匠の蔵~words of meister~の放送

蓑毛鍛冶屋【鍛冶屋 熊本】 匠:蓑毛裕さん
2011年04月02日(土)オンエア
現在では珍しい黒い表面が刃先に残された「黒打ち」という技法を駆使しながら鎌や包丁などを製作する「蓑毛鍛冶屋」の八代目・蓑毛裕さん。熊本の人吉は周囲を山に囲まれている為、林業用の道具の需要が昔から多く、今も昔ながらの鍛冶屋が数軒残っている中、「蓑毛鍛冶屋」では、臨機応変に既製品では対応できない要望にも応え、江戸時代から続く伝統ある人吉の鍛冶屋の火を守り続ける。「中学卒業から鍛冶屋一筋で60年以上になります。鍛冶屋の一番の仕事は火を操ることですが、長年の経験で温度計を必要とせず、目で温度を見極めることが出来ますよ」。そうやって火を操り、鉄を操り蓑毛さんの手から生み出される包丁は、優しく鈍い光を放ち、磨かれた刃先とのコントラストは絶妙な味わいを醸し出す。「現在は息子が九代目を継いでいますが、私が先代を越し、そして、また息子が先代である私を越していく。その繰り返しで今の蓑毛鍛冶屋があると思います」。そうして代が変わるごとに技術が研ぎ澄まされてきた蓑毛鍛冶屋の伝統を受け継ぎ、今に伝える蓑毛さん。そんな蓑毛さんは、鍛冶屋の魅力は、やはり自らの手で、鉄をどんな形にも変えることが出来るところにあると言う。「1個の鉄が私の手にかかれば色んな形に変わっていきますからね。それは楽しいものです。そして、その鉄も鋼の焼入れ方次第で、どんな硬さにも仕上げることが出来ます。刃物は、ただ硬ければイイというものではありません。硬すぎると砥石にかからず、切れ味が出ませんからね。そこが、少し難しいところです。良い刃物は、切った時に球磨弁で言うところのス〜と吸い付く感じがして、長持ちもします。その感触は手で確かめるしかありません」。長年培われた自らの手の感触を信じ、火を操りながら鉄と鋼を変幻自在に形造る蓑毛さん。「良い包丁は単純に切れるだけではない」と語る、その言葉には、蓑毛さんの職人としての矜持がこもっていた。

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