毎年8月15日から17日の未明にかけて行われる、熊本は山鹿市の伝統的な夏祭り、「山鹿灯篭まつり」の「千人踊り」で、浴衣姿の女性たちが頭に乗せている「金灯篭」。木や金具を一切使わずに、和紙と少量の糊だけで作られる「山鹿灯篭」を代表する作品として知られている。そんな山鹿市の芝居小屋「八千代座」の程近くにある「灯篭なかしま」の灯篭師、中島清さんは、「金灯篭」だけでなく、これぞまさしく細工と呼べるような、畳の線まで再現された建築物も作っていた。しかし、中島さんは、灯篭師の仕事は技術だけでは出来ない言う。「灯篭師って何年かかりますか?ってよく聞かれるんですね。平均すると10年位ですが、早ければ5〜6年で出来る人もいます。技術的なものは2〜3年もすれば大体出来てくる。ところがね、それから先、親方からここはこういう風に作りなさいよって言われなくても自分で考えて作っていく事が出来るようになったら、一人前なんです」。そんな中島さんは、技術を習得した後は、師匠である先代と、あえて違うやり方で「山鹿灯篭」を製作したと言う。「先代のやり方と違うやり方をしている事が多いんですよ。道は色々ある訳ですから。先代もそういう事を考えてやって来てると思うんです。それが少しずつ変わっていって、技術的なものが進歩してくるんだと思いますよでも、それは基本があるから出来るんであって、基本がなけりゃまず無理でしょうね」。音楽家がコード進行の基本を分かった上で、定石を崩し、作曲する事がある。コード進行の基本の分からない人が無茶苦茶にコードを組み立てても、それは曲にはならない。まず、基本が大事…。でも、その先にあるオリジナリティは、もっと大事だという事はどの世界でも同じだ。「この仕事は慣れが出て来る仕事なんです。だから、私の好きな言葉は、初心忘るべからずなんです。初心を忘れずに後世に山鹿灯篭を残して行きたいですね」。
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