大分にゆかりのある宣教師、フランシスコ・ザビエルの名を冠し、バターの効いたクッキー生地にコクのある白餡が包まれた和洋折衷の大分銘菓「ざびえる」。ビロード風の植毛箱に入れられ、昭和37年の誕生以来、長く大分を代表する贈答品として親しまれてきたが、一時期、製造元の倒産によって、その姿を消してしまった事がある。しかし、2001年、製造元の元社員達が、「ざびえる」の復活を望む多くの人達の声に後押しされて、新たに「ざびえる本舗」という会社を設立し復活させたそうだ。その中心人物である社長の太田清利さんは、「実はそんなに苦労はしていないんです」と笑う。「『ざびえる』の持つ実力、ネームバリューに助けられました。行く先々で、色んな人から応援されたんですよね。そして、この『ざびえる』は、こんなに多くの人たちに愛されていたのかという事を改めて見直す事が出来ました」。そんな「ざびえる」は、倒産から復活というドラマによって、図らずとも全国的にも、その名を知られるようになったそうだが、だからこそのプレッシャーもある。「これだけ多くの大分の人に愛されているお菓子ですから、昔となんら変わらぬ製法で、変わらぬ美味しさを提供しようと心に誓って再開しました」。しかし、太田さんは味以外の部分で変えたものがあると言う。「以前は商品の品格を落としたくないという事で、バラ売りをせず箱に入った形のモノしか売らなかったんです。でも、『家庭で食べる5個入り位の袋モノを作ってくれないか』というような、お客さんの要望が沢山あって、それは発売するようにしました。何事も守るモノと進んでいかなくてはならないモノと、二つあるんだろうと思うんですよね」。そんな太田さんは、どちらかを選択する事で迷った場合、ある基準があると言う。「品格が落ちると言うのも一理だし、家庭でも気軽に食べたいというのも一理だけど、どっちを選ぶかというのは、やはりお客さんの声を選ぶ方が良いのではないでしょうか」。ブランドイメージは大事だが、それに押し潰されては意味がない。贈り物に使われるようなものか、食卓に普通にあるようなものか、それぞれの居場所で一流ブランドになってこそ意味がある。「僕らは本当に大分の沢山の人に支えられて励まされて来ましたから。これをキチンと恩返しするには、やはりもっともっと良いお菓子を、もっともっと良い『ざびえる』を作らなイカンと思っています。そういうお客さんの期待を裏切らないようなモノにするのが、僕らの仕事だと思っていますから」。復活したお菓子の話など、なかなか聞かない。それだけ「ざびえる」が美味しいという事、それだけ「ざびえる」が愛されているという事だろう。そんな「ざびえる本舗」では、復活を応援してくれた大分の人達へ恩返しをと、平成19年10月から、大分の特産品・カボスを使った和菓子「豊のたちばな」を販売をスタートさせた。「ざびえる」を超える大分の銘菓として成長していく事を期待している。
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