匠の蔵~words of meister~の放送

料亭 やまさ旅館【すっぽん料理 大分】 匠:山上宜人さん
2011年04月30日(土)オンエア
日本で唯一、心の文字が入る町名を持つ大分・安心院の郷土料理「すっぽん」を大正9年から提供する名店「料亭 やまさ旅館」の4代目、山上宜人さん。大正時代に政治家として活躍した木下謙次郎氏が著した、古今東西の食文化にも通じる食通本「美味求真」にも記され、また、昭和の文豪・松本清張が大分を訪れた際には必ず立ち寄ったというほど、多くの美食家たちの舌をも唸らせてきた伝統の味を受け継ぎ今に伝えている。「自分の代で創業100年を迎えるというプレッシャーは感じています。良いと言われているモノを変わらず良いと言われ続けるように毎日が精進です」。低脂肪で高蛋白の「すっぽん」は、ビタミンや必須アミノ酸が多く含まれ、甲羅の縁のエンペラと呼ばれる軟骨には、多くのコラーゲンが含まれているなど、その味だけではない魅力がある。「天然のすっぽんは生息数が少ないのと、味が季節によって左右される為、すべてのお客様にお出しすることができません。ですから料亭やまさでは、すっぽんを清流を引いた専用の池で、天然に近い餌を与えて養殖しています。また、2年以上、冬眠を繰り返すことで脂のノリを良くし天然に近い上質の肉となるように努力しています。そして、すっぽんはクセがあり食べにくいのではと敬遠されるお客様もいらっしゃいますが、料亭やまさでは調理の一ヶ月前から水の中で餌断ちし、クセや臭みのまったくないすっぽん料理を提供しています」。通常800g以上で出荷されるすっぽんだが、ここ料亭やまさが使うすっぽんは、すべて1kg以上。ほろほろと骨離れが良く、まるで魚と鶏肉を同時に食べたような深い味わいが楽しめる料亭やまさのすっぽん料理は、そうした山上さんたちの努力によって多くの人に愛されている。「やはりすっぽんは、見た目で召し上がれないお客様が非常に多い食材ですので、初めてのお客様が初めて食べた時に、美味しいと感じて頂けるように努力しています。最初に味に満足して頂かないと、2回目、3回目がない食材だと思いますので、先代、先々代からの想いとして美味しいを絶対条件に掲げています」。どんなに滋養強壮に良いと言われようが、美味しくなければソッポを向かれてしまう。美味しいを絶対条件に掲げ、見た目のハンディを舌で納得させる「料亭 やまさ旅館」のすっぽん料理。その味は、「食わず嫌いは人生の損」と実感させる滋味に富んだモノだった。

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