匠の蔵~words of meister~の放送

北田製麺工場【製麺会社 長崎】 匠:北田寿美さん
2015年04月25日(土)オンエア
島原の老舗製麺会社『北田製麺工場』の専務、北田寿美さん。『北田製麺工場』は明治28年の創業以来、素麺を始め、うどんやラーメンなど様々な種類の乾麺を製造。創業100周年を迎えた平成6年から機械に頼らない手延べによる『島原手延べ素麺』の製造を開始したという。
「島原の素麺の歴史は『島原の乱』以降、約350年も前だと言われています。戦禍によって人口が減少した島原を復興される為に、幕府が行った移民政策によって移り住んだ人々から素麺づくりが伝えられたとされているんですが、その出身地は香川県の小豆島とも奈良県の三輪とも言われているんですよ」。そうして始まった『島原手延べ素麺』の歴史は、当時の城主の庇護を受けた職人たちによって受け継がれ、現在、その生産量は全国で2番目となるまでに成長したという。
「特に戦後は、お客様が素麺を並んで買い求める程、島原の素麺は人気があったそうです。今も生産量だけでなく品質、実力も全国的に高く評価されているんですよ」。そんな中、『北田製麺工場』の主力商品となった『島原手延べ素麺』は、平成23年に長崎県優良特産品に認定され、日本全国はもとよりインターネットを通じて海外からも注文が入るという。
「麺づくりの基本は、やはり原材料だと思います。ただ作り方が上手なだけでは美味しい麺はできません。お似合いのご夫婦やカップルと同じで、麺にも粉との相性があるんですよ。ウチでは素麺なら素麺に合う最高の粉を使い、それも一つの粉だけを使うのではなく、様々な粉をブレンドして何回も試作を繰り返しながら一生懸命に麺を作っています。ですから私は値段にはこだわりません。安ければ良いという商品は作りたくないんですよ。値段ではなく美味しさにこだわりたいんですよね。ただ美味しいモノを食べて頂きたい。その想いだけです」。料理人の世界には、『良い原材料を不味くすることはできるが、悪い原材料を美味くすることはできない』という言葉があるが、やはりどんな食品も原材料の良さが基本になくては、客を満足させる味は生み出せない。しかし、ただ最高の原材料を使うだけでなく、『北田製麺工場』には、様々な麺を製造する中で培われた知識と、熟練した職人技があった。
「素麺づくりは本当に繊細な仕事で、その細い麺はまるで生き物のようなんですよね。ですから麺の気持ちを分かってあげられるように、五感を駆使して麺と一体とならないと美味しい素麺は作れません。不思議な話に聞こえるかも知れませんが、美味しい素麺が完成した時、まさに素麺と一体となる感覚に包まれたんですよね」。そうして製造される『北田製麺工場』の『島原手延べ素麺』は、ツルツルとした舌触りと心地よい歯応えを持ち、噛めば小麦の甘みが口一杯に広がる逸品で、一度味わうと多くの人が、その味の虜になるという。
「ウチの素麺は多くのリピーターの方々に支えられているんですが、そのリピーターが他所の素麺に逃げないことが自慢なんですよ。一度注文されると、殆どの方が次も注文して下さいますからね」。そんな北田さんの座右の銘は、多くのリピーターへの自身の気持ちを表した『感謝』という言葉だった。

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