匠の蔵~words of meister~の放送

竹巧彩【竹細工 大分】 匠:毛利健一さん
2010年05月15日(土)オンエア
全国伝統的工芸品展で内閣総理大臣最高賞を受賞、さらにファッションデザイナーのコシノジュンコさんの依頼で、「パリコレ」に作品を提供したこともある竹細工職人「竹巧彩」の毛利健一さん。数々の輝かしい経歴を持ちながら、自らを「作家ではなく職人」と呼び、網代編み、ござ目編み、やたら編みと、様々な編み方を駆使して仕上げた独創性に溢れた多彩なバックやインテリアなど、常に竹細工の可能性を探り、唯一無二の使える商品を生み出している。「一般的に作家の作ったモノは作品で、職人の作ったモノは商品と呼ばれますが、それを作品と呼ぶのか、商品と呼ぶのかは、お客さんが決めるものだと思うんですよね。僕らは感動して頂けるモノを作ることが大事であって、それに付随する肩書きは、前にあるのではなく後からついてくるものだと思います」。決して肩書きを残す為ではなく、職人として常に使う人の感動を求めて竹細工を製作している毛利さん。その姿勢は商品の販売方法にも表れている。「僕は客の声を大事にしたいので、商品の販売は問屋を通さず、インターネットやデパートの物産展、由布院にある自らのギャラリー『彩佐』で直売しています。お客さんと近い距離で仕事をすることで、色んな話を聞くことを出来ますからね。作り手は、お客さんからの情報を遮断するのではなく網に掛け、必要な部分だけをすくっていくべきだと思います」。そんな毛利さんが緻密に丁寧に編んだ竹の模様は、息を呑む程の美しさ…そして、その美しさは、もちろん毛利さんの卓越した職人技によって支えられている。「緻密で精巧な伝統工芸を製作するのにあたっても、師匠からは『スピードがなければ、いいモノが出来ない』と常に言われていました。材料とるのも何するのにも『早くしろ、それが職人なんだ』と教わってきましたからね。だから、ゆっくりモノの形にしていくのが不慣れというか、出来ないんですよね。パッパッパッと手を動かさないと、何故か分かりませんが、力がないというか、勢いがないモノが出来上がるような気がします」。普通、このバックを作るのに「10年もかかりました」と言われた方が、ありがたい気持ちになる。しかし、手が仕事を覚えている…そんな長年の技術で製作された毛利さんのバックからは、その緻密さの中に、竹の息吹だったり、グルーヴだったりを感じることができる。「他人が作ることが出来ないような、『何故、こんなモノを作るの』って言われるようなモノを作っていきたいというのが、僕の一番の目標ですよね。ですから同じ作品を作り続けるのは苦手です。15年程前に、コシノさんとパリコレでジョイントした時から竹や籐のバックを主流に作っているのですが、当時のバックと今のバックでは仕様が全く違うんですよね。しかし、その変化したポイントは、やはり、『ここが入れ辛い』『ここを丈夫にして』といったお客さんの声なんですよね。デザイン性ももちろん大事ですが、『凄いね』と言われる中で、やはり使ってもらいたいですからね」。一つの代表作が出来ると、それをモデルに作っていくのが一番失敗がない。しかし、毛利さんは「そんなの楽しくないでしょう」と笑い、使ってくれた人の声を頼りに進化させている。5年後、10年後の毛利さんのバックはどのようになっているのだろうか。また、その時に訪れてみたい。

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