番組紹介

放送時間: (土) 11:30-11:55
出演者:

こはまもとこ
香月千鶴(FM福岡)
ちん。(ラジゴン水担当)

提供:サウンドピュアディオ

毎週多彩なゲスト(ミュージシャン/映画監督/俳優/文化人 etc.)を迎えて、音楽トークを中心に展開する25分番組。「音」を「楽しむ」と書く「音楽」をゲストと一緒に紐解くことで、より深く、広く、音を楽しむことができるハズ。そんな音楽にまつわる私たちの知的好奇心を刺激する番組です。
メールのあて先は、 oto@fmfukuoka.jp まで。

SOUND PUREDIO presents 音解 これからの放送予定

  • 投稿日:
  • by

◆今後のラインナップ        

11月10日 the pillows
11月17日 沖仁                      
11月24日 沖仁

※以降も続々待機中!どうぞご期待下さい!。

放送予定は諸般の事情により予告なく変更する場合もございます。予めご了承ください。
☆この後も続々注目のアーティストが登場。これからもどうぞご期待くださいね!

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手は香月千鶴です。

今日のゲストは来年の結成30周年に向けてアニバーサリーイヤーに突入。the pillowsの山中さわおさんです。 #thepillows #ピロウズ

カーディガンにプリントT、デニム(愛用はLeeだとか)にサングラスは山中さんのおなじみのスタイル。サングラスはご自身のブランドのオリジナル?でしょうか。そんないつものスタイルでスススっと入ってきた山中さん。

今日はそんなthe pillowsの時にオルタナ、そしてキャリアを重ねた上で再び削ぎ落とされたシンプルなロックンロールへと向かう音楽の秘密を語っていただけるのでは?と期待していたのですが、それは良い意味で裏切られて、かなり興味深い音作りの秘密までお話してくれました。

 

この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)

 
まず山中さんがセレクトした今日のドライビングミュージックは、ロス出身の5人組バンド、Grouploveの「Spun」から。これとても気持ちいいですね。

「日本の音楽だと歌詞に『車』って入ってるものを選んでしまうことが多くて単純すぎるので一旦置いといて(笑)。音楽的に考えると僕はドライブミュージックというと、やっぱりエイトビートのトツタツトタタってビートが気持ちいいですし、ローファイサウンドかハイファイかでいえば車の中だとエンジン音もあるのでハイファイサウンドの方が気持ちいいですかね」

この曲との出会いは?

「音楽が詳しい友達に教えてもらいました。あっはっはっはっは。
いろいろ僕のまわりに音楽を教えてくれる友達がいるので。この曲以外もね、本当にいい曲ばっかりでかなり好きなアーティストですね。ライブ行ったことないんですけどライブも見てみたい」

肩の力が抜けて良い空気感。音楽と同じく山中さんのお話もハイファイな感じで心地よいですね。

そんなthe pllowsも30周年です。

「そうなんです。なんか1年間ぐらいお誕生会を前倒しでおねだりする、というビジネスが流行ってるようで(笑)、それに乗っかっております」

30周年に向けて、過去にどのミュージシャンもやったことがないプロジェクトが始動するんだという噂も聞きましたが?

「そうなんですけど、まだ言うとなと言われていますんで、もやっとした受け答えになるんですけども。 直接的な音楽のことではないんだけども、ちょっとアニバーサリーならではの大きな遊びを一つやろうと思ってます」

情報解禁を心待ちにしておきましょう!

まずは記念の第1弾として、この9月に前作『NOOK IN THE BRAIN』より1年6か月ぶりに発売された通算22枚目のNEWアルバム『REBROADCAST』をリリースしました。

『ニンゲンドモ』『眩しい闇のメロディー』『BOON BOON ROCK』など全10曲を収録。初回限定盤には『ニンゲンドモ』のPVの他、アメリカツアーの映像が収録されています。

アルバムはキャッチーな「Rebroadcast」からスタートします。

「僕らのアルバムの曲名は必ずそのツアーの曲名になるんですね。
で前作、『NOOK IN THE BRAIN』の一曲目がちょっと変拍子のような曲だったので、今度は出るなりポップでキャッチーでイエーイ、ロックンロール楽しいぞ!みたいなそういう登場にしようかなと思って一曲目にしました」

バラエティに富んだピロウズらしいロックが並んでいますが、8曲目「Starry fandango」ではピコピコのファミコンのようなサウンドから始まります。ここにも今回のアルバムらしい仕掛けがあるようです。

「もともとこの音はトランペットでやりたかったんですね。ところがこの曲が持ってるキーというのが合わなくて、デモレコーディングで実際にトランペットで鳴らした時に出したい高い音が出なかったんですね。それで1オクターブ下の音にしてしまうと『パッパッパラ(↑)』ってやりたいのが、なんか『ブッブッブブー(↓)』って、ああやっぱちょっと違うやって(笑)。それでシンセでやってもなんかしっくりこなくて、結局、採用になったのは17,8年前のアルバムで『Thank you, my twilight』って曲がございまして、それで使った電子音なんですね。で『REBROADCAST』ってタイトルは再放送という意味なので、じゃあ、あえてまんま使っても結果的にはいいかっていうことで。その頃を知ってるファンにとっては『おお懐かしい!またこの音来るんだ』っていうそんな作りになっております。」

今回のアルバムは随所に、そんな自身の過去のアルバムで用いた音楽的トリックや、気に入っていたフレーズなどを確信犯的に使ったナンバーもたっぷりで、ファンにはたまらない一枚です。山中さん自身もアルバムとしての手応えもとてもあったようです。

「ありましたね。バランスがとっても良かったかなと。うん。常に僕は曲を作るときはポップでキャッチーな楽曲を作りたいと思ってるんですけども、そこに乗せる歌詞については割合、今回は曲調の割にはシリアスなテーマが多くて。20年、25年ぐらい応援してくれてるような人は『今度のアルバムすごいいいね』みたいなことを言っていただけるんで、なんか僕はシリアスな歌詞を書いた方がみんなにとってはしっくりくるんだなあってことを、なるほどと思いながら。まあロックンロール楽しいぜイエーイももちろん好きなんだけど、そうじゃない時には、本人にはわからない力を発揮してるのかなあ、なんて自己分析もあり、そんなところも含めて曲順も含めとてもバランスの良いアルバムができたなと思います」

そんな歌詞のお話も聞きながら、ここで香月さんアルバムを聞いていてちょっと気になった質問を。

山中さんは午前3時によく世の中を動き回ってるんですか

「そうなんですね。一曲目の『REBROADCAST』と『ニンゲンドモ』に「午前3時」が出てくるんですが、それいわれまで気づいてなかったんですね(笑)」

え!意識して使っているのかとばかり思ってました。

「普通そうですよね。ぼんやりしてました(笑)まあ 普通に自分の活動時間なのでフツーに出てしまってたっていうのと、音楽的には『REBROADCAST』の中の『♪うずくまってる午前3時』ってこの歌詞のリズムじゃないと気持ち良くないんですよね。『1時』じゃリズムが固い、『2時』だと字数が足りない、「3時」じゃないと英語の音節のように歌えて気持ちよくないんですね。 あ、『10時』はいいですね、でも場面が変わっちゃいますねダメですね(笑)」

そんな一曲ごとに語るべきポイントと思いが溢れているこのアルバムの中から、山中さん自ら一曲ピックアップして解説していただきました。その曲は、腰の座ったギターサウンドもかっこいいソリッドなロックナンバー3曲目の「ニンゲンドモ」です。

ところが一聴してシンプルなこの楽曲こそ、the pillowsらしいロックサウンドの真髄が隠されているのでした

「僕は今までのキャリアで99%、曲を先に書いて詞を後からその乗せるというスタイルでソングライティングしてきたんですけども、この曲は珍しく歌詞を先に書いたんですね。それ、僕にとってはとても珍しいことなんです。それと並行してこの曲のギターのリフを考えていて。なんとなく僕の中では、本来シンセサイザーでやりそうなフレーズをギターで弾けたらどうなるだろう、と思って。コンピューターゲームのような『テレテッテレテッテッテー』っていうフレーズをあえてギターでやってみました。結果、歌が始まったらその曲の前半はほぼギタリストは何もしないんですね。鳴ってるのはドラムとベースと僕の低音の響きだけで作ってるんですけど、本当の本当にそれだけにすると、スカスカになっちゃうんですね。なのでこの曲では実は聴感上みんなの意識に残らないギターをうっすら入れてるんです。そんな風にみんなが聴感上意識してない音を、隠し味みたいにたくさんうっすら足していくんです 」

つまりフレーズでの工夫とともに、サウンドとして細かな部分に「意識に残らないギター」まで細かな工夫を施してあるわけですね。

「そういうのは結構大事で、割と勢いのあるロックロールみたいな曲も、僕ら一発でせーのでやってるのではなくて、すごい細く緻密に作っていくんですね。僕らの世代のバンドって『やっぱロックンロール一発録りっしょ!』みたいな感じでいやってると思われるんですけど、実はめちゃめちゃ細かくデリケートに組み立てていくんですね(笑)」

ちょっと意外。そこには山中さんなりの、30年サヴァイブし続けるロックバンドとしての2010年台なりのロックのあり方が見え隠れします。さらに言葉を続けます。

「それは結構CDを作る上では重要で、特に近頃はどちらかと言うとスピーカーで大きな音量で聞くというよりは、イヤホンやヘッドホンなどでリスニングする人が増えている印象があって、僕自身もそうなので、そのヘッドホンで聞いた時に楽しめる工夫が必要だなと思って作っていますね」

時代ごとに聞く環境を意識しながら常にサウンドの工夫をしているということですね。

「流行って意味の音楽では時代には合わせないんですけど、僕らの音楽を聴く人の状況のことはやっぱり気にしますね

ここまでで、すでに「せーの!」ではないロックサウンドの裏側を垣間見ることができましたが、実はこの曲1曲の中にはまだまだ秘密がたくさん隠されています。

たとえば、このナンバーの軸となるギターの音色でさえ。

「ギターなどを録り方もですね、みんなが聞いてる音では録ってないんですね。迫力のある『ジャカジャーン』って音をそのまま録るよりは、結構丸めの音とかもうちょっと柔らかい音で録るんですね。それをミックスで、イコライザーを何種類か使って耳に痛いポイント、3kHzぐらいが耳に痛いのでカットして、でも4kHzはあげると気持ちいいんですね。その撮った音に対して4kHz、8kHzをグッとついてやると結果的に汚い音ではないけどすごく分離の良い本来のロックンロール的な「ジャカジャーン」の印象を残しつつ、とてもそのドラムとベースと歌のバランスが良い音になります。だから実際レコーディングで演奏してる時間ってのはそんなにかからないんですけど、音決めに時間がかかるんですよね。だからね。せーの!でロックンロール!じゃ全然ないっていう(笑) すごく神経質に作ってるっていう、しかも何回もやり直す派っていう(笑)レコーディングに関しては男らしさ一切ないっす!

そう笑う山中さん。ライブで感じる「あの音」をヘッドフォンでも同様に鳴らすには、細かい細かい細部への詰めと工夫があればこそ、なのかもしれません。

実は実際にその曲を聞きながら、スタジオでは実際にLRの音を抜いて聴き比べて見るなんてことも実際にやったりしてたんですが、香月さんも納得。隠し味があると気づかないけども、無くなってみるとその物足りなさがハッキリわかるんですね。みなさんもぜひ。

そして、アルバムの発売に続いて、この秋から30周年記念の第2弾として、『REBROADCAST TOUR』がスタートします。

REBROADCAST TOUR

2019年02月11日 (月・祝)
広島 CLUB QUATTRO

open 17:15 / start 18:00
   
2019年02月17日 (日)
福岡 DRUM LOGOS

  open 17:15 / start 18:00



「新曲など『REBROADCAST』からもちろん全部やるんですが同じ頃に、アニメーションの「フリクリ」のサウンドトラックも出てるんですね、その中にもう新曲は2 曲入ってまして、アメリカツアーではやってきたんですけど、国内はまだやってないので披露したいと思います」

the pillowsがアメリカで受け入れられる契機となった伝説のアニメ「フリクリ」への参加。この度18年の時を越えて劇場版『フリクリ オルタナ』、『フリクリ プログレ』として復活。このタイミングはなにかの運命めいたところも感じられますね。

そんな新曲も聞ける今回のライブ、ファンならずともぜひ観てみたいではないですか。

そんなわけで、楽しくも本当に意外なお話がいっぱいだった今回の音解。

「なんか専門的な話をラジオをすると嫌われるかと思ってたのであんまりしたことなかったんですけど、楽しかったですね」

と山中さんにもご満足いただいたようです。 始終笑顔で余裕を持って想像もつかないような色んなお話をしてくれました。お話の随所に今の活動に充実感と自信を感じられ、そのお話には説得力が溢れいましたね。


最後にリスナーの皆さんに山中さんから一言です。

「はい。来年30周年ということでもっと頑張りたいなと思ってるんですが。こんな長いことやってる僕らがまたちょっとすごく自信持って自慢のアルバムができたので、その『REBROADCAST』を聞いていただいて、是非ライブに遊びに来て下さい」

山中さん、ありがとうございました!

the pillows official web site (外部リンク)

  

次週、11月17日は沖仁さんをお迎えします。どうぞお楽しみに!

11月3日のゲストは小曽根真さんでした。

  • 投稿日:
  • by


ポスター全体は↑画像をクリックしてください。

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はこはまもとこです。

今日のゲストはみなさんお待ちかね。10月6日、13日に続いてお迎えする小曽根真さんでした。 #小曽根真

まずはドライビングミュージックから。今回選んでくれたのは昨年発売したアルバム小曽根真 THE TRIOのアルバム「ディメンションズ」収録の「フローレス・ド・リリオ」です。

小曽根さんの笑顔とともにスタジオに爽やかな風が吹くような軽やかなナンバーです。

「気がつくともう秋と冬に向かってますけどでも、今年の夏は暑かったじゃないですか。じとーっとした風からだんだんその湿気がなくなってくる。からっとした感じのイメージで選曲をしてみました 」

前回のタワー・オブ・パワーのお話の時も風の話になりましたが、ピアノを弾いている時にも色んな風を感じていらっしゃるんでしょうか?

リラックスして音楽に身を委ねていた小曽根さん、「それは素晴らしいですね」と、ちょっと座り直しました。

この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


「それはすごく思いますね。なんか音楽は香りとか記憶を思い出すものいっぱいあるんですよ。
音楽って音なんですよね、聞きながらなんか感じてて、おそらく僕が感じてるものをこの音を通じて皆さんは何かこう自分なりの同じような風を受けてるじゃないかな、そう思いますね。 だからね。考えれば考えるほど芸術っていうのはそんな高尚なもんじゃなくて。体が生きていくのに必要な物が食べ物であれば心が生きていくのに必要なものが芸術だと思うんですよね。それ音楽だけじゃなくて絵もそうだし文学もそうだし、全て人間が作るものは、作った人からそれを使う人へ、あるいは聴く人へ、読む人へのコミュニケーションがあるわけですからそこが本当に芸術の一番の存在理由のような気がするんですね」

と、目を輝かせて一気にお話してハッと気づいたように、

「だから、もっともっとその芸術っていうものを貪欲に近づいてほしいなっていう風には...大したもんじゃないんですよね!こんなチャラいのが弾いているんですから、いやホント(笑)」

と少し照れ隠しです。いえいえご謙遜。
今年、小曽根さんは平成30年春の褒章で芸術やスポーツ、学術などの分野で活躍した人に贈られる「紫綬褒章」を授章されました。おめでとうございます。

「アレはもうびっくりしました。もっとおじいちゃんになってもらうもんだっていうと『なんだもらうつもりだったの?』って言わたりもしたんですけど(笑)」

さて、そんな小曽根真さん。
11月29日(木)に、『アクロス福岡シンフォニーホール』で
"音楽の父" バッハにも挑む『小曽根真 ピアノソロ "クラシック×ジャズ"2018』を開催します。



小曽根真 ピアノ ソロ "クラシック×ジャズ"2018

【スペシャルゲスト】中川英二郎 2018年11月29日(木)
開場18:30 開演19:00
福岡シンフォニーホール
※詳しくは小曽根真 Makoto Ozone Official Website (外部リンク)でご確認を。



そして今週は自ら「人生の一番のトラウマ」と語るバッハについてお話していただきました。それはそれは驚愕の小曽根さんの失敗エピソードだったんです。

「バッハのせいではないんですけどね。デビューして1985年にドイツのベルリンのシンフォニーホールでバッハの生誕300周年記念コンサートで僕呼ばれたんですね 。

バッハは即興の天才でしたから、僕はジャズミュージシャンとして即興をやってくれって言われて行ったんですね。 ほかはチェンバロだとかバッハの大家ばっかりが来て。すると、そのコンサートの当日の朝にプロモーターから電話で『バッハの曲、何弾きますか?』って。おい『僕はそんな無理だよ』って言ったら、即興はやってもらうけどその前にバッハの曲1曲やってからじゃないとって言われて。

えー。じゃあどうしようと。僕バッハは練習曲くらいしか弾けないですよ。つったらそれでいいから聞いてくれと言われたんですよ。困ったなと。中学校以来弾いてなかったんで、まずは楽譜屋さん行って楽譜を買って10時から本番の8時までずっと練習したんですよ、お昼ごはんも食べずに。

テクニック的には弾けるんです。だけど『人前で楽譜で弾く』ってこと自身が僕の人生の中で一度もなかったんで。 その初めてをよりにもよって、ドイツのベルリンのフィルハーモニーのホールで、しかもバッハの生誕300周年記念コンサートって。それで僕もパニクっちゃって。


(曲自体は)ものすごく簡単な曲なんですよ。でも最初の1音を弾くのにまず指が動かないんですよ、緊張しちゃって。それで、エイってめちゃくちゃゆっくり弾いたんですけど、わかりやすく3箇所間違ったんですね。

そのコンサートはそれぞれのパフォーマーの最初の3分間はヨーロッパ全土でテレビで放送されて、僕の演奏の間違った部分だけが流れたんです。その後の即興でお客さんが喜んでくれたところは全く流れなくて。で、その翌年からヨーロッパでの仕事が1/3くらい減ったんですよ」

聞いているだけで背筋が寒くなるような壮絶な経験。
それ以降、小曽根さんがバッハを避けたくなる気持ちもわかりますね。

「それから僕は、絶っ対に人前で楽譜をひかないって決めてたんですけど、まあその10年後に結婚して今の妻が、もう1回チャンスが来た時に『あのときはその日の朝言われたでしょ』って『今回はあんた半年練習する時間があるんだから頑張ってみたら』って言われて『ラプソディ・イン・ブルー』って曲を弾くことになるんですけど。だから85年に僕がバッハの曲を弾いて、二度と人前でクラシックを弾かないって決めた理由が実はバッハだったんです。 僕にとってはバッハはダブルにもトリプルにも怖い存在だったわけですね」

ただそんな痛い思い出だけでなく、バッハの音楽自体のあまりにも完璧で奥深さにも、覚悟を迫られるものものがあったようです。

「今は技術的には最近クラシックも弾いていますから演奏はできると思うんですね。ただそのバッハの音楽の深さっていうのは、本当にシンプル。シンプルなんですけど一音どれかをずらしてもバッハにはならない。本当にね、その宇宙人って言いたくなるぐらい完璧な音楽を書かれてるんですね。

ですから、僕らがでちょっとここ変えてみようぜって、例えばシェイクスピアの物語をちょっと(ひねって)アウトローに喋ってみようか、みたいなことを(バッハで)やると、気をつけないとすごく安っぽくなるんですよ。 あーそれやってほしくない、ってお客さんにそう思わせてしまうようなアレンジをしたら負けなんですね。

だから今回は、何かを変えるっていうことを目的にはしないで、自分のマーキングではなく、ただバッハの音楽を純粋に、自分がとにかく譜面通り弾いてみて、それでそこから初めて自分の心の底から聞こえてきた音があればそれをそこに即興で入れていくっていうことができればなと思ってるんですね」

なるほど。今まで小曽根さんがやってきたクラシックの取り組みとも違うのですね。

「そうですね。例えばモーツァルトって人は、自分がすごく即興でどんどん演奏したい人だったのであえて指定がないんですよ。逆にベートーベンは一音でも変えるものなら『どうぞ僕が書いた音よりキミがいい音見つけられるならどうぞ』という言葉が聞こえてくるんですよね。ところが、バッハはそれすら無くて、 絶対に揺るがない、何かこう、動かせない岩石のようなものがドーンっとそこにあるんですよね(笑)だからもう、なんかこうカンカンカンカンって叩いてるうちに『あ、こんなところがあったぞって見つかったらいいなってですね(笑)」

徹底的に削ぎ落とされて黄金率のようにシンプルで完璧なバランスで成立しているバッハの音楽。そこに音楽家として取り組むことの難しさがよく分かるお話ですが、一方で小曽根さんはその時代を越えて、人々をひきつけてやまないバッハの偉大さについてもアツくお話してくれました。

この話を聞くとバッハってやっぱり宇宙人かも?って思ってしまいますよ。

「YouTubeか何かで見たことあるんですけど、バッハのあるなにかの曲って譜面を逆さまにすべて後ろから弾いてみても見事な音楽になるんですね。しかもヘ音記号とト音記号と高音部記号と低音部記号とそれをひっくり返してて演奏してもちゃんとメロディになるんですよ。だからホントこの人宇宙人としかいいようがないんですよ(笑)。

いまだに聞いても古い感じがしないんですね。70年台の音楽を今聞くと、当時の流行ってた楽器の音色とか歌い方とかビートの種類とか。それで、あ、これ70年代80年代って時代入ってていいねとか言うじゃないですか。

(バッハは)300年前ですよ。でも全然古い感じしないですね。バロックの時代ですよ。
そう考えると、文明の進化とともに人間のクリエイティビティってのは実は落ちていってるんじゃないかなと思ったりもするし、あるいは逆に最初にそれをやった人があることによって、その世界は呪われるとも言えるのかなって。音楽界はレコードみたいなものができたおかげで、ものすごく呪縛があるわけですよね。 能の世阿弥は『能の舞い方を巻物に書いたおかげで、能の世界は呪われる』って言ってるんですね。あるものは巻物に書かれた通りに能を舞うし、もう一方の愚かなものはここに書かれてること以外で、能を舞おうとする」

小曽根さんのお話はいつも幅広い知識から引き合いに出しながら、俯瞰的に謎を投げかけたりもします。さてバッハは福音か呪いか。そんな立ちはだかる存在にどのように立ち向かうんでしょう。

「そういう意味で僕はそのニュートラルな形でこのバッハの音楽と向き合えたら、おそらく300年前のバッハの音楽を生で聴いたお客さんの気持ちで演奏できるんじゃないかなっていう。音楽家としてあの人の音楽に入ったらもう絶対潰れますね」

そう言って笑顔。


そんなニュートラルな気持ちで向き合うバッハとはどんなものになるのか?今回のコンサートへの期待は募るばかりですね。

そんなお話をしながら自分の作品から悩みながら一曲選んでくれたのはアルバム「フォーリング・イン・ラヴ、アゲイン」から「Improvisation #1」。インプロビゼーション、即興と名付けれられた一曲です。

「即興の楽曲を6曲を入れてるんですね。その中で1曲なぜかバッハみたいな言語で弾きたかった曲があって。どこまで行けるかなと思って即興でそのバッハの言語のような弾き方をして録音です」

確かに楽曲はバッハのよう。お話の中での「言語」という表現が気になりました。
そして小曽根さんは表現や技術の部分でまさに「言語」としか言いようのない特徴を説明してくれました。

「そうなんですよ。あの時代、使える音階が限られてたのと、あとトリルっていう装飾音(ある音と、それより二度高い音とを交互に速く演奏する)があの時代のもので、あれを弾くだけでバロックって感じになるんですよね。あとはフーガっていう(主題が次々と複雑に模倣・反復されていく対位法的楽曲)追いかけていく感じ、それをとにかくどこまで続けていけるか。そんな中でハーモニーがどんどん変わってきますから、このハーモニーが変わって行く先が(現代の自分が演奏すると)途中からやっぱりどんどん現代に来ちゃったんですね。 そうするとバロックから抜けちゃうんですよね。バロックのひとつのモードの中にずっといなきゃいけないんですけど。こーれが、僕らは大変なんですね。音のチョイスがあるだけにきちゃうんですねこっちにね。あの頃はなかったんですね」

現代の豊かに裾野が広がっている音楽が、かつてのスタイルから逸脱させるというお話、興味深いですね。

「もともと教会音楽から来てますからその頃、動く音程が「ド」から「ソ」じゃなくて、増4度(不協和音のひとつ)で不吉な音がする、これを書くと『悪魔の使いだ』って言ってギロチンにかけられてたんです。 そんな時代。ジャズミュージシャンなんかいたら全員虐殺ですよ。不協和音しか弾かないんだもん(笑)今僕らが慣れてるちょっとテンションの高い音なんて書いたの者全員即死ですよ」

まさにそんな時代でもあり、音楽は神に捧げるものという前提だから限られた音で、その音で弾くとあの頃のバロック時代の音楽のようになるということなんですね。

「そうですね。でそれをモーツァルトなんかは壊していったし、もっとも今聞けばモーツァルトなんかはぜんぜん協和音なんですけど。あの時代はおそらく『アマデウス』の映画見た人はわかるでしょうけど、非常にあの当時モーツアルトは先進的で王様が理解できなかったんですよね。あれで、もし王様がすごいってなったらサリエリは降ろされて、モーツアルトが音楽監督になってたわけでしょ。 サリエリは救われたわけですね。

そんな時代からいろんな音楽家が壊して、挑戦して。だからひょっとしたら挑戦してギロチンにかけられた人もいっぱいいたんじゃないかなと思いますよ」

そうやって音楽ってつながっているんですね。と、こはまさんも深く納得。
バッハから現代の小曽根真さんまで連綿とつながる音楽の歴史、そこには常に革新し前進していく先人からのバトンが渡されまた次代につながっているのかも知れませんね。

さて、3週に渡ってたっぷりお話いただいた小曽根真さんの音解。

何度スタジオにお招きしても尽きることのない驚くような、あるいは抱腹絶倒なエピソードの数々と、カルチャーから音楽まで幅広い知識、話術、そしてなによりも音楽への情熱。まさに圧倒されました。

だけどスタジオは笑いが絶えず、肩のこらない語り口と気遣いで時間は毎回あっという間に過ぎていきました。

今回の福岡での「ピアノ ソロ "クラシック×ジャズ"2018」が本当に楽しみになりました。

今週はバッハのお話一色だったわけですが、最後に小曽根さんからみなさんに今回のコンサートについてこんなメッセージいただきました。

「まぁバッハとても大事なんですけど私、実はジャズ屋でございますので(笑)バッハとかモーツァルトとかを通ってアメリカ経由で、僕らのジャズという楽、我々のオリジナルの音楽。それが実はバッハとどうつながってるかっていうのことも、皆さんに感じてもらえる即興のステージが2部にあります。なので全然違うものというよりは、実は音楽の世界は全部繋がってるんだよ、っていう事を皆さんに感じてもらえるんじゃないかなと思います。

2部はもう踊ってもらってもいいですよ「イエー!」ってう何やってもいいんです。
だけどバッハでも「イエー」って聞いても僕良いと思うんだよね。クラシックのコンサートってのはシーンって聴くのは礼儀としてはあると思うんですけど、しなきゃいけないと思ってすることじゃないですからね。 バッハでも「イエー」でOKですよ。でも、ヤジはやめてくださいね(笑)」

本当にありがとうございました。

次のコンサートで、そしてスタジオに来ていただける日も楽しみですね。

  

次週、11月10日は the pillowsをお迎えします。お楽しみに。




毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はちんです。

今日のゲストはきのこ帝国の佐藤千亜妃さん #きのこ帝国

昨年、結成10周年。同世代のバンドの中でも唯一無二のバンドサウンドと佐藤千亜妃さんの詞とボーカルが一体となった焦燥感や切なさを内在したハードなロックサウンドで頭角を現したきのこ帝国。以降は不動のメンバーで常に変化することを恐れない音楽を送り続けています。

そんな佐藤さんがドライビングミュージックとして選んでくれたのは、SUPER BUTTER DOGの『コミュニケーション・ブレイクダンス』。

「まず、SUPER BUTTER DOGすごい好きなんです。永積さん(永積タカシ、ハナレグミ)の声とこのグルーブ感みたいなのがすごいドライブに合うんじゃないかなと思って選んでみました」

なるほど。ボーカリストとして他に尊敬するシンガーさんはいますか?

「すごいたくさんいるんですけど美空ひばりさんとか
美空ひばりさん!

この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


「人から聞いた話なんですけど伝説で、レコーディングはもう基本的に来て挨拶して一発ですぐもう帰っちゃうみたいな。一発しか歌わないとか現在ではありえないじゃないですか。何回も録り直したり一部を手直しししたりとか。そういうのなく、シンガーとしてめちゃめちゃかっこいいスタンスだと思いますね

ちょっと意外。でも、常に貪欲に最良を求めているイメージのきのこ帝国と考えればこのお話に深く納得です。

そんなきのこ帝国は、今年9月通算5枚目、そして10周年の記念したアルバム「タイムラプス」をリリースしました。

「かなりキラキラしたって言うか青臭いと言うか、そんな感じのギターロックっぽい音像ではありつつも人生の思い出の一つ一つを振り返るような、ワンシーンワンシーンを振り返るような。そういう苦味とか痛みとか深みみたいなのも根底にある楽曲は並んだアルバムになったかなと思いますね」

よどみなく出てきたこの言葉に、アルバムの全体が凝縮されているように思います。

タイムラプスは「時間の経過」という意味。転じて、長時間を早回しでぎゅーっと移り行く時間の経過を見ることができる撮影と動画。最近はスマホでも人気の機能ですが、時間とともに常に変化していくバンドにはピッタリで今回のアルバムのテーマにもそのものですね。

10年を越えて佇まいは変わらず常に変わり続ける。

そんな中で今回の「タイムラプス」は、今までで一番と言っていいくらい自分たちをそのままを出してきたようなそんな印象もあります。

「色んなことをやってきたんですけど、私あまのじゃくなので、想定されている音楽を出したくないっていうのがあってカウンターばかりやってきたんですけどね。10年ということもあったのかも知れないですけど、もうそういう事をやんなくてもいいのかなっていうモチベーションになってきて。出来上がった曲をメンバー同士で、きのこ帝国らしく『素』でアレンジしてするパッケージするって言うので十分なんじゃないかなみたいなモードになってきて。そんな流れで開けつつ良いサウンドのアルバムができましたね」

10年を経過して、自分たちの音楽に揺るぎない自信を得た結果なのかもしれません。逆にそんなお話を聞くとどんどん変化していったのは、固定したイメージに囚われたくないって思いもあったんですね。

「多分かなりあると思います。一側面をフィーチャーされるのがすごく嫌で。いや、違う面もあるんだよっていうのもあってずっとやってきたので」

勝手にカテゴライズされることへの反発と同時に、常にいま時点の自分たちの音楽へ誠実に向き合った結果が、変化を恐れない音楽性につながったのだともいえそうです。

「そうですねやっぱりバンド然としてるって言うことに、面白みをあまり感じないタイプだったので、なんかこんなバンド居たんだってやっぱ言われたいっていうのがあって、そういうの意識して急にポップにしたりとかちょっとダビーにしたりとかでは色々トライはしてきましたね」

そんな時代も経ての今回のアルバム。
自分たちにとっても手応えを感じた自信作となっているようです。

初めてきのこ帝国にとって名刺みたいなマスターピースのアルバムができたかなと思ってて、今までのアルバムはやっぱりどこかの側面を切り取って表現してるアルバムが多くて。だけど今回はやっぱり今までの総括じゃないですけど、いろんな側面がちゃんと一枚にぎゅっと凝縮されてるかなっていうのは思いますね」


そんなアルバムの中から1曲さらに深く紐解いて頂くべく選んでくれたのは「タイトロープ」。
歌詞はシニカルでリアルなトーンもありますが、アルバムの中でもとりわけタイトでかっこいい1曲。今の「きのこ帝国っぽさ」を代表する曲かもしれませんね。

佐藤さんとしてはコード進行を軸にした楽曲がお気に入りのようです。

「あまりやらないコード感をやってるんですけど、なんか自分でも作った時に『これはキタな!』と思って。F#m(Fシャープマイナー)から F に行くみたいなところ。例えば メジャーからマイナーってよくあるんですけどマイナーからメジャーに行くコードの流れっていうのが珍しいんですね。すごいそれは自分のツボ的にはかなりぐっとくると言うか、してやったりって感じのコードの流れ なんですけど。サビではまたちょっと違う転調っぽいコードが入ったりとか。そういう意味でコード感とメロディの妙みたいなのがすごく表現されてるかなって思います。 」

ここ数作、きのこ帝国の作品は明らかに作品として、より質の高い楽曲へ取り組んでいこうという意思が感じられます。

昔は結構2コードの曲ばっかりで(笑)。でも。結構そのループ感とか言葉のフロウする感じとかも好きだったんですけど。ここ数年好きで聞いてる音楽が、かなりコードがいっぱい使われている曲が多くて1曲の中で10コード以上を使ってるみたいな。そういうのも作ってみたいなーとか思って。 そこからいろいろ聞いたり音楽解析したりもやってたのでそれがまあ作曲の時に影響が出てるかなとは思います」

この曲にもそういった部分や成果は生きていますか?

「おもしろいのがきのこ帝国ってコードの数を多くすればいいバンドじゃないと思ってて、狙い撃ちのコードの4つとかで持っていかないといけない。だから、逆にいろんなたくさんのコードを使う曲とかを作ったのを経たおかげで、逆にシンプルになった時に効いてくるコードっていうのが明るみになるっていうか、自分の中で昔よりも狙いすました感じだけれどもコードの数はそんなに多くない、みたいな事を『タイトロープ』では結構やれたかなと思ってますね。」

例えば以前と同様に2つのコードで曲ができたとしても、そこにはこの間の膨大な経験を重ねた上で多くのコードを削ぎ落として選びに選んだ研ぎ澄まされたシンプルな2つのコードで豊かな曲を作るというようなお話。その他にもこの曲にはありきたりでは済まさない色んな工夫が詰め込まれています。

「サビとかは普通ならAメロとかで使われてるコードのままサビに入った方が気持ちいいんですけど、そこを2個目のコードで『♪タイト ロープ』ってちょっと不安な感じの音程に行くんですけど、それはすごくうまくいったなと思います。また、全体にサウンドが出すところと引くところが明確にあって。イントロでガーッとくるんですけど A メロとかで歌い始めると急にベースとドラムと歌だけになるみたいな。で、サビ直前で二本分のフィードバックが時間差でヒュー、ヒュー』ときて、急にバーン!とサビなんでそこまでギターを我慢して我慢して、みたいな潔いところも好きな曲ですね」

フィードバック。初期のきのこ帝国のサウンドを象徴していたサウンドのひとつ。

ギターとつないだスピーカーが磁気同士や弦が拾って共振し発生するノイズ。マイクとスピーカーの間で起きる「ハウリング」とだいたい同じ原理です。本来はノイズであるこのフィードバックはロックギターのテクニックとして活用されています。

最近のきのこ帝国ではグッと活躍することが少なくなったフィードバックがこの曲では効果的に使われています。

「スタジオでやってる時にギター2本、どっちがフィードバックやる?みたいな話になって、じゃあどっちもやればいいんじゃない?ってなって(笑)。じゃあ1番は時間差で2番は同時にびゃーっと二人でいこうよ。みたいな話になって。それじゃあ、もったいないからそこの先でギター入るとこまでは、もう我慢してリズム隊に任せようとしてこういうコントラストの曲になりました」

自らの手になる楽曲のお話では慎重に言葉を選びながらしっかりと伝える意思を感じる佐藤さんでしたが、このレコーディングでのお話ではフっと肩の力が抜けて楽しそうです。

そんなちょっとしたところにバンドへの信頼感やバンドとしてのきのこ帝国の今の関係の良さを感じます。

このアルバムでは、他にもヒットメイカープロデューサー・アレンジャーの河野圭を迎えて華麗なストリングスと美しいメロディ、そして佐藤さんの歌詞でエモーショナルに歌い上げる、このアルバムもう一つのハイライト「夢見る頃を過ぎても」はじめ、佐藤さんのお話の通り今のきのこ帝国のあらゆる面がすべて凝縮された渾身の一枚となっています。


あっという間にお時間。
佐藤さん、ホッと一息。
今日も限られたお時間になんだかとっても深いところまで根掘り葉掘りと聞かせていただきましたから、どうもすみません。が、今のきのこ帝国の音世界を少し紐解くことができました。

「想像よりもディープな話ができて、音楽雑誌みたいで楽しかったです」

そう言って笑顔の佐藤さん。
いやもう本当にありがとうございました。


  

きのこ帝国 OFFICIAL WEBSITE (外部リンク)

次週、11月3日は小曽根真さんをお迎えします。お楽しみに。

10月20日のゲストは桑原あいさんでした。

  • 投稿日:
  • by

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手は香月千鶴です。

今日のゲストは桑原あいさん。 #桑原あい

平成3年生まれの27歳。2012年にアルバム・デビュー、以降各メディアのジャズチャートやメディアで話題となり今や国内外で活躍する、今大注目のジャズ・ピアニストです。

そんな華々しい活躍を頭に入れつつお待ちしていると、「よろしくおねがいしまーす」とふんわり入ってきた桑原さんは人懐っこい笑顔が素敵なごくごく普通の女性という感じ。だけど、ひとたび音楽の話となると、その語り口は切れ味が良くて、放出される底知れない陽性のエネルギーは、才気あふれるアーティストそのもの。なによりそんなお話を楽しそうにする姿がとても魅力的であっという間の今回のスタジオでした。


この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


今年に入っても次々と様々なスタイルでの様々なアルバムをリリースしている桑原さんですが、今年8月には最新作、Ai Kuwabara the Project名義初のアルバム『To The End Of This World』をリリースしました。

「『To The End Of This World』っていうタイトル「この世界の果てまで」って私は訳してるんですけど、去年の9月から私のレギュラートリオのメンバーが一新したんですね。ベースの鳥越啓介さん、ドラムスの千住宗臣さんと二人の先輩をお迎えして新しいアルバムをつくろうってなった時に、すでにライブで二人とやるために書いた曲が4,5曲あったんですよ。で、その楽曲全部にリンクしてる何かがあるなあと思って、考えてる時にふと『この世界の果てまで』っていう言葉がぱっと浮かんで、これにしようタイトルって。そこからテーマとかコンセプトに集中して作っていくという感じだったんです」

今回はベースの鳥越啓介さん、ドラムの千住宗臣さんという新レギュラートリオに加え、"ものんくる"の吉田沙良、現代ジャズ・シーンの注目サックス奏者、ベン・ウェンデル、サックス奏者、武嶋聡、気鋭のチェリスト徳澤青弦率いるカルテットなど多彩なゲストを迎えて、世界のジャズの新潮流に共振しつつ、ジャズの枠を軽々と越境する賑やかで刺激的なアルバムになりました。

「今まで自分のアルバム、今回7枚目なんですけど、シンプルなピアノトリオでずっと作ってきたんですね、それが今回ゲストが12名いるんですよ。いろんな人に楽器を入れたかったんだねって言われるんですけど、そういうわけじゃなくて曲によって、この楽曲はこの音が欲しがってるみたいな感覚で入れていたので気づいたら12名になってたという。本当に音楽に委ねたらこうなっちゃったと言うアルバムなので不思議なアルバムになりましたね」

収録曲の大半は桑原さん自身の作曲によるオリジナル曲ですが、どの曲もとても刺激的なのにどこかパーソナルな温かい手触りを感じる楽曲も少なくありません。

例えば5曲目「When You Feel Sad」。歌人、劇作家である寺山修司の詩「悲しくなったときは」を英詞にし桑原さんが曲をつけたものです。

寺山修司さんって世代ではないですよねえ?

「そうなんですけどね。 彼の『なみだは人間の作るいちばん小さな海です。』っていう詩があるんですね。それを高校2年生の時に何かの雑誌で読んでびっくりしてして!しかも、なんなら全部ひらがなとかで書くんですよ。なんかもう小学生でも書くようなこんな簡単なシンプルな言葉たちを、どういう想像力でこんなキラキラさせてるんだって。それに衝撃を受けたんです。そしたら私の母も寺山さんが好きだったみたいで、家に詩集があったんです。そこからですね、もうだーいすきです」

そういうとニッコリ笑う桑原さんです。

そんな桑原さん自身が、より深く紐解くべく選んでくれた曲は京都出身シンガー/ラッパーDaichi Yamamotoのラップをフィーチャーしたこのアルバムを象徴するような挑戦的なナンバー「MAMA」です。それでいてその動機はとてもほっこりした始まりでした。

「『ママ』ってタイトルの通りでお母さんのことなんですけど。私はお母さんと日頃は仲がいいんですけど、ある時、泣くレベルの大喧嘩をしまして。そしたら腹立ってベースラインが浮かんだんですよ(笑)。で、これ曲になるなと思って。最初はピアノトリオで演奏してたんですよ」

そんな中で桑原さんはこの曲に足りない何かがあると思いはじめます。

「曲を書きながら、絶対サックスを入れようと思ったんです。でもこの曲には絶対もう一個必要な要素があるんだと考えた時に、喧嘩した時のことを思い出して。なんで(あの時)私は泣いたんだろうと。その時に、一番分かってもらいたかったことが、お母さんに分かってもらえなかった悔しさがすごい残ってたんです。要は私はお母さんに一番理解して欲しかった、あなたが好きだから!って、これお母さんの愛の曲なんですよ

その愛を表現する方法とは。

ダイレクトに言葉を載せたいなって思った時に、女性より男の子とお母さんとかの方が性別も違うから温度差が出るんじゃないかなって考えて。じゃあラップにしよう、リズムもヒップホップ的なグループがあるのでたぶんラップもすごい乗せやすいって想像したらすごいかっこいいと思って。それで収録する時は絶対ラップを入れるようと決めたんです。

だけど問題なのは、ラッパーを誰にしようかって。それでDaichi Yamamotoという彼にお願いしたんですけど、私は元から彼と友達では、なくって。めちゃくちゃを探した先に、録音を担当してくださったエンジニアさんが『Daichi Yamamotoって知ってる?めちゃくちゃ良いよ彼』って教えてくれまして、YouTubeで検索したら一言目で『彼だ!』って思ってすぐ連絡したらすぐOKが出て。口説きましたね、もう口説きましたね(笑)」

そんな、個人的な体験から始まったこの曲は、Daichi Yamamotoを迎えて極めてジャズ的に広がりをみせていきます。

「リリックも彼なんですけど『なんといっても母への愛の歌だから、あなたが思う愛情を歌詞にしてほしいと、あとはいつもどおりのスタンスで自由にやってね』で、後はおまかせしました。

任せるってのもジャズの良いところで、相手の信頼度によってアンサンブルの仕方が変わってくるのでお任せたんです。大地くんは、ジャマイカのお母さんと日本人のお父様とのハーフでいらっしゃって。そのお母様が33年前に日本に結婚して来た。その時にちょっと人種差別だったりまだそういうのがある時代で日本で生きていくのがすごく大変だった。そこから自分を産んでくれて、こういう風に自分は誕生してっていうのを歌詞にしてくれたんですよね。 私はお母さんの生い立ちを歌詞にするっていう想像がなかったので、その歌詞がぱっと送られてきたときにこういう愛の形があるんだと思ってそれで感動してしまって、 Daichiくんありがとう、あなたに本当頼んでよかったんだってそんな風にして完成したんです。自分でも思ってもなかったような形になりましたね」

縁というか化学変化というか、音楽の不思議さを感じますね。

そんな色んな想いが詰まったこの曲、最後はフェードアウトで終わります。

「最後に畳かけてDaichiくんが『ありがとう』って言って終わるんです。それでそのまま帰っていく後ろ姿、だからフェードアウト。それしか表現方法がなくて。結構短いフェードアウトでなんか母さんの面影とかがフっと消えてしまうみたいなちょっと寂しいイメージで。うふふ! 」

そんなお話を聞いた後で改めてこの「MAMA」を聞くと、桑原さんの愛、Daichiさんの愛そして渾然一体となった気合溢れる演奏に胸が熱くなるようですね。ぜひもう一回聴いてみてください。


そして、この秋、東京、大阪、名古屋、福岡の4大都市で『To The End Of This World』リリースツアーの開催が決定しています。

Ai Kuwabara the Project 「 To The End Of This World 」Release Tour

2018/11/4(日) Gate's7
15:30開場 16:00開演

詳しくはキョードー西日本(関連サイト


「今回3人で来るんですけど、私、福岡はピアノソロでは何回か来たことあるんですけど、バンドは始めてなんですよ。超嬉しいんですよ、もうその時点で嬉しいんですよ。しかもレギュラートリオの大好きな2人と来れるって嬉しいしかない!しかも福岡初日なんですよ、CD に入ってる曲もトリオバージョンでお披露目が初なので、ウチらも良い緊張感でできるんじゃないかなって思ってます」

無邪気に喜びを伝えてくれる桑原さん、かわいいなと思ってしまいます。でも、こんなすごいアルバムを作り上げたんだなあ。とも。

おしゃべりしている桑原さんは表情豊かで、素直に感情を表す素敵な方です。一方でその音楽への熱意と愛を熱く語る姿からはエネルギッシュで、JAZZという音楽のもつパワーと自由が伝わってくるようです。

最後にリスナーの皆さんへひとこと。

「ジャズは本当にフレッシュな生物なのでライブも毎回オーディエンスが違うし、レコーディングとはまた違った臨場感とか、ライブでは体験できたかなと思いますのでぜひ一緒に音楽を楽しみに来てくれたらなと思います」

KUWABARA WEB (外部リンク)

  

次週、10月27日はきのこ帝国をお迎えします。お楽しみに。

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はこはまもとこです。

今日のゲストは先週に引き続き小曽根真さん。 #小曽根真

先週も楽しくて濃密なお話をたくさん聞かせていただきました。今週もどんな音世界についてお話を聞かせてくれるのかとても楽しみですね。

ですが、今日はその前にかるーく小曽根さんがピックアップしたドライビングミュージック、タワーオブパワーの「Squib Cakes」でスタート!と思いきや、いきなり思いもよらない「神童:小曽根真」のお話が聞けちゃいました。


この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


「1970年代ですね。このバンドが初めて日本にツアーに来た時に僕小学校の6年生だったんですね。それで神戸国際会館の一番後ろの席が取れたんで見に行ったんすよ。ハモンドオルガンを使ったバンドってそんなにその頃なかったんですね」

その頃ってもう鍵盤には触れてらっしゃったんですか?

「触ってましたね。大阪の読売テレビでレギュラー一本持ってた頃ですから生意気のさかりを通り越してもうハッハッハ(笑)ぶん殴ってやろうかってくらい。
佐良直美さんが出ている番組で佐良さんがジャズを歌後ろでハモンド・オルガンで伴奏してました。その時にね、舞台袖に八代亜紀さんとかデビューする頃の森昌子さんがいらっしゃって、八代さんが演奏の後に僕に「坊や上手ね」って言ってくださって」

なんと。12歳前後で、すでにテレビのレギュラーを! 八代さんとは2年前くらいに会ってその頃のお話もしたんだとか。小6にしてすでにプレイヤーとしてタワー・オブ・パワーを聞いていたんですねえ。

「この曲の頃はレコードですから、あの時代は擦り切れるほど聞きましたね。(空気感が)乾いてますよね。お天気の良い日にこれを聴きながらカリフォルニアでオープンカーを借りてウエストコーストのハイウェイ1を走るのが夢だったですね。まだやってないですね。いつかやらないと」
今日もびっくりのエピソードでスタートしました。
小曽根真さん、いつだってこちらの期待を軽く上回るお話を披露してくれます。今日も楽しみですね。

さて今日は小曽根真さんの楽曲を、小曽根さん自ら1曲ピックアップして頂いて深くその音世界を紐解いていただこうと思います。

その一曲とはショパンの『子犬のワルツ(ワルツ第6番変ニ長調 《子犬》)』。
小曽根真さんがクラシックのショパンを演奏したアルバム『Road to Chopin』に収められています。


小曽根さんとショパン。
そこには小曽根さんのショパンへの複雑な想いと、時を超えた理解の物語がありました。

「最初、『小曽根さんショパン弾きませんか?』って言われた時、最初嫌だって言ったんですよ。もちろん嫌いだったわけじゃないけど僕が弾く曲じゃないって思ってて。というのもショパン自体の音楽が非常に装飾音が多いんですよ。僕にしてみると装飾音ってのはアドリブの部分っていう風に感じてるので、それは俺が決めたい。書かれてあるものは弾きたくない。ジャズ屋はほとんどこういう人が多いんですよ。へそ曲がりなんですよ。」

そう言って笑う小曽根さん。

「特にショパンっていうのは日本ではポピュラーなんですけど、クラシックの世界ですごくきれいに美しく弾くことが先に立ってる気がしたんですね。間違ったらごめんなさい。僕はそう感じたんですね。
それがロマン派の時代のマリーアントワネットのロココ調のちょっと華美な貴族の気持ち悪い所につながっちゃったんですね。僕はそういうキンキラキンのゴテゴテなのは嫌だと思ってたんです」


そんなショパンに対して複雑な思いを抱えていた小曽根さんは、あるきっかけで180度印象を改めます。

「ちょっとご縁があって、ポーランドのアンナ・マリア・ヨペックというシンガーに出会って、ポーランドに行った時に『ポーランド共和国という国が地図に載ったのは70年前なんですよ。それまでこの国は独立してなかったんですよ』という話を聞いたんですね。ポーランドという国は、ずーっと昔のローマ帝国の時代から、ドイツが侵略する、ソ連が来る、いつも周囲から侵略されてる歴史がずーっとあって、その中で活動家として戦っていた一人がショパンだったんですね。でもここにいたら才能が潰されるから絶対に駄目だって、無理やりフランスに出されて、フランスで祖国のことを思いつつずーっと彼は作曲して、ポーランドから亡命した人のためにタダで音楽会やったりとか。実は全然『華美』とは正反対

ショパンは祖国ポーランドを20歳で後にして、祖国への強い思慕の念を胸に秘めながら作品を作りつづけ、生涯、祖国に戻ることはなかったそうです。

僕は『なんやそれブルースと一緒やん!』って思ったわけですね。かつて多くの黒人の人がアフリカから連れられてアメリカに渡り、突然、奴隷となっても死ぬまで自由は無かった。そこで生まれてきた音楽がブルースでありジャズですから。そしたら僕が弾く意味があるのかも、と思ったんですよ。それでポーランドのアンナさんとアルバムを作る中で、僕がショパンを弾くならどう弾くだろうってことで作らせていただいたのが『Road to Chopin』。『小曽根真・プレイズ・ショパン』ってそんなおこがましいことは言えないので『ショパンへの道』っていうタイトルでアルバムを作ったんです」


小曽根さんここまで一気に喋って「相変わらず長いですよねえ」と大笑い。そんなことないですよ。ショパンへの当初の違和感から理解への過程はとても興味深くて、深く感じ入ってお話を聞いていたこはまさんも思わずテンションアップ。おなじみの口フレーズを交えつつそういう歴史を経て演奏された「子犬のワルツ」の感想を熱く伝えます。

「ショパンの子犬のワルツの有名な「ティラリラリラリラリラリラ」っていうフレーズと、小曽根さんの左手が「ジャッジャッ、ズッチャチャズッチャチャ」ってこれがすごく面白くて」

小曽根さんも「そうなんですそうなんです」とグイと少し前に乗り出し、セッションのようにこの曲の凝りに凝ったアプローチについて解説をしてくれました。どこまでお伝えできるか。詳しくはタイムフリーでお聞きくださいね。

「これワルツですから三拍子ですね。例えば口で歌うと「ぶん・ちゃっちゃ、ぶん・ちゃっちゃ、ぶん・ちゃっちゃ」じゃないですか。これがウィンナーワルツなると「ンチャッチャー、ンチャッチャー、ンチャッチャー」と、ちょっと舞踏会で踊るクルクルクルクル回るリズムがあるんですね。これがジャズになると「ンカトゥクターン、ンカトゥクターン、ンカトゥクターン」と跳ねるんですよ。これどれも全部三拍子なんですよ。

僕はこの『子犬のワルツ』を弾く時にサビの部分、まショパンにサビなんかないよっていわれるでしょうけど(笑)まあ、俗に言うサビに当たる部分で『ベネズエラン・ワルツ』っていう、普通の「ぶん・ちゃっちゃ、ぶん・ちゃっちゃ」じゃなくて「チャ・ドゥンドゥン、チャ・ドゥンドゥン、チャ・ドゥンドゥン、チャ・ドゥンドゥン、タンツカドンドンドンタン、タタツタドン、タタツタドン、タタツタドン」こんな風にアクセントが最後に来るんです。それを使って弾いてみたんですよ。そしたら『イケルやーん』ってことになって。

じゃスタジオで即興でやったら面白かったんで、アルバムに入れようってことになったんですけど、このアイディアがなかったらこの曲はこのアルバムに入ってなかったと思います

ピアノの詩人の名曲に対して敬意を払いつつ、実は一方で極めて挑戦的なアプローチで臨んでいたことがよく分かるエピソードです。

「だけどおそらくショパンはめっちゃ怒ってると思いますよ(笑)。絶対怒ってると思う。『そこまでせんでもええやろ』って大阪弁で怒ってはると思いますね。 それにね、ショパンのメロディは情熱的なのでまた南米のリズムに合うんですよ。めちゃくちゃ合うんですね」

「ショパンはまたジョルジュ・サンドとマジョルカ島に愛の逃避行をしたくらいの情熱的な人ですしね」と、クラシックに造詣の深いこはまさんもすかさず一言、補足です。


ここで番組ではで改めて「子犬のワルツ」が流れたのですが、音楽が流れている間も気がつけばふたりでリズムをとりつつ興味深いお話は止まりません。

「これはまたジャズ的に裏でアクセント入れてるんですね。実は怖いんですけどねこれ。8分音符で2拍半づつアクセント入れていくんですよ。3拍子に2.5づつ入れていくからどんどん足りなくなってくるんですよ」

「失礼ですけどよく弾けるなって思うんですけど!」
「そこは、もう天才ですから(笑)」
「ありえないですもん。リズムが違うものが右と左でね」
「そう。だけど入るのはここしかないってのがあるんですね。ちゃんと勘定して入れてるんです。こんなことばっかりやってるから友達がいなくなっちゃう(笑)」

リズム談義。とまらないです。

一つの曲に込められた、歴史上の偉大な作曲家と現代の当代随一のプレイヤーとの時を超えた誤解と和解の物語。いかがだったでしょうか?もっとも、そんな風に言えばご本人からきっと「とんでもない!」と叱られそうですが、名曲というものはいつもそうやって、現代の演奏家との格闘の末に今もイキイキと息づいているのでしょうね。そんなことを教えてくれる素晴らしいお話でした。


さて、福岡でも開かれる今回のコンサートでは、もうひとりのクラシックの巨人バッハに挑みます。


小曽根真 ピアノ ソロ "クラシック×ジャズ"2018

【スペシャルゲスト】中川英二郎 2018年11月29日(木)
開場18:30 開演19:00
福岡シンフォニーホール
※詳しくは小曽根真 Makoto Ozone Official Website (外部リンク)でご確認を。


「バッハは手強いですね。音数が少ないのに完璧な音楽なので、じゃあこれを僕らがどう料理するっていう。料理できないってのも料理のひとつなのかなと思たりもするけど。でもせっかくだから僕らしかできないことをしたいですね」

そんな風にショパンとは全く違うバッハへの思い。
これはぜひふかーく聞かせていただきたいですね。そんなわけで、小曽根さんには無理をお願いして嬉しいことにさらに延長戦決定です。

ただし、しばしお休みいただいて次回は11月3日の放送で。

「じゃあ、2週間ほどどこか行ってきます(笑)」

素晴らしい小曽根真さんのお話、また聞けます。とても楽しみですね。

  

小曽根真さん、次回は11月3日にお迎えします。
次週、10月20日は桑原あいさんをお迎えします。お楽しみに。

10月6日のゲストは小曽根真さんです。

  • 投稿日:
  • by

小曽根真さん

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はこはまもとこです。

今日のゲストは小曽根真さん。 #小曽根真

昨年も登場いただいて楽しいお話をたくさん聞かせてくれた小曽根さんですが、この間、名門オーケストラ『ニューヨーク・フィル』との共演、その感動のステージを収録した初のクラシックアルバム『ビヨンド・ボーダーズ』のリリースとその活躍と進化は留まることはありません。

今回はそんな溢れるような音世界の話にとどまらず、ラジオの前のみなさんの人生にも響く金言いっぱいの聞き逃がせない音解となりました。そんなわけで、今回はその一部始終をできるだけ再現。詳しくはぜひタイムフリーでお聞きください!

この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


小曽根さんは昨年12月2日から4日、ニューヨーク・フィルの本拠地、NYリンカーン・センターにあるデヴィッド・ゲフィン・ホールで開催された定期演奏会にソリストとして出演しました。

「これはね、僕の人生設計の中には微塵もなかったですね。僕が2014年にアジアツアーに参加させていただいたというところから始まるんです。今年レナード・バーンスタインの生誕100周年のフェスティバルを世界中でやってるんですね。ニューヨークフィルというのはバーンスタインさんが11年間音楽監督を務めた地元のオーケストラなんですが、この指揮者のアランギルバートっていう指揮者とすごく仲良くなって、バーンスタインの100周年のコンサートには真に弾いてほしいといわれたんです」

そのコンサートを収録したのがアルバム『ビヨンド・ボーダーズ』です。
3日間の公演はすべてソールドアウト。終演後のスタンディングオベーションが鳴り止まなかったとか。

そしてこの日の演奏曲にも小曽根さんが注目される理由がありました。

「普通コンサートでピアニストが出るときってのはコンツェルト(協奏曲)なんで前半にやるんですよ。そして後半はシンフォニー(交響曲)ですからピアニストはいないんです。ところが今回は前半に『Rhapsody in Blue』っていうガーシュインのピアノコンツェルトを弾いて、後半に『不安の時代』という交響曲をやるんですが、これは実はピアノフィーチャーの交響曲なんですね」

通常、ピアノが入らない交響曲ですが、バーンスタインはピアノフィーチャーの交響曲を作っていたんですね!

「そういうことですね。 それだけでも画期的なのに、おそらくバーンスタインさん本人がピアノ弾く人なのでおそらく弾き振り(演奏しながら指揮をすること)を考えて書いたんじゃないかなと思うんですね。でこの『不安の時代』は、テーマもそうなんですけど、人生のドロドロした物語があるんですね。25分間その物語をずっと通ってきて、最後に『赦し』の部分があるんですよ。最後の5分間で神様が天からワーッと光を降り注いで降ろしてきて、みんなが赦されるっていう愛につつまれる音楽なんですけど。その最後の5分間の為に、めちゃくちゃめんどくさいところを25分間みんなで旅しなきゃいけないすごい曲なんです(笑)ヘビーなんですよ」

「ちょうど第二次大戦の最中に男3人とある女の1人がニューヨークのバーで会ってね。みんなでその戦争の事について語ったりとか言うイギリスのオーデンって人が書いた『不安の時代』という詩があって、それをもとにバーンスタインが曲にしたんですね。だから物語が全部音楽になってるんです」

バーンスタインってどうしても「ウエストサイド物語」とかミュージカルのイメージがあって、バーンスタインの交響曲自体聞いたことない人は多いかもしれません。だけどミュージカルのように音楽が物語そのものになっていると聞くと、また興味がグッと湧いてきます。どんなお話なんでしょうね。

「例えば『楽しいことやろうぜ』ってみんなで仮面舞踏会を4人でやるんですけど誰も心から楽しめてないんですよね。口では言ってもやっぱり自分達の心の中にわだかまりっていうか何かスッキリしないものを持っていて。結局、楽しくないってことで別れて、もう一度自分たちの現実のとこに戻ったところに上から光が降りてくる。
そんなもう、すごいめんどくさい曲、って言ったらバーンスタインに怒られるかな(笑) でも素晴らしい曲なんですよ。それをレコーディングして」

そんな難しくて素晴らしい曲を、心から理解して表現するには随分時間がかかったようです。お話は17年前の初演奏に遡ります。

「実はこの曲を初めて弾いたのはもう2001年で井上道義さんっていう指揮者のもと新日本フィルハーモニーで東京で一回でやってるんですよ。
その時はね、何を弾いてるんだか全然よくわからなかったですね。とにかく難しい曲ってイメージしか僕の中にはなくて。2001年でしょ。17年前ですから僕はまだ40になったころ。まだもう全然若造ですよね。だから。何もわかってない、自分のことすらわかってない若造がこれを弾いてもやっぱり...そのなんだろうな。自分の弱点とか、自分の弱いところとか、自分の汚いところとか、そういうものと向き合って、初めてこの曲の意味がわかる、ということをね、今回すごく教わりましたね」

実に自分なりに納得の演奏ができるまでには、ご自身の17年の成熟を待つ必要があったということでしょうか。

2001年の時点で小曽根さんはジャズのピアニストとしての地位も自信も確立していたと思うんですが、それでもやっぱり年齢を重ねて感じるものは変わってくるものなんでしょうか。

「まあそれは少しずつでも前進してれば見えてくる景色は当然変わってくると思いますね。僕の場合『できないことが宝物』って思っていて、これ僕が教えてる学祭たちにも言うんですけど、できないことがあると悔しいんですよね。悔しいんだけどそれは僕の中では恥ずかしいことじゃないんですよ。楽しいことになっちゃう。だって、できないことがあれば練習すればいいだけの話じゃない、ま結果はどう出ても」

と笑います。

「一番怖いのは、ある程度自分ができるようになってきて、プロになってできるようになってきた時が実は一番危ないですね。なぜならそれで仕事は回していけるけれども、進化はしてない状態が続くわけですよ。進化してないかどうかって周りが決めることもあるんですけど、一番それで気持ちが萎えるのは自分本人なんですね。

自分が一番わかってんですよね『俺、最近伸びてない』って。なぜなら人の演奏会を聴きに行ってないし、忙しくなることってすごく危険なことなんですよね。だって「忙」しいって心を亡くすって書きますからね。
だから僕は努めて、忙しいって言わないようにしてる。『スケジュールが詰まってる』と言うけど、忙しいって言うと言霊があるから怖いから言わないですよ」

私達の人生にもつながる大切なお話。『できないことが宝物』のお話はさらにこう続きます。  

「だけどできないことがあっても、そこに飛び込んでいくには やっぱり、やり続けなきゃいけないって思いますね。
なんかこうね、生きてる以上大層なことじゃなくてね、次の瞬間何が起こるかわからない。いいこともあるし悪いことも。そしたらハッピーじゃないことが来た時にどうやってそれと立ち向かうか、それと向き合うか、そこ逃げては通れないですよね。逃げてても同じ。絶対問題がいずれ先に出てくるから。だから普通に生きてるだけで皆さんはもうジャズミュージシャンのようにインプロバイザーなわけですよ」

音楽と人生は同じなんですねえ。
そうやって小曽根さんは前に前に。そしてそんな小曽根さんを観て、聞いて、私達は力をもらえるんですね。

こはまさんも「ドキっとしました。やっぱりこの仕事に慣れてそんな毎日をそれでやっていけるんですよね。そのことに対して慣れてはいけないっていうのはすごく思いますね」と心から一言。


「僕が例えばニューヨーク・フィルとやるとか普通考えたらね、いい結果だけを望んでたらできないんですよ。失敗するかもしれないけど、絶対神様っていうのは1年に1回か2年に1回かわからないけど忘れた頃に、ポンとありえないような仕事を持ってくるんですよ。

学生たちにも言うんですよ。『弾くか?』っていうと『私まだ準備できてません』って言うからそれ待ってたら一生できないよって。だから準備できてないかもしれないからこそ今やるんだよ、このコンサートまでの間にめちゃくちゃ練習したら、ひょっとしたら、その時には準備できてるかもしれない。可能性を自分で伸ばしていくっていうのは常にそういうチャンスが来た時には『やりますっ』で、失敗したら何が悪かったのか自分で勉強すればいいし。失敗しても死なないんですよ音楽の場合は。だからガンガンやればいいんですよ」

挑戦し続けることを時に手振りを交えながら熱くお話してくれる小曽根さん。毎回、音楽の話だけど気がつけば人生の話を教えてもらえますね。


そんなお話を踏まえて改めてアルバム『ビヨンド・ボーダーズ』の交響曲第二番「不安の時代」を聞くと人生の深みや素晴らしさに胸を打たれます。

「ちょっと何回も聞かないとね、本当に深い物語なので。深いドラマの映画、人間を描いてる映画を見るようなもんだと思いますけども、楽しんでいただければと思います」


そして、ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」。あまりにも有名なこの楽曲は、小曽根さん自身も今まで数々のセッションやソロで演奏してきました。それを今回はオーケストラで。誰もが知る曲ゆえの難しさについてお話してくれました。

「皆さんよくご存知な曲なのでブーイングが来るかブラボーが来るか。これはもう本当に終わるまでわからないんですね。 だから、やっぱりそこはもう本当に正直な気持ちで、その時に聞こえてきたものを弾くっていうところで音楽アプローチしないと、こうやったらお客さん受けるかな?とか考えた瞬間に、音楽って死んじゃうんで、その気持ちの中でのピュアさだけをずっとキープするかっていうのをものすごく気をつけて弾きましたけどね」

まさに積み重ねてきた経験と魂をぶつけないといけないのですね。

そんな自身の「ラプソディ・イン・ブルー」をスタジオで聞きながら、
「僕ニューヨークに住んでる頃、リンカーンセンターの前何度も歩いてましたけど、ここでニューヨークフィルやってんだなーと思ってましたけどね。まさか自分がその中に入るとは夢にも思いませんでした。僕の場合は嬉しがりなんで、なんでもやるやるって言っちゃうんですけど(笑)」

そうやってやっと落ち着いたように郷愁混じりの大きな笑顔の小曽根さん。
気がつけば、濃密な時間も残り少しとなりました。

そんな小曽根さんのコンサート、福岡でも間もなく開催です。
小曽根真さんのピアノソロと、日本を代表する世界的トロンボーン奏者、中川英二郎さんとのデュオで「音楽の父」バッハに挑む極上の一夜です。

小曽根真 ピアノ ソロ "クラシック×ジャズ"2018

【スペシャルゲスト】中川英二郎 2018年11月29日(木)
開場18:30 開演19:00
福岡シンフォニーホール


「英二郎くんもやっぱりクラシックとジャズと両方できる人ですけど、普通トロンボーンというとゆっくりしたイメージがあると思うんですが、この人がトロンボーン吹くとなんか時速200 kmで走るサイみたいな(笑)、そんな感じですごいです本当に」

さらに今回はとびきりの趣向で、巨人バッハに挑みます。

「ヴィオラ・ダ・ガンバっていう楽器があって、バッハの時代の古楽器に近い弦楽器ですけど。その楽器とピアノのためのソナタがあって、それを今回トロンボーンとピアノで弾きます。ただ、そもそもトロンボーンのために書かれた楽器じゃないので英ちゃんが練習しだして気づいたんですけど『息継ぎする場所がない』って(笑)。 今息継ぎ場所を考えてますつってましたけどね」

小曽根さんにとってのバッハ、そこには深い思い入れがあるようです。

「バッハの音楽ってのは非常に僕にとっては宇宙的なものだと思っていて。完璧にできた音楽なので今まであえて僕は演奏しなかったんですね。ジャズに近いってよく言われるんですけど僕は全然逆だと思ってて。300年以上前に即興であんな音楽を掛ける人は宇宙人以外ないと思ってますから僕は」

まだまだ溢れるバッハへの思い。
次週も小曽根さんをお迎えしましょう。

次回はそんなお話も含めて、まだまだ聞かせてほしい小曽根真さんのお話、音世界を探求していきたいと思います。次週もどうぞお楽しみに。

 

小曽根真 Makoto Ozone Official Website (外部リンク)

次週、10月13日は、引き続き小曽根真さんをお迎えしてお送りします。どうぞお楽しみに。

9月29日のゲストは引き続きAimerさんです。

  • 投稿日:
  • by

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はちん。です。

今日のゲストは先週に引き続き Aimerさんです。 #Aimer

先週はAimerさんの声に関するこだわりや楽しいお話をたっぷり聞くことができました。

とっても忙しい中で、正直あんなにディープなお話に付き合っていただいて申し訳ないなーと思っていたんですが、それでも「嬉しい」と言ってくれるAimerさん、ホントにいい人なんです。

そんなAimerさんの行為に甘えて今週は、さらに深く。
紐解いた先には、Aimerさんのライブへの熱い想い。そして、思いがけないアーティストと受け渡される音楽のバトンについてのお話を聞くことができました。感無量。そんな感じです。

この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


今日の1曲めは今月5日に発売されたばかりの7周年を飾る15枚目のトリプルA面シングル「Black Bird / Tiny Dancers /思い出は奇麗で」からとびきりのアップナンバー「Tiny Dancers」スタート。

さかのぼって2017年に発表された「ONE」は開け放たれた窓のようにポジティブでエネルギーに満ちたAimerさんの新しい一歩を示すようなナンバーでした。以降、アップテンポで軽快なナンバーも増えてきましたが、この曲はその流れを感じつつも、もはやアンセムのようにアガるナンバーです。

この曲はライブのことを想像しながら皆さんが盛り上がっているところを見たいな という思いで作りました。」

確かに、この曲のMVでは少女のようにステージでピョンピョン跳ねながら歌うライブでのAimerさんが登場します。お話を聞くほど思っていた以上にライブへの熱い想いがあることが分かってきました。

「やっぱりライブが、活動するごとに自分の中で大きなものになってきて、その中で皆さんと盛り上がるような双方から力を分け与えると言うかぶつかり合って爆発させるような場面が欲しいなー。っていう思いをが増してきて」

「ONE」と「Tiny Dancers」この2曲はライブへの強い思いでつながっていました。

「『ONE』は武道館のために作った曲だったんですね。どうしてもアンコールで自分の曲で盛り上がる曲が欲しいので作ったんですけど、 それが思っていた以上に反響をいただいて。その事もあって今回ライブのことを見据えてまたもう一曲作っててみようと思ったんです」

少し語気に力も入り楽しそうで、想像するよりAimerさんシンプルにライブが好き、という感じがすごくつたわってくるのです。

というか、もしかしたらもともとクラブに行ったりアクティブな方に強い方なのでは?

「完全に弱いです(笑)」

あ。よくわからないですけど、良かったです。 イメージ通りで。

さて、今回の「Black Bird / Tiny Dancers /思い出は奇麗で」では、バラエティ豊かな楽曲とともに、全体に「歌の楽しさ」みたいなところをすごく感じますね。

自分でも意識しながら本当に(楽曲と同様に)声でも色とりどりにしたいなと思って作っていきました。「Black Bird」ではちょっとシリアスでロー(低音)の効いた声になってて、「Tiny Dancers」は意識してちょっと高めの幼い声で、「思い出は綺麗で」は少し昔の思い出を今懐かしむような大人びた声で歌っていたりと、本当に今できる表現できる「声色」を最大限に使っているので、楽しんでくれたらうれしいです」

そんな声の魅力をぜひ目の前で楽しみたいものですね。   
   

『Aimer Hall Tour 18/19 "soleil et pluie"』

福岡公演 11月3日(土)『福岡サンパレスホテル&ホール』、
広島公演 11月4日(日)『広島文化学園HBGホール』


この秋からスタートするツアー「soleil et pluie」。このタイトルはフランス語で「太陽と雨」だそう。

「遡ると"blanc"と"noir"、「白」と「黒」というベストアルバムを出して、優しいバラードと激しいロックのような曲を二つに分たりしたんですけど、それ以降「白」と「黒」に分類できないようなカラフルな曲も増えてきたなって思いが今あって、また新しい定義と言うかコンセプトとして、『太陽と雨』それを今回のツアーで皆さんに提示したいなんて思ったんです」

成長する音楽性にふさわしい新しい分け方、定義。
とはいえ、やっぱり相反する2つの世界を描きたいことに変わりはない あたり、とてもAimerさんらしいですね。

さてライブに話を戻しましょう。

「それこそその太陽のようなアップテンポなメンバーで明るく皆さんを照らすような場面もあれば、雨が降るようにしっとりとしたバラードをじっくりお聞かせする場面もあったりして。今まで以上に自分の今の世界観を表現できるライブになると思います」

今回は今までで一番の規模と本数のライブになります。
ここでも再びライブへの熱い想いを話してくれましたが、表現としての『ライブ』の可能性と魅力を感じていることがわかりました。

「本当にライブっていうものは、今は自分の中でやっぱり一番上ウェイトを占めているものだなっていう意識はあって。表現者としてライブで歌を歌ってみなさんと一緒に一夜を作り上げるっていう行為にすごく意味を感じていて、今は本当にいろんな場所に歌いに行きたいなと思いますし、今しかできない今だからこそできる歌を聴いて欲しいなと思います」

きっとファンの皆さんはこの言葉嬉しいでしょうね。


さてここで少し話題を変えて、今週はAimerさんに「ルーツミュージック」というテーマで一曲選んでもらいました。

Aimerさんが選んだその曲はスピッツの「渚」です。

   「この曲は特に歌詞のワンフレーズにすごく大事にしているところがあって、それを自分の作品に活かしたと言うか、自分の作品で同じようにと言うかリスペクトを込めて作った部分があってこの曲を選んでみました」 

ちなみに言葉通りのルーツ、記憶にある限りで始めて好きになった曲は映画「アニー」の「トゥモロー」だそう。
「最近リメイクされた方ではなくて、古い方の作品が本当に好きで。主人公の女の子が7歳とかまだ幼い子なので、声が透き通っていて。そういう声に憧れて歌い始めたのが歌うってことの最初かなと思います」

さてスピッツです。スピッツ自体お好きなんですね?と聞くと少し大きめの声で即答「大好きです!」。

「大好きすぎて一口では言えないんですけどまず草野さんの声の感じがすごく好きで、ある意味ちょっと中性的な人って声に憧れてます。 自分の声を褒めていただく時に『ちょっと中性的な部分があるね』って言われるのがすごく嬉しくて、こういう声になれたらいいなと思うアーティストの一人ですね

やっぱり「声」。好きになるアーティストなどもやっぱり声で好きなることが多いですか?

「今はそうでもないんですけど、本当に声ですぐにのめり込んだりって言う人が多かったですね」

なるほど、じゃあボーカルはイマイチだけど曲がいいからとかはないんですねえ。

「はい(キッパリ)。声がだめだと思う何もかもダメという(笑)」
思わず笑ってしまいました。


しかし、今回は大好きなスピッツだからではなく、この曲、とこの曲の一節。

「はい。端的に言えば この曲の中に出てくる単語がすごく頭に残っていてそれを自分の歌詞を書く時の言葉のストックの一つに入れていてそこから生まれた曲があるっていう感じですね。」

そこから生まれた曲とは、Aimerさんの2011年のファーストシングルでもある「六等星の星」です。アニメ『No.6』のエンディングテーマでもあるこの曲。

どの部分に影響受けたんでしょうね?なんてお話していると、たぶん今回いろんな部分で垣間見えたAimerさんの優しさなのか、ちんのあまりのしつこさに根負けしたのか(すみません)、「これ本当に初めて言うんですけど」とこんな秘話を披露してくれました。これにはびっくり。

ズバリ『六等星』って単語ですね。『渚』の中で『ぼやけた六等星だけど思い込みの恋に落ちた』っていう一節が大好きなフレーズで、自分のストックのひとつに入れていてこの最初のデビュー曲のタイトルをつける時にそこから「六等星」と」

ええっ!アニメのタイトルが「No.6」だからだとばっかり。

「もちろん、それもかけてるんですけど。英語で「No.6」というのがまずあるし、スピッツのフレーズを思い出して『六等星の夜』というふうにつけました。この曲は歌詞には六等星っていう単語は一回も出てこなくって、タイトルだけがちょっと違うという私の曲には他にはあんまりない珍しいパターンなんです。
これ本当に今始めて言う話なんですけど(笑)」

ああ、本当にしつこくてすみません。
でもお話を聞いてAimerさんとスピッツの共通点にすごく納得しました。

昔から声にこだわってきたAimerさんにとって、草野マサムネさんの死と生、あるいは生と性、宇宙のような独特の感性を二重三重に周到に含みをもたせるように織り込まれた歌詞世界は、改めて歌詞、しかも日本語の歌詞と向き合う契機になったのでしょうし、そこから再び日本語詞を表現する「歌」という意味で草野さんに強く影響を受けたのかもしれません。

一つの単語の話ですけど、意識してか偶然か、旅立ちのその一言には尊敬するアーティストの意匠が人知れず刻まれていたとも言えそうです。グッとくる素敵なお話です。

さて、そろそろお時間。
本当に色々なお話を披露してくれたAimerさん。
「先週と同じく濃厚な時間で(笑)とても紐解いていただきいろんなことを引き出されたな、と思います」

なんだか申し訳なくなってきました。だけど、ファンの皆様もきっと喜んでいただけたのでは。

「今回この番組に呼んでいただいて濃厚なお話をさせていただいてとても嬉しかったです。ぜひ新しいシングルを聞いてツアーで皆さんにお会いできたら嬉しいなと思います

ちなみに今回の写真は、ちん一人が写っていますが撮影したのはAimerさん。
濃厚に絡まれた挙げ句に無理を言って写真まで撮っていただきました。おじさんしか写っていませんが、その視線の先にAimerさんがいると想像して御覧くださいね。ちょっと斬新。

そんなおふざけみたいなお願いにもAimerさん、最後まで優しくてノってくれました。そんな方でした。史上最高に素敵な方でしたよ。

 

Aimer Official Web Site (外部リンク)

次週、10月6日は小曽根真さんをお迎えしてお送りします。どうぞお楽しみに。

9月22日のゲストは Aimerさんです。

  • 投稿日:
  • by

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。本日のお相手はちん。です。

今日のゲストは Aimerさん。 #Aimer

国内外問わず熱狂的なファンも多いAimerさん。
一度聞けば誰もが魅了するその声、人間の喜怒哀楽を赤裸々に、時に優しく描かれる詩世界、そして2011年のデビュー以降も一貫して支え続けるagehaspringsはじめとするコンポーザー陣の楽曲の魅力。

加えてデビュー以降、極めて限られた機会しかその姿を確認することはできません。ミステリアス。
そんなわけでこのブログも美しいジャケットでご紹介。

どんな方なんだろう?と期待と不安の入り混じったスタジオに登場したAimerさんはにこやか。当たり前ですけど放送中もそうでない時も楽しそうに音楽の話を語り、よく笑う。一方で音楽にかける情熱と深い考えには常人ならざるアーティストの姿を目のあたりにすることになりました。

この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


今日のドライブミュージックは意外な選曲、アゲアゲの大ヒットナンバー、マーク・ロンソンの「Uptown Funk ft. Bruno Mars」。

「今年の夏に入ったファンクラブツアーでカバーした曲です。アンコールで、 しかも若干のフリつきで(笑)。ファンクラブツアーはずっと着席のみだったんですが、今回ははじめてのスタンディングだったので皆さんと一緒に盛り上がる瞬間が欲しいなと思って。ここぞとばかりに気持ちを持ち上げてくれる一曲をカバーしようと思ってこの曲を選びました」

ブルーノマーズは普段もよく聞いていて、来日公演も間近で観たそう。感想は大満足で自分も『少しでも近づけるようにがんばろう』と思ったとか。

そう、Aimerさんはすっごく真面目。というよりは、こと音楽に関わることに関しては本当にまっすぐだなと思うことが何度もありました。

そんなAimerさんの最新盤は今月5日に発売されたばかりの7周年を飾る15枚目のトリプルA面シングル「Black Bird / Tiny Dancers /思い出は奇麗で」です。

映画『累-かさね-』の主題歌となる『Black Bird』、アップテンポな『Tiny Dancers』、そして、今年6月の父の日に合わせて発表された『思い出は綺麗で』の3曲。

それぞれ違うタイプのナンバーですが一つの共通するテーマがあるそうです。

「それぞれの主人公がそれぞれに、小さな頃の思い出とか夢とかを支えにして今生きている、っていうのがテーマになっています。 色とか温度とかベクトは違うんですけど、そこは共通のものにしたいなと思いながら歌詞を書いていきました」

ちんは娘の父への温かくて切ない優しい優しい想いに溢れた「思い出は綺麗で」のMV(ミュージックビデオ)を観て思わず涙。この曲は2013年に発表された「今日から思い出」の楽曲とMVとつながっている印象です。

「この曲はMVも想定に入れて作り始めた曲で、もともと『今日から思い出(2013)』で、ただただ悲しい曲を作ってしまったものですから(笑)MVの方もアニメーションなんですけど悲しい内容になってしまって。結構ファンの方から『このMV悲しいですね』っていう声を頂いていて、気にもなっていたんです。今回の『思い出は綺麗で』で同じシリーズとしてある意味続編のようなMVを作って過去の『今日から思い出』のストーリーを救ってあげたい、という思いもありました

私達にしてみれば、どちらも素晴らしい楽曲なのですけど、2つの作品にはそんな経緯と思いがあったんですね。同時に2013年から現在までの間のAimerさんの内面の成長を感じるようなお話でもあります。

「『今日から思い出』の時は本当に反響がすごくて「どうしてこんなに救いようがないんだ」って(笑)。 今回はこの新しいミュージックビデオであのときの物語が救われたなと思います」

よかった、よかった。皆さんも2つのMVを見比べてみてはどうでしょう?

そして、このシングルの中でとりわけ注目されているのは映画主題歌でもある「Black Bird」でしょう。

この楽曲についてはAimerさん自身により深く紐解いていただきました。

最初は、映画サイドからオファーがあり、台本や原作を読み込んだ上で、作品の核と歌いたいものを考えながら詞を書いたと言います。

映画『累-かさね-』は土屋太鳳と芳根京子さんのダブル主演で、キスすると顔が入れ替わる不思議な口紅を手にした、女優である対象的な累とニナの美醜や優越感と劣等感、光と影といった人間の業、対立する概念を描いたもの。Aimerさんの「Black Bird」は映画の最後にすべてを包んでまとめるような役割で、見事に映画と一体となって全体の余韻を担っています。

「私もエンドロールで高まった気持ちが自分の声が、映画館で流れてきた瞬間にはちきれて、すごくボロボロと泣いてしまったんです。それくらい、やっぱりすごくエンドロールで流れるのを想像して作ったんですけど、それでもやっぱり自分で感動しちゃうものがありましたね」

映画を観て思うのは、この映画のテーマ自身が、デビュー以来、Aimerさんが取り組んできたテーマそのものではないですか?

「本当にその通りで、自分自身も特に歌詞を書く時には相反する、悲しみと喜びや嬉しさ悲しさとか、どちらか一方じゃなくてどちらも描きたいっていうのは自分のこだわり でもあったので、とてもシンパシーを感じました」

それはタイトルの「Black Bird」の意味にも現れています。

「一言で言っちゃうと簡単になってしまうんですけども、ある意味「劣等感」のようなもので。誰の心にもやっぱり他の誰かと比較して、誰かを羨んだりとか愛されたいって願う気持ち、そういうドロドロしたような部分が黒い鳥みたいに潜んでるんじゃないかなって言う部分からつけました」

また歌唱では類稀なるAimerさんの強いボーカルが聞く人の感情を揺さぶります。
そんな歌い方にも細かなこだわりがありました。

「そうですね。全体的なことでまずいえば、この曲のキーを決めるときにもう少し高くすることもできたんですけど、あえて低く。なんでかって言うとサビのパートでは言葉が詰まっていて、まくしたてるような形なんですけど、そこをあえてちょっと余裕があるキーにすることで、一つ一つの言葉が伝わることの方を優先して今回は作りました。」

キー一つにもそんな考えが。
もとより特徴あると言われるAimerさんの声ですが、ただ感情に任せたものではもちろんなく、息の成分の多い低い声と、透明感の高い高い声。その間に何段階かあって、まるで感情を乗せる繊細な楽器を扱うように使い分け、非常にコントロールされている印象があります。その印象は次のような説明にもハッキリ示されています。

「この曲ではミステリアスで不穏な雰囲気の楽曲なのでそれに合うような声色にしたいなと思って。ドスの効いたというか、ちょっと情念を込められるような声を意識しました。そして激しい曲なので言葉尻のアクセントをはっきりして意味をしっかり込めたいなんて思いもあったし、(二人の女性の映画なので)女性の艶やかさみたいなものを表現したいなと思って。なるべく男性の荒々しさというよりも、艶やかでいながら激しいっていう『うまい塩梅』で表現したいなと思って歌ってます」

ギターやドラムのように細かいテクニックをあまり語られないボーカリストですが、実は一音一音まで細かなこだわりとプロならではの繊細なコントロールの積み重ねだということがよくわかりますね。

ここでちょっと意地悪な質問かな?と思いつつ。
Aimerさんは自分の声のなかで「嫌いな声」ってあるんですか?

「すっごくあります。 簡単に言うならば「響いてない声」ががすごく嫌いで。んでも、まぁ、そんなに聞いてないよってよく言われるんですけど(笑)。 そのぐらい多分普通に聞いていたら分からないぐらいの微細な違いなんですけど、自分にとっては全然別人ぐらいの声の違いに聞こえる部分があります」

そういうやり直しって多いんですか?

「多いんですよ(ニッコリ)」

そんなこだわりを知って聞くと「Black Bird」がまた違う魅力を持って迫ってきますね。

色々なお話をしている間にすっかりお時間が来てしまいました。
楚々として落ち着いた雰囲気ではあるけれど、時々垣間見える素のAimerさんは、音楽、歌を心から愛していて、茶目っ気もあって素直に感情を示す魅力的な方です。相手の気持ちをどんどん前のめりにする、そんなところも数多くのアーティストからのラブコールが絶えない理由の一つかもしれませんね。

今回のシングルについてリスナーのみなさんへこんなメッセージいただきました。

「今日紐解いた内容を元にもう1回私のシングルを楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。今日は本当にありがとうございます」


来週も引き続きAimerさんをお迎えして、さらにAimerの音世界を紐解いていきましょう。

次回はAimerさんのライブについてもたっぷり伺いたいと思います。
そんなライブ、福岡、広島でも行われます。

『Aimer Hall Tour 18/19 "soleil et pluie"』

福岡公演は、11月3日(土)『福岡サンパレスホテル&ホール』、
広島公演が、翌11月4日(日)『広島文化学園HBGホール』


詳しくはAimerさんのWEBでご確認を。
Aimer Official Web Site (外部リンク)

次回も楽しみです。

 

次週、9月29日も引き続きAimerさんをお迎えしてお送りします。

9月15日のゲストは SIRUPです。

  • 投稿日:
  • by

毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」

今日のゲストは SIRUP。 #SIRUP

関西クラブシーンで名を馳せたシンガーKYOtaroは、東京に拠点を移して歌とラップ、日本語と英語の間を自由自在にフロウするSIRUPへ。

ルーツであるR&B/ソウルそしてメインストリームのHIPHOPをベースに、変幻自在なボーカルとグルーヴィーなサウンドで今注目のアーティスト。

トンガったアーティスト像を思いつつスタジオで待機していると、やってきたSIRUPは礼儀正しくて気さくなお兄さんでした。ちょっと安心したりして。

ちんとの最初の会話は、「SIRUPさんって呼びます?」「いやもうSIRUPでもう(笑)」という不思議なやりとりからスタート。なんすかね、なんか不思議な会話ですよね。

この回をradikoタイムフリーでもう一度聴く!→  FM福岡 / FM山口
(radikoタイムフリー、放送後1週間に限り放送エリア内(無料)とプレミアム会員 の方が聞くことができます)


今日のドライブミュージックは、Brasstracks feat. Xavier Omärの『Stay There』でスタート。メッチャクチャかっこいいサウンドにSIRUPもついでにちんも上機嫌です。

「ブラストラックっていうトランペットとドラムの人なんですけど、チャンス・ザ・ラッパーの『No Problem(Chance the Rapper ft. 2 Chainz & Lil Wayne "No Problem")』をプロデュースして有名になって、僕、全リリースチェックしてるんですけど最近だとこの曲が好きで、めちゃくちゃ気持ちいいんですよ。まさにドライビングミュージックかなと」

チャンス・ザ・ラッパーはSIRUPに大きな影響を与えた人の一人。常に新しい音楽へアンテナを伸ばしているSIRUPの音楽と人を紹介する最初の曲としてはバッチリ。

そんなSIRUPの新しい音源は昨年リリースして話題となった『SIRUP EP』につづく2nd EP『SIRUP EP2』です。

5月に先行デジタルリリースされた『LOOP』を筆頭に前作よりさらにパワーアップした全7曲が収録されています。

「今回も前回と一緒で、今作りたいサウンドと伝えたいメッセージをどんどん曲として作ってまとめたものになるんですけど、 今回は前作がリリースされて、それを聞いて呼応してくれたトラックメーカーの人だとか出会った人達とバンバン作っていった感じですね

その言葉通り、色々な才能と制作していくのはSIRUPとして活動する上でのテーマでもありそうですね。

前作では小袋成彬氏率いるTokyo Recordings、今作に至るまでYaffle、小島裕規と、音楽シーンの次世代を担う面白い才能が集まっている印象です。

「そうですね元々のコンセプトの中にもそういう概念が入ってるそんな感じです。前にあった人とやらないとかはないんですけど、どんどんできるだけいろんな人と作って、いろんな自分も引き出してもらえますし。その人とセッションして生まれるものとかをもっと大切にしたいなと。 自分がチャレンジしようと思う気持ちがだいぶ大きくなってきたんかなと思いましたね」

SIRUP自身もそういった才能とさらに活動の幅を広げています。
例えば今回のサウンドの要にもなっているSoulflexはSIRUPも参加するクリエイティブクルーです。

「バンドとしてのリリースとかも今年はずっと毎月曲出してるんですけど、バンドがいてラッパー、シンガー二人ではトラックメイカーもいるんですけどカメラマンと絵描きもいたりとか。なんかこう面白いものやろうっていうグループですね」

最新のHip-Hopシーンやクラブサウンドを取り入れながら、歌うようにラップし、ラップするように歌う。これもまたアメリカのチャートを席巻している流れに呼応しつつ、しっかり日本のポップスに昇華させたナンバーが揃っています。

そんなEPの中からSIRUPが、象徴する一曲として選んだのは自然と体が揺れるダンサブルなナンバー「Do Well」。

「この曲は、あの本当にただただ楽しんで欲しいなって思って作った曲で、メッセージ的にもこの曲を聴いてたら、色んな事どうでもよくなるわ、なんとかうまくいくやろ!みたいな意味で作ったんです。

直感的な単語の羅列とかをいっぱいしてるんですけど、僕の中でポジティブなクリエーションのことをずっと言ってるみたいな感じのリリックで、多分何言ってるかほとんどわかんない感じかもしれないんですけど(笑)全体でフィーリングで聞いてくれたら楽しめるんじゃないかなと

この曲についてのすごく面白いリリック=歌詞の取り組み方は、次の「どんなサウンドでもワードがしっかり耳に入ってくる」という感想に対する答えの中でさらに明確になります。SIRUPが考えるサウンドと歌の関係について。

「なんかスタンスの話になっちゃうんですけど。SIRUPを始めて踊れる楽曲にしたいのが一番なんですけど、歌詞がすごい先行して歌詞ばっかり聞いてぐってなるよりは、踊れるけど歌詞もちゃんと入ってくるというか、サブリミナル的にメッセージが伝わってくるのが、音楽として直感的でいいんかなと思ってるんでそれをスタンスとして守ってる感じはあります」

時に文章をそのまま伝えるのでなく、音楽とワードが密接に絡み合うことで「ひとつの楽曲」としてメッセージや詩情を伝えるのがベスト。ということでしょうか。

この曲ではSoulflexチームによるサウンドプロダクションでクールに盛り上げます。それにつけても全体にサウンドの直輸入感というか質感にやはり耳が惹きつけられます。

「こだわってるかもしれないですね。あのーもちろんフィルターは通しているんですけど、スタンスとしてこういうHip-Hop、R&Bならその上で自分の色を出していたいんで、できるだけその直輸入的なサウンドに近づいていくようには気にしてます」

近年、世界のトレンドを旺盛に吸収するというよりは、少し内向きに影響を受け合うことも少なくない国内の音楽の世界で、こういうスタンスは頼もしいです。

もうひとつSIRUPを特徴づけているのはそんな世界のR&Bやクラブミュージックとリアルタイムに共振したマニアックな一面もありながら、作品としてのキャッチーさを外さないところでしょう。
例えばこの曲なら印象的な「♪Da Da Da Da,Do Well」と繰り返されるウキウキするようなフレーズ の繰り返しは、楽しくてこの曲のポジティブなメッセージを際立たせます。そして、そこにも意識的で、きちんとした考えがあるのでした。

「好きに音を作っているもんで、もしかしたら(とっつきにくい)耳馴染みがない要素とかもいっぱいあるかもしれないんですけど、(その分)サビでちょっとポップでキャッチーなものを置いて、みんなで歌ってライブとかも楽しめるかなって。自分自身がそういうスタンスが好きなんですけど、あの、皆ライブで一緒に歌ってほしいなと(笑)

そう言ってヘヘヘと無邪気に笑うSIRUP。スタイリッシュでマニアもうならせるサウンドではありますが、同じくらい本人の人懐っこさが音に表現されているということなのでしょう。SIRUPの丁寧で穏やかな語り口に耳を傾けていると、結局根っこがポップな人なんだろうなあとも思えます。

尽きることのない音楽のお話。
始終、穏やかで理知的なSIRUPは、音楽への深い愛情と熱意が感じられて、普通の言葉にリズムがあります。とても気持ちのいい時間でした。

それでは、最後に番組中、SIRUPの一面を垣間見ることができた一番笑えたやりとりを紹介して今日はおしまいにします。

---SIRUPって英語の発音がすごい良いじゃないですか?

「でも、しゃべれないんですよ(笑)。マジで今勉強してますね。
この前、ついに韓国でライブしたんですけどそれが初めての海外でして(笑)。韓国の若い世代の人って結構。英語結構喋る人いるみたいで、ガンガン話しかけてこられるんですけど『センキューセンキュー』って(笑) ややこしいんですよね。めっちゃ発音だけ勉強してるんで」

最高でしょ。

  

SIRUP - SIRUP OFFICIAL SITE (外部リンク)

  

次週、9月22日はAimerを迎えします。お楽しみに。