匠の蔵~words of meister~の放送

大村製氷【製氷 長崎】 匠:村山正男さん
2009年02月07日(土)オンエア
長崎県大村市の標高300メートルの山の上に工場を構え、生花を美しい姿のまま封じ込める「花氷」を製作する「大村製氷」の村山正男さん。水は凍らせながら絶えずかき混ぜ、気泡や不純物を取り除くと透明度が増す。「花氷」は、そこに生花を入れて作るのだが、強く攪拌すると花びらが壊れ、弱ければ気泡が残ってしまうと、とても繊細な技術が求められる。「氷は1時間に3ミリしか凍らせる事が出来ないので、30センチの厚さだと2日間かかります。このように花氷作りは、とても手間隙がかかる作業ですが、出来上がりの美しさは言葉では言い表せませんからね」。確かに透き通った氷の中で、鮮やかな赤やピンクのバラや黄色いヒマワリが泳ぐ様は、ため息が出る程美しい。しかし、そんな花は氷の中にある間は何年経っても綺麗なままだが、ひとたび溶けてしまうと直ぐに枯れてしまうそうだ。「人に感動を与える為には、やはり本物の花でなければ意味がないと思います。花氷はとにかく美しさが命です。そして溶けてしまうと枯れるという、桜の花にも似た儚さが、さらに美しさを際立たせているようにも思えるんですよね」。そんな村山さんは、日本で初めて繊細なコスモスの花で、「花氷」を作る事に成功するなど、常に創意工夫を繰り返し、どんなに難しい素材も氷のオブジェへと変えてしまう。「どんなに複雑で難しい事でも、分解していけば簡単な事の積み重ねだと僕は思っているんです。ですから何事も難しく考えない事が大切です。原理的なモノというのは複合されただけであって、一つ一つバラせば案外、簡単なモノなので、新しい技術が必要な場合は、外の知識を持って来たり、何かの技術を持ってきたりして、一緒にタイアップさせれば必ず実現出来るだろうという風に思っています。ですから臆することなくキチっと物事を真正面から捉えて、一つ一つを解決していけば良いと思います。難しい事を初めから想定するのではなく、一つ一つ身近な事からやって行く。それが全てに通じるのかなと思います」。ただ知識の数を持っていても、その関連性には気付かない。時々見直して自分の中にある知識や技術を整理していないと、村山さんが言うように、くっつけたり積み重ねたりして形にする事は出来ないだろう。部屋だけではなく、頭の中も常に整理整頓が大切という事だ。そんな村山さんは、今、雪ダルマやサンタ人形を入れた氷柱や、イルミネーションやオモチャなどを氷の板に配置した置物など、様々な氷も製作している。「結婚式やパーティーなどで使われると、本当に皆さん喜んでくれるんですよね。それが嬉しくて嬉しくて」。人を感動させる、ビックリさせる、そんな事に一生懸命に打ち込む村山さんは、遊び心溢れる発想と、それを実現させる技術を併せ持った、一流のエンターテイナーだった。

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