匠の蔵~words of meister~の放送

土に命と愛ありて ティア【家庭料理レストラン 熊本】 匠:元岡健ニさん
2010年01月23日(土)オンエア
九州を中心に、旬の無農薬野菜を主役とした料理を提供する家庭料理レストラン「土に命と愛ありて ティア」を展開する元岡健ニさん。その個性的な店名は、元岡さんが感銘を受けたと言う、天草の作家・島一春さんの著作「土にいのちと愛ありて」の土のT、命のI、愛のAにちなむ。「この本の主役である、埼玉で自然農法に取り組んでいる須賀一男さんの言葉“食物は人間の生命の源です。大地といのちと自然の恵みに満ちた健全な食物をつくり、一人でも多くの人に、また子や子孫たちに、それらを食べてもらうことは、農にたずさわる者としての使命である”を心に刻んでいます。今は日本の食と農業は衰退しています。ティアが客様にとって本当に居心地の良いレストランになり、全国に広がっていくことが、日本の農業と食を守ること、次世代に繋がる道だと固く信じています」。一般的なレストランは、メニューに合わせて食材を仕入れるが、「ティア」は、農家が出荷したその日の素材を見て料理を決める為、毎日メニューが変わる。「以前の職場であるトンカツ料理専門店の社長をしていた頃から産地を歩いて来ましたが、有機農業に取り組んでいる農家の方が困っていることは、野菜が採れ過ぎた時の販路と、見た目が悪かったり、不揃いだったりする規格外の野菜の扱いなんです。日本の食料自給率の低さを考えた時に、そのように正しい食を提供しようと挑戦されている農家の方々を支え、それをお客様に伝えていく努力をしなければ、外食をやっている意味がないと思うんですよね」。そんな元岡さんは、1998年に「ティア」を開店。現在では消費者の理解も高まり、同じように安心・安全を謳う料理店は増えて来たが、「ティアがお客様に受け入れられるまで、3年もの年月を費やしました」と言う。「最初は何の店かよく分からないという感じで、夜のお客様が4人という日もありました。しかし、それはそうだと思うんですよね。幾ら自分たちが良いと言っても、その良さがお客様に伝わらなければ意味がありません。ですから、とにかく店に来られたお客様には、絶対に満足して頂こうと、食の好みなど、それぞれお客様の要望に合わせて、私たちの出来る限りの事をやっていった訳ですよね。そうする事で、お客様がお客様を呼んで、今では沢山の方が来てくれるようになりました」。和食、中華、フレンチなど、それまでは、どのような料理店なのか?しかなかった店のカテゴリーを、無農薬か、そうでないかという、新しい判断基準をテーマに掲げる発想は、やはり当時としては斬新だし、苦労も多かったことだろう。しかし、元岡さんが諦めずに続けて来た事が、今のオーガニックブームや農業を見直す事に繋がっている。その着眼点と忍耐は見習いたいものだ。

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