匠の蔵~words of meister~の放送

長崎刺繍工房 [長崎 長崎刺繍] 匠:嘉勢照太さん
2007年04月07日(土)オンエア
長崎を代表する秋の祭り「長崎くんち」の傘鉾や衣装に多く見られる「長崎刺繍」の技術を受け継ぐ唯一の匠、「長崎刺繍工房」の嘉勢照太さん。100年後に残る仕事をという想いを持ち、魚に代表される長崎刺繍の復元を手掛けている嘉勢さんの作品は、仕事場にほど近い「浦上天主堂」のステンドグラスのように繊細で優しく、そして美しい。シルクロードから伝わり、江戸時代に唯一の貿易港だった長崎で生まれたという「長崎刺繍」。しかし、200年以上も続くその伝統は、嘉勢さん一人の力だけで守られている訳ではなかった。「今、刺繍の仕事は、東南アジアが主流で、長崎刺繍は急激に衰退してしまいました。維持する刺繍となってしまったんです。でも、それも無理もないんですね。こうして私のしている仕事も10年越しの仕事なんです。お金のかかる刺繍なんですね。ですから、私が今こうして仕事としてやって来られるのは、やっぱり町が、私に発注してくれるからなんですよね。長崎市の心意気ですね」。コンピュータミシンが発達し、刺繍の技術が特別ではなくなった今、しかし、伝統ある長崎刺繍の技術を受け継ぐ唯一の匠は、作品の細かな質感や美しさ、さらには作品に込められる作り手の想いや心は、コンピュータでは表現出来ないと言う。「そういうものまで分かってないと、なかなか町も発注して来ないですよ。やはり長崎くんちが大好きなんですよ。そして、くんちで、わあ〜綺麗かと言って見るのは、やっぱり長崎刺繍なんですね。 おくんちの良さというのは、もちろんお祭りとして華やかな所もあるんですけども、実に奥行きをしっかり感じ取れるっていうんでしょうかね。お年寄りもいるし子供もいるし。そして、なおかつよく見ると、そういう長崎刺繍のような凄い技術も見れるというのが魅力なんですね。ですから単なるフェスティバルじゃないんですよね」。そんな匠が一針一針、精魂を込めて紡ぐ長崎刺繍は、長崎を愛し、「長崎くんち」を愛する長崎の人たちの心意気によって大切に守られている。「制作の途中に、糸を解くことはしょっちゅうですよ。この色は違う…とかね。でも、そうやって糸を解くことは前に進むことなんです。何度でもやり直しますよ。長崎の心意気は、私も大事にしています」。

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