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生徒の立場から見た「居心地の良い教室」をバーチャル空間に
国立研究開発法人産業技術総合研究所
ポイント
・ ワークショップを通じて、生徒の個性の尊重や多様性への配慮を反映した教室のデザインコンセプトを具体化
・ 生徒目線による居心地の良い教室をバーチャル空間に再現
・ 生徒や教室の多様性への対応について検討するきっかけや具体事例として活用が期待
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202505319826-O1-41e5CxnQ】
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)人間社会拡張研究部門 大山潤爾 主任研究員らは学校法人 角川ドワンゴ学園と共同でワークショップを通じて、高校生にとっての居心地の良い教室デザインを検討し、「生徒目線による居心地の良い教室」をバーチャル空間上に再現しました。
日本においても国際的にも、個性の尊重や多様性への配慮が重要な社会課題となっています。教育においても個性に合わせた多様な学び方や個性を伸ばせる教育が求められています。ところが、ハードウェアであり教育の場である教室のデザインに生徒の個性や多様性を反映することは殆どなされてきませんでした。
今回、産総研が提唱するVRを用いたユーザーが主役のデザイン手法を応用し、「生徒目線による居心地の良い教室」をバーチャル空間上に開発しました。VR空間につくられた3つの「教室」は、今後、実際のVR授業への活用が期待されます。また、ユーザーである生徒視点の居心地のよい教室の在り方を検討するための知見を提供、さらに、3つの教室の個性は、生徒と学びの多様性についての考察の手助けになりそうです。
背景
近年、個性の尊重や多様性への配慮が重要な社会課題と捉えられており、教育においても個人の特性に合わせた多様な学び方、個性を伸ばせる教育が求められてきています。日本でも、タブレットやオンライン教材を活用して生徒一人ひとりの理解度や興味に合わせた学習が進められ、探求学習やプロジェクト型学習など、生徒の主体性を重視する授業が広がっています。しかし、学びの空間である教室に目を向けると、生徒はそこを使うだけで、ユーザーである生徒が教室の設計に関われることはありません。教育の場である教室に、生徒の個性を生かすことが、そもそも想定されていないのです。
研究の経緯
産総研では、人の認知行動特性を考慮した“伝わるデザイン”や“体験デザイン”を、実際の商品や空間のデザイン、バーチャル空間のデザインに応用することを研究しています。また、ジェンダーアイデンティティや認知的な特性における性差、自閉スペクトラム症などの個人特性、加齢など、多様性を包摂するデザインを推進する国内外の活動にも協力しています。
一方、角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校・S高等学校・R高等学校では、2021年からバーチャル技術などの最先端テクノロジーを用いた学び方である「普通科」を提供しています。生徒が自由に交流可能なメタバース空間の提供や、バーチャル上での学習・交流・学校行事にもバーチャル技術を活用しています。
多様性に配慮した人間中心社会のデザインについて研究を進める産総研と、バーチャル技術を活用して未来の学校であり続ける角川ドワンゴ学園は、それぞれの専門性を融合させることで、多様な個性や価値観が尊重される未来の教室を創造することを目的としたプロジェクトを進めています。
成果の内容
今回、角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校およびS高等学校の生徒を対象に、空間デザインやダイバーシティに興味を持つ生徒9名が参加する3日間のワークショップを開催。参加生徒は3つのグループに分かれ、それぞれが日々実際に教室で授業を受けている高校生ならではの視点を活かしながら、生徒目線で理想的な教室空間のデザインを検討しました。各グループで生徒たちがまとめたデザインコンセプトを元に、多様な生徒の意見を平均化することなく、学びの空間(教室)の在り方を考える上で重要な多様性に考慮して、3種類の教室デザインを具体化しました。具体化した仕様に基づいて、株式会社ドワンゴの協力のもとで、バーチャル空間上に3種類の教室を再現し、プロトタイプを開発。その後、開発した教室コンテンツを生徒に確認してもらい、その意見を元に修正して制作しました。これらは、VR技術で実現できることの制約の中でデザインを検討する工学的知見と、「居心地の良さ」という心理的主観的な評価基準で検討する心理学やデザイン学の手法、さらにVR教室コンテンツの開発技術、VR教育の知見、の学際融合研究によって実現しました。
制作した3つの教室の画像と主なデザインコンセプトを以下に示します。
【グループA】(図1)
・学習に集中するスペースとリラックスするスペースが同じ空間内に存在する
・個人で作業に集中するスペースや個性の現れた掲示スペースがある
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202505319826-O2-74A8L1yl】
【グループB】(図2)
・大きく開けた広い空間とパーテーションで区切られた教室スペース
・様々な個性に対応したバリエーション豊富な机や椅子
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202505319826-O3-5w45C93y】
【グループC】(図3)
・集中するための空間とリラックスするための空間とで、機能性を分割
・グループ学習や個人作業など、学習の種類に合わせて最適な場所を選択可能
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202505319826-O4-IR06Yv0s】
今回制作した教室デザインは、VR空間に再現することで、現実の物理法則や建設コストをかけずに、現在の現実の教室のデザインにとらわれない、生徒(ユーザー)の自由な発想で具体化しました。多様な生徒の意見を平均化せずに、3つの教室のバリエーションを示すことで、生徒や教室の多様性への対応について検討するきっかけや具体事例として活用が期待されます。
いずれこうした素敵な教室でVR授業が受けられるかもしれませんし、生徒が考えた斬新な教室が現実空間でも実現するかもしれません。
今後の予定
今後、生徒を対象とした実証実験によって制作した教室の居心地の良さを分析し、効果的なデザインは、角川ドワンゴ学園が運営するメタバース空間内での新しい教室デザインとして活用していくことを計画しています。また、応用可能な要素は、現実世界の学校の教室デザインにも活用していきます。
さらに、ダイバーシティとジェンダードイノベーションの観点から、男子生徒中心の教育であった頃から大きく変わっていない教室デザインが、女子生徒を含めた多様な生徒にとっての居心地のよい環境であるかを検証することを計画しており、ダイバーシティ社会で多様化する生徒のニーズに応える新しい学習環境のあり方を提案していきます。
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250602/pr20250602.html
プレスリリースURL
https://kyodonewsprwire.jp/release/202505319826
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