鹿児島県人の郷愁を誘う味として愛されている鹿児島ラーメンの老舗店「くろいわラーメン」の日高小百合さん。豚骨と鶏ガラを合わせた、あっさりとしていながらコクのあるスープに中太麺がよく絡み、トッピングの香ばしい焼ネギが食欲をそそる「くろいわラーメン」を誰よりも愛し、「生涯をこの仕事に捧げている」と言う。「鹿児島の人の口に合う味もそうですが、西郷隆盛にそっくりな経営者の社長の情が、くろいわラーメンの一番の魅力だと思います。お客さんも社長のことを、おやっさん、おやっさんと、親しみを込めて呼んでいるんですよ」。そんな「くろいわラーメン」は、県外に移住した人が、帰省の際に空港から直接食べに来るというほど、鹿児島のソウルフードとして定着。情に厚い社長と、気立てがよく芯の通った、まさに「薩摩おごじょ」の名がふさわしい日高さんの人柄も、多くの人の心を惹きつけている一因なのだろう。「もうですね、くろいわラーメンが一番だと思って働いていますから。ブームなど関係なく、この味を守り続けようと思っています。ですから私は、よそのお店のラーメンを食べ歩いたこともないんですよ。毎日の食事もほとんど、くろいわラーメンですからね。もちろん仕事を休んで穴を開けるのが嫌ですから、体調管理には一番気を使っています」。自信を持って「くろいわラーメン」の一番のファンを自認し、全身全霊で「くろいわラーメン」の屋台骨を支え続ける日高さん。変わらない味を変えないように。そして、いつまでも鹿児島県人の郷愁を誘う味であるように。その生涯を大好きな「くろいわラーメン」に捧げる日高さんの顔は、幸せに満ち溢れていた。
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