匠の蔵~words of meister~の放送

宮原工芸【伝統工芸品 熊本】 匠:宮原清光さん
2011年04月23日(土)オンエア
鳥の雉を象った木製玩具「雉馬」や白地に色鮮やかな椿模様が映える木箱「花手箱」、そして、「羽子板」などの伝統工芸品を製作する工房「宮原工芸」の宮原清光さん。壇ノ浦の戦いに敗れた平家が人吉に居を求め、都で培われた芸道のへの憧れが工芸品製作へと繋がったとされる歴史ある伝統技術を受け継ぎ、現代的なアレンジで表現する。「雉馬は5月5日の端午の節句の男の子の贈り物として、花手箱や羽子板などは女の子の贈り物として親しまれています。基本的に子どもの玩具ですから、一番気を付けている部分は安全です。口に入れても大丈夫なモノ、簡単に壊れないようなモノを、一つ一つ丹精込めて製作しています」。その「雉馬」の素朴で愛らしい姿を、人吉で守り続ける工房は現在わずか2軒のみ。宮原さんは中学校卒業から約40年、先代の父の背中を見ながら、この仕事一筋でやってきたと言う。「以前までの花手箱は和紙を張って色付けしていたのですが、それでは耐久性がない為、昭和40年頃に父が木肌に直接絵を描く方法に転換しました。以来、木肌の魅力も生かせるようになり、とても好評を得ています。そんな雲の上の存在であった父を越えたいという想いがあったからこそ、自分はここまでやって来られた気がします。原木の姿に応じて自分の融通で作っていく。そうやって素材を生かしたモノ作りが出来るのが理想ですね」。そんな宮原さんの作る「雉馬」は、少しずつ時代と共に進化していると言う。「やはり家に飾ってもらうより、子どもたちに遊んで欲しいと願って製作しています。その為には、現代の子どもたちの心を動かすスタイルが必要だと思うのです。昔の雉馬は見た目がど〜んとした落ち着いた雰囲気をしていたのですが、現在は若干、スマートになっています。もちろん伝統あるデザイン自体は変化していませんが、現代風にダイエットしたという感じですかね」。それは、ただ時代の声に耳を傾けた結果であって、変えようとして変わった訳ではない。そうやって進化する「きじ馬」は、どんな時代も人に温もりを与える、人を笑顔にさせる、人が喜ぶモノとして、人の傍にある。「やはり皆さんに喜んでもらえる雉馬を作りたいですからね。いかに人に喜ばれるモノを作ることが出来るのか、それが商売であり、結果、伝統を守ることだと思っていますので」。

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