番組紹介

放送時間: (土) 11:30-11:55
出演者:

こはまもとこ
香月千鶴(FM福岡)
ちん。(ラジゴン水担当)

提供:サウンドピュアディオ

毎週多彩なゲスト(ミュージシャン/映画監督/俳優/文化人 etc.)を迎えて、音楽トークを中心に展開する25分番組。「音」を「楽しむ」と書く「音楽」をゲストと一緒に紐解くことで、より深く、広く、音を楽しむことができるハズ。そんな音楽にまつわる私たちの知的好奇心を刺激する番組です。
メールのあて先は、 oto@fmfukuoka.jp まで。

SOUND PUREDIO presents 音解 これからの放送予定

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◆今後のラインナップ        


12月15日 大黒摩季
12月22日 中村中
12月29日 THE BAWDIES
※以降も続々待機中!どうぞご期待下さい!。                                        

放送予定は諸般の事情により予告なく変更する場合もございます。予めご了承ください。
☆この後も続々注目のアーティストが登場。これからもどうぞご期待くださいね!

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手は香月千鶴です。

今日のゲストは先週に引き続き大黒摩季さん。 #大黒摩季

先週も錚々たるメンバーが参加して8年ぶりにリリースされたニューアルバム『MUSIC MUSCLE』のお話しを中心に、パワフルに楽しくお送りしましたが今週はさらに深く、大黒摩季の音楽の裏側を覗いてみたいと思います。

今週は私たちが知ることができない、一つの楽曲がゼロから完成するまでの課程を聞くことができました。これって結構貴重ですよ。


この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


今日はドライブミュージックも『MUSIC MUSCLE』からまさにぴったり『CRASH & RUSH』をチョイス。しかも、とってもかっこいいカリフォルニアの思い出を披露してくれました。

「アガりますよね。これ若い頃に初めて行ったアメリカ一人旅の道のりで、カリフォルニアのドライブロードで行ったところを全部書いているんですね。レンタカーを借りて、その頃はブライアンアダムスが「♪I need somebody」とか流行ってましたねえ。エアロもボンジョビもきてましたね。途中途中でフリーウェイで流しながら。
あの頃マスタングを借りてオープンカーで髪ぼうぼうになりながら、髪は縛ったほうがいいですね。前見えなくなります、帽子も2秒で飛びます(笑)。それで私はビバリーヒルズホテル、ホテル・カリフォルニアのところに行って『ホテル・カリフォルニア』を流しながら、いいなあと思って楽しみにしてたら、工事中で!ブルーシートで真ブルーだったんです(笑)。これはもう一回来いってことかな?みたいな。そう思うしかなかったね悲しくて」

嬉し悲しのアメリカ一人旅。

さて、今日はその待望のアルバム『MUSIC MUSCLE』から、一つの曲をグッとさらに深掘りして、大黒摩季の音世界を紐解いていきましょう。

今回のアルバムは2枚組のボリュームで、これぞ大黒節のアガる「FIGHTING MUSCLE」、大人の癒し、いえ赦しの「RESTING MUSCLE」の2枚に別れたこのアルバム。

そんなアルバムから一曲、ピックアップしてくれたのはアルバムの中でもとりわけゆったりと大人の雰囲気の「Naturally feat. DIMENSION & KENNY from SPiCYSOL 」。

だけどこれ元気サイドの「FIGHTING MUSCLE」の方の7曲目に収められています。

「『FIGHTING MUSCLE』濃過ぎて途中で疲れてきたみたいな話になって(笑) ちょっと休憩しよう、外出よう一瞬、やっぱ海だ!て話になって」

なんとそこから曲作りがスタート。

ここではゼロから楽曲が出来上がる過程を聞くことができました。

「まず、海系サウンドをつくろうってことで、DIMENTIONの小野塚晃くんに『横でピアノ弾いてプリプロ(仮録音、準備)しようよ』っていって。
『曲は?』『今から』『本当にか!」『ほんとにね』みたいな。とりあえずイントロとか弾いてもらって『いいねソレソレソレ』みたいな感じでやってて。それで、晃くんが、もちょもちょやってる間に女子社員と『ねえ、海に行くなら誰と行きたい?』なんて女子トークしてて

この女子トーク、実は大切な歌詞作りの準備です。

「『どうするどうする年上?年下?』具体的にみんなでしてた。すると『やっぱり大事にされたいし、でもクドイの嫌だしやっぱちょっと年下かな?』なんて楽しい妄想トークしてて。 今回オリンピック決まったし千葉チームと最近仲良くしてるから一宮でも行っとく?そういう感じで楽しみながらまず歌詞をブワーッと打っちゃった」


歌詞があらかた見えたところで再び楽曲作りです。

「『晃くんこういうことだから風景』って歌詞渡して、『わかったAORだね?』『海寄りのAORね』。それでホントに古き良き80年台のAORだね。70年代じゃなくて 『George Benson とか出てきてもいいよ』なんていいながら。 ちょこちょこオーダーが入りつつ」


こうして80年代風AORサウンドと歌詞が見えてきました。
さらに意外な場所で今回のフィーチャリングメンバーと出会います。

「仲間たちと波乗り行ってたら、SPiCYSOLのKENNYとAKUNが来てたのね。あたしその時初対面。ぶっちゃけ光永亮太だけども、亮太と DJ TSUYOSHIくんが連れてきたのよ。そん時レゲエのWATARUくんもいて、WATARU、最近私のライフセーバーなんですけど(笑)。でWATARUが『姐さん、今度新譜出るんでもらってもらってもいいですか』って持ってきて、そしたらSPiCYSOLの二人も『ぜひ聞いてくださいよ!』って言ってきて。
で、帰り。じゃあもらったCD聞こうかって。渋滞が激しかったんですよ。で、WATARU、SPiCYSOL、WATARU、WATARU、SPiCYSOL、SPiCYSOLみたいな9回しくらいみんなのを聞いたんですよ(笑)。
そこで『あー』と 年下いた!それでスタジオで『あたしKENNYを呼びたい』海声をそのまま呼んだほうがわかりやすいよ。つて」

でも多くのアーティストとつながりのある大黒さん。例えば海といえば、付き合いも長いSkoop On SomebodyのボーカリストTAKEさんなんかピッタリのような。

「そうも言われたんだけど、TAKEは同い年だから。さっきの女子会の規格から外れるんで!
年下で初初しい声がいいね。TAKEに包まれたいときもあるんですけど今回はKENNYだと。
そしたらKENNYがすごい喜んでくれて『行きますー』って言ってくれて」

そこで新たなボーカルを決めると、また作曲の小野塚晃さんにさらに追加オーダーです。

「『晃くんすみません...』って『 急激に2番で転調してもいいですか?』『えーーーー!』って(笑)。『戻ったときにも戻りやすいやつで、EフラットメジャーからAフラットメジャー、4度かなあ』なんていいながら『もう、相変わらずムチャ振りだねえ』とかいいながら。
また晃くんの転調の仕方がね、徐々にしないでパックリねえ2拍で転調しちゃったんだねえ。帰り道はまたスルーっと私のキーに戻っていくんだけど。 やっぱりね匠がやるとね秀逸ですよねそういうところ」


さてそうやってやっと出来上がった楽曲とKENNYさんを従えてレコーディングです。
メンバーそれぞれが超テクニックの集団であるDIMENSIONですが、ここでは余白を活かしたゆったりとした演奏がちょっと意外です。

「『弾かないで』って言ったから。たくさん弾かないで、音でフロウしたいからってね。 あの人達ぐらいになるとスーパー引き算ができるから。私も最近やっと出来るになったんですけど『歌わない伝える』歌わないところをつくるっていうね」

大人の引き算の美学です。このあたりはさらに具体的にお聞きしました。

「イントロの『ヒョーン』ところもあるんですね、そこも最初はピルピル吹いてたのね。だから『ううん。こんなにピルピル吹く人が海岸にいたら気持ち悪いでしょ』つって(笑)遠くから聞こえてこようよって。 ちゃんとリバーブ品のいいやつかけるからってね。

わたしたちそういう一言で、あのレベルの人達はああせいこうせい言わなくて良くなるんですよ。その後はもう放っときで。『そろそろどうだい爺さん?』っていくと『おう、婆さん良くできだぞ』ってかんじで『聞いてみ?』『お。ここの余計なところは痺れるねえ』リフがダブってるんだけどね。『すみません、ツインギターをこの曲で連れてくる予算はないんですけど...』『でも、そこはお愛想でしょ!』っていって。『ここはkatsuo(勝田一樹)には譲らんよ」とかいって増崎さんがオブリ(裏メロディ)を入れて、そしたらあそこは阿吽だからその前後にkatsuoちゃんが絡んできたり。
で、晃くんのエレピは最初から二人に演らせるつもりでほとんど余計なことをしてないという」

レコーディングの風景が浮かぶよう。一流のプロの阿吽の呼吸で高度な演奏から予算の管理まで(!)

一方、歌うKENNYさんにとってはなかなかハードルが高かったようです。

「ちょっと大変だったね。まだ経験してない2拍3連、4拍3連っていうその3連のリズムの中抜きとかね。(一節歌ってみせる)こんなふうに隙間がベッタリしないで、波が弾けてる感じに聞こえると思うんですね。」

ここでその微妙な違いについて大黒さんが実際に歌って比較をしてくれました。

「KENNYは『おしりが引き締まります』って言ってましたね(笑)。だけど、あの子は天才的でシャープに『われは隙間を入れたぞえ』みたいにならないんですね。体の中に自分のリズムがあるからま、あるいリズムがあるからちゃんと隙間で休んでいるのにスラーがかかってて(音と音がなめらかに繋がっている)うん、コイツやっぱ天才と思いましたね。

幼いハスキーがたまらない好物でしてね。あの子に『夢中になれば時は止まるよ』って言ってほしかったの。あの声で」

大人の時が止まらないのはそのものに夢中になってなくて散漫で、あれもイライラこれもイライラ、いろんな前後周りを気にしすぎてるから。仕事だって夢中になれば楽しいのに。苦痛にしてしまってるのはその散漫な気持ちだと思うんですよ。

それをあたしに言われると説教臭くなっちゃうのでKENNYに言わせたかったの。そういうのを海で言われると、ハイすみませんてなるんじゃないですか」


そうしてついに楽曲は完成しました。
DIMENTIONが奏でるちょっと懐かしくて爽やかな潮風も感じそうなAORサウンドに乗せて、大黒摩季さんのボーカルとKENNYさんの甘くはスキーな声が心地よい極上のメロウ・チューンができあがりました。
一つの曲がゼロから出来上がるまでこんなにドラマティックなドラマが色々あるとは。改めて聞くとまた全く違う感慨が浮かびそうですね。

そういうつもりで次聞いてごらん。そしたら溶けるから。かさついたハートにうるおいをだね」

そういって、大黒さんご満悦の笑顔です。

そんな一つ一つ労力と思いのこもった楽曲が27曲も詰まったアルバムを携えてのライブも、とても楽しみです。


MAKI OHGURO MUSIC MUSCLE TOUR 2019
5月6日(祝月)福岡県福岡市民会館 大ホール
開場:17:00 / 開演:17:30
5月18日(土)広島県広島上野学園ホール
開場:17:00 / 開演:17:30


とりあえず水分とウィダーinゼリーなんか持ってきた方がいいかもしれませんねバテますよ(笑)。テニスコートに行くくらいの気持ちで。着替え持っていったほうがいいような気がします」

2週に渡ってお届けした大黒摩季さんの音解。

多くの人の心に残るパワフルで力強い楽曲やメッセージ。そこにはプロの音楽家としての多くの技術と支える多くのミュージシャンとの信頼関係と努力、そしてなにより強い思いがすべて集まってできることがよくわかりました。

スタジオの大黒さんは、楽しいお話をたっぷり交えながら私たちをリラックスさせて、気がつくと語るべき音楽についてスッと私たちの心に届けてくれまいた。素敵な笑顔と細やかな気遣い。本当に素敵な方でした。

「また呼んでください!」

最後にそう笑顔で言ってくれた大黒摩季さん。
次にお迎えする日がまた楽しみになりました。

  

大黒摩季 公式 WEB SITE (外部リンク)
次週、12月22日は、中村中さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。



12月8日のゲストは大黒摩季さんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手は香月千鶴です。

今日のゲストは大黒摩季さん。 #大黒摩季

数多くのアーティストのコーラスとして経験を積み、1992年「STOP MOTION」で歌手デビュー、以降「チョット」「夏が来る」「ら・ら・ら」「熱くなれ」などのヒット曲と活躍はご存知の通り。

久しぶりの対面に、香月さんも思わず「摩季ネエ!」と声を上げて歓迎です。

そんな大黒摩季さんがチョイスした今日のドライビングミュージックはスウィングアウトシスターの『Break Out』。

「あの人たちやっぱり洗練されていてポジティブだからオラオラゴリゴリしてるところがないし、あとはスタイリッシュですよね。このスウィングアウトシスターが出てきた頃、気分的にバブバブバブルでねー。みんなでよせばいいのに免許取り立てでなのにオープンカー借りちゃって。私はその頃ずーっとスタジオこもってたけどね(笑)。 世間はどいつもこいつもホテルをとってドンペリ開けて みたいな時代でしたね、石田純一さんは未だに靴下履いてないけど(笑)。そんな時代にスウィングアウトシスターはFMから流れてきたわけですよ」

いきなりの大黒節で90年台を回顧。

「目の前の現実が苦しい時は目をつぶって音楽聞くと違うとこに飛ばしてくれる」とにっこり。

今週の音解。やっぱり熱くなりそう。

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(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


そんな大黒摩季さん、6年間の活動休止を経て8年ぶりのニューアルバム『MUSIC MUSCLE』、を12月5日にリリースしました。活動休止の間に経験したことや思うこと、そしてデビュー25周年を経て培われたすべてを注ぎ込んだ、圧巻の全27曲が収録されています。

「やっとできました! ボジョレーヌーボーなら熟成しちゃって普通のヴィンテージになったぐらいの感じですよ8年て」

渾身のオリジナル曲とともに大黒さんがレコーディング中、今年8月に亡くなったアレサ・フランクリンに捧げる2曲のカバー「Respect 」と「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」も収められています。大黒さんにとって格別思い入れの深い楽曲だとか。

「私が生まれて初めてね、自分の歌をふきこんだ「ROYAL STRAIGHT SOUL」ってオムニバスアルバムなんですけど、まだ二十歳そこそこの私が『Respect 』に挑戦してたんですよ。 その時、実は『A Natural Woman』を歌いたかったけど『お前にはまだ早い』と言われて、その曲は坪倉唯子さんが歌ったのね。 その唯子師匠が『Respect 』でも一緒にコーラスやってて。

そのころは私もう怒られまくりですよ。リズムが悪いだの『突っ込むんじゃないよと』か『低いよ!』とか言われて。 そんな30年前の自分にリベンジしてみよう、初心に帰ろう。 アレサにもdedicatedしようと思ってね」

そうして今回再び「Respect 」と今の自分なら歌えると「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」の2曲を当時と同じメンバーでカバーしようと思ったんだそう。

結果、錚々たるメンバーが集合しました。

ポンタさん(村上ポン太)斎藤ノブさんに、私大好きだったベースの青木智人さんはもう亡くなられていて、で智さんの代わりに高水健司さん、大仏さんって呼ばれてる名ベーシストが入って、当時と同じ小島さんがピアノとオルガンで入って、ギターが今の時代から私の相棒、原田喧太でやりましたね」

そのレコーディングもなかなか大変だったよう。

「死にましたね(当時と)キーが一緒で。でも当時の自分にリベンジなんで。なんとかなりましたね(笑) あの頃ならなかった倍音が鳴ってるから、あの頃よりかっこいいです。自分で言うのもなんですけど」と満足げ。

その渾身のカバーは実はボーナストラック、あとはすべてオリジナルです。そのオリジナルだけで25曲!

アルバムはDisc1を「FIGHTING MUSCLE」、Disc2を「RESTING MUSCLE」 に分かれています。

「とりあえずやるぞ!って時の自分なりのプレイリストってみんなあるじゃない?例えば今日はプレゼン大変だから負けてられないぞ!っていう日は、強い曲ばっかり流してアゲていくでしょ。

私もやっぱり6年間、歌えない時にユーザー側だったので本当に音楽をそういう風に使っていて。やる気、戦う気の「FIGHTING MUSCLE」はアゲてくれる曲中心」

一方の「RESTING MUSCLE」は大人の大黒摩季さんの新境地とも言える楽曲が揃っています。

「大人はもうね、なんか癒しを買っても癒えないの。結局。自分の中に何か判断基準があってそれが許さないからみんなね。お金かけても癒えない、ていうことがわかった。だから『赦し』。大人の赦しアルバムが「RESTING MUSCLE」 、もう休む!休ませる。いつしか女子も、自分自身に負荷をかけてキーキーやってる間に乾いちゃったりするでしょ。 だからまず自分を許してあげれば人も許してあげれるから。そうすると場も和むしね。 結局自分の中の呪いをおろしてあげないとね

香月さんも「誰かに鎧を脱がせてくれるのを待っていてはだめですね」と同感。

「脱がせてくれるのを待ってたりすると、どんどん着込んだりするじゃない(笑)。そんな奇特な男性あんまりいないのよ。せめて重たいフリでもできればいいんだけど、キャリアの女の人は重たいフリさえしないからプライドがあって。 だから自分を赦してね」

そんな女性の気持ちを代弁するように「RESTING MUSCLE」はストレートなブルースサウンドの「女はつらいよ。」からはじまります。

「『どいつもこいつも人任せ、消えてやろうか』ですから(笑)」


Disc1の「FIGHTING MUSCLE」はこれぞ大黒摩季の「LOVE MUSCLE」からスタートします。

「テッパン系ですよね。 ウチのスタッフ女子二人が『摩季さん「熱くなれ」みたいのができてくれると盛り上がると思うんですけど』 ていうのを会うたんびに言われて。 そんなに言うかな!結構モリモリだよ、ゲップだよすでに(笑)だけど、最後の最後にやっぱり食いつかれたんですよ。 でまあ、たまにはスタッフの願いも叶えてみるか、みたいなってことで。仮タイトルは『熱くなる』って作ったんです(笑)

そしてこの曲では大黒さんゆかりのすごいメンバーが集まりました。

「当時の同じ時代を共に過ごしたやつらを呼ぶと一層そうなるんじゃないかと思って。サックスは『熱くなれ』でも吹いたDIMENSION の勝田一樹でしょ。それからチームは違うけど、ZARDとか多くをやってた徳永暁人(doa)、徳ちゃんにアレンジしてもらって、同級生のWANDSの柴崎くん(柴崎浩)にギター弾いてもらって、それに大島こうすけ ね。 それでリズム隊はどうしようかなーと思ったら、東京スクールオブミュージック専門学校ってところで私、教育顧問やってるんですけど、副校長で渡辺敦子さん(プリンセスプリンセス、リーダー/ベーシスト)いらっしゃって式典のたびに敦子さんと京子さん(プリンセスプリンセス、富田京子)がいてね。会うたびに「いつか一緒にやりたいね」て言ってて、私プリプリは全公演追っかけて観てましたから、奥井さん(岸谷香も許してくれるでしょうと。

あの二人って目をつぶって聞くと男なんですよ。 全然女の子っぽくないすごいアフターで強いし音太いし。アメリカのおじさんみたいなリズム隊みたいなんですよマジでね。

一方こっちのプリンスチーム? 柴ちゃん(柴崎浩)もギター界のプリンスだしこうすけとかもハデハデ軍団でしょ。だから下をグーンと抑えてもらいたいなって思ってて。じゃあぜーんぶ集めてしまえ90年台、イエーイみたいな。そしたらなんと全員集まってくれた」

大黒摩季さんの人徳ですよねえ。

「いやいや。やっぱり仲間?みんなそれぞれバンドも解散したりするから異常にアツいバンドになっちゃって。最後は、どいつもこいつも弾きまくってカオスみたいな状態になっちゃって、ミックス大変だった(笑)ぜひぜひこれは聞いてもらいたいですね。元気出ちゃいますから」

結果、今の音楽ファンはもとより90年台青春を送った人たちも感涙のアガる一曲となりました。


MAKI OHGURO MUSIC MUSCLE TOUR 2019
5月6日(祝月)福岡県福岡市民会館 大ホール
開場:17:00 / 開演:17:30

5月18日(土)広島県広島上野学園ホール
開場:17:00 / 開演:17:30


ライブも楽しみ。
「マッスルマッスルになると思いますよ! ジャケットの人に!」

そういえば今回のアルバムビジュアル。大黒さんの美しい上半身裸のバックショットです。「ほぼ修正なし」だそうですよ。カッコいいですねえ。

「ん。今ちょっとたるんでる(笑)。レコーディングしてたからうん。 でもコレくらい持っていかないとライブはバテますからね」

どうすればこんなに美しいスタイルになるのか、憧れますね。

あなたカラオケでやってみなさいよ大黒摩季連発で25曲。こんな体になるって。メタボなおじさんたち!インナーマッスルができてくるとね内臓をちゃんとね支えてくれるので、縦に突き出たお腹は減りますよ! ジーンズのインチひとつ下がっただけでポジティブゲージ、ガーンと上がりますでしょ。大事ですよね自分のこと好きですパワーってね」

と、大黒摩季エクササイズのすすめ?なんか元気づけられちゃいましたね。


もとよりパワフルでいつも周囲を元気にせずにはいられない大黒摩季さんですが、今まで以上に生命力にあふれて快活に、あらゆることを楽しそうにお話する姿は、現在に対する感謝と喜びが溢れ出るようで、お話しを聴いているだけで元気になります。そして包まれるような優しさに心の芯が暖かくなるような安心感も。まさに今回のアルバムそのものだな。と実感しました。


まだまだ色々なお話し聞かせていただけそうです。
来週もお迎えしてさらに、大黒摩季さんの音世界をもう少し紐解いていただきましょう。

今週はここまで。とりあえず皆様にメッセージです。

「もうね、復帰できたその日から、歌えることが、当たり前のアーティスト活動が幸せでならなくて、人生で一番今がアーティスト活動が楽しいです。そんな私を見てみなさんもぜひぜひね、自分のふつふつとしているモノ一個だけでも毒出したり、何かに向かってくれたり、私っていうきっかけで何か気がついてもらえれば本望なのかなと思うので『MUSIC MUSCLE』、昔、家にあった薬箱みたいに、ここが弱ったな?と思ったらこの曲が出てくるみたいに使っていただいて、日々の暮らしのお役に立てれば本望です。

来週も頑張りマッスル」

期待してマッスル!

  

大黒摩季 公式 WEB SITE (外部リンク)

次週、12月15日は引き続き大黒摩季さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。

12月1日のゲストは 小坂忠さんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はこはまもとこです。

今日のゲストは小坂忠さん。 #小坂忠

1966年にグループサウンズの「ザ・フローラル」メンバーとしてデビュー。
以降も伝説の「はっぴいえんど」の前身となる「エイプリルフール」やソロアーティストとして、日本のR&B、ゴスペル、ポップスの礎を築いて、今も走り続ける小坂さん。

そんな音楽界の重鎮は、軽やかにやってきました。
自らピックアップしたドライブミュージック、ビル・ウィザースの『ラブリー・デイ』を聴きつつ、よく通る低い声で「ワクワクするでしょ。朝気分が悪くてもこれかけるとね、上がるんですよ」と微笑む小坂さん。

とても素敵な大人の音解の始まりでした。

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そんな小坂さん。今年3月にビルボードライブで、R&Bをいち早く取り入れた代表作にして70年代ロックの名盤中の名盤『HORO』の全曲再現ライブが行われました。

そして、そのライブをまるごと収録したライブ盤『HORO 2018 Special Live』が8月にリリースされました。

「去年、ちょっと大病患ってそれで入院生活してたんだけども、元気になって歌えるんだったら何歌おうかなと色々考えてたわけ。それで僕のボーカルスタイルの原点っていうのが、やっぱこのアルバムなんですよ。だからもう一度このアルバムで僕の原点に帰る、そういうライブをやりたいなということで」

1975年に発表された『HORO』は、細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆のティン・パン・アレーのメンバーに加え矢野顕子、吉田美奈子、山下達郎、大貫妙子、ストリングス&ホーン・アレンジ矢野誠が参加して当時の邦楽シーンに衝撃をもたらした作品です。

今回収録された『HORO 2018 Special Live』は鈴木茂、小原礼、Dr.kyOn、屋敷豪太、斎藤有太、Aisaといった再び豪華なアーティストでオリジナルのアルバム通り曲順もそのままに再現されました。

「多分他の方もそうだと思うんだけど、75年に出してからあのアルバム通りにやったライブなんてないんですよ」

今は音楽もシャッフルできる時代。

昔のアナログ盤っていうのはA面が終わったらB面にひっくり返さないといけない。そういうブレイクの時間もあったし、ああいうのが大事だったんですけどね」そう言って少し複雑な表情で微笑みました。

小坂さんのMCも楽しいこのアルバム。そんなお話しを聞いて改めて耳を傾けると1曲目から順番にやる意味も理解できますね。

「初めての試みだったけど、でもやって面白かったですよ。 でも、A面最初の「HORO」なんかをね、僕が出てくるタイミングをイントロにプラスしたりとか。 だからアルバム完全に再現じゃなくて、ま、ライブにアレンジしてってかんじですね」

小坂忠さんの華々しいいつくつもの活躍と作品の中でも「HORO」は特別な作品。
かつて「HORO」は2010年に16chのマルチトラックが発見され、ボーカルだけをレコーディングし直した『HORO2010』としても発売されました。

「75年の元のテープが出てきたのね。それを聞いてたら歌いたくなっちゃって。 後でメンバーにも送ったんですけども、みんなからヒンシュクでした。なんだよ一人だけズルいなって(笑)」

そして今回の再現ライブは鈴木茂さんがバンマスとして指揮をとり素晴らしいメンバーが集まりました。

「病院に入っている時に、茂こういう風にやってくんないって電話したんですよ。すぐ彼、OKしてくれて。今回、ティンパンの生き残りは茂だけなんですけど、やっぱりみんないいミュージシャンで。例えば屋敷豪太くんのドラムとかやっぱり彼のビート感ですね。みんな気持ちいミュージシャンです。家族みたいな仲間なんですけど」

と、嬉しそうに笑います。


そして、そんなアルバムの中でも小坂忠さんの代表作中の代表作「しらけちまうぜ」について、小坂さんに改めて今回の聞き所を話していただきました。すると意外なエピソードが。

これはもともと『しらけちまうぜ』って曲じゃなかったんですよ。 今聞いてもらってるのは曲が細野くん(細野晴臣)で詞が松本くん(松本隆)なんだけど、でも最初はね、詞も曲も細野くんだったの」

え!そうだったんですか?

「うん。でその時のタイトルは『ビビディバビディブー』(笑)。
曲がいい感じだったんで、レコード会社はコレをシングルにしたいと。だけどシングルにするのに『ビビディバビディブー』はなあ(笑)ってことになってね。それで、じゃあ詞をなんとかしようかってことで松本に白羽の矢が立ったんですよ。それでできたのがこの『しらけちまうぜ』です」

ビビディバビディブー』だったら果たして歴史に残ったかどうか。思わず笑ってしまいました。

「松本も大したもんでしょ。最初からこうなってた、みたいな詞を書いてね。しかも『しらけちまうぜ』なんてフレーズ。おしゃれなやつですよ」と小坂さんも笑います。

さらに現在歌うにあたってもうひとつ驚きの変更点を披露してくれました。

「もうひとつ深掘りをするとね。これ75年の『HORO』ではキーがFなんですよ。でもこのライブアルバムではGで歌ってるの

ということはキーが上がっているんですか?一般的には歳とともにキーは落ちるなんて言われますが、そのわけは?

ふふ。ギター弾きやすいから(爆笑)単純な理由なんだけどね。」とニヤリと笑って「僕ね幸いなことにキーが落ちないんですよ。 だから昔より高いキーで歌えるの

素晴らしい喉。実際今回のアルバムでは驚くような伸びやかな小坂さんのボーカルを確認することができます。

「ま、というのがこれのききどころかな。(爆笑)」

その後もこの名曲は今に至るまで多くの人にカバーされ続けています。

「まあ、歌ってて気持ちいいですよね」

今回の『HORO 2018 Special Live』で聞ける「しらけちまうぜ」は、現在第一線のミュージシャンにより見事に今の空気に似合うバージョンになっています。

「でね、11月の26日にね、ティンパンと一緒にやったんですよ」

先日、11月26日には一夜限りのプレミアムコンサートとして、今回の再現ライブに参加したメンバーに加え、尾崎亜美、さかいゆう 、高橋幸宏、田島貴男、Char 、BEGIN 、槇原敬之、矢野顕子 、後藤次利、吉田美奈子そして荒井由実(!)などなど列挙しきれぬほどの、世代を超えた新旧の一流アーティストが揃いました。

「ま、みなさんこの『HORO』ってアルバムで刺激を受けたミュージシャンって感じで参加してくれたんですけどね。僕が18の時に音楽で仕事を始めて。その時ってね、自分の二世代上の人たちと一緒の音楽ができるって想像つかなかったの。だけども今それができるんですよ。だからホントに変わったと思う」

だけど、そんな時代を切り開いたのは他でもない小坂さんの世代のアーティストさんなのでは。

そういうと、ひたすら照れ笑いをすする小坂さんでした。

 

一つのアルバム、一つの曲。
それが時代を越えて大きく再び花開いた感のある今回のライブとアルバム。

小坂さんのお話しを聞いた上で改めてまた聞くと、歴史とその上での古さどころか、まさに今の音楽としての新鮮な驚きがありますね。

今回お迎えした小坂さんは「いい声」でそんなエピソードの数々を時折思い出しつつ、時に子供のような無邪気な笑顔でたっぷりにユーモアを交えながらいろんなお話しをしてくれました。

まさに生き様をそのままぶつけたようなライブとアルバムを経て、来年はどんな年にしたいですか?

「これからどうなっていくんですかね。だけどね、歌える限りは歌っていきたいと思ってますんで、来年もがんばりますよ」と、嬉しいお答えをしてくれました。

最後にリスナーの皆さんへメッセージ。

「どこかで見かけたら聴きにきてくださいね」

そうやってにっこり笑った小坂さん。
その顔は今も走り続けている最前線の充実感に溢れているような気がします。ですよね?


  

chu kosaka web site ? 小坂忠のオフィシャルサイト(外部リンク)

次週、12月8日は大黒摩季さんをお迎えします。どうぞお楽しみに。



毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はこはまもとこです。

今日のゲストはフラメンコギタリスト、沖仁さん。 #沖仁

この親しみやすくて優しそうな沖さん。実はスゴい人。
3大フラメンコギターコンクールの一つであるムルシア"ニーニョ・リカルド"フラメンコギター国際コンクールで、日本人で初めて優勝したことをはじめ、ジャンルも国も越えて大活躍。

傍らに愛用のフラメンコギターを携えてにこやかにスタジオ入りです。


この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口

(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


沖さんが今日のドライビングミュージックで選んでくれたのはJosemi Carmonaの『Ni Contigo Ni Sin Ti  (feat. Alex Cuba)』。

「スペインのマドリッドの人でフラメンコギタリストではあるんですけど、元々ケタマって言うスペインのポップスグループをやっていて非常に洗練されたセンスなんですね。 この曲もいわゆるフラメンコサウンドと違うんですけど根底にはフラメンコギターとリズムがあって最先端な感じのスペインのフラメンコポップスみたいなことになりますね」

やっぱりスペインはフラメンコベースのポップスが主流なんですか?

カフェとか入ってるとポップスは流れているけど、絶対にフラメンコギターが入ってます、うん。 ほぼ100%。フラメンコギターが入ってないと物足りないみたいな感じがあるのかな」

あのフラメンコの独特のリズム、あれ やろうと思ってもできないですよねえ。

「向こうのロマ民族の人たちはリズム遊びで一晩中遊んでるくらいですからね。手の叩き方『パルマ』って言うんですけど、それだけが仕事の人もいるくらいで奥深いんですよ。うん。 住んでる街によって叩き方が違うとか、ノリが微妙に違うとかその町の地区によってまた違うとか、まあすごいマニアックな話になっちゃってますけど(笑)」

「こういう音楽を聞くと、向こうのタクシーに乗ってる時の感じを思い出しますね。絶対フラメンコだったりフラメンコポップスがかかってますからね。うーん。運転手さんも運転しながら叩くんですよねパンパンパンパン。危ないんだけどね(笑)。学んで身についたと言うより湧き出てくる、止められないんでしょうね」


そんな沖さん、10月31日に日本スペイン外交関係樹立150周年を記念した、初のスペイン作品集『Spain』をリリースしました。

ロドリーゴの『アランフェス協奏曲』、タレガの『アルハンブラ宮殿の思い出』など、今まで収録する機会を温めていたスペイン由来の楽曲の他、ライブの定番曲『禁じられた遊び』、チック・コリアの『スペイン』など新しいアレンジで再録音した楽曲を収録。また、ボーナストラックには、大人気アニメーション『ユーリ!!! on ICE』で使用する楽曲『愛について?Eros?』の沖仁バージョンも収録されています。

今までもスペイン音楽とっ取り組んで来た沖さんですが、クラシックの名曲が多数収録されてタイトルも「スペイン」でザ・スペインという趣。

実は初めて弾く曲がほとんどだったんですよね。 クラシックギターの人が弾くのは当たり前なんだけど、それは僕らフラメンコギタリストの領域じゃないよ、みたいな。ちょっとナワバリの話じゃないけどそういうのがあるんですよ。それを踏み越えてみましたってことなんですね。」

なんと、そんな暗黙のなにかがあるなんてびっくり。

「そもそも僕らフラメンコの人間って五線譜が読めないからドレミが分かんないんですよ(笑)。ドの上だからレだろうみたいな(笑)クラシックの人はパッと初見で弾くじゃないですか。全っ然できないですよ。どんだけ苦労してるかっていうくらい大変なんですね。僕も少しクラシックをかじっていたので、全く読めないわけじゃないけれど、どえらい苦労しながら『これ本当にあってんのかな』って思いながらやってました。フラメンコの僕らはクラシックに手を出しにくいってのはそういったハードルもすごくありましたね」

なんか、初めて聞く驚愕の事実ばかり。スペインのギターの音楽だからなんとなく同じかも?なんてざっくり思っていたので意外でした。

「フラメンコってのはもともと即興性が高いし、ドレミで誰も解釈してないくって、手の形で覚えるんですよ。そもそも教わるレッスンとかも、師匠が目の前にいてその手の形を真似して同じように弾くってそういうレッスンなんですよ」

すごい。まるで落語か三味線のお話のようです。

「そうですね、民俗芸能ですよねフラメンコってのは。だからやっぱり、アカデミックなクラシックの世界とは水と油っていうところはありますよね。うーん」

そもそも沖さんはエレキギターから入って、カナダでクラシックギターと出会ったわけですよね。そこからフラメンコギターだって思ったのは何だったんですか?

「何か悩んだんですよね。当時クラシックギターでアメリカの音楽院に留学をすることが決まってて、クラシックって子供の頃からみんあがやってるじゃないですか。僕なんて高校出たぐらいから始めたもので、どこまで通用するのかって、そういう不安ももちろんあったし」

ギターを極めるべくクラシックの道を一度は選んだものの、沖さんにとってはそんな技術的な不安とともに、クラシックの世界と自分の相性みたいな漠然とした不安もあったようです。

路上で弾くのとかすごい好きで。クラシックをかじってたけど、それを路上でいつも弾いたり、カナダのカフェとかに行って弾かせてくださいつって、結構いいよ! って言ってくれて、ギャラは出せないけど夜ご飯食べさせてやるからとか、そういうノリが好きだったんですよね。そういう感じってクラシックのかんじと折り合わないような気がしてたし(笑)どっちかというとフラメンコに近いですよね、ストリート感とか。うーん。日銭を稼ぐとか、そっちに惹かれている自分がいて、その狭間で悩みましたけど結局勢いでフラメンコに決めちゃって、うーん」


そうやってフラメンコの道に進んで。
今回あらためてスペインのクラシックの音楽と向き合って発見はありましたか?

「すごくいっぱいありましたね。全部知ってるんですけどね曲は。それでなんで知ってんのかなと思った時に、自分の兄が子供の頃に聞いてたんだってこと思い出したんですよね。一歳上の兄がいて、幼少時代に隣から聞こえてきてたんだけど、それで自分の体に入ってたんだ、なんてこと今更気づいて。ロックとかやる前にそれが伏線として、スペイン音楽ってものが自分の中に入ってたんだってことに気づいたし、うん、だから、それを自分が今この歳になってやるって言うことは、何か今になってそういったことが解けて、何かひとつになってきたような手応えだったり、うん」

そんな自身の原点に思い当たったり、そしてなによりフラメンコギターにも改めて向き合う契機にもなったそう。

フラメンコギターって豊かなものだなあと今回本当に思いましたね。激しくかき鳴らして人を高揚させて躍らせるだけじゃないって言うか、ほんとにクラシックのオペラ歌手の方が歌いあげているメロディーをフラメンコギターでやるっていうことの重圧ももちろんあったんだけど、アリだな!ってやっと思えた っていうかそれは初めてでした。うん」

クラシック好きでコーラスもやっていたというこはまさん。2曲めに入っている歌劇「カルメン」からの一曲「ハバネラ」はいつか自分で歌いたいと思っていただけに、沖さんのギターの表現にいたく感激したそう。


そしてもうひとつ思い出したのは、当番組でもすっかりおなじみの小曽根真さん。近年、ジャンルを超えてピアノという共通項でクラシックの世界に果敢に挑戦していくお話が、ギターを端緒にジャンルを超えてクラシックに挑む、沖仁さんの姿に重なるところもあり、「クラシックとフラメンコ」って「クラシックとジャズ」の関係にも似ているなと思いました。 

「わかります。若い頃はクラシックってちょっと堅苦しいとか、それより『俺は溢れ出るパッションだ!』みたいなところもあったけど(笑)今さらながらクラシック音楽の偉大さっていうのが、歳とともに切実に感じるっていうか。そのこだわり抜いた『この1音じゃないと駄目』って書いたその1音の重さ、っていうのはやっぱりすごくあるし、それが何百年の時の洗礼を経てそれでも生き残ってきた、その説得力ってすごく今感じますね。うーん」


一方、今回のアルバムを聞くとクラシックの名曲たちの根底にもやっぱりスペインの音楽が流れているんだな。逆にそんな発見もありました。

「スペインのファリャ(はかなき人生)アルベニス(アストゥリアス) ロドリーゴ(アランフエス協奏曲)とかっていう人達の、特に今回収録した作品はフラメンコギターをかなり意識してるなーってのやってみてわかりましたね。だからこういった曲をフラメンコギタリストとしてカバーするっていうのは、作曲家の人たちも実は嬉しいんじゃないかな、みたいなことは勝手に思ってますよね。 そうあってほしいなというか。作曲家の人が聞いて、『なんだこれは』ってなんないで、『実はこういうことを意図してたんだよ』って言わせたいな、みたいなところは実はありましたね」

なるほど、このあたりは小曽根真さんも全く同じ様な事を、以前この番組でお話されてましたね。

今回のアルバムはそういう意味も含めて、「スペイン」というタイトルで改めてスペインの音楽に取り組んで新しい扉をまた開いたところもありそうですね。

「すごくそうですね。まだまだ色々やりたいことが増えたと言うか、うーん。そうですね。フラメンコギターっていいなあって(笑)今回思いました

繰り返しそう言って顔をほころばす沖さんのお顔を見ながら、今回、一番の収穫はこれなのではって思いました。それは意外と得難いことですよね。


沖仁 CONCERT TOUR 2018 福岡公演

福岡・電気ビルみらいホール
開場 16:30/ 開演 7:00
沖仁、崎洋一(Piano)、智詠(Guitar/Cho.)、容昌(Perc.)


今回の興味深くて楽しい話をたくさん聞いた上での今回のステージ、とても楽しみです。

「シンプルにフラメンコギターの豊かさだったり、奥深さだったり1音生まれただけでフワッとこう何か幸せな感じが自分の中に広がるんだけど、それをお客さんにそのまま伝えたいなと思ってます。ぜひいらしてください」

「随分マニアックな話になっちゃったなあと、何か心配だったけど(笑)何か話しながら気づいたこともあったし、小曽根さんもジャズの方だけどクラシックに挑戦してるし、話してて新しいものも感じられました。」

まだまだマニアックなお話もありそうで、いろいろお話を聞かせていただきたいところ。

落ち着いた声でニコニコお話をしていた沖さんですが、傍らをちょっと見て、

「フラメンコギター持ってきたけど触らなかったですね。」

来週もお迎えしてこの続きをぜひ。
フラメンコギターももしかしたら?

どうぞお楽しみに。

  

次週、11月24日も引き続き沖仁さんをお迎えします。どうぞお楽しみに!

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手は香月千鶴です。

今日のゲストは来年の結成30周年に向けてアニバーサリーイヤーに突入。the pillowsの山中さわおさんです。 #thepillows #ピロウズ

カーディガンにプリントT、デニム(愛用はLeeだとか)にサングラスは山中さんのおなじみのスタイル。サングラスはご自身のブランドのオリジナル?でしょうか。そんないつものスタイルでスススっと入ってきた山中さん。

今日はそんなthe pillowsの時にオルタナ、そしてキャリアを重ねた上で再び削ぎ落とされたシンプルなロックンロールへと向かう音楽の秘密を語っていただけるのでは?と期待していたのですが、それは良い意味で裏切られて、かなり興味深い音作りの秘密までお話してくれました。

 

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まず山中さんがセレクトした今日のドライビングミュージックは、ロス出身の5人組バンド、Grouploveの「Spun」から。これとても気持ちいいですね。

「日本の音楽だと歌詞に『車』って入ってるものを選んでしまうことが多くて単純すぎるので一旦置いといて(笑)。音楽的に考えると僕はドライブミュージックというと、やっぱりエイトビートのトツタツトタタってビートが気持ちいいですし、ローファイサウンドかハイファイかでいえば車の中だとエンジン音もあるのでハイファイサウンドの方が気持ちいいですかね」

この曲との出会いは?

「音楽が詳しい友達に教えてもらいました。あっはっはっはっは。
いろいろ僕のまわりに音楽を教えてくれる友達がいるので。この曲以外もね、本当にいい曲ばっかりでかなり好きなアーティストですね。ライブ行ったことないんですけどライブも見てみたい」

肩の力が抜けて良い空気感。音楽と同じく山中さんのお話もハイファイな感じで心地よいですね。

そんなthe pllowsも30周年です。

「そうなんです。なんか1年間ぐらいお誕生会を前倒しでおねだりする、というビジネスが流行ってるようで(笑)、それに乗っかっております」

30周年に向けて、過去にどのミュージシャンもやったことがないプロジェクトが始動するんだという噂も聞きましたが?

「そうなんですけど、まだ言うとなと言われていますんで、もやっとした受け答えになるんですけども。 直接的な音楽のことではないんだけども、ちょっとアニバーサリーならではの大きな遊びを一つやろうと思ってます」

情報解禁を心待ちにしておきましょう!

まずは記念の第1弾として、この9月に前作『NOOK IN THE BRAIN』より1年6か月ぶりに発売された通算22枚目のNEWアルバム『REBROADCAST』をリリースしました。

『ニンゲンドモ』『眩しい闇のメロディー』『BOON BOON ROCK』など全10曲を収録。初回限定盤には『ニンゲンドモ』のPVの他、アメリカツアーの映像が収録されています。

アルバムはキャッチーな「Rebroadcast」からスタートします。

「僕らのアルバムの曲名は必ずそのツアーの曲名になるんですね。
で前作、『NOOK IN THE BRAIN』の一曲目がちょっと変拍子のような曲だったので、今度は出るなりポップでキャッチーでイエーイ、ロックンロール楽しいぞ!みたいなそういう登場にしようかなと思って一曲目にしました」

バラエティに富んだピロウズらしいロックが並んでいますが、8曲目「Starry fandango」ではピコピコのファミコンのようなサウンドから始まります。ここにも今回のアルバムらしい仕掛けがあるようです。

「もともとこの音はトランペットでやりたかったんですね。ところがこの曲が持ってるキーというのが合わなくて、デモレコーディングで実際にトランペットで鳴らした時に出したい高い音が出なかったんですね。それで1オクターブ下の音にしてしまうと『パッパッパラ(↑)』ってやりたいのが、なんか『ブッブッブブー(↓)』って、ああやっぱちょっと違うやって(笑)。それでシンセでやってもなんかしっくりこなくて、結局、採用になったのは17,8年前のアルバムで『Thank you, my twilight』って曲がございまして、それで使った電子音なんですね。で『REBROADCAST』ってタイトルは再放送という意味なので、じゃあ、あえてまんま使っても結果的にはいいかっていうことで。その頃を知ってるファンにとっては『おお懐かしい!またこの音来るんだ』っていうそんな作りになっております。」

今回のアルバムは随所に、そんな自身の過去のアルバムで用いた音楽的トリックや、気に入っていたフレーズなどを確信犯的に使ったナンバーもたっぷりで、ファンにはたまらない一枚です。山中さん自身もアルバムとしての手応えもとてもあったようです。

「ありましたね。バランスがとっても良かったかなと。うん。常に僕は曲を作るときはポップでキャッチーな楽曲を作りたいと思ってるんですけども、そこに乗せる歌詞については割合、今回は曲調の割にはシリアスなテーマが多くて。20年、25年ぐらい応援してくれてるような人は『今度のアルバムすごいいいね』みたいなことを言っていただけるんで、なんか僕はシリアスな歌詞を書いた方がみんなにとってはしっくりくるんだなあってことを、なるほどと思いながら。まあロックンロール楽しいぜイエーイももちろん好きなんだけど、そうじゃない時には、本人にはわからない力を発揮してるのかなあ、なんて自己分析もあり、そんなところも含めて曲順も含めとてもバランスの良いアルバムができたなと思います」

そんな歌詞のお話も聞きながら、ここで香月さんアルバムを聞いていてちょっと気になった質問を。

山中さんは午前3時によく世の中を動き回ってるんですか

「そうなんですね。一曲目の『REBROADCAST』と『ニンゲンドモ』に「午前3時」が出てくるんですが、それいわれまで気づいてなかったんですね(笑)」

え!意識して使っているのかとばかり思ってました。

「普通そうですよね。ぼんやりしてました(笑)まあ 普通に自分の活動時間なのでフツーに出てしまってたっていうのと、音楽的には『REBROADCAST』の中の『♪うずくまってる午前3時』ってこの歌詞のリズムじゃないと気持ち良くないんですよね。『1時』じゃリズムが固い、『2時』だと字数が足りない、「3時」じゃないと英語の音節のように歌えて気持ちよくないんですね。 あ、『10時』はいいですね、でも場面が変わっちゃいますねダメですね(笑)」

そんな一曲ごとに語るべきポイントと思いが溢れているこのアルバムの中から、山中さん自ら一曲ピックアップして解説していただきました。その曲は、腰の座ったギターサウンドもかっこいいソリッドなロックナンバー3曲目の「ニンゲンドモ」です。

ところが一聴してシンプルなこの楽曲こそ、the pillowsらしいロックサウンドの真髄が隠されているのでした

「僕は今までのキャリアで99%、曲を先に書いて詞を後からその乗せるというスタイルでソングライティングしてきたんですけども、この曲は珍しく歌詞を先に書いたんですね。それ、僕にとってはとても珍しいことなんです。それと並行してこの曲のギターのリフを考えていて。なんとなく僕の中では、本来シンセサイザーでやりそうなフレーズをギターで弾けたらどうなるだろう、と思って。コンピューターゲームのような『テレテッテレテッテッテー』っていうフレーズをあえてギターでやってみました。結果、歌が始まったらその曲の前半はほぼギタリストは何もしないんですね。鳴ってるのはドラムとベースと僕の低音の響きだけで作ってるんですけど、本当の本当にそれだけにすると、スカスカになっちゃうんですね。なのでこの曲では実は聴感上みんなの意識に残らないギターをうっすら入れてるんです。そんな風にみんなが聴感上意識してない音を、隠し味みたいにたくさんうっすら足していくんです 」

つまりフレーズでの工夫とともに、サウンドとして細かな部分に「意識に残らないギター」まで細かな工夫を施してあるわけですね。

「そういうのは結構大事で、割と勢いのあるロックロールみたいな曲も、僕ら一発でせーのでやってるのではなくて、すごい細く緻密に作っていくんですね。僕らの世代のバンドって『やっぱロックンロール一発録りっしょ!』みたいな感じでいやってると思われるんですけど、実はめちゃめちゃ細かくデリケートに組み立てていくんですね(笑)」

ちょっと意外。そこには山中さんなりの、30年サヴァイブし続けるロックバンドとしての2010年台なりのロックのあり方が見え隠れします。さらに言葉を続けます。

「それは結構CDを作る上では重要で、特に近頃はどちらかと言うとスピーカーで大きな音量で聞くというよりは、イヤホンやヘッドホンなどでリスニングする人が増えている印象があって、僕自身もそうなので、そのヘッドホンで聞いた時に楽しめる工夫が必要だなと思って作っていますね」

時代ごとに聞く環境を意識しながら常にサウンドの工夫をしているということですね。

「流行って意味の音楽では時代には合わせないんですけど、僕らの音楽を聴く人の状況のことはやっぱり気にしますね

ここまでで、すでに「せーの!」ではないロックサウンドの裏側を垣間見ることができましたが、実はこの曲1曲の中にはまだまだ秘密がたくさん隠されています。

たとえば、このナンバーの軸となるギターの音色でさえ。

「ギターなどを録り方もですね、みんなが聞いてる音では録ってないんですね。迫力のある『ジャカジャーン』って音をそのまま録るよりは、結構丸めの音とかもうちょっと柔らかい音で録るんですね。それをミックスで、イコライザーを何種類か使って耳に痛いポイント、3kHzぐらいが耳に痛いのでカットして、でも4kHzはあげると気持ちいいんですね。その撮った音に対して4kHz、8kHzをグッとついてやると結果的に汚い音ではないけどすごく分離の良い本来のロックンロール的な「ジャカジャーン」の印象を残しつつ、とてもそのドラムとベースと歌のバランスが良い音になります。だから実際レコーディングで演奏してる時間ってのはそんなにかからないんですけど、音決めに時間がかかるんですよね。だからね。せーの!でロックンロール!じゃ全然ないっていう(笑) すごく神経質に作ってるっていう、しかも何回もやり直す派っていう(笑)レコーディングに関しては男らしさ一切ないっす!

そう笑う山中さん。ライブで感じる「あの音」をヘッドフォンでも同様に鳴らすには、細かい細かい細部への詰めと工夫があればこそ、なのかもしれません。

実は実際にその曲を聞きながら、スタジオでは実際にLRの音を抜いて聴き比べて見るなんてことも実際にやったりしてたんですが、香月さんも納得。隠し味があると気づかないけども、無くなってみるとその物足りなさがハッキリわかるんですね。みなさんもぜひ。

そして、アルバムの発売に続いて、この秋から30周年記念の第2弾として、『REBROADCAST TOUR』がスタートします。

REBROADCAST TOUR

2019年02月11日 (月・祝)
広島 CLUB QUATTRO

open 17:15 / start 18:00
   
2019年02月17日 (日)
福岡 DRUM LOGOS

  open 17:15 / start 18:00



「新曲など『REBROADCAST』からもちろん全部やるんですが同じ頃に、アニメーションの「フリクリ」のサウンドトラックも出てるんですね、その中にもう新曲は2 曲入ってまして、アメリカツアーではやってきたんですけど、国内はまだやってないので披露したいと思います」

the pillowsがアメリカで受け入れられる契機となった伝説のアニメ「フリクリ」への参加。この度18年の時を越えて劇場版『フリクリ オルタナ』、『フリクリ プログレ』として復活。このタイミングはなにかの運命めいたところも感じられますね。

そんな新曲も聞ける今回のライブ、ファンならずともぜひ観てみたいではないですか。

そんなわけで、楽しくも本当に意外なお話がいっぱいだった今回の音解。

「なんか専門的な話をラジオをすると嫌われるかと思ってたのであんまりしたことなかったんですけど、楽しかったですね」

と山中さんにもご満足いただいたようです。 始終笑顔で余裕を持って想像もつかないような色んなお話をしてくれました。お話の随所に今の活動に充実感と自信を感じられ、そのお話には説得力が溢れいましたね。


最後にリスナーの皆さんに山中さんから一言です。

「はい。来年30周年ということでもっと頑張りたいなと思ってるんですが。こんな長いことやってる僕らがまたちょっとすごく自信持って自慢のアルバムができたので、その『REBROADCAST』を聞いていただいて、是非ライブに遊びに来て下さい」

山中さん、ありがとうございました!

the pillows official web site (外部リンク)

  

次週、11月17日は沖仁さんをお迎えします。どうぞお楽しみに!

11月3日のゲストは小曽根真さんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はこはまもとこです。

今日のゲストはみなさんお待ちかね。10月6日、13日に続いてお迎えする小曽根真さんでした。 #小曽根真

まずはドライビングミュージックから。今回選んでくれたのは昨年発売したアルバム小曽根真 THE TRIOのアルバム「ディメンションズ」収録の「フローレス・ド・リリオ」です。

小曽根さんの笑顔とともにスタジオに爽やかな風が吹くような軽やかなナンバーです。

「気がつくともう秋と冬に向かってますけどでも、今年の夏は暑かったじゃないですか。じとーっとした風からだんだんその湿気がなくなってくる。からっとした感じのイメージで選曲をしてみました 」

前回のタワー・オブ・パワーのお話の時も風の話になりましたが、ピアノを弾いている時にも色んな風を感じていらっしゃるんでしょうか?

リラックスして音楽に身を委ねていた小曽根さん、「それは素晴らしいですね」と、ちょっと座り直しました。

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「それはすごく思いますね。なんか音楽は香りとか記憶を思い出すものいっぱいあるんですよ。
音楽って音なんですよね、聞きながらなんか感じてて、おそらく僕が感じてるものをこの音を通じて皆さんは何かこう自分なりの同じような風を受けてるじゃないかな、そう思いますね。 だからね。考えれば考えるほど芸術っていうのはそんな高尚なもんじゃなくて。体が生きていくのに必要な物が食べ物であれば心が生きていくのに必要なものが芸術だと思うんですよね。それ音楽だけじゃなくて絵もそうだし文学もそうだし、全て人間が作るものは、作った人からそれを使う人へ、あるいは聴く人へ、読む人へのコミュニケーションがあるわけですからそこが本当に芸術の一番の存在理由のような気がするんですね」

と、目を輝かせて一気にお話してハッと気づいたように、

「だから、もっともっとその芸術っていうものを貪欲に近づいてほしいなっていう風には...大したもんじゃないんですよね!こんなチャラいのが弾いているんですから、いやホント(笑)」

と少し照れ隠しです。いえいえご謙遜。
今年、小曽根さんは平成30年春の褒章で芸術やスポーツ、学術などの分野で活躍した人に贈られる「紫綬褒章」を授章されました。おめでとうございます。

「アレはもうびっくりしました。もっとおじいちゃんになってもらうもんだっていうと『なんだもらうつもりだったの?』って言わたりもしたんですけど(笑)」

さて、そんな小曽根真さん。
11月29日(木)に、『アクロス福岡シンフォニーホール』で
"音楽の父" バッハにも挑む『小曽根真 ピアノソロ "クラシック×ジャズ"2018』を開催します。



小曽根真 ピアノ ソロ "クラシック×ジャズ"2018

【スペシャルゲスト】中川英二郎 2018年11月29日(木)
開場18:30 開演19:00
福岡シンフォニーホール
※詳しくは小曽根真 Makoto Ozone Official Website (外部リンク)でご確認を。



そして今週は自ら「人生の一番のトラウマ」と語るバッハについてお話していただきました。それはそれは驚愕の小曽根さんの失敗エピソードだったんです。

「バッハのせいではないんですけどね。デビューして1985年にドイツのベルリンのシンフォニーホールでバッハの生誕300周年記念コンサートで僕呼ばれたんですね 。

バッハは即興の天才でしたから、僕はジャズミュージシャンとして即興をやってくれって言われて行ったんですね。 ほかはチェンバロだとかバッハの大家ばっかりが来て。すると、そのコンサートの当日の朝にプロモーターから電話で『バッハの曲、何弾きますか?』って。おい『僕はそんな無理だよ』って言ったら、即興はやってもらうけどその前にバッハの曲1曲やってからじゃないとって言われて。

えー。じゃあどうしようと。僕バッハは練習曲くらいしか弾けないですよ。つったらそれでいいから聞いてくれと言われたんですよ。困ったなと。中学校以来弾いてなかったんで、まずは楽譜屋さん行って楽譜を買って10時から本番の8時までずっと練習したんですよ、お昼ごはんも食べずに。

テクニック的には弾けるんです。だけど『人前で楽譜で弾く』ってこと自身が僕の人生の中で一度もなかったんで。 その初めてをよりにもよって、ドイツのベルリンのフィルハーモニーのホールで、しかもバッハの生誕300周年記念コンサートって。それで僕もパニクっちゃって。


(曲自体は)ものすごく簡単な曲なんですよ。でも最初の1音を弾くのにまず指が動かないんですよ、緊張しちゃって。それで、エイってめちゃくちゃゆっくり弾いたんですけど、わかりやすく3箇所間違ったんですね。

そのコンサートはそれぞれのパフォーマーの最初の3分間はヨーロッパ全土でテレビで放送されて、僕の演奏の間違った部分だけが流れたんです。その後の即興でお客さんが喜んでくれたところは全く流れなくて。で、その翌年からヨーロッパでの仕事が1/3くらい減ったんですよ」

聞いているだけで背筋が寒くなるような壮絶な経験。
それ以降、小曽根さんがバッハを避けたくなる気持ちもわかりますね。

「それから僕は、絶っ対に人前で楽譜をひかないって決めてたんですけど、まあその10年後に結婚して今の妻が、もう1回チャンスが来た時に『あのときはその日の朝言われたでしょ』って『今回はあんた半年練習する時間があるんだから頑張ってみたら』って言われて『ラプソディ・イン・ブルー』って曲を弾くことになるんですけど。だから85年に僕がバッハの曲を弾いて、二度と人前でクラシックを弾かないって決めた理由が実はバッハだったんです。 僕にとってはバッハはダブルにもトリプルにも怖い存在だったわけですね」

ただそんな痛い思い出だけでなく、バッハの音楽自体のあまりにも完璧で奥深さにも、覚悟を迫られるものものがあったようです。

「今は技術的には最近クラシックも弾いていますから演奏はできると思うんですね。ただそのバッハの音楽の深さっていうのは、本当にシンプル。シンプルなんですけど一音どれかをずらしてもバッハにはならない。本当にね、その宇宙人って言いたくなるぐらい完璧な音楽を書かれてるんですね。

ですから、僕らがでちょっとここ変えてみようぜって、例えばシェイクスピアの物語をちょっと(ひねって)アウトローに喋ってみようか、みたいなことを(バッハで)やると、気をつけないとすごく安っぽくなるんですよ。 あーそれやってほしくない、ってお客さんにそう思わせてしまうようなアレンジをしたら負けなんですね。

だから今回は、何かを変えるっていうことを目的にはしないで、自分のマーキングではなく、ただバッハの音楽を純粋に、自分がとにかく譜面通り弾いてみて、それでそこから初めて自分の心の底から聞こえてきた音があればそれをそこに即興で入れていくっていうことができればなと思ってるんですね」

なるほど。今まで小曽根さんがやってきたクラシックの取り組みとも違うのですね。

「そうですね。例えばモーツァルトって人は、自分がすごく即興でどんどん演奏したい人だったのであえて指定がないんですよ。逆にベートーベンは一音でも変えるものなら『どうぞ僕が書いた音よりキミがいい音見つけられるならどうぞ』という言葉が聞こえてくるんですよね。ところが、バッハはそれすら無くて、 絶対に揺るがない、何かこう、動かせない岩石のようなものがドーンっとそこにあるんですよね(笑)だからもう、なんかこうカンカンカンカンって叩いてるうちに『あ、こんなところがあったぞって見つかったらいいなってですね(笑)」

徹底的に削ぎ落とされて黄金率のようにシンプルで完璧なバランスで成立しているバッハの音楽。そこに音楽家として取り組むことの難しさがよく分かるお話ですが、一方で小曽根さんはその時代を越えて、人々をひきつけてやまないバッハの偉大さについてもアツくお話してくれました。

この話を聞くとバッハってやっぱり宇宙人かも?って思ってしまいますよ。

「YouTubeか何かで見たことあるんですけど、バッハのあるなにかの曲って譜面を逆さまにすべて後ろから弾いてみても見事な音楽になるんですね。しかもヘ音記号とト音記号と高音部記号と低音部記号とそれをひっくり返してて演奏してもちゃんとメロディになるんですよ。だからホントこの人宇宙人としかいいようがないんですよ(笑)。

いまだに聞いても古い感じがしないんですね。70年台の音楽を今聞くと、当時の流行ってた楽器の音色とか歌い方とかビートの種類とか。それで、あ、これ70年代80年代って時代入ってていいねとか言うじゃないですか。

(バッハは)300年前ですよ。でも全然古い感じしないですね。バロックの時代ですよ。
そう考えると、文明の進化とともに人間のクリエイティビティってのは実は落ちていってるんじゃないかなと思ったりもするし、あるいは逆に最初にそれをやった人があることによって、その世界は呪われるとも言えるのかなって。音楽界はレコードみたいなものができたおかげで、ものすごく呪縛があるわけですよね。 能の世阿弥は『能の舞い方を巻物に書いたおかげで、能の世界は呪われる』って言ってるんですね。あるものは巻物に書かれた通りに能を舞うし、もう一方の愚かなものはここに書かれてること以外で、能を舞おうとする」

小曽根さんのお話はいつも幅広い知識から引き合いに出しながら、俯瞰的に謎を投げかけたりもします。さてバッハは福音か呪いか。そんな立ちはだかる存在にどのように立ち向かうんでしょう。

「そういう意味で僕はそのニュートラルな形でこのバッハの音楽と向き合えたら、おそらく300年前のバッハの音楽を生で聴いたお客さんの気持ちで演奏できるんじゃないかなっていう。音楽家としてあの人の音楽に入ったらもう絶対潰れますね」

そう言って笑顔。


そんなニュートラルな気持ちで向き合うバッハとはどんなものになるのか?今回のコンサートへの期待は募るばかりですね。

そんなお話をしながら自分の作品から悩みながら一曲選んでくれたのはアルバム「フォーリング・イン・ラヴ、アゲイン」から「Improvisation #1」。インプロビゼーション、即興と名付けれられた一曲です。

「即興の楽曲を6曲を入れてるんですね。その中で1曲なぜかバッハみたいな言語で弾きたかった曲があって。どこまで行けるかなと思って即興でそのバッハの言語のような弾き方をして録音です」

確かに楽曲はバッハのよう。お話の中での「言語」という表現が気になりました。
そして小曽根さんは表現や技術の部分でまさに「言語」としか言いようのない特徴を説明してくれました。

「そうなんですよ。あの時代、使える音階が限られてたのと、あとトリルっていう装飾音(ある音と、それより二度高い音とを交互に速く演奏する)があの時代のもので、あれを弾くだけでバロックって感じになるんですよね。あとはフーガっていう(主題が次々と複雑に模倣・反復されていく対位法的楽曲)追いかけていく感じ、それをとにかくどこまで続けていけるか。そんな中でハーモニーがどんどん変わってきますから、このハーモニーが変わって行く先が(現代の自分が演奏すると)途中からやっぱりどんどん現代に来ちゃったんですね。 そうするとバロックから抜けちゃうんですよね。バロックのひとつのモードの中にずっといなきゃいけないんですけど。こーれが、僕らは大変なんですね。音のチョイスがあるだけにきちゃうんですねこっちにね。あの頃はなかったんですね」

現代の豊かに裾野が広がっている音楽が、かつてのスタイルから逸脱させるというお話、興味深いですね。

「もともと教会音楽から来てますからその頃、動く音程が「ド」から「ソ」じゃなくて、増4度(不協和音のひとつ)で不吉な音がする、これを書くと『悪魔の使いだ』って言ってギロチンにかけられてたんです。 そんな時代。ジャズミュージシャンなんかいたら全員虐殺ですよ。不協和音しか弾かないんだもん(笑)今僕らが慣れてるちょっとテンションの高い音なんて書いたの者全員即死ですよ」

まさにそんな時代でもあり、音楽は神に捧げるものという前提だから限られた音で、その音で弾くとあの頃のバロック時代の音楽のようになるということなんですね。

「そうですね。でそれをモーツァルトなんかは壊していったし、もっとも今聞けばモーツァルトなんかはぜんぜん協和音なんですけど。あの時代はおそらく『アマデウス』の映画見た人はわかるでしょうけど、非常にあの当時モーツアルトは先進的で王様が理解できなかったんですよね。あれで、もし王様がすごいってなったらサリエリは降ろされて、モーツアルトが音楽監督になってたわけでしょ。 サリエリは救われたわけですね。

そんな時代からいろんな音楽家が壊して、挑戦して。だからひょっとしたら挑戦してギロチンにかけられた人もいっぱいいたんじゃないかなと思いますよ」

そうやって音楽ってつながっているんですね。と、こはまさんも深く納得。
バッハから現代の小曽根真さんまで連綿とつながる音楽の歴史、そこには常に革新し前進していく先人からのバトンが渡されまた次代につながっているのかも知れませんね。

さて、3週に渡ってたっぷりお話いただいた小曽根真さんの音解。

何度スタジオにお招きしても尽きることのない驚くような、あるいは抱腹絶倒なエピソードの数々と、カルチャーから音楽まで幅広い知識、話術、そしてなによりも音楽への情熱。まさに圧倒されました。

だけどスタジオは笑いが絶えず、肩のこらない語り口と気遣いで時間は毎回あっという間に過ぎていきました。

今回の福岡での「ピアノ ソロ "クラシック×ジャズ"2018」が本当に楽しみになりました。

今週はバッハのお話一色だったわけですが、最後に小曽根さんからみなさんに今回のコンサートについてこんなメッセージいただきました。

「まぁバッハとても大事なんですけど私、実はジャズ屋でございますので(笑)バッハとかモーツァルトとかを通ってアメリカ経由で、僕らのジャズという楽、我々のオリジナルの音楽。それが実はバッハとどうつながってるかっていうのことも、皆さんに感じてもらえる即興のステージが2部にあります。なので全然違うものというよりは、実は音楽の世界は全部繋がってるんだよ、っていう事を皆さんに感じてもらえるんじゃないかなと思います。

2部はもう踊ってもらってもいいですよ「イエー!」ってう何やってもいいんです。
だけどバッハでも「イエー」って聞いても僕良いと思うんだよね。クラシックのコンサートってのはシーンって聴くのは礼儀としてはあると思うんですけど、しなきゃいけないと思ってすることじゃないですからね。 バッハでも「イエー」でOKですよ。でも、ヤジはやめてくださいね(笑)」

本当にありがとうございました。

次のコンサートで、そしてスタジオに来ていただける日も楽しみですね。

  

次週、11月10日は the pillowsをお迎えします。お楽しみに。




毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はちんです。

今日のゲストはきのこ帝国の佐藤千亜妃さん #きのこ帝国

昨年、結成10周年。同世代のバンドの中でも唯一無二のバンドサウンドと佐藤千亜妃さんの詞とボーカルが一体となった焦燥感や切なさを内在したハードなロックサウンドで頭角を現したきのこ帝国。以降は不動のメンバーで常に変化することを恐れない音楽を送り続けています。

そんな佐藤さんがドライビングミュージックとして選んでくれたのは、SUPER BUTTER DOGの『コミュニケーション・ブレイクダンス』。

「まず、SUPER BUTTER DOGすごい好きなんです。永積さん(永積タカシ、ハナレグミ)の声とこのグルーブ感みたいなのがすごいドライブに合うんじゃないかなと思って選んでみました」

なるほど。ボーカリストとして他に尊敬するシンガーさんはいますか?

「すごいたくさんいるんですけど美空ひばりさんとか
美空ひばりさん!

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「人から聞いた話なんですけど伝説で、レコーディングはもう基本的に来て挨拶して一発ですぐもう帰っちゃうみたいな。一発しか歌わないとか現在ではありえないじゃないですか。何回も録り直したり一部を手直しししたりとか。そういうのなく、シンガーとしてめちゃめちゃかっこいいスタンスだと思いますね

ちょっと意外。でも、常に貪欲に最良を求めているイメージのきのこ帝国と考えればこのお話に深く納得です。

そんなきのこ帝国は、今年9月通算5枚目、そして10周年の記念したアルバム「タイムラプス」をリリースしました。

「かなりキラキラしたって言うか青臭いと言うか、そんな感じのギターロックっぽい音像ではありつつも人生の思い出の一つ一つを振り返るような、ワンシーンワンシーンを振り返るような。そういう苦味とか痛みとか深みみたいなのも根底にある楽曲は並んだアルバムになったかなと思いますね」

よどみなく出てきたこの言葉に、アルバムの全体が凝縮されているように思います。

タイムラプスは「時間の経過」という意味。転じて、長時間を早回しでぎゅーっと移り行く時間の経過を見ることができる撮影と動画。最近はスマホでも人気の機能ですが、時間とともに常に変化していくバンドにはピッタリで今回のアルバムのテーマにもそのものですね。

10年を越えて佇まいは変わらず常に変わり続ける。

そんな中で今回の「タイムラプス」は、今までで一番と言っていいくらい自分たちをそのままを出してきたようなそんな印象もあります。

「色んなことをやってきたんですけど、私あまのじゃくなので、想定されている音楽を出したくないっていうのがあってカウンターばかりやってきたんですけどね。10年ということもあったのかも知れないですけど、もうそういう事をやんなくてもいいのかなっていうモチベーションになってきて。出来上がった曲をメンバー同士で、きのこ帝国らしく『素』でアレンジしてするパッケージするって言うので十分なんじゃないかなみたいなモードになってきて。そんな流れで開けつつ良いサウンドのアルバムができましたね」

10年を経過して、自分たちの音楽に揺るぎない自信を得た結果なのかもしれません。逆にそんなお話を聞くとどんどん変化していったのは、固定したイメージに囚われたくないって思いもあったんですね。

「多分かなりあると思います。一側面をフィーチャーされるのがすごく嫌で。いや、違う面もあるんだよっていうのもあってずっとやってきたので」

勝手にカテゴライズされることへの反発と同時に、常にいま時点の自分たちの音楽へ誠実に向き合った結果が、変化を恐れない音楽性につながったのだともいえそうです。

「そうですねやっぱりバンド然としてるって言うことに、面白みをあまり感じないタイプだったので、なんかこんなバンド居たんだってやっぱ言われたいっていうのがあって、そういうの意識して急にポップにしたりとかちょっとダビーにしたりとかでは色々トライはしてきましたね」

そんな時代も経ての今回のアルバム。
自分たちにとっても手応えを感じた自信作となっているようです。

初めてきのこ帝国にとって名刺みたいなマスターピースのアルバムができたかなと思ってて、今までのアルバムはやっぱりどこかの側面を切り取って表現してるアルバムが多くて。だけど今回はやっぱり今までの総括じゃないですけど、いろんな側面がちゃんと一枚にぎゅっと凝縮されてるかなっていうのは思いますね」


そんなアルバムの中から1曲さらに深く紐解いて頂くべく選んでくれたのは「タイトロープ」。
歌詞はシニカルでリアルなトーンもありますが、アルバムの中でもとりわけタイトでかっこいい1曲。今の「きのこ帝国っぽさ」を代表する曲かもしれませんね。

佐藤さんとしてはコード進行を軸にした楽曲がお気に入りのようです。

「あまりやらないコード感をやってるんですけど、なんか自分でも作った時に『これはキタな!』と思って。F#m(Fシャープマイナー)から F に行くみたいなところ。例えば メジャーからマイナーってよくあるんですけどマイナーからメジャーに行くコードの流れっていうのが珍しいんですね。すごいそれは自分のツボ的にはかなりぐっとくると言うか、してやったりって感じのコードの流れ なんですけど。サビではまたちょっと違う転調っぽいコードが入ったりとか。そういう意味でコード感とメロディの妙みたいなのがすごく表現されてるかなって思います。 」

ここ数作、きのこ帝国の作品は明らかに作品として、より質の高い楽曲へ取り組んでいこうという意思が感じられます。

昔は結構2コードの曲ばっかりで(笑)。でも。結構そのループ感とか言葉のフロウする感じとかも好きだったんですけど。ここ数年好きで聞いてる音楽が、かなりコードがいっぱい使われている曲が多くて1曲の中で10コード以上を使ってるみたいな。そういうのも作ってみたいなーとか思って。 そこからいろいろ聞いたり音楽解析したりもやってたのでそれがまあ作曲の時に影響が出てるかなとは思います」

この曲にもそういった部分や成果は生きていますか?

「おもしろいのがきのこ帝国ってコードの数を多くすればいいバンドじゃないと思ってて、狙い撃ちのコードの4つとかで持っていかないといけない。だから、逆にいろんなたくさんのコードを使う曲とかを作ったのを経たおかげで、逆にシンプルになった時に効いてくるコードっていうのが明るみになるっていうか、自分の中で昔よりも狙いすました感じだけれどもコードの数はそんなに多くない、みたいな事を『タイトロープ』では結構やれたかなと思ってますね。」

例えば以前と同様に2つのコードで曲ができたとしても、そこにはこの間の膨大な経験を重ねた上で多くのコードを削ぎ落として選びに選んだ研ぎ澄まされたシンプルな2つのコードで豊かな曲を作るというようなお話。その他にもこの曲にはありきたりでは済まさない色んな工夫が詰め込まれています。

「サビとかは普通ならAメロとかで使われてるコードのままサビに入った方が気持ちいいんですけど、そこを2個目のコードで『♪タイト ロープ』ってちょっと不安な感じの音程に行くんですけど、それはすごくうまくいったなと思います。また、全体にサウンドが出すところと引くところが明確にあって。イントロでガーッとくるんですけど A メロとかで歌い始めると急にベースとドラムと歌だけになるみたいな。で、サビ直前で二本分のフィードバックが時間差でヒュー、ヒュー』ときて、急にバーン!とサビなんでそこまでギターを我慢して我慢して、みたいな潔いところも好きな曲ですね」

フィードバック。初期のきのこ帝国のサウンドを象徴していたサウンドのひとつ。

ギターとつないだスピーカーが磁気同士や弦が拾って共振し発生するノイズ。マイクとスピーカーの間で起きる「ハウリング」とだいたい同じ原理です。本来はノイズであるこのフィードバックはロックギターのテクニックとして活用されています。

最近のきのこ帝国ではグッと活躍することが少なくなったフィードバックがこの曲では効果的に使われています。

「スタジオでやってる時にギター2本、どっちがフィードバックやる?みたいな話になって、じゃあどっちもやればいいんじゃない?ってなって(笑)。じゃあ1番は時間差で2番は同時にびゃーっと二人でいこうよ。みたいな話になって。それじゃあ、もったいないからそこの先でギター入るとこまでは、もう我慢してリズム隊に任せようとしてこういうコントラストの曲になりました」

自らの手になる楽曲のお話では慎重に言葉を選びながらしっかりと伝える意思を感じる佐藤さんでしたが、このレコーディングでのお話ではフっと肩の力が抜けて楽しそうです。

そんなちょっとしたところにバンドへの信頼感やバンドとしてのきのこ帝国の今の関係の良さを感じます。

このアルバムでは、他にもヒットメイカープロデューサー・アレンジャーの河野圭を迎えて華麗なストリングスと美しいメロディ、そして佐藤さんの歌詞でエモーショナルに歌い上げる、このアルバムもう一つのハイライト「夢見る頃を過ぎても」はじめ、佐藤さんのお話の通り今のきのこ帝国のあらゆる面がすべて凝縮された渾身の一枚となっています。


あっという間にお時間。
佐藤さん、ホッと一息。
今日も限られたお時間になんだかとっても深いところまで根掘り葉掘りと聞かせていただきましたから、どうもすみません。が、今のきのこ帝国の音世界を少し紐解くことができました。

「想像よりもディープな話ができて、音楽雑誌みたいで楽しかったです」

そう言って笑顔の佐藤さん。
いやもう本当にありがとうございました。


  

きのこ帝国 OFFICIAL WEBSITE (外部リンク)

次週、11月3日は小曽根真さんをお迎えします。お楽しみに。

10月20日のゲストは桑原あいさんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手は香月千鶴です。

今日のゲストは桑原あいさん。 #桑原あい

平成3年生まれの27歳。2012年にアルバム・デビュー、以降各メディアのジャズチャートやメディアで話題となり今や国内外で活躍する、今大注目のジャズ・ピアニストです。

そんな華々しい活躍を頭に入れつつお待ちしていると、「よろしくおねがいしまーす」とふんわり入ってきた桑原さんは人懐っこい笑顔が素敵なごくごく普通の女性という感じ。だけど、ひとたび音楽の話となると、その語り口は切れ味が良くて、放出される底知れない陽性のエネルギーは、才気あふれるアーティストそのもの。なによりそんなお話を楽しそうにする姿がとても魅力的であっという間の今回のスタジオでした。


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今年に入っても次々と様々なスタイルでの様々なアルバムをリリースしている桑原さんですが、今年8月には最新作、Ai Kuwabara the Project名義初のアルバム『To The End Of This World』をリリースしました。

「『To The End Of This World』っていうタイトル「この世界の果てまで」って私は訳してるんですけど、去年の9月から私のレギュラートリオのメンバーが一新したんですね。ベースの鳥越啓介さん、ドラムスの千住宗臣さんと二人の先輩をお迎えして新しいアルバムをつくろうってなった時に、すでにライブで二人とやるために書いた曲が4,5曲あったんですよ。で、その楽曲全部にリンクしてる何かがあるなあと思って、考えてる時にふと『この世界の果てまで』っていう言葉がぱっと浮かんで、これにしようタイトルって。そこからテーマとかコンセプトに集中して作っていくという感じだったんです」

今回はベースの鳥越啓介さん、ドラムの千住宗臣さんという新レギュラートリオに加え、"ものんくる"の吉田沙良、現代ジャズ・シーンの注目サックス奏者、ベン・ウェンデル、サックス奏者、武嶋聡、気鋭のチェリスト徳澤青弦率いるカルテットなど多彩なゲストを迎えて、世界のジャズの新潮流に共振しつつ、ジャズの枠を軽々と越境する賑やかで刺激的なアルバムになりました。

「今まで自分のアルバム、今回7枚目なんですけど、シンプルなピアノトリオでずっと作ってきたんですね、それが今回ゲストが12名いるんですよ。いろんな人に楽器を入れたかったんだねって言われるんですけど、そういうわけじゃなくて曲によって、この楽曲はこの音が欲しがってるみたいな感覚で入れていたので気づいたら12名になってたという。本当に音楽に委ねたらこうなっちゃったと言うアルバムなので不思議なアルバムになりましたね」

収録曲の大半は桑原さん自身の作曲によるオリジナル曲ですが、どの曲もとても刺激的なのにどこかパーソナルな温かい手触りを感じる楽曲も少なくありません。

例えば5曲目「When You Feel Sad」。歌人、劇作家である寺山修司の詩「悲しくなったときは」を英詞にし桑原さんが曲をつけたものです。

寺山修司さんって世代ではないですよねえ?

「そうなんですけどね。 彼の『なみだは人間の作るいちばん小さな海です。』っていう詩があるんですね。それを高校2年生の時に何かの雑誌で読んでびっくりしてして!しかも、なんなら全部ひらがなとかで書くんですよ。なんかもう小学生でも書くようなこんな簡単なシンプルな言葉たちを、どういう想像力でこんなキラキラさせてるんだって。それに衝撃を受けたんです。そしたら私の母も寺山さんが好きだったみたいで、家に詩集があったんです。そこからですね、もうだーいすきです」

そういうとニッコリ笑う桑原さんです。

そんな桑原さん自身が、より深く紐解くべく選んでくれた曲は京都出身シンガー/ラッパーDaichi Yamamotoのラップをフィーチャーしたこのアルバムを象徴するような挑戦的なナンバー「MAMA」です。それでいてその動機はとてもほっこりした始まりでした。

「『ママ』ってタイトルの通りでお母さんのことなんですけど。私はお母さんと日頃は仲がいいんですけど、ある時、泣くレベルの大喧嘩をしまして。そしたら腹立ってベースラインが浮かんだんですよ(笑)。で、これ曲になるなと思って。最初はピアノトリオで演奏してたんですよ」

そんな中で桑原さんはこの曲に足りない何かがあると思いはじめます。

「曲を書きながら、絶対サックスを入れようと思ったんです。でもこの曲には絶対もう一個必要な要素があるんだと考えた時に、喧嘩した時のことを思い出して。なんで(あの時)私は泣いたんだろうと。その時に、一番分かってもらいたかったことが、お母さんに分かってもらえなかった悔しさがすごい残ってたんです。要は私はお母さんに一番理解して欲しかった、あなたが好きだから!って、これお母さんの愛の曲なんですよ

その愛を表現する方法とは。

ダイレクトに言葉を載せたいなって思った時に、女性より男の子とお母さんとかの方が性別も違うから温度差が出るんじゃないかなって考えて。じゃあラップにしよう、リズムもヒップホップ的なグループがあるのでたぶんラップもすごい乗せやすいって想像したらすごいかっこいいと思って。それで収録する時は絶対ラップを入れるようと決めたんです。

だけど問題なのは、ラッパーを誰にしようかって。それでDaichi Yamamotoという彼にお願いしたんですけど、私は元から彼と友達では、なくって。めちゃくちゃを探した先に、録音を担当してくださったエンジニアさんが『Daichi Yamamotoって知ってる?めちゃくちゃ良いよ彼』って教えてくれまして、YouTubeで検索したら一言目で『彼だ!』って思ってすぐ連絡したらすぐOKが出て。口説きましたね、もう口説きましたね(笑)」

そんな、個人的な体験から始まったこの曲は、Daichi Yamamotoを迎えて極めてジャズ的に広がりをみせていきます。

「リリックも彼なんですけど『なんといっても母への愛の歌だから、あなたが思う愛情を歌詞にしてほしいと、あとはいつもどおりのスタンスで自由にやってね』で、後はおまかせしました。

任せるってのもジャズの良いところで、相手の信頼度によってアンサンブルの仕方が変わってくるのでお任せたんです。大地くんは、ジャマイカのお母さんと日本人のお父様とのハーフでいらっしゃって。そのお母様が33年前に日本に結婚して来た。その時にちょっと人種差別だったりまだそういうのがある時代で日本で生きていくのがすごく大変だった。そこから自分を産んでくれて、こういう風に自分は誕生してっていうのを歌詞にしてくれたんですよね。 私はお母さんの生い立ちを歌詞にするっていう想像がなかったので、その歌詞がぱっと送られてきたときにこういう愛の形があるんだと思ってそれで感動してしまって、 Daichiくんありがとう、あなたに本当頼んでよかったんだってそんな風にして完成したんです。自分でも思ってもなかったような形になりましたね」

縁というか化学変化というか、音楽の不思議さを感じますね。

そんな色んな想いが詰まったこの曲、最後はフェードアウトで終わります。

「最後に畳かけてDaichiくんが『ありがとう』って言って終わるんです。それでそのまま帰っていく後ろ姿、だからフェードアウト。それしか表現方法がなくて。結構短いフェードアウトでなんか母さんの面影とかがフっと消えてしまうみたいなちょっと寂しいイメージで。うふふ! 」

そんなお話を聞いた後で改めてこの「MAMA」を聞くと、桑原さんの愛、Daichiさんの愛そして渾然一体となった気合溢れる演奏に胸が熱くなるようですね。ぜひもう一回聴いてみてください。


そして、この秋、東京、大阪、名古屋、福岡の4大都市で『To The End Of This World』リリースツアーの開催が決定しています。

Ai Kuwabara the Project 「 To The End Of This World 」Release Tour

2018/11/4(日) Gate's7
15:30開場 16:00開演

詳しくはキョードー西日本(関連サイト


「今回3人で来るんですけど、私、福岡はピアノソロでは何回か来たことあるんですけど、バンドは始めてなんですよ。超嬉しいんですよ、もうその時点で嬉しいんですよ。しかもレギュラートリオの大好きな2人と来れるって嬉しいしかない!しかも福岡初日なんですよ、CD に入ってる曲もトリオバージョンでお披露目が初なので、ウチらも良い緊張感でできるんじゃないかなって思ってます」

無邪気に喜びを伝えてくれる桑原さん、かわいいなと思ってしまいます。でも、こんなすごいアルバムを作り上げたんだなあ。とも。

おしゃべりしている桑原さんは表情豊かで、素直に感情を表す素敵な方です。一方でその音楽への熱意と愛を熱く語る姿からはエネルギッシュで、JAZZという音楽のもつパワーと自由が伝わってくるようです。

最後にリスナーの皆さんへひとこと。

「ジャズは本当にフレッシュな生物なのでライブも毎回オーディエンスが違うし、レコーディングとはまた違った臨場感とか、ライブでは体験できたかなと思いますのでぜひ一緒に音楽を楽しみに来てくれたらなと思います」

KUWABARA WEB (外部リンク)

  

次週、10月27日はきのこ帝国をお迎えします。お楽しみに。

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はこはまもとこです。

今日のゲストは先週に引き続き小曽根真さん。 #小曽根真

先週も楽しくて濃密なお話をたくさん聞かせていただきました。今週もどんな音世界についてお話を聞かせてくれるのかとても楽しみですね。

ですが、今日はその前にかるーく小曽根さんがピックアップしたドライビングミュージック、タワーオブパワーの「Squib Cakes」でスタート!と思いきや、いきなり思いもよらない「神童:小曽根真」のお話が聞けちゃいました。


この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
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「1970年代ですね。このバンドが初めて日本にツアーに来た時に僕小学校の6年生だったんですね。それで神戸国際会館の一番後ろの席が取れたんで見に行ったんすよ。ハモンドオルガンを使ったバンドってそんなにその頃なかったんですね」

その頃ってもう鍵盤には触れてらっしゃったんですか?

「触ってましたね。大阪の読売テレビでレギュラー一本持ってた頃ですから生意気のさかりを通り越してもうハッハッハ(笑)ぶん殴ってやろうかってくらい。
佐良直美さんが出ている番組で佐良さんがジャズを歌後ろでハモンド・オルガンで伴奏してました。その時にね、舞台袖に八代亜紀さんとかデビューする頃の森昌子さんがいらっしゃって、八代さんが演奏の後に僕に「坊や上手ね」って言ってくださって」

なんと。12歳前後で、すでにテレビのレギュラーを! 八代さんとは2年前くらいに会ってその頃のお話もしたんだとか。小6にしてすでにプレイヤーとしてタワー・オブ・パワーを聞いていたんですねえ。

「この曲の頃はレコードですから、あの時代は擦り切れるほど聞きましたね。(空気感が)乾いてますよね。お天気の良い日にこれを聴きながらカリフォルニアでオープンカーを借りてウエストコーストのハイウェイ1を走るのが夢だったですね。まだやってないですね。いつかやらないと」
今日もびっくりのエピソードでスタートしました。
小曽根真さん、いつだってこちらの期待を軽く上回るお話を披露してくれます。今日も楽しみですね。

さて今日は小曽根真さんの楽曲を、小曽根さん自ら1曲ピックアップして頂いて深くその音世界を紐解いていただこうと思います。

その一曲とはショパンの『子犬のワルツ(ワルツ第6番変ニ長調 《子犬》)』。
小曽根真さんがクラシックのショパンを演奏したアルバム『Road to Chopin』に収められています。


小曽根さんとショパン。
そこには小曽根さんのショパンへの複雑な想いと、時を超えた理解の物語がありました。

「最初、『小曽根さんショパン弾きませんか?』って言われた時、最初嫌だって言ったんですよ。もちろん嫌いだったわけじゃないけど僕が弾く曲じゃないって思ってて。というのもショパン自体の音楽が非常に装飾音が多いんですよ。僕にしてみると装飾音ってのはアドリブの部分っていう風に感じてるので、それは俺が決めたい。書かれてあるものは弾きたくない。ジャズ屋はほとんどこういう人が多いんですよ。へそ曲がりなんですよ。」

そう言って笑う小曽根さん。

「特にショパンっていうのは日本ではポピュラーなんですけど、クラシックの世界ですごくきれいに美しく弾くことが先に立ってる気がしたんですね。間違ったらごめんなさい。僕はそう感じたんですね。
それがロマン派の時代のマリーアントワネットのロココ調のちょっと華美な貴族の気持ち悪い所につながっちゃったんですね。僕はそういうキンキラキンのゴテゴテなのは嫌だと思ってたんです」


そんなショパンに対して複雑な思いを抱えていた小曽根さんは、あるきっかけで180度印象を改めます。

「ちょっとご縁があって、ポーランドのアンナ・マリア・ヨペックというシンガーに出会って、ポーランドに行った時に『ポーランド共和国という国が地図に載ったのは70年前なんですよ。それまでこの国は独立してなかったんですよ』という話を聞いたんですね。ポーランドという国は、ずーっと昔のローマ帝国の時代から、ドイツが侵略する、ソ連が来る、いつも周囲から侵略されてる歴史がずーっとあって、その中で活動家として戦っていた一人がショパンだったんですね。でもここにいたら才能が潰されるから絶対に駄目だって、無理やりフランスに出されて、フランスで祖国のことを思いつつずーっと彼は作曲して、ポーランドから亡命した人のためにタダで音楽会やったりとか。実は全然『華美』とは正反対

ショパンは祖国ポーランドを20歳で後にして、祖国への強い思慕の念を胸に秘めながら作品を作りつづけ、生涯、祖国に戻ることはなかったそうです。

僕は『なんやそれブルースと一緒やん!』って思ったわけですね。かつて多くの黒人の人がアフリカから連れられてアメリカに渡り、突然、奴隷となっても死ぬまで自由は無かった。そこで生まれてきた音楽がブルースでありジャズですから。そしたら僕が弾く意味があるのかも、と思ったんですよ。それでポーランドのアンナさんとアルバムを作る中で、僕がショパンを弾くならどう弾くだろうってことで作らせていただいたのが『Road to Chopin』。『小曽根真・プレイズ・ショパン』ってそんなおこがましいことは言えないので『ショパンへの道』っていうタイトルでアルバムを作ったんです」


小曽根さんここまで一気に喋って「相変わらず長いですよねえ」と大笑い。そんなことないですよ。ショパンへの当初の違和感から理解への過程はとても興味深くて、深く感じ入ってお話を聞いていたこはまさんも思わずテンションアップ。おなじみの口フレーズを交えつつそういう歴史を経て演奏された「子犬のワルツ」の感想を熱く伝えます。

「ショパンの子犬のワルツの有名な「ティラリラリラリラリラリラ」っていうフレーズと、小曽根さんの左手が「ジャッジャッ、ズッチャチャズッチャチャ」ってこれがすごく面白くて」

小曽根さんも「そうなんですそうなんです」とグイと少し前に乗り出し、セッションのようにこの曲の凝りに凝ったアプローチについて解説をしてくれました。どこまでお伝えできるか。詳しくはタイムフリーでお聞きくださいね。

「これワルツですから三拍子ですね。例えば口で歌うと「ぶん・ちゃっちゃ、ぶん・ちゃっちゃ、ぶん・ちゃっちゃ」じゃないですか。これがウィンナーワルツなると「ンチャッチャー、ンチャッチャー、ンチャッチャー」と、ちょっと舞踏会で踊るクルクルクルクル回るリズムがあるんですね。これがジャズになると「ンカトゥクターン、ンカトゥクターン、ンカトゥクターン」と跳ねるんですよ。これどれも全部三拍子なんですよ。

僕はこの『子犬のワルツ』を弾く時にサビの部分、まショパンにサビなんかないよっていわれるでしょうけど(笑)まあ、俗に言うサビに当たる部分で『ベネズエラン・ワルツ』っていう、普通の「ぶん・ちゃっちゃ、ぶん・ちゃっちゃ」じゃなくて「チャ・ドゥンドゥン、チャ・ドゥンドゥン、チャ・ドゥンドゥン、チャ・ドゥンドゥン、タンツカドンドンドンタン、タタツタドン、タタツタドン、タタツタドン」こんな風にアクセントが最後に来るんです。それを使って弾いてみたんですよ。そしたら『イケルやーん』ってことになって。

じゃスタジオで即興でやったら面白かったんで、アルバムに入れようってことになったんですけど、このアイディアがなかったらこの曲はこのアルバムに入ってなかったと思います

ピアノの詩人の名曲に対して敬意を払いつつ、実は一方で極めて挑戦的なアプローチで臨んでいたことがよく分かるエピソードです。

「だけどおそらくショパンはめっちゃ怒ってると思いますよ(笑)。絶対怒ってると思う。『そこまでせんでもええやろ』って大阪弁で怒ってはると思いますね。 それにね、ショパンのメロディは情熱的なのでまた南米のリズムに合うんですよ。めちゃくちゃ合うんですね」

「ショパンはまたジョルジュ・サンドとマジョルカ島に愛の逃避行をしたくらいの情熱的な人ですしね」と、クラシックに造詣の深いこはまさんもすかさず一言、補足です。


ここで番組ではで改めて「子犬のワルツ」が流れたのですが、音楽が流れている間も気がつけばふたりでリズムをとりつつ興味深いお話は止まりません。

「これはまたジャズ的に裏でアクセント入れてるんですね。実は怖いんですけどねこれ。8分音符で2拍半づつアクセント入れていくんですよ。3拍子に2.5づつ入れていくからどんどん足りなくなってくるんですよ」

「失礼ですけどよく弾けるなって思うんですけど!」
「そこは、もう天才ですから(笑)」
「ありえないですもん。リズムが違うものが右と左でね」
「そう。だけど入るのはここしかないってのがあるんですね。ちゃんと勘定して入れてるんです。こんなことばっかりやってるから友達がいなくなっちゃう(笑)」

リズム談義。とまらないです。

一つの曲に込められた、歴史上の偉大な作曲家と現代の当代随一のプレイヤーとの時を超えた誤解と和解の物語。いかがだったでしょうか?もっとも、そんな風に言えばご本人からきっと「とんでもない!」と叱られそうですが、名曲というものはいつもそうやって、現代の演奏家との格闘の末に今もイキイキと息づいているのでしょうね。そんなことを教えてくれる素晴らしいお話でした。


さて、福岡でも開かれる今回のコンサートでは、もうひとりのクラシックの巨人バッハに挑みます。


小曽根真 ピアノ ソロ "クラシック×ジャズ"2018

【スペシャルゲスト】中川英二郎 2018年11月29日(木)
開場18:30 開演19:00
福岡シンフォニーホール
※詳しくは小曽根真 Makoto Ozone Official Website (外部リンク)でご確認を。


「バッハは手強いですね。音数が少ないのに完璧な音楽なので、じゃあこれを僕らがどう料理するっていう。料理できないってのも料理のひとつなのかなと思たりもするけど。でもせっかくだから僕らしかできないことをしたいですね」

そんな風にショパンとは全く違うバッハへの思い。
これはぜひふかーく聞かせていただきたいですね。そんなわけで、小曽根さんには無理をお願いして嬉しいことにさらに延長戦決定です。

ただし、しばしお休みいただいて次回は11月3日の放送で。

「じゃあ、2週間ほどどこか行ってきます(笑)」

素晴らしい小曽根真さんのお話、また聞けます。とても楽しみですね。

  

小曽根真さん、次回は11月3日にお迎えします。
次週、10月20日は桑原あいさんをお迎えします。お楽しみに。