音解をご愛聴いただきありがとうございました。
来年も素晴らしいアーティストのお話しをお届けします。どうぞよろしくおねがいします。

よいお年を。

  

次週、来年1月5日は、上妻宏光さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。

12月22日のゲストは、中村中さんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はちんです。

今日のゲストは中村中さん。 #中村中

歌手として役者として幅広いフィールドで活躍し熱い支持を受け続ける中村さん。
表現者として自身をさらけ出し、社会と自分たちの間に横たわる違和感や意味を問い続け、一方で普遍的な愛を歌うアーティストです。

そんな中村さんの今日のドライブミュージックは、KIRINJIの『時間がない』。

「ま、KIRINJIが好きだっていう(笑)。 堀込高樹さんの詞が好きなんですね。 もちとんサウンドメロディも好きなんですけど。
私がよく仕事仲間とか飲みに行く友達が、割と年齢が自分より20個とか30上の人と仲いいんですけど、みんなが口々に言うんですよ『時間がない時間がない』って。『やりたいことやらないとお迎えが近い』なんてね、おっしゃる(笑)。 そういう世代と付き合ってるとこの歌は染みますね(笑)。 ドライブ好きなんですけど、爽快な気持ちで運転するよりもそこに少し憂いを感じながらアクセル踏むのが好き

爽快なのに憂いを含んだ、いかにも中村中さんらしいドライビングミュージックがスタジオに溢れて、今日のドライブも楽しくなりそうですね。


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そんな中村中さん、今月5日に8枚目のオリジナルアルバム『るつぼ』をリリースしました。

墨絵師、東學さんが全裸の中村さんにに「蛾」のペイントを施した美しくも衝撃的なビジュアル、そしてジャケットから今回のアルバムへの意思が感じられそうです。

今回のアルバムは現代の『おかしなこと』をテーマに書き下ろした全10曲が収録されています。

『おかしなこと』とは何なんですか?

「私がおかしいなと思ってることなんですけど、例えば過重労働が問題になっていたり、あるいは格差社会の中で苦しんでる人も多いし。今年はね夏に『LGBT は生産性がない』なんていう、だいぶキャッチーなコピーをね。 ちょっと論点がどこにあるのかがわからない」

世間でも大きな議論となったあの一件は、今回のアルバムのトーンを決定づける大きなきっかけとなったようです。

「でもま、取るに足らないなって思ったけど、でもちょうどアルバムを作ってる時期だったんですよ。これはちょっと私もなんかカウンターを当てなくちゃなと思って。まあまあ腹が立ちました(笑)。 自分一人だったらそんなでもないんですけどなんかこう LGBT 当事者の友達とかのことを考えると腹が立ちましたね」

今までも様々な形で戦い続けてきた印象の中村さんですが、今回のアルバムはとりわけそういったメッセージが強く心に届きます。

「なんかこのタイトルもそうですし、私は怒ったり悲しんだりしてますけど、私自身もそういうウジャウジャした現代社会の中で、混沌としているものの中に入っているし、抜け出せないし一人では生きていけないし。でも、その中ででも、どうやって己をなくさないようにするかとかね。

大きな流れに巻き込まれそうになるじゃないですか?発言とか人と違うことを恐れてしまったりとかね。 私はその中でも、自分の好き嫌いとかは守らなくちゃなと思って、そういう現代社会をどう生きるか みたいなことやりたくてこのアルバムを作ったところはありますね」


2015年のオリジナルアルバムとしては前作に当たる「去年も、今年も、来年も、」では、中村中ならではの心地よいAORやフォーク、スカなどバラエティ豊かな音楽にコーティングされた自身のやるせない心情や問題提議を含ませる独自の音楽性を極めた感もありました。

対して今回の「るつぼ」では音楽的にもメッセージ的にも強い意思、決意のようなものを感じる気がしますが。

「ちょっとありますよ。シンガーソングライターだし、常に今を書こうっていうような思いと、あとは今回気をつけたのは、自分の言い方で書こうってことですかね。例えば『去年も今年も来年も』とかっていうのは、チームで万人に聞けるようなものを作ろうとかね、まやかしのような言葉が飛び交うわけですよ(笑)。『老若男女に響くように』とかね、響くかどうかは個人の感じ方だからって私は思うタイプなんですけど。 でもチームで考えてることだから、一回それをやってみようと思って取り組んだのが『去年も今年も来年も』でした。

それもやったおかげで今回は、意識して自分の描き方にする。多少耳障りが悪かったり分かりづらい表現でも『私だって話し言葉でこういう風に言うもん』みたいな。そこはかなり気をつけて書きました」

今回はサウンド的にも、今までになくアンビエントやヒップホップの要素が強く感じられますね。

「デモを作ってるときからそんなイメージだったんです。アンビエントのところが深夜の感じを出したかったんですけど、今回ヒップホップのアプローチ多いのは今、時代が人間と機械、携帯電話とか SNS、ゲームのオンラインとかもそうですけどもすごくそれがせめぎあってるイメージがあって、そこを生演奏のものと打ち込みで表現できたらいいなって言う」

中村中さんはどうしてもメッセージや生き方に注目されるところが多いのですが、「音楽家」としての部分はもっと注目されるべきって思ってるんです。

「あら、私音楽家として注目されてると思ってますよ(笑) 」

あ、すみません。
「パフォーマー中村中」と「音楽家中村中」は、また違う顔があるような気がして。

そんなお話しは、このあと更に続きます。

ともあれ、結果できあがったものは、一曲一曲に中村さんの中にある苛立ち、不満、問題定義、悲しみ、そんなことを全体として表現していきながら、最後の一曲でそんな諸々をすべて受け入れて踏み越えて前に進もうという素晴らしいアルバムとなりました。

そんな中から更に一曲ピックアップして、中村さんにさらに深く音世界を紐解いてもらいました。

そのナンバーは「裏通りの恋人たち」。アルバムの中でも一番ポップかつ、冒頭のちょっとスモーキーな感じや歌い方、歌詞の譜割りも含めて、とてもヒップホップ以降のポップスを感じるナンバーです。

「今回、ヒップホップのアプローチが多くて。ヒップホップってはっきり政治批判とかもするし、今回私は現代社会の嫌だなと思うことを書いていたし、それをなるべく自分の言葉で書こうっていうことを意識してたんでヒップホップのトラックを使うっていうのが私の中でつながっているんですね」

つまり今回のアルバムを表現するには精神的な意味でもヒップホップ的である必然性があるというわけですね。
その一方で、中村さんならではのユニークな視点で書かれた歌詞にも注目です。

「『裏通りの恋人たち』は『上手く波に乗らなきゃ弾かれる、僕ら裏路地の野良』って歌詞が出てくるんですけど、これが野良猫だと思って聞くと色々面白いという。都会のイメージなんですけど、どんどんオリンピックとかに向けて東京は競技場を建設したり、外国のお客様が泊まる場所とかすごい建物が立ってるんですけど、古き良きものと言うか自分が住んでる街とかもどんどん景色が変わっていく。だけど、猫の嗅覚で生きていれば、どんなに街並みが変わってもあたしたちは愛しい人に会えるのだと。あと猫目?猫って夜でも目がきくから、野生的な嗅覚と夜も見える目でこの先どんな暗闇に包まれようとも絶対愛しい人に会ってやる。みたいね。そんなイメージで聞いて欲しくて」

そこにはやはり先程のあの一件が大きく関わっていました。

「その暗闇がなんなのかってことなんですけど。さきほどちょっと触れました今年の夏の『LGBT は生産性がない』という言葉を言われて、あの言葉があってから最後に書いた曲なんです。掲載された内容を読んで、やっぱり人に影響力を与える立場の人が言うにはちょっと不適切な形になったなと思ってね。
私はやっぱりそこに腹も立ちましたし、そこに何かカウンターをと思って書いたんですが、そこでただ反発するだけでは能がないと思って、なるべく愛しい人に会いたいっていうのはあなたも同じじゃないですかっていう結びにしようと思って」

恋人たち、恋愛、そして裏通りの人たち。
ある意味中村中さんがずっと大切にしているモチーフを織り込んだ含蓄の深い歌詞に対して、メロディ、アレンジはとてもPOPで可愛らしいサウンドが印象的です。

「それはねやっぱり楽しくいきたいじゃないですか(笑)裏通り歩くのでもルンルンと歩きたいでしょう。下向いてくるとね寂しいですし、やっぱりそれはバランス感ですよ」

そう言って笑う中村さん。
味付けはいつも甘口辛口に絶妙に調整されながらも、楽曲として最終着地するポイントは決してハズさない。驚くような多様な音世界を送り出し続けるのクリエイターとしての確かな技も感じられます。

ここでちょっと意地悪なこんな質問をぶつけてみました。

『中村中、実は曲を作っているのか説』というのがありまして... 』
とりわけアルバムでの曲順について色々言われているようで。

「私ね時々書かれるんです(怒)。たぶん本人が曲順作ってないなとか、このプロデューサーだったからこの曲順になったんだなとかって書かれることがあるんですけど、すごいムカついてます。デビュー盤以外は曲順を誰かに作ってもらったことないですもん

もちろん、今回のアルバムを全て作詞作曲をアレンジメンバーの人選も含めて中村中さんの手になるもの。

個人的な意見では、常に表現者としての存在にスポットライトが浴びる一方で、作家としては過去から今までずっと楽曲ごと、アルバムごとに全く違うサウンドがあり、本当に一人の人が曲を作っているのかな?と思われるほど多彩な音作りゆえという気がしてます。

中村さんのバラエティ豊かな楽曲作りの秘密については、発言の中にその答えがハッキリありました。

「今回の『るつぼ』とかもそうなんですけど、いつもコンセプトアルバムを作ってるつもりなんですね。そういうコンセプチュアルに作る時って、曲それぞれに、なってもらう役割っていうのがあって、 例えば『箱庭』はゲームの世界に自分の居場所を求めてる人、『不夜城』だと過重労働に苦しんでる人っていうふうに、登場人物みたいに考えてるんですね。そうするというかその人の性格とかも置かれてる立場も変わるじゃないですか。だから、私じゃない主人公だからかもしれないですね」

クリエイターとしての自我というよりは、すべては作品に対する奉仕の方が上回ってるということなのですね。それは簡単に言えば、無意識か意識的か、聞けば誰でもわかるような「〇〇印」のような烙印を押すような「エゴ」がないということ。非常にプロデューサー的な視点で作品作りをされていることが分かります。

プンプンしつつ楽しむような中村さんの口からはそんな、音作りから表現までをすべて引き受ける覚悟と自信に溢れているように思いました。

いやほんとにごめんなさい。でも、すごく本質的な部分を聞くことができました。

そんな、自信作を携えてのライブ、いやが上にも期待が高まりますね。

『中村中 アコースティックツアー 阿漕な旅 ひとりかるたとり』

広島公演 2019年1月10日(木) 『Live Juke』。
福岡公演 2019年1月14日(月・祝) 『Gate's 7』

※詳しくは、中村 中 オフィシャルサイト「中屋」 (外部リンク)にて。


「アコースティックギターをメインに、ピアノがある場所ではピアノを弾こうと思います。『るつぼ』は結構アレンジが多彩なんですが、一人で回るのでデモ音源に近いというか、詞とメロディーがくっきりと伝わるライブかなと思います。今回のナンバーも入っておりますからね、是非一緒に参加して楽しんでいただきたいと思います」


そんなわけで、とても濃密な時間となった今回の音解。

中村中さんは楽しい場では楽しく、正面に向き合えば向き合った人に誠実に答えを返してくれる人。そんな一方的な信頼感があって、中村さんでしか聞けないような失礼な質問も真っ直ぐに投げさせてもらったんですが、やはり面倒な質問にも自分の思うところを、まっすぐに答えを返してくれました。

そしてその言葉は淀むことなく、時に笑顔で流れるようにこちらに届いてきます。
中村中さんのそんな魅力の一端をみなさんにお届けできたのでは?と思うのですがいかがだったでしょうか。

最後に中村中さんからみなさんにメッセージ。

「年末年始、楽しいことをいっぱいあるでしょうから、体調には気をつけながらしてください」

そういってフフと笑う中村中さんでした。

  

中村 中 オフィシャルサイト「中屋」 (外部リンク)

次週、12月29日は、THE BAWDIESをお迎えします。どうぞお楽しみに。

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手は香月千鶴です。

今日のゲストは先週に引き続き大黒摩季さん。 #大黒摩季

先週も錚々たるメンバーが参加して8年ぶりにリリースされたニューアルバム『MUSIC MUSCLE』のお話しを中心に、パワフルに楽しくお送りしましたが今週はさらに深く、大黒摩季の音楽の裏側を覗いてみたいと思います。

今週は私たちが知ることができない、一つの楽曲がゼロから完成するまでの課程を聞くことができました。これって結構貴重ですよ。


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今日はドライブミュージックも『MUSIC MUSCLE』からまさにぴったり『CRASH & RUSH』をチョイス。しかも、とってもかっこいいカリフォルニアの思い出を披露してくれました。

「アガりますよね。これ若い頃に初めて行ったアメリカ一人旅の道のりで、カリフォルニアのドライブロードで行ったところを全部書いているんですね。レンタカーを借りて、その頃はブライアンアダムスが「♪I need somebody」とか流行ってましたねえ。エアロもボンジョビもきてましたね。途中途中でフリーウェイで流しながら。
あの頃マスタングを借りてオープンカーで髪ぼうぼうになりながら、髪は縛ったほうがいいですね。前見えなくなります、帽子も2秒で飛びます(笑)。それで私はビバリーヒルズホテル、ホテル・カリフォルニアのところに行って『ホテル・カリフォルニア』を流しながら、いいなあと思って楽しみにしてたら、工事中で!ブルーシートで真ブルーだったんです(笑)。これはもう一回来いってことかな?みたいな。そう思うしかなかったね悲しくて」

嬉し悲しのアメリカ一人旅。

さて、今日はその待望のアルバム『MUSIC MUSCLE』から、一つの曲をグッとさらに深掘りして、大黒摩季の音世界を紐解いていきましょう。

今回のアルバムは2枚組のボリュームで、これぞ大黒節のアガる「FIGHTING MUSCLE」、大人の癒し、いえ赦しの「RESTING MUSCLE」の2枚に別れたこのアルバム。

そんなアルバムから一曲、ピックアップしてくれたのはアルバムの中でもとりわけゆったりと大人の雰囲気の「Naturally feat. DIMENSION & KENNY from SPiCYSOL 」。

だけどこれ元気サイドの「FIGHTING MUSCLE」の方の7曲目に収められています。

「『FIGHTING MUSCLE』濃過ぎて途中で疲れてきたみたいな話になって(笑) ちょっと休憩しよう、外出よう一瞬、やっぱ海だ!て話になって」

なんとそこから曲作りがスタート。

ここではゼロから楽曲が出来上がる過程を聞くことができました。

「まず、海系サウンドをつくろうってことで、DIMENTIONの小野塚晃くんに『横でピアノ弾いてプリプロ(仮録音、準備)しようよ』っていって。
『曲は?』『今から』『本当にか!」『ほんとにね』みたいな。とりあえずイントロとか弾いてもらって『いいねソレソレソレ』みたいな感じでやってて。それで、晃くんが、もちょもちょやってる間に女子社員と『ねえ、海に行くなら誰と行きたい?』なんて女子トークしてて

この女子トーク、実は大切な歌詞作りの準備です。

「『どうするどうする年上?年下?』具体的にみんなでしてた。すると『やっぱり大事にされたいし、でもクドイの嫌だしやっぱちょっと年下かな?』なんて楽しい妄想トークしてて。 今回オリンピック決まったし千葉チームと最近仲良くしてるから一宮でも行っとく?そういう感じで楽しみながらまず歌詞をブワーッと打っちゃった」


歌詞があらかた見えたところで再び楽曲作りです。

「『晃くんこういうことだから風景』って歌詞渡して、『わかったAORだね?』『海寄りのAORね』。それでホントに古き良き80年台のAORだね。70年代じゃなくて 『George Benson とか出てきてもいいよ』なんていいながら。 ちょこちょこオーダーが入りつつ」


こうして80年代風AORサウンドと歌詞が見えてきました。
さらに意外な場所で今回のフィーチャリングメンバーと出会います。

「仲間たちと波乗り行ってたら、SPiCYSOLのKENNYとAKUNが来てたのね。あたしその時初対面。ぶっちゃけ光永亮太だけども、亮太と DJ TSUYOSHIくんが連れてきたのよ。そん時レゲエのWATARUくんもいて、WATARU、最近私のライフセーバーなんですけど(笑)。でWATARUが『姐さん、今度新譜出るんでもらってもらってもいいですか』って持ってきて、そしたらSPiCYSOLの二人も『ぜひ聞いてくださいよ!』って言ってきて。
で、帰り。じゃあもらったCD聞こうかって。渋滞が激しかったんですよ。で、WATARU、SPiCYSOL、WATARU、WATARU、SPiCYSOL、SPiCYSOLみたいな9回しくらいみんなのを聞いたんですよ(笑)。
そこで『あー』と 年下いた!それでスタジオで『あたしKENNYを呼びたい』海声をそのまま呼んだほうがわかりやすいよ。つて」

でも多くのアーティストとつながりのある大黒さん。例えば海といえば、付き合いも長いSkoop On SomebodyのボーカリストTAKEさんなんかピッタリのような。

「そうも言われたんだけど、TAKEは同い年だから。さっきの女子会の規格から外れるんで!
年下で初初しい声がいいね。TAKEに包まれたいときもあるんですけど今回はKENNYだと。
そしたらKENNYがすごい喜んでくれて『行きますー』って言ってくれて」

そこで新たなボーカルを決めると、また作曲の小野塚晃さんにさらに追加オーダーです。

「『晃くんすみません...』って『 急激に2番で転調してもいいですか?』『えーーーー!』って(笑)。『戻ったときにも戻りやすいやつで、EフラットメジャーからAフラットメジャー、4度かなあ』なんていいながら『もう、相変わらずムチャ振りだねえ』とかいいながら。
また晃くんの転調の仕方がね、徐々にしないでパックリねえ2拍で転調しちゃったんだねえ。帰り道はまたスルーっと私のキーに戻っていくんだけど。 やっぱりね匠がやるとね秀逸ですよねそういうところ」


さてそうやってやっと出来上がった楽曲とKENNYさんを従えてレコーディングです。
メンバーそれぞれが超テクニックの集団であるDIMENSIONですが、ここでは余白を活かしたゆったりとした演奏がちょっと意外です。

「『弾かないで』って言ったから。たくさん弾かないで、音でフロウしたいからってね。 あの人達ぐらいになるとスーパー引き算ができるから。私も最近やっと出来るになったんですけど『歌わない伝える』歌わないところをつくるっていうね」

大人の引き算の美学です。このあたりはさらに具体的にお聞きしました。

「イントロの『ヒョーン』ところもあるんですね、そこも最初はピルピル吹いてたのね。だから『ううん。こんなにピルピル吹く人が海岸にいたら気持ち悪いでしょ』つって(笑)遠くから聞こえてこようよって。 ちゃんとリバーブ品のいいやつかけるからってね。

わたしたちそういう一言で、あのレベルの人達はああせいこうせい言わなくて良くなるんですよ。その後はもう放っときで。『そろそろどうだい爺さん?』っていくと『おう、婆さん良くできだぞ』ってかんじで『聞いてみ?』『お。ここの余計なところは痺れるねえ』リフがダブってるんだけどね。『すみません、ツインギターをこの曲で連れてくる予算はないんですけど...』『でも、そこはお愛想でしょ!』っていって。『ここはkatsuo(勝田一樹)には譲らんよ」とかいって増崎さんがオブリ(裏メロディ)を入れて、そしたらあそこは阿吽だからその前後にkatsuoちゃんが絡んできたり。
で、晃くんのエレピは最初から二人に演らせるつもりでほとんど余計なことをしてないという」

レコーディングの風景が浮かぶよう。一流のプロの阿吽の呼吸で高度な演奏から予算の管理まで(!)

一方、歌うKENNYさんにとってはなかなかハードルが高かったようです。

「ちょっと大変だったね。まだ経験してない2拍3連、4拍3連っていうその3連のリズムの中抜きとかね。(一節歌ってみせる)こんなふうに隙間がベッタリしないで、波が弾けてる感じに聞こえると思うんですね。」

ここでその微妙な違いについて大黒さんが実際に歌って比較をしてくれました。

「KENNYは『おしりが引き締まります』って言ってましたね(笑)。だけど、あの子は天才的でシャープに『われは隙間を入れたぞえ』みたいにならないんですね。体の中に自分のリズムがあるからま、あるいリズムがあるからちゃんと隙間で休んでいるのにスラーがかかってて(音と音がなめらかに繋がっている)うん、コイツやっぱ天才と思いましたね。

幼いハスキーがたまらない好物でしてね。あの子に『夢中になれば時は止まるよ』って言ってほしかったの。あの声で」

大人の時が止まらないのはそのものに夢中になってなくて散漫で、あれもイライラこれもイライラ、いろんな前後周りを気にしすぎてるから。仕事だって夢中になれば楽しいのに。苦痛にしてしまってるのはその散漫な気持ちだと思うんですよ。

それをあたしに言われると説教臭くなっちゃうのでKENNYに言わせたかったの。そういうのを海で言われると、ハイすみませんてなるんじゃないですか」


そうしてついに楽曲は完成しました。
DIMENTIONが奏でるちょっと懐かしくて爽やかな潮風も感じそうなAORサウンドに乗せて、大黒摩季さんのボーカルとKENNYさんの甘くはスキーな声が心地よい極上のメロウ・チューンができあがりました。
一つの曲がゼロから出来上がるまでこんなにドラマティックなドラマが色々あるとは。改めて聞くとまた全く違う感慨が浮かびそうですね。

そういうつもりで次聞いてごらん。そしたら溶けるから。かさついたハートにうるおいをだね」

そういって、大黒さんご満悦の笑顔です。

そんな一つ一つ労力と思いのこもった楽曲が27曲も詰まったアルバムを携えてのライブも、とても楽しみです。


MAKI OHGURO MUSIC MUSCLE TOUR 2019
5月6日(祝月)福岡県福岡市民会館 大ホール
開場:17:00 / 開演:17:30
5月18日(土)広島県広島上野学園ホール
開場:17:00 / 開演:17:30


とりあえず水分とウィダーinゼリーなんか持ってきた方がいいかもしれませんねバテますよ(笑)。テニスコートに行くくらいの気持ちで。着替え持っていったほうがいいような気がします」

2週に渡ってお届けした大黒摩季さんの音解。

多くの人の心に残るパワフルで力強い楽曲やメッセージ。そこにはプロの音楽家としての多くの技術と支える多くのミュージシャンとの信頼関係と努力、そしてなにより強い思いがすべて集まってできることがよくわかりました。

スタジオの大黒さんは、楽しいお話をたっぷり交えながら私たちをリラックスさせて、気がつくと語るべき音楽についてスッと私たちの心に届けてくれまいた。素敵な笑顔と細やかな気遣い。本当に素敵な方でした。

「また呼んでください!」

最後にそう笑顔で言ってくれた大黒摩季さん。
次にお迎えする日がまた楽しみになりました。

  

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次週、12月22日は、中村中さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。



12月8日のゲストは大黒摩季さんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手は香月千鶴です。

今日のゲストは大黒摩季さん。 #大黒摩季

数多くのアーティストのコーラスとして経験を積み、1992年「STOP MOTION」で歌手デビュー、以降「チョット」「夏が来る」「ら・ら・ら」「熱くなれ」などのヒット曲と活躍はご存知の通り。

久しぶりの対面に、香月さんも思わず「摩季ネエ!」と声を上げて歓迎です。

そんな大黒摩季さんがチョイスした今日のドライビングミュージックはスウィングアウトシスターの『Break Out』。

「あの人たちやっぱり洗練されていてポジティブだからオラオラゴリゴリしてるところがないし、あとはスタイリッシュですよね。このスウィングアウトシスターが出てきた頃、気分的にバブバブバブルでねー。みんなでよせばいいのに免許取り立てでなのにオープンカー借りちゃって。私はその頃ずーっとスタジオこもってたけどね(笑)。 世間はどいつもこいつもホテルをとってドンペリ開けて みたいな時代でしたね、石田純一さんは未だに靴下履いてないけど(笑)。そんな時代にスウィングアウトシスターはFMから流れてきたわけですよ」

いきなりの大黒節で90年台を回顧。

「目の前の現実が苦しい時は目をつぶって音楽聞くと違うとこに飛ばしてくれる」とにっこり。

今週の音解。やっぱり熱くなりそう。

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そんな大黒摩季さん、6年間の活動休止を経て8年ぶりのニューアルバム『MUSIC MUSCLE』、を12月5日にリリースしました。活動休止の間に経験したことや思うこと、そしてデビュー25周年を経て培われたすべてを注ぎ込んだ、圧巻の全27曲が収録されています。

「やっとできました! ボジョレーヌーボーなら熟成しちゃって普通のヴィンテージになったぐらいの感じですよ8年て」

渾身のオリジナル曲とともに大黒さんがレコーディング中、今年8月に亡くなったアレサ・フランクリンに捧げる2曲のカバー「Respect 」と「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」も収められています。大黒さんにとって格別思い入れの深い楽曲だとか。

「私が生まれて初めてね、自分の歌をふきこんだ「ROYAL STRAIGHT SOUL」ってオムニバスアルバムなんですけど、まだ二十歳そこそこの私が『Respect 』に挑戦してたんですよ。 その時、実は『A Natural Woman』を歌いたかったけど『お前にはまだ早い』と言われて、その曲は坪倉唯子さんが歌ったのね。 その唯子師匠が『Respect 』でも一緒にコーラスやってて。

そのころは私もう怒られまくりですよ。リズムが悪いだの『突っ込むんじゃないよと』か『低いよ!』とか言われて。 そんな30年前の自分にリベンジしてみよう、初心に帰ろう。 アレサにもdedicatedしようと思ってね」

そうして今回再び「Respect 」と今の自分なら歌えると「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」の2曲を当時と同じメンバーでカバーしようと思ったんだそう。

結果、錚々たるメンバーが集合しました。

ポンタさん(村上ポン太)斎藤ノブさんに、私大好きだったベースの青木智人さんはもう亡くなられていて、で智さんの代わりに高水健司さん、大仏さんって呼ばれてる名ベーシストが入って、当時と同じ小島さんがピアノとオルガンで入って、ギターが今の時代から私の相棒、原田喧太でやりましたね」

そのレコーディングもなかなか大変だったよう。

「死にましたね(当時と)キーが一緒で。でも当時の自分にリベンジなんで。なんとかなりましたね(笑) あの頃ならなかった倍音が鳴ってるから、あの頃よりかっこいいです。自分で言うのもなんですけど」と満足げ。

その渾身のカバーは実はボーナストラック、あとはすべてオリジナルです。そのオリジナルだけで25曲!

アルバムはDisc1を「FIGHTING MUSCLE」、Disc2を「RESTING MUSCLE」 に分かれています。

「とりあえずやるぞ!って時の自分なりのプレイリストってみんなあるじゃない?例えば今日はプレゼン大変だから負けてられないぞ!っていう日は、強い曲ばっかり流してアゲていくでしょ。

私もやっぱり6年間、歌えない時にユーザー側だったので本当に音楽をそういう風に使っていて。やる気、戦う気の「FIGHTING MUSCLE」はアゲてくれる曲中心」

一方の「RESTING MUSCLE」は大人の大黒摩季さんの新境地とも言える楽曲が揃っています。

「大人はもうね、なんか癒しを買っても癒えないの。結局。自分の中に何か判断基準があってそれが許さないからみんなね。お金かけても癒えない、ていうことがわかった。だから『赦し』。大人の赦しアルバムが「RESTING MUSCLE」 、もう休む!休ませる。いつしか女子も、自分自身に負荷をかけてキーキーやってる間に乾いちゃったりするでしょ。 だからまず自分を許してあげれば人も許してあげれるから。そうすると場も和むしね。 結局自分の中の呪いをおろしてあげないとね

香月さんも「誰かに鎧を脱がせてくれるのを待っていてはだめですね」と同感。

「脱がせてくれるのを待ってたりすると、どんどん着込んだりするじゃない(笑)。そんな奇特な男性あんまりいないのよ。せめて重たいフリでもできればいいんだけど、キャリアの女の人は重たいフリさえしないからプライドがあって。 だから自分を赦してね」

そんな女性の気持ちを代弁するように「RESTING MUSCLE」はストレートなブルースサウンドの「女はつらいよ。」からはじまります。

「『どいつもこいつも人任せ、消えてやろうか』ですから(笑)」


Disc1の「FIGHTING MUSCLE」はこれぞ大黒摩季の「LOVE MUSCLE」からスタートします。

「テッパン系ですよね。 ウチのスタッフ女子二人が『摩季さん「熱くなれ」みたいのができてくれると盛り上がると思うんですけど』 ていうのを会うたんびに言われて。 そんなに言うかな!結構モリモリだよ、ゲップだよすでに(笑)だけど、最後の最後にやっぱり食いつかれたんですよ。 でまあ、たまにはスタッフの願いも叶えてみるか、みたいなってことで。仮タイトルは『熱くなる』って作ったんです(笑)

そしてこの曲では大黒さんゆかりのすごいメンバーが集まりました。

「当時の同じ時代を共に過ごしたやつらを呼ぶと一層そうなるんじゃないかと思って。サックスは『熱くなれ』でも吹いたDIMENSION の勝田一樹でしょ。それからチームは違うけど、ZARDとか多くをやってた徳永暁人(doa)、徳ちゃんにアレンジしてもらって、同級生のWANDSの柴崎くん(柴崎浩)にギター弾いてもらって、それに大島こうすけ ね。 それでリズム隊はどうしようかなーと思ったら、東京スクールオブミュージック専門学校ってところで私、教育顧問やってるんですけど、副校長で渡辺敦子さん(プリンセスプリンセス、リーダー/ベーシスト)いらっしゃって式典のたびに敦子さんと京子さん(プリンセスプリンセス、富田京子)がいてね。会うたびに「いつか一緒にやりたいね」て言ってて、私プリプリは全公演追っかけて観てましたから、奥井さん(岸谷香も許してくれるでしょうと。

あの二人って目をつぶって聞くと男なんですよ。 全然女の子っぽくないすごいアフターで強いし音太いし。アメリカのおじさんみたいなリズム隊みたいなんですよマジでね。

一方こっちのプリンスチーム? 柴ちゃん(柴崎浩)もギター界のプリンスだしこうすけとかもハデハデ軍団でしょ。だから下をグーンと抑えてもらいたいなって思ってて。じゃあぜーんぶ集めてしまえ90年台、イエーイみたいな。そしたらなんと全員集まってくれた」

大黒摩季さんの人徳ですよねえ。

「いやいや。やっぱり仲間?みんなそれぞれバンドも解散したりするから異常にアツいバンドになっちゃって。最後は、どいつもこいつも弾きまくってカオスみたいな状態になっちゃって、ミックス大変だった(笑)ぜひぜひこれは聞いてもらいたいですね。元気出ちゃいますから」

結果、今の音楽ファンはもとより90年台青春を送った人たちも感涙のアガる一曲となりました。


MAKI OHGURO MUSIC MUSCLE TOUR 2019
5月6日(祝月)福岡県福岡市民会館 大ホール
開場:17:00 / 開演:17:30

5月18日(土)広島県広島上野学園ホール
開場:17:00 / 開演:17:30


ライブも楽しみ。
「マッスルマッスルになると思いますよ! ジャケットの人に!」

そういえば今回のアルバムビジュアル。大黒さんの美しい上半身裸のバックショットです。「ほぼ修正なし」だそうですよ。カッコいいですねえ。

「ん。今ちょっとたるんでる(笑)。レコーディングしてたからうん。 でもコレくらい持っていかないとライブはバテますからね」

どうすればこんなに美しいスタイルになるのか、憧れますね。

あなたカラオケでやってみなさいよ大黒摩季連発で25曲。こんな体になるって。メタボなおじさんたち!インナーマッスルができてくるとね内臓をちゃんとね支えてくれるので、縦に突き出たお腹は減りますよ! ジーンズのインチひとつ下がっただけでポジティブゲージ、ガーンと上がりますでしょ。大事ですよね自分のこと好きですパワーってね」

と、大黒摩季エクササイズのすすめ?なんか元気づけられちゃいましたね。


もとよりパワフルでいつも周囲を元気にせずにはいられない大黒摩季さんですが、今まで以上に生命力にあふれて快活に、あらゆることを楽しそうにお話する姿は、現在に対する感謝と喜びが溢れ出るようで、お話しを聴いているだけで元気になります。そして包まれるような優しさに心の芯が暖かくなるような安心感も。まさに今回のアルバムそのものだな。と実感しました。


まだまだ色々なお話し聞かせていただけそうです。
来週もお迎えしてさらに、大黒摩季さんの音世界をもう少し紐解いていただきましょう。

今週はここまで。とりあえず皆様にメッセージです。

「もうね、復帰できたその日から、歌えることが、当たり前のアーティスト活動が幸せでならなくて、人生で一番今がアーティスト活動が楽しいです。そんな私を見てみなさんもぜひぜひね、自分のふつふつとしているモノ一個だけでも毒出したり、何かに向かってくれたり、私っていうきっかけで何か気がついてもらえれば本望なのかなと思うので『MUSIC MUSCLE』、昔、家にあった薬箱みたいに、ここが弱ったな?と思ったらこの曲が出てくるみたいに使っていただいて、日々の暮らしのお役に立てれば本望です。

来週も頑張りマッスル」

期待してマッスル!

  

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次週、12月15日は引き続き大黒摩季さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。

12月1日のゲストは 小坂忠さんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はこはまもとこです。

今日のゲストは小坂忠さん。 #小坂忠

1966年にグループサウンズの「ザ・フローラル」メンバーとしてデビュー。
以降も伝説の「はっぴいえんど」の前身となる「エイプリルフール」やソロアーティストとして、日本のR&B、ゴスペル、ポップスの礎を築いて、今も走り続ける小坂さん。

そんな音楽界の重鎮は、軽やかにやってきました。
自らピックアップしたドライブミュージック、ビル・ウィザースの『ラブリー・デイ』を聴きつつ、よく通る低い声で「ワクワクするでしょ。朝気分が悪くてもこれかけるとね、上がるんですよ」と微笑む小坂さん。

とても素敵な大人の音解の始まりでした。

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そんな小坂さん。今年3月にビルボードライブで、R&Bをいち早く取り入れた代表作にして70年代ロックの名盤中の名盤『HORO』の全曲再現ライブが行われました。

そして、そのライブをまるごと収録したライブ盤『HORO 2018 Special Live』が8月にリリースされました。

「去年、ちょっと大病患ってそれで入院生活してたんだけども、元気になって歌えるんだったら何歌おうかなと色々考えてたわけ。それで僕のボーカルスタイルの原点っていうのが、やっぱこのアルバムなんですよ。だからもう一度このアルバムで僕の原点に帰る、そういうライブをやりたいなということで」

1975年に発表された『HORO』は、細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆のティン・パン・アレーのメンバーに加え矢野顕子、吉田美奈子、山下達郎、大貫妙子、ストリングス&ホーン・アレンジ矢野誠が参加して当時の邦楽シーンに衝撃をもたらした作品です。

今回収録された『HORO 2018 Special Live』は鈴木茂、小原礼、Dr.kyOn、屋敷豪太、斎藤有太、Aisaといった再び豪華なアーティストでオリジナルのアルバム通り曲順もそのままに再現されました。

「多分他の方もそうだと思うんだけど、75年に出してからあのアルバム通りにやったライブなんてないんですよ」

今は音楽もシャッフルできる時代。

昔のアナログ盤っていうのはA面が終わったらB面にひっくり返さないといけない。そういうブレイクの時間もあったし、ああいうのが大事だったんですけどね」そう言って少し複雑な表情で微笑みました。

小坂さんのMCも楽しいこのアルバム。そんなお話しを聞いて改めて耳を傾けると1曲目から順番にやる意味も理解できますね。

「初めての試みだったけど、でもやって面白かったですよ。 でも、A面最初の「HORO」なんかをね、僕が出てくるタイミングをイントロにプラスしたりとか。 だからアルバム完全に再現じゃなくて、ま、ライブにアレンジしてってかんじですね」

小坂忠さんの華々しいいつくつもの活躍と作品の中でも「HORO」は特別な作品。
かつて「HORO」は2010年に16chのマルチトラックが発見され、ボーカルだけをレコーディングし直した『HORO2010』としても発売されました。

「75年の元のテープが出てきたのね。それを聞いてたら歌いたくなっちゃって。 後でメンバーにも送ったんですけども、みんなからヒンシュクでした。なんだよ一人だけズルいなって(笑)」

そして今回の再現ライブは鈴木茂さんがバンマスとして指揮をとり素晴らしいメンバーが集まりました。

「病院に入っている時に、茂こういう風にやってくんないって電話したんですよ。すぐ彼、OKしてくれて。今回、ティンパンの生き残りは茂だけなんですけど、やっぱりみんないいミュージシャンで。例えば屋敷豪太くんのドラムとかやっぱり彼のビート感ですね。みんな気持ちいミュージシャンです。家族みたいな仲間なんですけど」

と、嬉しそうに笑います。


そして、そんなアルバムの中でも小坂忠さんの代表作中の代表作「しらけちまうぜ」について、小坂さんに改めて今回の聞き所を話していただきました。すると意外なエピソードが。

これはもともと『しらけちまうぜ』って曲じゃなかったんですよ。 今聞いてもらってるのは曲が細野くん(細野晴臣)で詞が松本くん(松本隆)なんだけど、でも最初はね、詞も曲も細野くんだったの」

え!そうだったんですか?

「うん。でその時のタイトルは『ビビディバビディブー』(笑)。
曲がいい感じだったんで、レコード会社はコレをシングルにしたいと。だけどシングルにするのに『ビビディバビディブー』はなあ(笑)ってことになってね。それで、じゃあ詞をなんとかしようかってことで松本に白羽の矢が立ったんですよ。それでできたのがこの『しらけちまうぜ』です」

ビビディバビディブー』だったら果たして歴史に残ったかどうか。思わず笑ってしまいました。

「松本も大したもんでしょ。最初からこうなってた、みたいな詞を書いてね。しかも『しらけちまうぜ』なんてフレーズ。おしゃれなやつですよ」と小坂さんも笑います。

さらに現在歌うにあたってもうひとつ驚きの変更点を披露してくれました。

「もうひとつ深掘りをするとね。これ75年の『HORO』ではキーがFなんですよ。でもこのライブアルバムではGで歌ってるの

ということはキーが上がっているんですか?一般的には歳とともにキーは落ちるなんて言われますが、そのわけは?

ふふ。ギター弾きやすいから(爆笑)単純な理由なんだけどね。」とニヤリと笑って「僕ね幸いなことにキーが落ちないんですよ。 だから昔より高いキーで歌えるの

素晴らしい喉。実際今回のアルバムでは驚くような伸びやかな小坂さんのボーカルを確認することができます。

「ま、というのがこれのききどころかな。(爆笑)」

その後もこの名曲は今に至るまで多くの人にカバーされ続けています。

「まあ、歌ってて気持ちいいですよね」

今回の『HORO 2018 Special Live』で聞ける「しらけちまうぜ」は、現在第一線のミュージシャンにより見事に今の空気に似合うバージョンになっています。

「でね、11月の26日にね、ティンパンと一緒にやったんですよ」

先日、11月26日には一夜限りのプレミアムコンサートとして、今回の再現ライブに参加したメンバーに加え、尾崎亜美、さかいゆう 、高橋幸宏、田島貴男、Char 、BEGIN 、槇原敬之、矢野顕子 、後藤次利、吉田美奈子そして荒井由実(!)などなど列挙しきれぬほどの、世代を超えた新旧の一流アーティストが揃いました。

「ま、みなさんこの『HORO』ってアルバムで刺激を受けたミュージシャンって感じで参加してくれたんですけどね。僕が18の時に音楽で仕事を始めて。その時ってね、自分の二世代上の人たちと一緒の音楽ができるって想像つかなかったの。だけども今それができるんですよ。だからホントに変わったと思う」

だけど、そんな時代を切り開いたのは他でもない小坂さんの世代のアーティストさんなのでは。

そういうと、ひたすら照れ笑いをすする小坂さんでした。

 

一つのアルバム、一つの曲。
それが時代を越えて大きく再び花開いた感のある今回のライブとアルバム。

小坂さんのお話しを聞いた上で改めてまた聞くと、歴史とその上での古さどころか、まさに今の音楽としての新鮮な驚きがありますね。

今回お迎えした小坂さんは「いい声」でそんなエピソードの数々を時折思い出しつつ、時に子供のような無邪気な笑顔でたっぷりにユーモアを交えながらいろんなお話しをしてくれました。

まさに生き様をそのままぶつけたようなライブとアルバムを経て、来年はどんな年にしたいですか?

「これからどうなっていくんですかね。だけどね、歌える限りは歌っていきたいと思ってますんで、来年もがんばりますよ」と、嬉しいお答えをしてくれました。

最後にリスナーの皆さんへメッセージ。

「どこかで見かけたら聴きにきてくださいね」

そうやってにっこり笑った小坂さん。
その顔は今も走り続けている最前線の充実感に溢れているような気がします。ですよね?


  

chu kosaka web site ? 小坂忠のオフィシャルサイト(外部リンク)

次週、12月8日は大黒摩季さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。



毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はこはまもとこです。

今日のゲストはフラメンコギタリスト、沖仁さん。 #沖仁

この親しみやすくて優しそうな沖さん。実はスゴい人。
3大フラメンコギターコンクールの一つであるムルシア"ニーニョ・リカルド"フラメンコギター国際コンクールで、日本人で初めて優勝したことをはじめ、ジャンルも国も越えて大活躍。

傍らに愛用のフラメンコギターを携えてにこやかにスタジオ入りです。


この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口

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沖さんが今日のドライビングミュージックで選んでくれたのはJosemi Carmonaの『Ni Contigo Ni Sin Ti  (feat. Alex Cuba)』。

「スペインのマドリッドの人でフラメンコギタリストではあるんですけど、元々ケタマって言うスペインのポップスグループをやっていて非常に洗練されたセンスなんですね。 この曲もいわゆるフラメンコサウンドと違うんですけど根底にはフラメンコギターとリズムがあって最先端な感じのスペインのフラメンコポップスみたいなことになりますね」

やっぱりスペインはフラメンコベースのポップスが主流なんですか?

カフェとか入ってるとポップスは流れているけど、絶対にフラメンコギターが入ってます、うん。 ほぼ100%。フラメンコギターが入ってないと物足りないみたいな感じがあるのかな」

あのフラメンコの独特のリズム、あれ やろうと思ってもできないですよねえ。

「向こうのロマ民族の人たちはリズム遊びで一晩中遊んでるくらいですからね。手の叩き方『パルマ』って言うんですけど、それだけが仕事の人もいるくらいで奥深いんですよ。うん。 住んでる街によって叩き方が違うとか、ノリが微妙に違うとかその町の地区によってまた違うとか、まあすごいマニアックな話になっちゃってますけど(笑)」

「こういう音楽を聞くと、向こうのタクシーに乗ってる時の感じを思い出しますね。絶対フラメンコだったりフラメンコポップスがかかってますからね。うーん。運転手さんも運転しながら叩くんですよねパンパンパンパン。危ないんだけどね(笑)。学んで身についたと言うより湧き出てくる、止められないんでしょうね」


そんな沖さん、10月31日に日本スペイン外交関係樹立150周年を記念した、初のスペイン作品集『Spain』をリリースしました。

ロドリーゴの『アランフェス協奏曲』、タレガの『アルハンブラ宮殿の思い出』など、今まで収録する機会を温めていたスペイン由来の楽曲の他、ライブの定番曲『禁じられた遊び』、チック・コリアの『スペイン』など新しいアレンジで再録音した楽曲を収録。また、ボーナストラックには、大人気アニメーション『ユーリ!!! on ICE』で使用する楽曲『愛について?Eros?』の沖仁バージョンも収録されています。

今までもスペイン音楽とっ取り組んで来た沖さんですが、クラシックの名曲が多数収録されてタイトルも「スペイン」でザ・スペインという趣。

実は初めて弾く曲がほとんどだったんですよね。 クラシックギターの人が弾くのは当たり前なんだけど、それは僕らフラメンコギタリストの領域じゃないよ、みたいな。ちょっとナワバリの話じゃないけどそういうのがあるんですよ。それを踏み越えてみましたってことなんですね。」

なんと、そんな暗黙のなにかがあるなんてびっくり。

「そもそも僕らフラメンコの人間って五線譜が読めないからドレミが分かんないんですよ(笑)。ドの上だからレだろうみたいな(笑)クラシックの人はパッと初見で弾くじゃないですか。全っ然できないですよ。どんだけ苦労してるかっていうくらい大変なんですね。僕も少しクラシックをかじっていたので、全く読めないわけじゃないけれど、どえらい苦労しながら『これ本当にあってんのかな』って思いながらやってました。フラメンコの僕らはクラシックに手を出しにくいってのはそういったハードルもすごくありましたね」

なんか、初めて聞く驚愕の事実ばかり。スペインのギターの音楽だからなんとなく同じかも?なんてざっくり思っていたので意外でした。

「フラメンコってのはもともと即興性が高いし、ドレミで誰も解釈してないくって、手の形で覚えるんですよ。そもそも教わるレッスンとかも、師匠が目の前にいてその手の形を真似して同じように弾くってそういうレッスンなんですよ」

すごい。まるで落語か三味線のお話のようです。

「そうですね、民俗芸能ですよねフラメンコってのは。だからやっぱり、アカデミックなクラシックの世界とは水と油っていうところはありますよね。うーん」

そもそも沖さんはエレキギターから入って、カナダでクラシックギターと出会ったわけですよね。そこからフラメンコギターだって思ったのは何だったんですか?

「何か悩んだんですよね。当時クラシックギターでアメリカの音楽院に留学をすることが決まってて、クラシックって子供の頃からみんあがやってるじゃないですか。僕なんて高校出たぐらいから始めたもので、どこまで通用するのかって、そういう不安ももちろんあったし」

ギターを極めるべくクラシックの道を一度は選んだものの、沖さんにとってはそんな技術的な不安とともに、クラシックの世界と自分の相性みたいな漠然とした不安もあったようです。

路上で弾くのとかすごい好きで。クラシックをかじってたけど、それを路上でいつも弾いたり、カナダのカフェとかに行って弾かせてくださいつって、結構いいよ! って言ってくれて、ギャラは出せないけど夜ご飯食べさせてやるからとか、そういうノリが好きだったんですよね。そういう感じってクラシックのかんじと折り合わないような気がしてたし(笑)どっちかというとフラメンコに近いですよね、ストリート感とか。うーん。日銭を稼ぐとか、そっちに惹かれている自分がいて、その狭間で悩みましたけど結局勢いでフラメンコに決めちゃって、うーん」


そうやってフラメンコの道に進んで。
今回あらためてスペインのクラシックの音楽と向き合って発見はありましたか?

「すごくいっぱいありましたね。全部知ってるんですけどね曲は。それでなんで知ってんのかなと思った時に、自分の兄が子供の頃に聞いてたんだってこと思い出したんですよね。一歳上の兄がいて、幼少時代に隣から聞こえてきてたんだけど、それで自分の体に入ってたんだ、なんてこと今更気づいて。ロックとかやる前にそれが伏線として、スペイン音楽ってものが自分の中に入ってたんだってことに気づいたし、うん、だから、それを自分が今この歳になってやるって言うことは、何か今になってそういったことが解けて、何かひとつになってきたような手応えだったり、うん」

そんな自身の原点に思い当たったり、そしてなによりフラメンコギターにも改めて向き合う契機にもなったそう。

フラメンコギターって豊かなものだなあと今回本当に思いましたね。激しくかき鳴らして人を高揚させて躍らせるだけじゃないって言うか、ほんとにクラシックのオペラ歌手の方が歌いあげているメロディーをフラメンコギターでやるっていうことの重圧ももちろんあったんだけど、アリだな!ってやっと思えた っていうかそれは初めてでした。うん」

クラシック好きでコーラスもやっていたというこはまさん。2曲めに入っている歌劇「カルメン」からの一曲「ハバネラ」はいつか自分で歌いたいと思っていただけに、沖さんのギターの表現にいたく感激したそう。


そしてもうひとつ思い出したのは、当番組でもすっかりおなじみの小曽根真さん。近年、ジャンルを超えてピアノという共通項でクラシックの世界に果敢に挑戦していくお話が、ギターを端緒にジャンルを超えてクラシックに挑む、沖仁さんの姿に重なるところもあり、「クラシックとフラメンコ」って「クラシックとジャズ」の関係にも似ているなと思いました。 

「わかります。若い頃はクラシックってちょっと堅苦しいとか、それより『俺は溢れ出るパッションだ!』みたいなところもあったけど(笑)今さらながらクラシック音楽の偉大さっていうのが、歳とともに切実に感じるっていうか。そのこだわり抜いた『この1音じゃないと駄目』って書いたその1音の重さ、っていうのはやっぱりすごくあるし、それが何百年の時の洗礼を経てそれでも生き残ってきた、その説得力ってすごく今感じますね。うーん」


一方、今回のアルバムを聞くとクラシックの名曲たちの根底にもやっぱりスペインの音楽が流れているんだな。逆にそんな発見もありました。

「スペインのファリャ(はかなき人生)アルベニス(アストゥリアス) ロドリーゴ(アランフエス協奏曲)とかっていう人達の、特に今回収録した作品はフラメンコギターをかなり意識してるなーってのやってみてわかりましたね。だからこういった曲をフラメンコギタリストとしてカバーするっていうのは、作曲家の人たちも実は嬉しいんじゃないかな、みたいなことは勝手に思ってますよね。 そうあってほしいなというか。作曲家の人が聞いて、『なんだこれは』ってなんないで、『実はこういうことを意図してたんだよ』って言わせたいな、みたいなところは実はありましたね」

なるほど、このあたりは小曽根真さんも全く同じ様な事を、以前この番組でお話されてましたね。

今回のアルバムはそういう意味も含めて、「スペイン」というタイトルで改めてスペインの音楽に取り組んで新しい扉をまた開いたところもありそうですね。

「すごくそうですね。まだまだ色々やりたいことが増えたと言うか、うーん。そうですね。フラメンコギターっていいなあって(笑)今回思いました

繰り返しそう言って顔をほころばす沖さんのお顔を見ながら、今回、一番の収穫はこれなのではって思いました。それは意外と得難いことですよね。


沖仁 CONCERT TOUR 2018 福岡公演

福岡・電気ビルみらいホール
開場 16:30/ 開演 7:00
沖仁、崎洋一(Piano)、智詠(Guitar/Cho.)、容昌(Perc.)


今回の興味深くて楽しい話をたくさん聞いた上での今回のステージ、とても楽しみです。

「シンプルにフラメンコギターの豊かさだったり、奥深さだったり1音生まれただけでフワッとこう何か幸せな感じが自分の中に広がるんだけど、それをお客さんにそのまま伝えたいなと思ってます。ぜひいらしてください」

「随分マニアックな話になっちゃったなあと、何か心配だったけど(笑)何か話しながら気づいたこともあったし、小曽根さんもジャズの方だけどクラシックに挑戦してるし、話してて新しいものも感じられました。」

まだまだマニアックなお話もありそうで、いろいろお話を聞かせていただきたいところ。

落ち着いた声でニコニコお話をしていた沖さんですが、傍らをちょっと見て、

「フラメンコギター持ってきたけど触らなかったですね。」

来週もお迎えしてこの続きをぜひ。
フラメンコギターももしかしたら?

どうぞお楽しみに。

  

次週、11月24日も引き続き沖仁さんをお迎えします。どうぞお楽しみに!