匠の蔵~words of meister~の放送

Table of Smile【フードコーディネーター 鹿児島】 匠:杉水流直子さん
2016年08月06日(土)オンエア
鹿児島県内で唯一の1級フードコーディネーターとして活躍する杉水流直子さん。
杉水流さんは学校栄養士、外食企業での仕事を経て、2013年に全国でも50数人しかいないという1級フードコーディネーターの資格を取得。翌年に『Table of Smile』を創業し、『笑顔、花咲く食』をコンセプトに、料理やメニュー監修の他、店舗コーディネート、販売促進、イベントを手掛けるなど、様々な形で鹿児島の食をプロデュースする。
「人が食べ物を美味しいと思う感覚は、美味しそうとか、食べたいな〜と思わせる見た目が8割、舌が1割、その他、嗅覚や聴覚などの要素が1割だといわれています。ですから私はその8割の部分、味だけではなく目で見てワクワクする、その人の気持ちを高めるような演出を大事にしているんですよ」。南北600Kmにも及ぶ鹿児島は、その広大な地理的要因により、豊富な食材の産地として知られているが、杉水流さんは、0�ただ良い食材や料理があるだけでは、人の心を動かすことはできない0�と、料理のみならず、様々な空間も人の心をワクワクさせるように演出。2015年には、昔から鹿児島県民にとって特別な場所である 『山形屋』の食堂を、まるで上質なホテルのようにリニューアルしたという。
「私が学校栄養士の仕事をしていた時に、子どもたちに食事をもっと楽しんで欲しいと、ランチルームを賑やかにしたり、壁に飾る食材に関する資料を毎月作り替えたり、とにかく子どもたちがワクワクするような仕掛けを一杯施したんですよね。すると凄く好き嫌いの多かった子どもたちが、不思議なことに文句を言わずに食べるようになったんですよ。食べることが楽しくなると、すべての料理が美味しく感じるという流れが生まれるんだな〜というのを実感できたことが、今の仕事の大きな支えになっています」。人の心は、ただ料理の味が美味いだけで動かせる程、単純ではない。 何故なら美味しい味の記憶というのは、楽しかった思い出と共に残るモノだから。
「美味しい料理を、より楽しく提供できると、凄く記憶に残る味になると思うんですよ。そういうシーンを演出するお手伝いができたら面白いな〜と思って。まずは何か自分がワクワクする提案をさせて頂いて、それにクライアントさんがワクワクして乗ってきて下さると、もっとワクワクしたモノが生まれるという。フードコーディネーターとは、そんな仕事かな〜と思っています」。そう語る杉水流さんには、フードコーディネーターとしての一つの信条があるという。
「様々なタイプのフードコーディネーターがいると思うのですが、私は自分が良いと思うモノを貫きたいという感じではなく、相手の個性や良いところを伸ばしていきたいという想いがあるんですよ。実際にお店を経営したり、商品を販売したりするのはクライアントさんなので、その方たちが納得して自信を持てないと、続かないと思うんですよ。東京で流行っているからとか、良いモノを真似するだけでは、一時的にしか通用しませんからね。ですからオープンまでにコレでイイんだという自信を持って、コレだったら自分たちも絶対、後10年はやっていけるぞという、長い目で先を見られるような、ご提案ができたらイイな〜と思って仕事をしていますね」。フードコーディネーターの仕事は提案するだけではないと、クライアントと何度も会話を重ね、その会社の歴史から勉強し、そこから読み取れるクライアントの想いも形にしようとする杉水流さん。そんな誰よりもクライアントと寄り添う杉水流さんの仕事は、そこで働くスタッフに、誇りという最強の武器を与え、流行に左右されることのない店を形づくっていた。
「よしイケると思った時の皆さんの力って凄いんですよ。逆に不安に思っている時の無理やりの力って、本当に続かないんですよね。ですから、まずは自分が自分のお店を愛せるような、そこが一番大事かな〜と思いますね」。そんな杉水流さんは毎週2〜3回は料理人や生産者の元に通い、料理や食材が生まれる現場を知ることも大事にしているという。
「料理人さんにも生産者の方にも、本当にこだわりがあって、その人の想いを自分が受け取ると、それを誰かに伝えたいな〜とか、広めたいな〜と思うんですね。そんな料理人さんや生産者の方と、お客さんの橋渡しもフードコーディネーターの仕事の一つだと思っていますので、とにかく現場は大事にしています」。畑に通う時のユニフォームは「ジャージと長靴です」と笑う杉水さんだが、そんな現場を子どもたちに見せることも大事にしているという。
「ファーストフードが悪いとは言いませんが、大人になって懐かしむ味が、家庭の味であって欲しいという想いはありますよね。食育というと、食の大切さを教えたり、良い食材を買ってきて与えたりするイメージがありますが、それだけでなく、一緒に芋掘りをしたり、田植えをしたり、良い食材が生まれる現場を見せる、体験させることも大事だと思うんですよ。そうすることで、子どもたち自身が、本当に良い食とは何たるかを感じることができると思いますからね」。今後は「さらに鹿児島の食の魅力を、全国に広めていきたい」。そして、「この仕事は、食べることが好き、美味しいモノが好きな私にとって、そんな食べる機会や美味しいモノに出会えるチャンスが一杯ある、最高の仕事です」と満面の笑みを浮かべる杉水流さん。その座右の銘は、自らを笑顔にさせる食の力を信じる『笑顔、花咲く食』という会社のコンセプトにもなっている言葉だった。

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