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次世代XRコンテンツ産業を規格が後押し
国立研究開発法人産業技術総合研究所
ポイント
・ メタバース、XR、ロケーションベースドエンターテイメント(LBE)などのコンテンツで利用されるアバター全般に関する国際規格ISO/IEC 24216-1:2026が発行
・ アバターの用語、機能、身体所有感、利用上の配慮事項を整理し、利用者が安心してサービスを選択・利用できる環境整備に貢献
・ アニメ調アバターなど日本発のコンテンツ文化に関する国際的な共通理解の形成に貢献し、コンテンツ・XR産業の国際展開を支える共通基盤となる
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202606261535-O1-zjl3dcP6】
メタバースやXR(VR・AR・MR)、ロケーションベースドエンターテイメント(LBE)などの普及に伴い、アバターは利用者の分身として人と人、人とサービスをつなぐ重要な役割を担うようになっています。しかし、アバターの種類や機能、体験上の特徴を共通の基準で説明する方法はこれまで存在していませんでした。
今回発行されたISO/IEC 24216-1:2026は、アバターに関する用語、機能、設計・運用上の配慮事項などを体系的に整理した包括的な国際規格です。アバターを利用したシステムやアプリケーション、コンテンツを企画・設計・提供する開発者や事業者、デザイナーなどに向けて、アバター活用のための要件や推奨事項を定めています。
この規格を用いることで、クリエイターやコンテンツ開発者にとっては、アバター設計や体験設計に関する国際的な共通指針を利用できるようになり、体験品質や安全性に配慮したコンテンツ開発を進めやすくなります。プラットフォーム事業者にとっては、アバターの機能や品質を共通の考え方で整理・提示できるようになり、サービス間の相互理解や国際展開を進めやすくなります。利用者にとっては、アバターの特徴や機能を事前に理解しやすくなり、自分に適したサービスや体験を選択しやすくなります。また、多様な文化や価値観への配慮が進むことで、より安心してメタバースやXRサービスを利用できるようになることが期待されます。
本規格は、日本が強みを持つアニメ調アバターなどの日本発のコンテンツ文化に関する国際的な共通理解の形成に貢献することが期待されます。また、アニメ、ゲーム、メタバース、XRなど、アバターを活用するコンテンツやサービスの国際展開を支える共通基盤としての活用も見込まれます。さらに、アバターを介してサイバー空間と現実空間を行き来することが日常となるサイバーフィジカル社会の到来を見据え、本規格はその社会を支える基盤となることも期待されます。
国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は、人間社会拡張研究部門に設置されたコンソーシアムである拡張体験デザイン協会(DAAX)において「アバター国際標準化の国内検討委員会」を運営し、業界関係者、学識者、著名なユーザーと共にこの規格の原案を作成し、ISO/IEC JTC 1/SC 35に日本から規格開発を提案し、規格開発を先導してきました。こうした活動は、経済産業省、ISO/IEC JTC 1/SC 35国内委員会の支援を受け、今回の規格発行に至りました。
下線部は【用語解説】参照
社会課題の解決
① 利用者が安心してサービスを選べる環境の整備
アバターの種類や機能を説明する共通基準がなかったため、利用者は体験の特徴や品質を事前に理解しにくい状況にありました。本規格により、アバターの特徴を分かりやすく説明できるようになり、利用者が安心してサービスを選択できる環境の整備につながります。
② 安全で質の高いXR体験の実現
利用者の現実の身体に変わる仮想の身体であるアバターの設計は、体験の快適さや没入感に大きく影響します。本規格はアバター設計に関する共通指針を提供し、安全で質の高いXR体験づくりを支援します。
③ 日本発コンテンツの国際展開促進
アニメ調アバターなどの日本で発展してきたコンテンツ文化が国際的に理解されやすくなり、日本のコンテンツ産業やXR産業の海外展開を後押しします。
規格発行までの道のり
産総研はこれまで、メタバースやXRにおけるアバター利用に関する研究を進めてきました。特に、本規格開発には、産総研で独自開発した汎用XR評価実験システムXperigrapher®の知見と、このシステムを用いることで得られた、アバターへの身体所有感(Body Ownership)、身体リアリティ(Body Reality)、体験リアリティ、XR体験評価に関する学術的知見が基盤になっています。
また、産総研の人間社会拡張研究部門に設置されたコンソーシアム「拡張体験デザイン協会(DAAX)」(2022年設立)では、XRによる体験拡張を進めているさまざまな企業と自治体が参加し、アバター国際標準化の国内検討委員会を運営し、メタバース、XR、コンテンツ産業の関係者との継続的な議論を通じて、実際の産業ニーズや課題を整理してきました。さらに、2024年度に実施した産総研標準化推進プロジェクトでは、各国のメタバース関連標準化動向や産業政策に関する国際比較調査を実施し、アバター標準化の必要性や国際的なニーズを分析してきました。これらの学術的知見、産業界との合意形成、国際比較調査の結果を基盤として、産総研が中心となり、日本からISO/IEC JTC 1/SC 35に対してアバターに関する国際規格を提案しました。
メタバース関連分野では、近年多くの国際標準化提案が行われている一方で、実際に国際規格として発行に至った事例はまだ多くありません。そのような状況の中、学術的エビデンスと業界の実務知見を取り入れ、国際調査に基づく中立的かつ実践的な規格提案を行ったことで、規格の必要性と緊急性について国際的な理解を獲得しました。その結果、比較的短期間で国際合意を形成し、アバターに関する初の国際規格の開発・発行を実現しました。
規格開発では、大山潤爾主任研究員(産総研 人間社会拡張研究部門 インターバース研究チーム)がプロジェクトエディタとして編集作業を主導しました。また、経済産業省、ISO/IEC JTC 1/SC 35国内委員会の支援のもと、日本国内での議論と国際的な合意形成を推進しました。
今後の予定・波及効果
今後、産総研は本規格の普及活動を進めるとともに、ISO/IEC 24216シリーズのさらなる発展や関連する国際標準化活動に取り組みます。また、国内外の産業界や研究機関と連携し、本規格の活用促進を図ります。
本規格により、アバターの種類や機能、体験上の特徴を共通の用語や分類体系で説明できるようになります。これにより、利用者はサービスの特徴を理解しやすくなり、自らが望む姿や表現に適したアバターや、サービスを選択しやすくなります。クリエイターやコンテンツ開発者は、体験品質に加えて利用者の心理的安全性や多様な自己表現にも配慮した設計を進めやすくなります。さらに、プラットフォーム事業者はアバターの特性を共有しやすくなり、多様なアバター表現に関する国際的な共通理解が進むことで、異なるサービス間での相互理解や国際展開を進めやすくなることが期待されます。
特に本規格は、日本が強みを持つアニメ調アバターの文化を国際的に説明するための共通基盤として機能します。これまで海外では、日本に広く浸透しているアニメやマンガ的なキャラクターの特徴を共通の言葉で説明することが難しい場面もありましたが、本規格によりそれらを国際的な枠組みの中で位置付けられるようになります。これにより、日本のアニメ、ゲーム、VTuber、メタバース、XRなどのコンテンツ産業は、自らの強みを海外市場に対してより分かりやすく提示できるようになります。また、海外企業や海外ユーザーとの共通理解の形成が進むことで、日本発コンテンツの国際展開や市場拡大を後押しすることが期待されます。
さらに、本規格はエンターテイメント分野にとどまらず、教育、医療、観光、遠隔コミュニケーション、産業トレーニングなど、アバターを活用したさまざまなサービスの普及にも貢献すると期待されます。産総研は今後も、利用者が安心して利用できる安全で質の高いデジタル体験の実現と、日本発のコンテンツ文化・技術の国際展開を支える標準化活動を推進していきます。
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M107968/202606261535/_prw_PT1fl_IDAJIK43.png】
関連する論文
Ohyama, J. (2021). Xperigrapher: Social-Lab Experimental Platform to Evaluate Experience in Cyber Physical Society. Transactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering, 811-813. DOI: https://doi.org/10.11239/jsmbe.Annual59.811
Hanashima, R., & Ohyama, J. (2022). How to Elicit Ownership and Agency for an Avatar Presented in the Third-Person Perspective: The Effect of Visuo-Motor and Tactile Feedback. Cham: Springer International Publishing, LNCS, HCII, vol. 13306, pp. 111-130. DOI: https://doi.org/10.1007/978-3-031-06509-5_9
Hanashima, R., Hiraki, T., Urakwa, T., Kurai, R., Hiroi, Y., & Ohyama, J. (2024). Large-Scale Survey of Emotional Expression in Metaverse Society Communication--Emoto Analysis in Social VR. IEICE Technical Report; IEICE Tech. Rep.
Ohyama, J. (2025). A Proposal for a Common Platform and Methodology for Evaluating xR Experiences. In 2025 IEEE International Symposium on Mixed and Augmented Reality Adjunct, pp. 479-482.
Samejima, N., Bredikhina, L., & Ohyama, J. (2026). Perspective Chapter: Identity in Metaverse. In Metaverse, MetaIntelligence and Infinite Worlds with AI. IntechOpen.
予算制度
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) JP23H01061
「メタバースにおける身体リアリティと自己概念の相互作用に関する認知心理学的研究」(2024年度~2026年度)
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) JP21K19750
「プロに憑依するマルチモーダル身体認知転移技術の開発」(2021年度~2023年度)
用語解説
メタバース
インターネット上に構築された仮想空間。利用者はアバターを通じて空間内を移動し、他の利用者と交流したり、イベント、買い物、学習、仕事などを行ったりすることができる。
XR(エックス・アール)
VR(バーチャルリアリティ)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの技術をまとめた呼び方。
ロケーションベースドエンターテイメント(LBE)
XR(VR・AR・MR)や映像、音響などの技術を活用し、利用者に高い没入感を提供する体験型サービスおよびエンターテイメントコンテンツ。広義には、利用者が特定の場所・施設において体験するエンターテイメント全般を指す。VRアトラクションやイマーシブシアターなどが代表例である。
アバター
メタバースやXR空間の中で利用者の身体の代わりとなるCGオブジェクト。利用者の行動や表情を反映してコミュニケーションを行う。ISO/IEC 24216-1:2026では、「利用者を表す図形オブジェクト(graphical object)」と定義している。
サイバーフィジカル社会
サイバー空間(情報空間・仮想空間)と、フィジカル空間(物理空間・これまでの定義での現実空間)が融合し、その間を行き来して生活するSociety 5.0社会。
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2026/pr20260629/pr20260629.html
プレスリリースURL
https://kyodonewsprwire.jp/release/202606261535
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