匠の蔵~words of meister~の放送

鶴鳴館 料亭 鶴家【料亭 鹿児島】 匠:小山雄三さん
2012年01月28日(土)オンエア
創業100年を超える鹿児島随一の老舗料亭「鶴鳴館 料亭 鶴家」の四代目、小山雄三さん。その歴史の中で、数多くの料理人がここを巣立ち独立。鹿児島中の厨房に立ち、後輩たちの指導者として活躍するなど、鹿児島の料理文化を、その中心となって支え続ける「鶴鳴館」。「ここ『鶴鳴館』は、明治16年に現在の東京都千代田区の旧薩摩藩装束屋敷跡に建てられた『鹿鳴館』に倣い、明治30年に創業しました。当時の政治は薩摩藩と長州藩の人間が中心となって行っていましたので、ハイカラ好みで負けん気の強い薩摩隼人としては、『鹿鳴館』の向こうを張った社交場を鹿児島の地に作りたかったのでしょね」。以来、「鶴鳴館」は政財界のトップ御用達の店として、そして、県民の憧れの店として、他の追随を許さない安心できる料理とサービスを提供する。「『鶴鳴館』では、おしつけがましくなく、さりげないサービスを身上としています。そして、ウチでは数多くの仲居が働いていますが、一人一人がバラバラのサービスを行うのではなく、お客様の情報を全員で共有するなど、会社全体でサービスの質を高めています」。昔は女中奉公を通じて、良家の子女が行儀見習いをする場としても定評があったという「鶴鳴館」。しかし、その魅力の真髄は、やはり伝統に裏打ちされた料理にある。「サービスはもちろんですが、やはり味においては、地域で1番でありたい、1番でなくてはならないと思っています。調理人を様々な店に輩出するなど、これまで培ってきた伝統もありますからね。ですから、奇をてらったモノで勝負するのではなく、ちゃんとしたモノをちゃんと食べられる、間違いのない料理というのを提供する責任が『鶴鳴館』にはあると考えています」。老舗に課せられた使命を背負い、味とサービスという王道で勝負し続ける小山さん。現在は若い感性で生み出した、弁当、そして、黒豚、黒毛和牛、黒薩摩鶏など、薩摩の黒食材を使った「黒三昧」という料理の企画も押し出しているのだが、そこにも老舗ならではのこだわりがある。「今は昔と違い、お客様は数多くの選択肢の中から店を選びますよね。ですから『鶴鳴館』も、ただ単に昔のままでは駄目だと思うんですよね。そのような考えから、手作りの繊細な技術を施した料理が自宅でも楽しめる弁当の販売や、県外の方にも召し上がって頂けるように味付けに工夫を凝らした『黒三昧』にも力を入れています。しかし、『鶴鳴館』は弁当の店や『黒三昧』の店になってはいけないんですよね。新しいことにもチャレンジしてはいくのですが、やはり伝統というものは大切にして、これからも歩んでいこうと思っています」。何事もアレコレしたくなるのが人情だが、あくまでも王道を歩み続ける「鶴鳴館」。その姿勢は、鹿児島の真ん中でド〜ンと雄大に構える桜島の姿と重なった。

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