「ばらもん」とは、五島の方言で活発・元気な人という意味の「ばらかもん」が転じた言葉。「ばらもん凧」は、鬼に向かって武者が勇猛果敢に挑む様を描いた、なんとも迫力のある絵柄だ。「五島では、男の子の初節句にはご馳走をこしらえて、凧を揚げるのが習わしだったんですよ。友だちは皆父親から凧を作ってもらっていましたが、私は幼い頃に父を亡くしましたから、自分で作っていました。残してくれた骨組みを使って、何度も何度も貼り替えて」。収集を趣味としていた野原権太郎さんは、いつしか凧作りが生業となっていた。 転機は、数十年前、東京で催された物産展で訪れた。色鮮やかな凧は人を惹きつけ、その存在を広く知らしめることとなる。それも、日本にとどまらず。「8年ほど前には、ウェールズに招かれました。向こうの子どもたちを前に、凧作りの実演を行ったんですよ」。 伝統を守らなければ、という重圧は、常に感じている。だからこそ、中途半端な気持ちで筆は持てない。「気分が乗らないときは、どんなに忙しくても凧作りはしません」。「でも」と野原さんは続ける。「やっぱり凧を作っていると無心になれて、和むんです」。
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