溶岩と火山灰で形成された独特な土壌で育つ、鹿児島桜島の名産品・桜島大根作りの名人、大野学さん。大野さんは桜島大根の大きさで、過去に3度もギネス記録を更新。2003年に更新した31.1キロという記録は、いまだに誰からも破られていないと言う。「桜島大根は一般の大根に比べて、約30倍の大きさがあります。糖度が高く煮物に酢の物、お味噌汁の具と色んな料理で使われていますが、特に煮物にした場合、型崩れしにくいと重宝されているんですよ」。大きさだけでなく、その味の良さでも古くから日本人に愛されている桜島大根。大野さんはその桜島大根を生産していた父親の背中を見て育ち、現在は6千〜7千株を生産する。「私自身30年以上、桜島大根を作り続けていますが、桜島大根の中が空洞になったり、割れてしまったり、今まで多くの挫折を味わいました。そこで肥料の研究や種の選別を重ね、20年かけてようやく人様に出せる桜島大根を作ることに成功したんですよね」。しかし、そんな大野さんが桜島大根作りで一番大切にしているのは、肥料でも種の選別でもなく、やはり愛情だという。「桜島大根一個一個に声をかけるなど、まるで我が子のように大切に育てています。そうするだけで桜島大根の大きさが、まったく違って来ますからね」。やはり桜島大根は大きさが命。現在、桜島大根の生産者は33人いるそうだが、皆がその大きさを競い合っている。「桜島大根の大きさ、迫力、そこに魅力がありますからね。例えば千本並べた瞬間に、一個でも大きいのがあると、あ〜ここにあったか〜というくらい感動します。大きさイコールお金にもなるのですが、やはり、その大きさへの憧れが皆にあるのではないでしょうか。カボチャなどもそうですが、特に鹿児島県人というのは、大きいモノに憧れるんですかね〜」。大きいモノに憧れる心...それは人のロマン。雄大な桜島をバックに丹精込めて育てられた大野さんの世界一の桜島大根は、味だけでは語れない、人の心を動かす...ワクワクさせるモノだった。そんな大野さんの座右の銘は「元気」。現在67歳の大野さんだが、これからも元気一杯に、元気な桜島大根を生産し、また世界一の記録を更新してくれることだろう。
| 前のページ |