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最先端材料科学研究:新たなデータベースで電子材料のイノベーションを加速

国立研究開発法人物質・材料研究機構

科学ジャーナルのグラフから誘電材料の巨大データベースを構築

2025年5月7日
Science and Technology of Advanced Materials: Methods

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202505028325-O1-HIw2LpN4

図の説明:オープンデータベースプロジェクト「Starrydata」を活用した誘電材料の大規模データベース構築と、機械学習によるデータ可視化を用いた材料地図の作製。

 
村田製作所と物質・材料研究機構(NIMS)の研究者は共同して、材料の誘電的性質を報告している既存の5000以上の論文を元に約2万種の誘電材料を含むデータベースを新たに構築し、これが次世代電子材料の開発を加速できることを示しました。この研究はScience and Technology of Advanced Materials: Methodsに発表されました。

AIやデータ科学を用いた新材料開発には、参考になるデータが欠かせません。しかし、これまでデータの不足が大きなボトルネックになってきました。とくに材料の誘電的性質は顕著な温度依存性を示すことが多く、実験結果はしばしばグラフの形で報告されます。しかし、グラフからデータを読み取ることの困難さから、これらの情報はこれまでのデータベースには収録されていませんでした。本研究では、NIMSの研究者らによって開発・公開されたウェブシステム「Starrydata2」を用いてデータを収集しました。物理的考察に基づき情報を選別しながら、温度依存性のデータを収集する方法を採用しています。「人の手をでグラフを数値化し、その過程で論文中の誤りも発見して訂正・排除しました。高品質なデータからなるデータセットを作成できたことが、この研究の特徴です」と本研究著者の一人である桂(NIMS)は語っています。

こうして完成したデータベースは、電子機器に必要な誘電材料にフォーカスしたものとして、過去最大のデータベースとなりました。この広範なデータベースを用いることで、研究チームは機械学習(ML)モデルを作製し、材料の電気的特性をよく予測することに成功しました。

しかしこうしたMLモデルは特性予測に役立つ一方で、その中身はブラックボックスとなり、その予測の背景を理解することはでません。そこでよりよい理解を得るため、研究チームはデータの視覚的なマップを作製し、広範囲のデータを分かりやすく可視化しました。また、クラスタリングアルゴリズムを使用して、似た性質を持つ材料をグループ化しました。この分析により、材料の組成が特性に与える影響のパターンを可視化することができました。さらに研究チームは、材料を七つの重要な強誘電体ファミリーを含む九つのグループに分類して、材料組成の「空間」全体の「景色」を視覚化したマップを作製しました。

このデータ分析では、スマートフォンやコンピュータ、太陽電池などの日常的な電子機器やエネルギー貯蔵技術に不可欠な材料群であるペロブスカイト酸化物(組成ABO3)に着目しています。データの可視化により、材料の基本構造と誘電率との間に関連があり、これが過去の材料科学者らの知見とよく一致することが示されました。

本研究は、データ科学によって誘電材料についての理解を深化させ、研究・開発を旧来の試行錯誤的方法から脱却させる可能性を持っています。

NIMSの研究チームは、来年には構築したデータベースを公開し、世界中の研究者が利用できるようにすることを予定しています。また将来的には、製造方法や加工条件を含むデータ収集の拡大を検討しており、生産プロセスと材料特性を結びつけるより包括的な予測が可能になることが期待されています。

「今回の基礎的な研究が、同様のデータ収集の取り組みや新しい材料発見のアプローチを促進し、データ科学と人の知恵を融合させることで新たな電子材料の発見と開発につながることを期待しています。」と村田製作所のチームは述べています。今後も、本研究の成果がエレクトロニクス分野および社会へのさらなる貢献につながることが期待されます。

 
論文情報
タイトル:Data-driven analysis and visualization of dielectric properties curated from scientific literature
著者:Tomoki Murata*, Naoto Saito, Eiji Koyama, Ton Nu Thanh Phuong, Ryusuke Misawa, Satoshi Yokomizo, Tomoya Mato, Yu Takada, Sakyo Hirose & Yukari Katsura**
*Murata Manufacturing Co., Ltd., Nagaokakyo, Japan (E-mail: tomoki.murata258[at]murata.com), **Center for Basic Research on Materials, National Institute for Materials Science(NIMS), Tsukuba, Japan (Email: KATSURA.Yukari[at]nims.go.jp)
引用:Science and Technology of Advanced Materials: Methods Vol. 5 (2025) 2485018

最終版公開日:2025年4月22日
本誌リンク https://doi.org/10.1080/27660400.2025.2485018(オープンアクセス)
Science and Technology of Advanced Materials: Methods誌は、国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)とEmpaが支援するオープンアクセスジャーナルです。





プレスリリースURL

https://kyodonewsprwire.jp/release/202505028325

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