熊本・天草生まれの粘土作家「マスミアート」の播正ますみさん。播正さんは、繊細かつ優雅な紙粘土人形を中心に、創作人形からアンティーク人形まで幅広く展開。アンティーク人形の本場、ヨーロッパのドールコンテストで、最優秀賞を獲得するなど数々の輝かしい経歴を持つ。「ヨーロッパの賞は、自由に創作できる創作人形ではなく、様々な規定があり、そのレシピ通りに作らなければならないアンティーク人形で頂きました。私はこれまで比較的自由に生きて来ましたので、こんな決まり事の多い世界があったのかと刺激を受けました。もちろんアンティーク人形の方が歴史も古く、ペイント技術の奥深さや小道具の多さなどから、それを取り入れる事が出来たなら、自分の創作人形の作品がさらに良くなると思い、勉強してみたいと思ったんですよね」。そんな播正さんの創作粘土作家としての活動は、主婦時代に料理・習字・編物・パッチワークなど様々な経験を詰む過程で、近くの公民館で開催された創作粘土の講習会に参加したことから始まったと言う。「講習会は1〜2週間に一度しか開催されていませんでしたので、頭で考えるより、体で覚えていかないと駄目なタイプの私は、とにかく家で作っていましたね。もともと多趣味というか、習い事全般が好きでしたので、そんな色々な経験から工夫したり、アレンジを加えたりということが出来たのだと思います」。美しく凛とした佇まいながら、好奇心旺盛に活動する播正さん。その気さくな人柄から幅広い人脈を築き、現在はその活動の範囲を東京にまで広げている。「今は熊本と東京で教室を開き、月の半分以上を東京で過ごしています。やはり東京の方がどうしても生徒の数が多いですからね」。そんな教室では創作人形からアンティーク人形まで、幅広く教えているという播正さん。扱う素材も普通の粘土作家は一つを追及するものだが、播正さんの場合は珍しく様々だと言う。「粘土にはパン粘土、石粉粘土、軽量粘土、油粘土、紙粘土、銀粘土などがあるのですが、私は、あらゆる素材を使いこなせて粘土作家だと思っていますので、色々な素材の粘土を勉強しました。一つの素材しか扱わない人には邪道だとも言われましたが、そう言われても私は色々な粘土を扱えるのが当たり前だと思っていましたからね。そうすることで自分の作品の幅が広がると思いますし、生徒にも自分の経験の中で深く教えることが出来ますからね。大変は大変でしたけど、苦にはならなかったですね、好きだから」。一つを深く掘り下げ事を成しえるのか、いくつかに力を入れつつ事を成しえるのか...それは大した問題ではない。何故なら播正さんのように成功する人は、逆の環境でも成功すると思わせるエネルギーを持っている。結局は、その人の持つエネルギーの総量がモノを言う。「アンティーク人形の作家からは『播正はアンティークだけを
すればいいのに』と言われるし、創作人形の作家からは、『何で顔型があるような人形を作るのだろう播正は』と言われるぐらい、皆さんに変に思われています。でも、私はやはり両方知っていたいんですよね。ただ欲張りなだけです」。
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