匠の蔵~words of meister~の放送

大庭鍛冶工場 [福岡 鍛冶屋] 匠:大庭利男さん
2007年02月03日(土)オンエア
博多の1本包丁と呼ばれ、せっかちな博多の女将ごりょんさんが、野菜も魚も1本で切れるようにと作られた博多の伝統的な包丁博多包丁。福岡は博多で、その博多包丁を現代に残す、今では数少ない鍛冶屋「大庭鍛冶工場」の主人の大庭利男さんは、博多包丁作りの他にも、大相撲の土俵を作る時に使われる、土俵鍬を作る唯一の匠としても知られている。そんな日本の伝統を守り続けている大庭さんは、その柔和な表情のように自分の作品一つ一つに、たっぷりと愛情を注いでいた。「売るから卸してくれって言う人もおるけど、それはやめてるんです。ウチたち職人はね、やっぱり道具を大切に使ってくれる人に使って貰えると嬉しいんですよ。それに、そんなに大量に出来るものでもないですからね」。卸問屋の人に「絶対に売るからと約束されても惜しくはない」と言う大庭さん。そんな大切に使ってくれる人たちとの嬉しい交流もあるそうだ。「長〜く使ってある人は、やっぱり修繕して下さいとか言って持ってくるんです。そして、持って来たらわあ〜まだ使って貰ってるってなるじゃないですか。そして、よく切れるよとか言われたら、やっぱりね嬉しいから、また作らないかんちゅう事になりますよね。それが生きがいっていうかな〜嫁にやったような感じですよね。また帰って来たというような感じでね」。道具を作る匠の話には、どこかに通じる所がある。使われてナンボの物は、長く使われて欲しいという想い。それは、自分の作り出した物が、使われて、どこかで、また新たに何かを作り出しているからかも知れない。「頑張って人の為になるよう、しっかり働いて来い!」。そんな親のような気持ちなのだ。大庭さんの鍛冶工場には、今、若い職人さんが一人修行している。いつか、その若者、あるいは別の人が大庭さんの技術を受け継ぎ、新たに何かを作り出す日も来る事だろう。しかし、大庭さんは「職人から仕事を取ったら何も残らんでしょ。命の続く限り、この仕事をずっと続けるつもりです」と言う。これからも大庭さんの職人技は、さらに磨かれていく事だろう。

| 前のページ |


| 前のページ |