匠の蔵~words of meister~の放送

坂本醸造 [鹿児島 黒酢] 匠:蔵元忠明さん
2007年01月27日(土)オンエア
鹿児島の錦江湾を望む霧島市福山町、ここは健康ブームで注目される天然黒酢を生産する醸造元が軒を連ねる郷として古くから知られている。しかし、戦争で福山町の黒酢作りは一時途絶えてしまったのだが、「坂本醸造」の先代が、その技術を復活させ、今の繁栄に繋げたそうだ。南国の温暖な気候の中で、豊富な原料と職人技がひとつになって作られる黒酢。しかし、「坂本醸造」の工場長の蔵元忠明さんは、天然、そして自然の力を借りて行われる黒酢作りは、「環境が主人公で、自分達は脇役なんです」と、その技術に決して奢ることのない人物だった。「農業と同じ製法ですから、黒酢を育てる壷を置く庭を、私達は畑と呼んでいるんですよね」。そんな「坂本醸造」の畑には、およそ5万個もある壷が並べられ、黒酢が作られている。そんな壷を相手に、攪拌棒と呼ばれる棒切れ1本だけを使い黒酢の成長を見守る蔵元さんは、まさに職人だった。「職人の世界っていうのは、どうしても技術に走りがちなんですけどね。技術ももちろん大切なんです。ただ最終的にお客さんの所に黒酢を届ける意味で、プラスアルファの部分が、やっぱり必要じゃないかと思うんですよね」。蔵元さんは、そのプラスアルファの部分を、こう表現する。「気持ちですね。人であったりモノであったりとか、そういう愛情みたいなものを注いでいかんと良い黒酢は作れないという事は思います。まあ、壷やら畑が語りかけてくる訳じゃないんですよね。私なんかも壷や畑に語りかけてる訳じゃないんですけど。よく大工さんが柱を触ったりするようなのと一緒でね。私なんかも、たまに壷を触ったりするんです。寒くないんだろうかとかね。やっぱり気持ちをプラスアルファでつけてやれば、良い黒酢が出来ると思うんです。だから常々、そういう気持ちだけは忘れんようにと思っています」。技術に長けた匠なら良いものを作れるという訳ではない。腕だけじゃ駄目で、信念や愛情、優しさやプライド…何かを込めなければ上のレベルには行けないし、何を込めるかで変化していくものなのだろう。そんな蔵元さんの好きな言葉は、「すべての人に優しくする」だった。

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