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雪害で失われた木材収入を山菜資源が補う可能性
国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学
2026年10月23日
岐阜大学
海洋研究開発機構(JAMSTEC)
雪害で失われた木材収入を山菜資源が補う可能性 〜雪害スギ人工林で生じる「木材生産」と「山菜生産」のトレードオフを解明〜
本研究のポイント
・岐阜県高山市の雪害を受けたスギ人工林を対象に、木材と山菜の経済的価値を比較評価しました。
・2014年の雪害により、スギ人工林の木材価値は約44.3万円/ha減少すると推定されました。
・一方、雪害後の森林ではタラノキ、コシアブラ、ハリギリなどの山菜資源が増加しました。
・増加した山菜資源の潜在的な販売価値は年間約8.4万円/haと推定されました。
・雪害は木材生産に損失をもたらす一方で、山菜資源の増加を通じて森林の新たな価値を創出する可能性が示されました。
研究概要
岐阜大学高等研究院・環境社会共生体研究センターの斎藤琢教授、森部絢嗣准教授、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球環境研究部門の永井信主任研究員らの研究グループは、岐阜県高山市の雪害を受けたスギ人工林を対象に、木材生産と山菜生産の経済的価値を比較評価しました。
その結果、2014年の雪害によって失われた木材収入の一部が、雪害後に自然増加したタラノキ、コシアブラ、ハリギリなどの山菜の収穫・販売によって補完される可能性があることを明らかにしました(図)。近年、我々は、気候変動による自然撹乱の増加と林業従事者の減少という複合的な環境・社会課題に直面しています。本研究は、このような課題を解決するための一助として、雪害を受けたスギ人工林における新たな森林利用・管理戦略の可能性を提示するものです。
本研究成果は、2026年10月21日に森林生態学の国際誌であるForest Ecology and Management誌のオンライン版で発表されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202610228504-O5-0fZrZ8ho】 図 雪害による木材価値の損失と山菜資源のトレードオフ
研究背景
日本の人工林の約44%はスギ(Cryptomeria japonica)で構成されています。しかし、豪雪地帯では雪の重みによる幹折れや倒木などの雪害が頻発しており、木材生産機能の低下が大きな課題となっています。一方、雪害によって森林に隙間(林冠ギャップ)が形成されると、林床まで光が届きやすくなります。その結果、タラノキ(Aralia elata)、コシアブラ(Chengiopanax sciadophylloides)、ハリギリ(Kalopanax septemlobus)などの落葉広葉樹が侵入・定着しやすくなります。これらの樹木は春に山菜として利用される新芽を生産するため、木材以外の森林資源として活用できる可能性があります。しかし、雪害による木材価値の損失と、山菜利用による経済的利益を定量的に比較した研究はほとんどありませんでした。
研究成果
研究グループは、岐阜県高山市に設置された長期森林観測サイトにおいて調査を実施しました。この森林では2014年12月の豪雪により、30%以上のスギが被害を受けています。本研究では、雪害前(2014年)と雪害後(2015、2020、2022年)の森林調査データおよび山菜資源量の調査に加えて、林野庁などの統計資料、オンラインフリーマーケット(メルカリ、楽天ラクマ)の山菜販売データを組み合わせて、木材資源の損失額と山菜資源の経済価値を算出しました。
その結果、雪害による木材価値の減少額は約44.3万円/haと推定されました。一方で、雪害後に増加した山菜資源から得られる潜在的な収入は年間約8.4万円/haと推定され、1年で木材価値の減少分の20%弱を補う可能性が示されました。また、オンライン市場では、タラノメが100gあたり441円、コシアブラが399円、ハリギリが535円で取引されており、日本では、森林所有者が全国の消費者へ直接販売できる環境が整っていることも明らかとなりました。
これらの結果から、雪害は木材生産に損失をもたらす一方で、森林環境の変化によって山菜資源が増加し、その一部が経済的に補完される可能性が示されました。
今後の展開
本研究は、雪害を受けた人工林を単なる被害森林として捉えるのではなく、「木材生産は減少するものの、新たな食料生産サービスが生まれる森林」として評価できる可能性を示しました。
今後は木材や山菜だけでなく、炭素固定、水源涵養、防災機能、レクリエーション価値なども含めた多面的な生態系サービスを総合的に評価することで、気候変動時代に適した持続可能な森林管理手法の構築を目指します。
用語解説
1) 雪害: 積雪や着雪によって樹木に生じる被害。幹折れ、倒伏、根返り、樹冠損傷などが含まれる。
2) 山菜: 森林や草地などに自生し、食用として利用される植物。日本ではタラノキ(タラノメ)、コシアブラ、ワラビなどが代表的である。
3) 自然撹乱: 台風・火災・洪水・土砂崩れ・病害虫の発生などの自然現象によって生態系の構造や環境が変化すること。
4) 生態系サービス: 生態系が人間社会にもたらす恩恵の総称。木材や食料などの供給サービスのほか、水源涵養、防災、炭素固定、文化的価値などを含む。
論文情報
雑誌名:Forest Ecology and Management
論文名:Trade-offs between timber and edible wild plant provisioning: A case study of a snow-disturbed Japanese cedar planted forest
著 者:Taku M. Saitoh, Nagai Shin, Junji Moribe
DOI:10.1016/j.foreco.2026.124347
プレスリリースPDF
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プレスリリースURL
https://kyodonewsprwire.jp/release/202610228504
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