匠の蔵~words of meister~の放送

神代独楽製作者【郷土玩具職人 宮崎】 匠:兵頭正一さん
2014年05月03日(土)オンエア
宮崎の佐土原に伝わる郷土玩具『神代独楽』や『久峰うずら車』を、唯一作り続ける職人、兵頭正一さん。古くは江戸時代に参勤交代の際の土産物としても重宝されたという『神代独楽』は、胴体に唸り窓という仕掛けがあり、回すとブーンという豪快な音を奏でる。
「『神代独楽』は600年以上も前から作られている郷土玩具で、竹の筒に檜の板をハメ込んだ胴体に、竹の芯棒を通しただけの素朴な独楽なんですよね。胴体を松で燻し、島津の家紋である丸に十字の模様を入れるのが一般的で、回した時に独楽が放つ独特な音から『ブンブン独楽』とか『ワンワン独楽』とも呼ばれているんですよ」。現在77歳の兵頭さんは、そんな『神代独楽』を5歳の頃から製作しているという。
「私が子どもの頃は、佐土原の殆どの家庭が『神代独楽』を作っていました。私の家でも代々、作っていましたので、『神代独楽』を作ることが遊びの一環でもあったんですよね」。以来、その音の良し悪しが独楽の価値を決める為、川のせせらぎや風の音ように、人の心を癒す自然の音に近づけたいと、一つひとつ真心を込めて製作しているという兵頭さん。そして、そのような音が出る決め手は、素材となる竹の選別にあるという。
「良い竹は音が良く、悪い竹は音が悪いということですね。もう70年以上も『神代独楽』を作っていますが、竹の良し悪しが分かるようになったのは、つい最近のことなんですよ。例え見た目が良くても竹は縮むという性質がありますので、そこの見極めが難しいんですよね。ですから人が切った竹を使ってもダメなんですよ。やはり自分の目で確かめて、自分が選んだ竹でないと、良い音は生まれません」。兵頭さんは、そんな竹の良し悪しを見極める目は、幼い頃から自然に触れ、自然で遊び、自然と語りあってきたことで培われたという。
「音を調整する場合でも、竹がここを削ってと言っているような感じがするんですよね。そうすると不思議と調子が出てくるんですよ。当然、竹はモノを言いませんので、自分が勝手に感じているだけなんですが、手が知っているというのか、自然から作らされているような感覚になるんですよね。自分の力だけで、何とかしようと思っても出来ませんからね」。接着剤やクギを一切使わずに、自然の材料のみで作る玩具だからこそ、自然への畏敬の念を忘れずに『神代独楽』を作り続ける兵頭さん。その自然の力に導かれながら生まれる『神代独楽』は、まさに自然と一体となった音を奏で、耳まで楽しませてくれる。
「やはり自然の力は偉大ですよね。私は『神代独楽』を製作しながら、自然を大事にしなさいということを教えられているような気になるんですよ。人間が生きていく上で、自然というのは一番大切なモノですからね」。

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