匠の蔵~words of meister~の放送

漆芸家【漆芸家 熊本】 匠:戸田友行さん
2012年04月07日(土)オンエア
専門の職人によって分業で制作される『輪島塗』などに対し、木地作りから仕上げまで120を有に超える工程のすべてを、一人で手がける若き漆芸家、戸田友行さん。木工芸家として活躍する父、戸田東蔭さんの背中を見て育ち、九州で数少ない漆芸家として活躍する。「興味本位で漆芸の世界に足を踏み入れたのですが、性格的に手間をかけて作ることが向いていたのか、やってみたらとても面白かったんですよね」。そうして戸田さんは香川県漆芸研究所に入所。漆芸家・山下哲二氏のもとで本格的に漆芸を学び、熊本で創作活動を開始する。「分業制が当たり前の漆芸ですが、作品と考えると、どうしても1人でやりたいと思い、すべての工程を手がけるようになりました。作品によっては数ヶ月もかかることもありますが、まだまだ自分自身の中にあるイメージを、すべて作品に表現できるまでに至っていませんので、これからも自分らしさを追及していこうと思います」。そんな戸田さんは、『チャイナ』と呼ばれる陶磁器に対し、『ジャパン』と呼ばれる漆器の魅力を、もっと多くの日本人に知ってもらおうと、日常の中で活かせる様々な表現にチャレンジ。日本伝統工芸展入選など数多くの受賞歴を誇る。「漆は一番古いモノですと縄文時代の遺跡からも出土しています。その中で、時代ごとの模様や表現があるんですよね。そうして時代が受け継がれているということを考えると、やはり今の時代を生きる自分は、今の時代の作品を作り、次の時代に渡さなければならないと思います。当然、自分もそういった作品と並べられて恥じない作品を作らなければならないという気持ちが強いのですが、だからといって、時代を意識するのではなく、今の時代に生きる自分が、様々なことを吸収して作った作品であれば、今の時代の作品になるのではないかと思います。今は情報が凄く溢れていますので、自分で時代を作っていくことは難しいことですから、今の時代を一生懸命に生きて、自らが感じたように作ることができたのなら、それが後に今の時代だと思って頂けるのではないでしょうか」。時代を彩る作品というのは、時代を映し出そうと思って作られたモノではない。その時代、時代を一生懸命に生きた作家の作品のみが、後世に受け継がれる。今を生きる若き漆芸家、戸田さんの作品が、これからどんな風に今の時代を映し出すのか興味が尽きない。「僕はよく漆の神様がいると感じることがあるんですよね。手を抜くと当然、バチが当たるというか作品に表れますし、手をかければ予想以上の結果をもたらしてくれる。継続は力なりという言葉がありますが、これからも一生懸命、漆芸を続けていく、それが僕の夢であり目標でもあります」。

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