匠の蔵~words of meister~の放送

芭蕉布職人 平良美恵子【芭蕉布 沖縄】 匠:平良美恵子さん
2011年02月05日(土)オンエア
沖縄を代表する織物素材、芭蕉布の伝統を守り続ける職人・平良美恵子さん。芭蕉布は沖縄特産の糸芭蕉の繊維を織った布。他の繊維より軽くて涼しいという特徴を持ち、沖縄の気候に最適な素材として昔から庶民の普段着として親しまれている。「芭蕉布は、古い書物の中では13世紀頃から登場します。15世紀には現在の工程と同じ技法を使って織られていたようで、薩摩侵入後の江戸時代には、徳川家への献上品や貢納品として大きな役割を果たしていました」。しかし、時代と共に生活様式が変化。その文化も衰退し、現在、糸芭蕉の栽培から織りまで一貫して行っているのは、大宜味村の喜如嘉だけになってしまったそうだ。「芭蕉布作りは産業革命以前の仕事です。モーターを使ってスイッチを入れるモノはまったくなく、すべて手作業で行われています」。糸芭蕉から原皮が採れるまでには約3年の成熟を待たなくてはならず、さらに、着尺一尺分に約200本の原木を使用する。そんな芭蕉栽培から糸積み、織り上げるまでの一貫した手作業には、とてつもない時間と根気が必要とされ、現在、喜如嘉では上は90歳の職人まで、その一枚が出来上がるまで、約70人もの手が携わっているという。「芭蕉布作りは、ただただ人の手が機械に向かって進んでいきます。人がやったのではなく、機械がやったのではと思わせるぐらい均一なモノに向かって進まなくてはいけないのに、横糸を作る人がAさんとBさんといたとして、AさんはAさんの特徴を出し、BさんはBさんの特徴を出したら、布としてはムラになる訳ですよね。絵を描く場合でしたら個性を出さなくてはならないのでしょうが、芭蕉布を仕上げる場合は、皆が同じトーンで、あたかも同じ人がやったかのごとく、人の手が揃っていかないといけません。布は残っても誰が作者なんてことは、その布には書かれないし、書く必要もないと思います。布は絵とは違いますからね」。そこには一人一人の名前は残らない...ただただ匠たちの技の結晶だけが芭蕉布という形となって後世に残される。「大切に扱えば、芭蕉布は私たちの3倍以上も長生きします。その芭蕉布が、後世の人たちに、この程度のモノかと思われないように、こらからも芭蕉布の素晴らしさを知らしめていきたいと思っています」。

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