匠の蔵~words of meister~の放送

卑弥呼醤院【老舗醸造店 熊本】 匠:内田博之さん
2014年02月22日(土)オンエア
昔ながらの古式醸造方法で、無添加の生味噌や九州醤油、麹などを製造する『卑弥呼醤院』の五代目、内田博之さん。原材料は生産者の顔の見える、地元熊本県産の良質な米、麦、大豆を使用。毎日食べて美味しく、体にも優しい食品を提供する。
「現在の店舗は明治7年に酒の醸造蔵として建造したモノで、大正12年より甘酒麹の製造許可を取得し、本格的に味噌、醤油、麹の製造を始めたそうです」。以来、『卑弥呼醤院』では、味噌や醤油の命ともいえる麹を、木桶、室蓋、石室を用いた『古式室蓋製麹法』で製造。そうして生まれる完成度の高い麹は、味噌や醤油に自然の美味しさを与えてくれるという。
「添加物をそのまま食べることはありませんので、気付かないかも知れませんが、添加物を直接舐めると舌が痺れる程の刺激があります。そのようなモノを食品に加えたくないという想いが原点ですよね。麹は作るというより育てるという感覚で、確かに手はかかりますが、手をかけただけ応えてもくれますから楽しいですよ」。内田さんは25歳で『卑弥呼醤院』の代を受け継ぎ、麹を育てることに専念。室にこもりながら麹と格闘する日々を過ごしてきたという。
「先代は感覚で麹を育てていたのですが、当時の僕には感覚がありませんでしたので、とにかくデータの収集に力を注ぎました。この日の何時に温度がこれ位で、調整はどのようにしたのかということを、日誌や日報に付けていくんですよね。そして、そのデータを基にさらに研究を続けていく。その繰り返しで、ようやく上手い具合に麹を育てることができるようになりました。本当に室に何度も足を運んで、麹の色、手触り、匂いなどを感じながら、自分自身の感覚が掴めるように経験を積み重ねてきましたね」。感覚がないのだからと、人一倍、麹と向き合いデータを収集し、先代の感覚を越えるほどの麹の育成技術を確立したという内田さん。そのデータはこの先も、たゆまぬ努力を惜しまない内田さんの感覚までもが加味されて、さらに洗練され、例え代が変わろうとも『卑弥呼醤院』の秘伝のレシピとして、この先も受け継がれていくことだろう。
「僕は毎朝10時半か11時位に出社するのですが、帰宅するのは翌朝の4時か5時位なんですよ。それまでは麹につきっきりなんですよね。それは製造する過程で納得したらダメだという想いがあるからなんですよ。満足はしない。これが出来て良かったね。次はもっと良いモノを作ろうという気持ちで頑張っています」。今後はドレッシングや調味料の製造にも力を入れたいという内田さん。『慢心せず満足せず』を座右の銘に掲げる内田さんが、今後、どのような商品を生み出していくのか楽しみだ。

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