匠の蔵~words of meister~の放送

九州国立博物館  [福岡 博物館] 匠:鈴木裕さん
2006年04月22日(土)オンエア
国宝指定文化財の保存・修復を行う修理技術者集団「国宝装こう師連盟」に所属し、福岡の「九州国立博物館」の技術長として、「紙」を専門に修復・保存を行っている鈴木裕さん。鈴木さんは、国宝に携わるという現在の仕事の醍醐味を教えてくれた。「坂本竜馬が暗殺された時に、映画とかで必ず血しぶきが掛軸に飛びますよね。あの掛軸は京都の博物館に本当にあるんですよ。その掛軸を修理した時に歴史のドラマに立ち会えたという感慨深いものがありましたね」。そして、そんな公共性のある国宝を修理するという仕事は難しい判断も求められるそうだ。「普通でしたら、掛軸の中の絵を修理するのが目的なんですけど、絵は普通に旅館が掛けている特に名も無い作家の絵なんです。掛軸自体の美術的価値というよりも歴史的価値のあるものを保存する場合などは、総合的な判断が求められますね」。鈴木さんの仕事は、重要文化財や歴史資料を元の綺麗な姿に戻すことだけではない。100年、300年、さらには、500年以上経ったモノの劣化や汚れが、日本人特有のワビやサビといった、新しい価値を生み出している場合もある。そのモノの価値が何処にあるのかっていう事は難しい…。だからこそ鈴木さんは、修理の方針は職人の独断によって行われるべきでは無いと考え、「研究者や学芸員など、大勢の人の意見を尊重しています」と、封建的だったこの世界に新しいシステムを定着させようとしている。そして、九州国立博物館では、そんな鈴木さんたちの力によって日本の宝が守られていた。「1回修理すると、100年位のスパンで修理をしなくてもいいのですが、その100年後には誰かが修理しなきゃいけないモノなんですよ。私が今修理したモノは、自分が教えた人が修理する可能性は低いんですけど、その孫か、ひ孫位の技術者が修理するような事になるとしても、技術が確実に伝えられているような状態にしなくてはいけないし、あるいはそういうシステムを築いていかなくてはならないと思いますね。」そのスケールの大きさには驚かされる…。

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