鹿児島の雄大な大自然に囲まれたお茶の産地、知覧町。およそ40年前に大阪から鹿児島に嫁ぎ、家族のイギリス好きに影響され、紅茶などの英国の文化を紹介する施設、「英国館」を建設した館長の田中京子さんは、日本紅茶協会認定のインストラクターでもあり、これまで研究機関以外では栽培される事がなかった幻の国産紅茶「べにふうき」の生産に成功する。そんな田中さんは、紅茶の楽しみ方を教えてくれた。「よく紅茶の美味しい入れ方講習会とか、色んな所で呼んで下さるんですけど、お茶の飲み方っていうのは、本当は個人個人が好きなように飲んで良い訳ですよね。ただ、一つだけ言える事は、お茶の持っている特質を限りなく出して頂くという事だけですね。紅茶は80度以上になるとカテキンが溶け出すので、3分間蒸らしている間に80度から下げない努力をするだけの事なんです。後はもう人生の話とか、英国の話とか、色んな話とか質問が一杯あって、お母さんは目一杯話すから疲れるのよって娘によく叱られるんですけど」。作法とか様式美は、そのモノの文化として大事にしなくてはならない。しかし、そのモノ自体を楽しむ心を忘れると、それは、ただの形だけのものとなる。英国と歴史的にも深いつながりがある薩摩で「英国館」の館長を務める田中さんは、英国の紅茶というツールを使い、人生を大いに楽しむことを知る素敵な匠だった。「英国のアフタヌーンティーに行くと、ウチの旦那がさ〜とか、あそこの子は、また大学落ちたよとか、そういう話をしたら、次の招待状が来ないんですね。なので、皆さんにも今日の天気はとか、そういう事を色々お勉強して行かないと、アフタヌーンティーに招かれてももちませんよって言うんです。でも、いつもお天気の話ばかりという訳にはいかないので、それで陶器などでも、これは何年前のドコの窯で作られたとか勉強するので、そういう風に深く知識が広がって行くんです。アフタヌーンティーの良さは、そういう所にもあるんですよね」。そんな田中さんの好きな言葉は「時は大きなエネルギー」。どんな辛い事でも時さえ過ぎれば癒してくれるからだそうだ。そうやって今という時間を生きている田中さんは「毎日毎日が楽しくって」と屈託のない笑顔で話してくれた。
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