森林面積が土地の約88%を占め、その森林浴の効果によって、宮崎県から「森林セラピー基地」に認定されている北郷町にある宿「北郷音色香の季 合歓のはな」のマネージャー・細元啓一郎さん。宮崎グランドホテルの元社長であった父親の細元啓吾さんと共に、平成20年3月に、この「合歓のはな」をオープンさせた。「かつて宮崎は団体旅行のメッカとして栄えていましたが、時代の流れと共にお客様の趣向が多様化し、スポーツ型や団体型の旅行が減少した為、多くの旅館が衰退してしまいました。そこで、これからの旅館は、個人型の旅行客を満足させられるものでないと生き残れないと考え、このような自然豊かな場所にオープンしたのです」。そんな「合歓のはな」は、約1万平方メートルもある広大な敷地に、離れ形式の客室が10棟とレストラン棟、管理棟があるのみ。ヤマブキやアヤメ、アザミなどが植えられた庭と、広大な原生林に旅館全体が囲まれ、さらに猪八重川の渓流が四季折々の風情を演出する上質な大人の宿として、今注目されている。「宮崎は女性が旅行したくないワースト1位の県という記録を作ってしまいました。私共は、この旅館を通じて、その不名誉な記録を払拭出来ればと考えています」。そんな「合歓のはな」の魅力は、北郷の豊かな自然だけではない。「旅館はお国自慢なんです。地元の人間が地元の事をよく知り、『こういう良い所があるんです』『ここにはこんな素晴らしい所があるんです』とお伝えする事によって、また北郷にお客様が沢山来てくれるのではないかと思っています」。そんな「合歓のはな」では、地元の若いスタッフが笑顔で接客を
してくれる。「私がよくスタッフに言う事は、ただ単に露天風呂の掃除とか庭掃除をするのではなく、
常に四季折々の風情を肌で感じながら仕事をしようという事です。そうすると『この部屋には、この花が良く見える』とか、『この景色のどこが好き』とか、感じたままをお客様にダイレクトに伝える事が出来ますからね。いくら社長が『ここが良い』と言っても自分が良いと思わなければ、中々お客様には伝わらないと思うんですよね。マニュアルにある謳い文句だけでなく、生の声でお客様を接客する事が大事だと思います」。まるで友達が我が故郷を案内してくれるな気配りをスタッフ全員にして貰えるというのは、なんと贅沢な事だろう。そんな気配りが行き届いた旅館が、客から愛されない筈はない。
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