匠の蔵~words of meister~の放送

グローバルヴィレッヂ 綾【工房 宮崎】 匠:川野絋造さん
2010年04月24日(土)オンエア
綾町の豊かな自然環境で育まれた良質の天然素材を有効に生かし、自然と調和した昔ながらのシンプルで美しい住宅や家具を提案する工房「グローバルヴィレッヂ 綾」の川野絋造さん。川野さんの工房は、1999年度に“グッドデザイン賞”を受賞するなど、木々の魅力が感じられる数々の作品は、そのデザイン性の高さに定評がある。「美の感性は、人それぞれ生まれた場所で培われるモノだと思います。私はこのような素晴らしい自然環境の中に生まれ育ちましたので、長い年月に培われた天然の素材を生かした美しいデザインを追及するというのは、自然の流れだと思います」。しかし、そんな川野さんの素晴らしさは、そのデザイン性の高さのみではない。間伐材、端材を新たな素材へと再生する集成加工技術は、継ぎ目が全く解らないほど滑らかで美しい。「僕がなぜ集成材を始めたのかと言うと、小さなモノで大きなモノを作れるからなんです。大きなモノを作るからには、ゴマかすのではなく、ちゃんと呼吸する本物の木の素材を使って美しく作りたいですよね。いわゆる酸素を一杯作ってくれる大きな木は、地球の為にも残すべきだと思います。そして、小さな木は、間伐しながら大きな木を育てていかなければならないと思います。ですから僕は、大きく育った木は絶対に切りません。大きな木は山に残すべきだという理論で、35〜36年前から、この集成材に取り組んでいます」。今ではスタンダートとなった環境に配慮する先進的な考えを古くから実践してきた川野さん。しかし、その技術やデザイン性は、古くからある日本の伝統工芸の上に立っている。「日本の伝統工芸というのは、多くがその場所から前に進んでいないと思うんです。本当はもっと伝統工芸を使って新しい分野に進んでいくべきだと思うんですよね。僕のデザインは全然古くはありませんが、やはり伝統に乗っ取って作っています。そういう伝統工芸の手法を使った方が、一から始めるより前に進むスピードが速いですからね。ですから、今でも僕は古い民家や寺院仏閣を見て歩いていますよ」。そんな川野さんは、自らを職人ではなくデザイナーと呼ぶ。「モノ作りの基本は、素材があって、発想があって、そして、作る技術がいる。で、そこに職人の世界が必要とされてきます。ですから、モノ作りの匠というのは、僕はデザインと職人という二つの要素があると思っています。その二つがマッチした時にこそ初めて素晴らしいモノが出来るんです。中には、その両方を高いレベルで兼ねている人もいますが、私の場合は平等ではないですね。歯がゆい気持ちもありますが、僕のデザインのレベルに僕の技術が追いついていないと思っています」。イマジネーションすることが出来ても、それを形にする技術がなければ意味がない。逆に技術があっても何を作ろうかというイマジネーションがなければ、同じように意味がない。イマジネーションする力と製作する力...両方の重要さとバランスが分かっている人ほど、その最大公約数とも言える、自らの能力が最大限に発揮されたモノを作ることが出来る。

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