ウクレレを中心とした弦楽器を製作する『ジュンタラ楽音製作所』の永吉潤郎さん。『ジュンタラ』という屋号は、以前、永吉さんがネパールを訪ねた際、現地の人に『潤郎(じゅんろう)』にちなんで名付けられたニックネームで、ネパール語で『月と星』という意味があるという。
「もともと高校時代にギターを作りたいと思い、専門学校で木工の基礎を学んだ後、長野県のギター製作者に弟子入りしたんですよ。しかし、その頃は高木ブーさんの影響などからウクレレブームの真只中で、僕も自然に、その可愛らしいウクレレの姿と音色に魅了されてしまったんですよね」。そうして2004年に地元である鹿屋市に戻り、自らの工房を立ち上げた永吉さんは、以来、木の個性や特徴、クセを見極めながら、シンプルな作りながらも奥深い音色を奏でる、唯一無二のウクレレを製作し続けている。
「ウクレレはどんなに格好良く頑張っても、どこか可愛らしい雰囲気に周囲を染めてしまうというのか、すべてをほんわかとさせてくれる楽器ですよね。ですからその音も、僕の勝手なイメージですが、ただキレイな音ではなく、コロコロっとした良い意味でのチープ感が大事だと思うんですよ。そうしたウクレレらしさを意識しないで、きれいな音だけを目指すと、どうしてもギターっぽい音になってしまうんですよね。それはそれで良いことなのかも知れませんが、僕はウクレレはウクレレらしく、そういう音を大事に製作しています」。ギターよりも中身がシンプルだけに、簡単なようで難しいと言われるウクレレの製作。吉永さんはハワイなどで、いかにもウクレレらしい音が出ている楽器の作りが、結構、雑だったり酷かったりするから面白いと笑う。
「以前、楽器を演奏する人が、製作者が全員、響きの良い音やきれいな音を目指すと、すべて似た音になると言っていたんですよね。ですからウクレレを製作する場合は、逆にどこかの工程で効率の悪い部分を作るというのか、音の質を落とすというのか、そういう作業をしていくことで、クセがありつつも心地よい音が出せるようになるのではないかと思います。でもそれは、決して手を抜くという訳ではなく、真面目に、一生懸命に、何度も何度も試しながら見つけていくしかないんですけどね」。そんな永吉さんは、ウクレレの材料となる木にも畏敬の念を持ち、何百年も生きた木に失礼のないように接しているという。
「ウクレレは直径1m以上もある原木の15cmぐらいの部分だけを使って製作するんですよね。ですから僕はその何百年も生きた木に見合う仕事をしているのかと自問自答する毎日なんですよ。そんな木に対して、ウクレレの製作に使える材か、使えない材かの判断はしますが、使えなくても決して悪い材という呼び方はしたくないんですよね」。今後は、ニッチな民族楽器なども手掛けていきたいという永吉さんの座右の銘は『行雲流水』。空行く雲や流れる水のように、深く物事に執着しないで自然の成り行きに任せて行動するという例えである、その言葉のように、これからも永吉さんは自然体で、より多くの人が気軽に楽しめる楽器を生み出していくことだろう。
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